下請法

2024年7月 2日 (火)

やり直しに対する初の勧告(大阪シーリング印刷2024年6月19日)

2024年6月19日、大阪シーリング印刷(株)に対して、やり直しで勧告が出ました

公取委報道発表によると、違反事実は、

「大阪シーリング印刷は、下請事業者が作成したデザインについて、

給付の受領後に実施する受入検査において問題がないとしたにもかかわらず、

その後に自社の顧客である食品製造業者等からやり直しの依頼があったことを理由として、

令和4年4月から令和5年10月までの間、

下請事業者に対し、

下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、

合計24,600回のデザインのやり直しを無償でさせることにより、

下請事業者の利益を不当に害していた(下請事業者36名)。」

とのことです。

NHKの報道(2024年6月19日「下請けに無償でやり直し2万4600回で印刷会社に公取委勧告 ⼤阪」)によると、

「公正取引委員会の調査に対して会社側は「これまで、やり直しを無償で依頼することは、事前に説明して了解を得ていたので、問題はないと考えていた」と話しているということです。」

とのことです。

このように、下請法ではやりなおしがありうることを事前に下請事業者との間で合意していても違反になります。

商品の納入を受けた後にクライアントから修正の指示があるというのは、この手のデザインのかかわる商品ではありがちなことと想像されますが、ではこのような場合、発注者である親事業者はどうすればいいのでしょうか。

まず前提として、下請法では、やり直しの要求が一切認められないわけではありません。

というのは、下請法4条2項4号では、

「 2 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号・・・に掲げる行為をすることによつて、下請事業者の利益を不当に害してはならない。〔1~3号省略〕

四 下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させ、又は下請事業者の給付を受領した後に(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させること。」

とされており、2項に規定されているやり直しは下請事業者の利益を不当に害さなければ違反にならないのです。

(なお、目的物の瑕疵など、下請事業者の責に帰すべき理由があればやりなおしが認められるのは当然です。)

なので、やり直しについての費用を全額発注者が負担するのであれば、基本的には問題ありません。

この問題に関しては、下請法講習テキスト(令和5年11月版)p85に、

「●  放送番組等の情報成果物作成委託における「給付内容の変更」「やり直し」

放送番組等の情報成果物作成委託において、

下請事業者が作成した情報成果物が親事業者の当初委託した内容を満たしているかどうかは、

親事業者の価値判断等により評価される部分があり

事前に給付を充足する条件を明確に3条書面に記載することが不可能な場合がある。

このような場合において、親事業者が、給付の受領の前後を問わず、

3条書面上は必ずしも明確ではないが下請事業者の給付の内容が当初委託した内容と異なる又は瑕疵等があるとし、

やり直し等をさせることは、

親事業者がやり直し等をさせるに至った経緯等を踏まえ、

やり直し等の費用について下請事業者と十分な協議をした上で合理的な負担割合を決定し、それを負担すれば

本法違反とならない。

ただし、親事業者が一方的に負担割合を決定することにより下請事業者の利益を不当に害する場合には、本法違反となる。」

とされています。

これだけみると、3条書面に給付内容の詳細を記載することが困難な場合であっても十分協議して合理的な負担割合を負担する必要がある(逆に言えば、費用負担をしないと責任を免れない)かのようにも読めますが、この点に関してはさらに、同テキストp87のQ104があり、

「Q:親事業者は、放送番組の制作を委託するに当たり、給付を充足する条件を明確に書面に記載することが不可能なため、

下請事業者と十分な協議をした上で、当初から何度もやり直しすることを見込んだ価格を設定している。

この場合においても、3条書面に記載していない事項を充足させるためのやり直しについて、別途、その費用を負担せずにやり直しさせることは問題ないか。」

との質問に対して、

「A:当初から下請事業者と十分な協議の上で何度もやり直しすることを見込んだ価格を設定している場合に、

当初の想定の範囲内でやり直しをさせることは問題ないが、

それを理由に3条書面に記載されていない事項について無制限にやり直しをさせることができるものではないので、

下請代金の額の設定時に想定していないような費用が発生するやり直しの場合には、

下請事業者と十分な協議をした上で合理的な負担割合を決定し、

それを負担する必要がある。」

と回答されています。

つまり、テキスト本文(p86)の、

「やり直し等の費用について下請事業者と十分な協議をした上で合理的な負担割合を決定し、それを負担すれば、」

というのは、発注者も常に何らかの負担をしなければならないという意味ではなくて、十分協議をした結果下請事業者が全部の割合を負担する(追加支払はなし)ことも認める、という趣旨であると考えられます。

(同じテキストなのですから、記述は統一してほしいものです。)

結局、やり直し(3条書面に記載されていないもの)が認められるためには、

①給付の条件を3条書面に明確に記載することが不可能であること、

②やり直しを見込んだ価格を設定すること、

③当初想定を超えるやり直しの場合は、十分協議して合理的な負担割合を決定すること(想定の範囲内なら追加支払不要)、

という3つの要件を満たすことが必要、ということになります。

シールのデザインは①を満たしそうですから、あとは、それを見込んだ価格を設定すれば(②)、当初想定を超えるようなやり直しでない限り、当初価格のままでやり直しをさせても構わない(追加支払は不要)、ということになるのでしょう。

上記のNHK報道に対する大阪シーリング印刷のコメントからすると、②も③も満たした可能性があるような気もしますが、勧告が出たのですから、公取委は満たさないと判断したのでしょう。

(その判断が正しかったのかどうかは、報道発表からは読み取れません。)

逆に言うと、やり直しが通常の業務の過程で当然のように行われているビジネス(本件でも、やり直しが24,600回あったと認定されており、やり直しが常態化していたことがうかがえますが、数が多いから悪いというものでもないでしょう)では①~③を満たす可能性が高く、それが、これまでやり直しの勧告がなかった理由ではないかと推測します。

また、下請法運用基準第4-2では、支払遅延に関する解説ではありますが、

「⑶ また、情報成果物作成委託においては、親事業者が作成の過程で、委託内容の確認や今後の作業についての指示等を行うために、情報成果物を一時的に自己の支配下に置くことがある。

親事業者が情報成果物を支配下に置いた時点では、当該情報成果物が委託内容の水準に達し得るかどうか明らかではない場合において、

あらかじめ親事業者と下請事業者との間で、

親事業者が支配下に置いた当該情報成果物が一定の水準を満たしていることを確認した時点で、給付を受領したこととすることを合意している場合には、

当該情報成果物を支配下に置いたとしても直ちに「受領」したものとは取り扱わず、

支配下に置いた日を「支払期日」の起算日とはしない。

ただし、3条書面に明記された納期日において、親事業者の支配下にあれば、内容の確認が終わっているかどうかを問わず、当該期日に給付を受領したものとして、「支払期日」の起算日とする。」

と解説されています。

そして、やり直しというのはいったん受領した物についてさせることなので(受領前は給付内容の変更)、「受領」が成立しない以上、やり直しも成立しないと考えられます。

また、そのような運用がテレビ業界で行われている実態について、

上原伸一「テレビ関係における情報成果物作成委託を中心とした下請法対応 スタート事情から現状と問題まで(特集 下請法の今日的課題)」公正取引689号18頁

では、

「心配された不当な給付内容の変更・やり直しの禁止であるが、既に述べてきたように、この業界では制作をしながら内容を練り上げていくという作業が行われているので、制作作業中の「手直し」や「変更」は日常的なものである。

給付内容にある企画内容の範囲で、支払金額に影響を与えない「手直し」等については長い歴史の中で培われてきたやり方であり、少なくとも表立って問題にはなっていない。

下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準においても、第4-2-⑶で、給付内容確認のための情報成果物を一時的に自己の支配下に入れることは、下請事業者との間で事前の合意がある限りは、「受領」したものとは扱わないことが認められており、

この規定の趣旨を柔軟に生かすことにより現場のトラブルを回避している。」

と解説されており参考になります。

ですので、このような一時的に支配下に置く合意をすることも検討に値するでしょう。

2024年6月28日 (金)

フリーランス適正化法の3条通知の時期に関する疑問

今年11月に施行予定のフリーランス適正化法3条1項では、

「(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)

第三条 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法・・・により特定受託事業者に対し明示しなければならない。〔以下項省略〕」

と規定されています。

そして驚くべきことに、この通知(3条通知)の起算点について、公取委・厚労省「特定受託事業者に係る取引の適正化等関す法律の考え方」p8では、

「「業務委託をした場合」とは、業務委託事業者と特定受託事業者との間で 、業務委託をすることについて合意した場合をいう。」

とされています。

これがなぜ驚くべきことなのかというと、下請法の3条書面では、発注後直ちに、という意味だと解されているからです。

すなわち、3条書面に関する下請法3条1項本文では、

「親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。」

と規定されており、この「製造委託等をした」というのは、発注をした、という意味だと解されているからです。

例えば、令和5年11月版下請法テキストp30では、

「Q31: 電話で注文をして、後日3条書面を交付する方法は問題ないか。」

という設問に対して、

「A: 緊急やむを得ない事情により電話で注文内容を伝える場合であっても、電話連絡後直ちに3条書面を交付しなければならない。」

と回答されています。

つまり、下請法の3条書面は注文後直ちに交付しないといけないということです。

そのことは、下請法テキストに載っている3条書面のひな形のタイトルが「注文書」となっていることにも表れています。

ですので、下請法上は、

発注書→発注請書

で契約が成立する場合に、発注請書が出てから3条書面を出すのでは遅いわけです。

これに対して、フリーランス適正化法では、「業務委託をすることについて合意した」場合に直ちに3条通知をすればいいということになるので、3条通知を出すのは発注請書が出てからでいい、ということになります。

細かいことをいえば、民法97条1項では、

「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。」

とされているので、契約の成立は請書が発注者に届いた時点ということなので、そこから「直ちに」3条通知をすればよいことになります。

これは、下請法の3条書面とは大違いです。

そもそも下請法の3条書面が、契約の申込みに過ぎない発注書があたかも契約内容を確定するかのような建て付けになっているのが理屈上はおかしいのであり、そのために下請法をやっているといろいろなところで理論的な矛盾が生じたりします。

でも、そこは、「下請法では細かいことは言わないもんだよぉ~」という、おおらかな解釈で実務が回ってきた、という実態があります。

また、下請取引では、発注書から契約内容が変更されたりすることがあまりないので、実用上も大きな不都合がなかった、ということもあると思います。

それが今回、フリーランス適正化法については、はっきりと、「合意」から直ちに、という意味であるとの解釈が示されました。

これはこれで理屈上はすっきりしますし、理論的には正しい方向なので、これでもよいのかなと思うのですが、下請法3条と同じ条文の文言なのにこんなに解釈が変わっていいものか、という疑問もあります。

それに、条文の文言解釈という観点からいえば、下請法の3条書面の解釈の方が、私は正しい(フリーランス適正化法の解釈は間違っている)と思います。

もう一度条文をみると、フリーランス適正化法3条1項では、

「業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法・・・により特定受託事業者に対し明示しなければならない。」

とされています。

そして、「業務委託」とは、フ適法2条3項で、

「一 事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む。)又は情報成果物の作成を委託すること

二 事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。)。」

と定義されており、「委託すること」というのは、作業を頼むこと、であり、これはつまり、委託の申込をすることだと解釈するほうが素直だと思います。

例えば、民法643条(委任)では、

「第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」

という用例があり、この場合の「委託し」は、委任契約の申込の意味であることが明らかです。

しかも、フ適法の3条通知が合意後「直ちに」であることは、発注者(特定業務委託事業者)にとってよいことばかりではありません。

というのは、合意後直ちに、という解釈だと、合意成立前には3条通知は出せないからです。

たとえば、食品宅配のウーバー・イーツの場合、案件の依頼がウーバーから配達員のスマホに届いた段階ではまだ「申込」ですから、この案件依頼を3条通知だとみなすことはできません。

そうすると、配達員が案件の「承諾」をクリックしたあとに、ウーバーはあらためて3条通知を出さないといけないことになります。

これはいかにも無駄なように思います。

果たしてこんな不合理なことに、本当になるのでしょうか?

私は、きっとならないと思います。

というのは、条文の解釈としては前述のとおり発注後直ちにと読むのが正しいのと、確かに上記「考え方」には「合意」と明記してありますが、きっと実務では下請法の運用に引きずられて、発注後直ちに(あるいは、発注と同時に)、と解釈されるように思われるからです。

それくらい、実務の慣行というのは大きく、ちょっと指針に「合意」と書いたくらいでは変わらないと思います。

ともあれ、フ適法施行後どのような運用になるのか、注目です。

2024年6月26日 (水)

代金支払期日を定める義務に関する下請法2条の2の民事上の効力

下請法2条の2では、

「(下請代金の支払期日)

第二条の二 下請代金の支払期日は、・・・親事業者が下請事業者の給付を受領した日・・・から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

2 下請代金の支払期日が定められなかつたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日が、

前項の規定に違反して下請代金の支払期日が定められたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過した日の前日が

下請代金の支払期日と定められたものとみなす。」

と規定されています。

これとほぼ同様の規定であるフリーランス適正化法4条では、

「(報酬の支払期日等)

第四条 特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、・・・当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日・・・から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

2 前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日が、

同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過する日が、

それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。

〔3項以下省略〕」

と規定されています。

そして、フリーランス適正化法の担当官解説である、

松井他「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の概要」(NBL1246号35頁)

の脚注12(4条2項の説明に対する脚注)では、

「12  行政機関による執行との関係で支払期日が定められたものとみなされるだけで、契約当事者間の合意内容を変更させる等、民事上の効果を生ずるものではない。

と断言されています。

下請法2条の2ではこのような解説がなされることはなく、これはかなり驚きです。

しかしながら、フリーランス適正化法4条でこのような解釈がなされている以上、同条とうり二つの下請法2条の2でも同様の解釈がなされると考えるのが自然でしょう。

それに、個人事業者が主体のフリーランス適正化法における保護が、下請で資本金もさほど大きくないとはいえ法人事業者が保護の対象である下請法の場合よりも劣ってよいという理屈もないでしょう(その逆なら、まだ考えられなくもないですが。)

個人的には、上記担当官解説の解説は、どうしてこんな余計なことを突然言い出したのか(しかも、何ら根拠なく)、まったくもって不可解というほかなく、解釈として誤っていると考えています。

そもそも下請法もフリーランス適正化法も、行政が取り上げる事件は全体のごく一部になるはずで、そうすると、世の中の大部分の、民民の交渉に委ねられる事案では、法律上の支払期日の規定は意味がないことになってしまいます。

ともあれ、少なくともフリーランス適正化法については担当官解説がこれだけはっきりと言ってしまっているわけですから、公取委はそういう立場なのだと実務上は考えざるをえません。

(もちろん、同担当官解説にも、「なお、本稿中意見にわたる部分は筆者らの個人的な見解である。」というお決まりのディスクレイマーがありますが、実務的にはこれは建前だと考えるのが大勢でしょう。)

あとは、下請法について何らかの解釈が将来公取委から示されるのかが注目されます。

2024年2月 1日 (木)

手形で下請代金を支払う場合の割引料の上乗せについて(続々・パートナーシップ構築宣言の落とし穴)

下請振興基準第4、4⑶では、

「⑶ 約束手形・・・により下請代金を支払う場合には、

当該手形等の現金化に係る割引料等のコストについて、下請事業者の負担とすることのないよう

当該コストを勘案した下請代金の額を、親事業者及び下請事業者双方で十分に協議して決定するものとする。

当該協議を行う際、親事業者及び下請事業者双方が、手形等の現金化に係る割引料等のコストについて具体的に検討できるよう、

親事業者は、

〔①〕支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額並びに

〔②〕支払期日に手形等により支払う場合の下請代金の額及び

〔③〕当該手形等の現金化に係る割引料等のコスト

を示すものとする。」

とされています。

つまり、下請代金を手形で支払う場合には、割引料を下請事業者に負担させることは許されず、割引料相当額を手形券面額に上乗せしなさい、ということです。

例えば、100万円の発注をする場合、もし100万円の手形を割り引くのに5万円の割引料がかかるとすると、手形で支払う場合には105万円の手形を振り出さないといけない、ということです。

特に、パートナーシップ構築宣言をしている企業は振興基準を守る義務がありますから、そのようにしましょう。

そして、振興基準のこの部分に対する実質的な解説に該当するのが、中小企業庁ウェブサイトの

FAQ『下請代金の支払手段について』

です。

同FAQのQ4では、

「Q4:親事業者は、割引料等のコストを勘案した下請代金の額を協議する際、

〔①〕現金により支払う場合の下請代金の額等を示す必要があるとのことですが、

いつ、どのように示せばよいのか教えてください。」

との質問に対して、

「下請事業者と支払手段や下請代金の額を協議するに当たって、

例えば下請事業者に見積依頼を行う際に、〔②〕手形等により支払う場合の額に加えて、

〔①〕現金により支払う場合の額や

〔③〕手形等の現金化にかかる割引料等のコストの額

についても合わせて報告するよう求めて、

その報告に基づいて親事業者から下請事業者に対し現金により支払う場合の額等を示すことが考えられます。」

と回答されています。

つまり、下請事業者に決めさせるのが1つの方法だ、というわけです。

例えば、下請事業者が、

①現金で支払う場合の見積額は、100万円

②手形で支払う場合の見積額は、105万円

③割引料は、5万円

と報告してきたら、②=①+③ですから、わかりやすいでしょう。

Q7で言及されている中企庁の「手形で下請代金を支払う場合の注文書の書式例」でも、

「代金(円)」(=手形の券面額〔②〕)

の欄に、

「うち割引料相当分(円)」〔③〕

と記載することを想定しており、上記の例では、

「代金(円) 105万円」

「うち割引料相当分(円) 5万円」

と記載することになると思われます。

ですが、もし、下請事業者が、

①現金で支払う場合の見積額は、100万円

②手形で支払う場合の見積額は、103万円

③割引料は、5万円

と報告してきたら、どうすればいいのでしょうか。

手形の金額は、見積書どおり、103万円とすればよいのでしょうか。

それとも、現金の見積額に割引料5万円を足した、105万円としなければならないのでしょうか。

この点については、振興基準の考え方は、あくまで、

「手形等の現金化に係る割引料等のコストについて、下請事業者の負担とすることのないよう

にしなければならない、ということなので、割引料5万円は親事業者が負担なければならず、手形金額は105万円とするのが正しいと考えられます。

「下請事業者が手形の場合103万円でいいといっているのに105万円支払うなんておかしいじゃないか」という意見もあるかもしれませんが、振興基準は法律でもガイドラインでもなく、下請事業者保護のための基準ですから、それでよいのです。

パートナーシップ構築宣言をしている企業は、自ら進んで宣言しているのですから自業自得であり、やはり、それでよいのです。

ただし、下請事業者に現金払いの場合の金額や割引料を報告させるというQ4の考え方はあくまで一例に過ぎず、ほかの方法がないわけではありません。

実際、Q5では、

「Q5:下請事業者の割引料等のコストについては把握していませんが、その場合はどのように対応したらよいか教えてください。」

という質問に対して、

「一例として、実際に下請事業者が近時に割引をした場合の割引料等(率)の実績等を聞くなどした上で、

一般に合理的と考えられる割引料等を協議し、

手形等により支払う場合は、当該割引料等を勘案し下請代金の額を協議することが考えられます。」

と回答されています。

つまり、当事者で協議して「一般に合理的と考えられる割引料」を合意すればいい、ということです。

なお念のためですが、親事業者は、

「〔①〕支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額」

を示さなければならないとされていますが、これを示したからといって、本当に現金で支払わなければならないわけではありません。

発注書に支払方法は手形と書いてあれば、あくまで手形で支払えばよいのです。

この点、Q7では、「〔①〕支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額」を発注書に記載することが勧められていますが、もし記載したとしても、現金で支払わなければならないわけではありません。

Q7の回答でも、

「手形等により支払う下請代金の額に併記する・・・場合は、下請事業者に、支払期日に支払われる下請代金の支払手段が手形等であることが明確に伝わるように記載する必要があります。」

とされており、仮に現金払いの場合の金額を発注書に書いても、支払方法が手形であると発注書に明記されていれば(支払方法は3条書面の必要的記載事項です。下請法3条)、手形で支払えばよいことがわかります。

では、手形で支払うにもかかわらず示される「〔①〕支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額」というのは一体何なのか、といえば、下請事業者に割引料を負担させていないかどうかを判断するため、あるいは、下請事業者が手形払いによる不利益を判断できるための、参考に過ぎない、ということです。

1つ、この「〔①〕支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額」に法的な意味があるとすれば、下請事業者が現金払いを希望してそれに応じる場合には、この①の金額で支払っても減額にはならない、という点です。

このことは、Q9で、

「Q9:手形により下請代金を支払うに当たり、現金により支払う場合の下請代金の額も発注書面に記載していた場合は、下請事業者の希望による現金払への変更において、発注書面に記載していた現金により支払う場合の下請代金の額を支払うことは下請法上問題となるのでしょうか。」

という質問に対して、

「手形により下請代金を支払うに当たり、あらかじめ親事業者が下請事業者と十分協議して合意の上で定めた(1)現金により支払う場合の下請代金の額、(2)手形により支払う場合の下請代金の額、(3)当該手形の現金化にかかる割引料相当分を発注書面に記載していた場合は、下請事業者の希望により現金で支払う際に、当該発注書面に記載した現金により支払う場合の下請代金の額を支払うことは下請法の「減額」に該当しません。」

と回答されていることからわかります。

これに対して、もし3条書面に「〔①〕支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額」を記載しなかった場合にはどうなるのかというと、Q9の回答後半では、

「なお、発注書面において、手形により支払う場合の下請代金の額しか記載していないなど、

現金により支払う場合の下請代金の額及び当該手形の現金化にかかる割引料相当分もあらかじめ合意の上定めていたとは認められない場合には、

下請事業者の希望により一時的に現金で支払う際に、自社の短期調達金利相当額を超える額を差し引くことは下請法の「減額」に該当します。」

と回答されています。

つまり、

3条書面に現金払いの場合の下請代金額が記載されていなくても、あらかじめ現金払いの場合の下請代金額と割引料相当額が合意されていれば、かかる合意に従った現金払いの金額を支払えば減額にはならず、

かかる合意がなければ、発注者の短期調達金利相当額の範囲内で差し引くのは減額にならない、

ということです。

逆に言うと、3条書面に現金払いの場合の下請代金額を書くメリットは、下請事業者の希望で現金払いに切り替える場合に、発注者の短期調達金利相当額を超えて差し引いてもよいという点にある、といえます。

こういう大事なことをFAQですましてしまうのはいかがなものかと思いますが、令和3年3月31日の通達(「下請代金の支払手段について」下請法テキスト資料8)は通達に過ぎないので法的拘束力はなく、振興基準はたんなる基準であって法的拘束力はなく、パートナーシップ構築宣言をして自ら振興基準に縛られることを選択した発注者は自業自得なのですから、やはり問題ない、ということなのだろうと思います。

2023年8月 4日 (金)

【お知らせ】下請法のセミナーをします。

9月15日(金)13時~15時に、Business & Law主催の以下のセミナーで講師をすることになりました。

2時間でつかむ下請法の最新実務

ライブ配信のみです。

上のリンク先にも書いてありますが、プログラムは以下のとおりです。

1 近時の下請法摘発事例の特徴

2 下請法適用の有無の判断

 ⑴下請法解釈の基本的視座

 ⑵製造委託に当たるか否かの判断

 ⑶情報成果物に当たるか否かの判断

 ⑷近時の下請法の解釈変更

3 価格転嫁パッケージと下請法

 ⑴下請法における近時の買いたたき規制の強化

 ⑵「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」について

 ⑶「労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇に関する下請法Q&A」の解説

 ⑷価格転嫁に関する実務的な対応

 ⑸パートナーシップ構築宣言のデメリットと下請振興基準

4 インボイス制度と下請法
 ⑴インボイス制度の概要

 ⑵「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」の解説

 ⑶インボイス制度に対する実務的な対応・リスク回避策

ご興味のある方は上記リンクからお申し込み頂けるとうれしいです。

2023年7月21日 (金)

ビッグモーターによる下請への車検強要について

NHKのニュースサイトによると、保険金の不正請求が報じられいているビッグモーターが、下請業者に対して、自社で車検を受けるように強要していたとのことです。

下請け業者 “車検など強要された”と証言」(2023年7月20日 19時25分)

もしこの「下請け業者」というのが、下請法上の下請事業者の定義に該当するのであれば、車検を受けることを強要するこのような行為は、下請法4条1項6号の購入・利用強制の禁止に該当し、下請法違反です。

同号では、

 下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。」

と規定されており、「自己の指定する・・・役務を強制して利用させること」に該当するわけです。

ビッグモーターの資本金は4億5000万円ということなので、少なくとも資本金額の点では、同社は親事業者に該当しそうです。

実際に購入・利用強制で勧告がされた事例としては、株式会社日本セレモニーに対する勧告(平成28年6月14日)があり、

「株式会社日本セレモニーは,業として消費者から請け負う結婚式の施行に係るビデオの制作及び冠婚葬祭式の施行に係る司会進行,美容着付け,音響操作等の実施を下請事業者(個人又は法人)に委託しているところ,

平成26年5月から平成27年11月までの間,

下請事業者の給付の内容と直接関係ないにもかかわらず,

下請事業者に対し,上記下請取引に係る交渉等を行っている冠婚葬祭式場の支配人又は発注担当者から,

おせち料理,ディナーショーチケット等の物品(以下「おせち料理等」という。)の購入を要請し,

あらかじめ従業員又は冠婚葬祭式場等ごとに定めていた販売目標数量に達していない場合には再度要請するなどして,購入要請を行っていた。」

と認定されています。

仮に下請けが下請法の資本金要件を満たさなくても、優越的地位の濫用の疑いがあります。

公正取引委員会による徹底的な調査を期待します。

2023年4月 4日 (火)

「パートナーシップ構築宣言」のひな形の落とし穴

以前、パートナーシップ構築宣言の最大のデメリットとして、下請振興基準を遵守しなければならないことであると書いたことがあります

ところが、その後もこの宣言についてご相談を受けることが何度かあり、いずれの会社も、宣言をすることはトップの指示だからとか、業界を挙げての取り組みだからとか、税金や補助金で優遇を受けられるからとかということで、宣言すること自体は所与の前提になっており、デメリットをご説明しても宣言をしないことまでの決定には至っていただけないケースばかりでした。

そこで、宣言をすることは既定路線である場合であっても、これだけは避けて欲しい(あるいは、よく理解した上でやって欲しい)ということを申し上げることにします。

それは、パートナーシップ構築宣言のひな形にある、

「※「下請取引以外の企業間取引についても、取引上の立場に優劣がある企業間での取引の適正化を図るという下記項目の趣旨に留意する」場合には、その旨記載ください。」

という任意記載に関する記述です。

この記載をすることはリスクが大きいので、絶対にお勧めしません。

仮にどうしても記載したいなら、そのリスクを十分に理解した上で記載するようにしてください。

間違っても、ひな形にそう書いてあるからとか、他社の例を見たらそう書いてあったからといった安易な理由で記載しないようにしてください。

この記載は、要するに、ほんらい振興基準の適用対象は下請取引だけなのに、その適用範囲を、任意に、自社が優越的地位にあるすべての取引に拡張する、という内容です。

これはちょっと考えてみると大変なことであることがわかります。

というのは、多くの企業にとって、下請取引は、すべての取引の中でほんの一部に過ぎないからです。

ということは、この、

「下請取引以外の企業間取引についても、取引上の立場に優劣がある企業間での取引の適正化を図るという下記項目の趣旨に留意する」

という任意の記載を宣言の中に記載すると、下請取引以外の何倍もの取引に振興基準の縛りがかかってくる、ということです。

なので、取引先と揉めたときにこのパートナーシップ構築宣言を引き合いに出されて、

「おたく、パートナーシップ構築宣言してますよね? 振興基準を守らないといけないんじゃないですか?」

といわれても、その取引先との取引が下請取引でなければ、

「何言ってるんですか。振興基準は下請取引にしか適用がないのですよ。」

といえば話は済むわけです。

ところが、この任意記載をしてしまうとそうはいかず、優劣関係があれば(優劣関係がない取引なんて、むしろ少数でしょう。)、すべて振興基準が適用されてしまうわけです。

さらに細かいことをいえば、この任意記載の「取引上の立場に優劣がある」というのも、独禁法の優越的地位の濫用のことをいっているのかどうか、はっきりしません。

むしろ、「優劣」なんていう非常に漠然とした、かつ簡潔な表現をしていることからすると、優越的地位の濫用の優越的地位が認められない場合でも「優劣」はある、という場合がありうると読むのが自然だと思います。

(優越ガイドラインでは、取引先変更可能性など、優越的地位の判断に関する記述が約3頁にわたって長々と説明されています。)

もちろん、パートナーシップ構築宣言の趣旨からすれば、下請取引とそれ以外とを区別するのがそもそもおかしいわけで、すべての優劣関係のある取引に適用するのが趣旨に適っているとはいえます。

なので、どうしてもその原理原則に従いたいのだという強い希望があるのであれば、私も止めません。

どうぞご自由になさって下さい。

ですが、この任意記載をするメリットは何かあるのかというと、私の考えるところでは、何もありません。

まず、これは任意記載ですから、この記載をしてもしなくても、補助金の審査に影響したり税制上有利な扱いを受けたりというメリットがなくなることはありません。

また、実際にできあがった宣言を読んでみても(読む人もそんなにいないと思いますが。)、この任意記載がなかったからといって、全然違和感はありません。

つまり、「この会社は下請取引にしか宣言を適用しないのか。けしからん!」なんて思う人は誰もいません。

ということは、日本企業がよく気にする、”見てくれの悪さ”というのもなければ、”悪目立ち”というのもないわけです。

もちろん、このひな形を作った役人の人は、企業を罠にかけてやろうと思ってこの任意記載案を入れたのではないと思います。

パートナーシップ構築宣言の本来の趣旨からすれば、下請取引とそれ以外を区別する理由はなく、むしろ当然の内容だからです。

ですが、結果的に、これはパートナーシップ構築宣言の最大の”罠”になっていると思います。

というわけで、企業の皆さん、くれぐれもご注意下さい。

2022年10月14日 (金)

知財の帰属は契約書に書くのでは足りないのか?(公取委下請法Q&A19番について)

公取委ウェブサイトの下請法Q&Aの19番に、

「(知的財産権の譲渡)

Q19 情報成果物作成委託において,知的財産権が親事業者又は下請事業者に発生する場合,いずれの場合においても,契約において知的財産権は親事業者に帰属することとしている。

この場合も3条書面にその旨記載する必要があるか。」

という設問に対して、

「A. 下請事業者に知的財産権が発生する場合,「給付の内容」に含めて当該知的財産権を親事業者に譲渡させるのであれば,給付の内容の一部として3条書面に記載する必要がある

また,その場合には,当該知的財産権の譲渡・許諾に係る対価を下請代金に加える必要がある。」

と回答されています。

私は、これは間違いだと思います。


複数の発注に共通する事項(共通事項)を3条書面とは別途通知する方法については、下請法3条1項の委任を受けた3条書面規則(「下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則」)4条で、

「第1条第1項各号に掲げる事項〔注・3条書面記載事項〕が一定期間における製造委託等について共通であるものとしてこれを明確に記載した書面によりあらかじめ下請事業者に通知されたときは,

当該事項については,その期間内における製造委託等に係る法第3条の書面への記載は,その通知したところによる旨を明らかにすることをもって足りる。」

と規定されています。

下請法運用基準第3の1(1)でも、

「(1) 3条書面に記載すべき事項は,「下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則」(以下「3条規則」という。)第1条第1項に定められており,親事業者は,これらの事項について明確に記載しなければならない。

親事業者は,製造委託等をした都度,3条規則第1条第1項に定められた事項(以下「必要記載事項」という。)を3条書面に記載し,交付する必要があるが,

必要記載事項のうち,一定期間共通である事項(例:支払方法,検査期間等)について,

あらかじめこれらの事項を明確に記載した書面により下請事業者に通知している場合には,

これらの事項を製造委託等をする都度交付する書面に記載することは要しない。

この場合,当該書面には,「下請代金の支払方法等については○年○月○日付けで通知した文書によるものである」等を記載することにより,当該書面と共通事項を記載した書面との関連性を明らかにする必要がある。」

と、同様の記載があります。

つまり、共通事項を別途通知する方法は、法律上も運用基準でも明確に認められているのです。

なのに、知的財産の帰属だけ別に扱う理由はありません。

令和3年11月版下請法講習テキストをみても、

「Q29: 継続的に運送を依頼している役務提供委託の取引において,契約書を3条書面とすることは問題ないか。それとも,契約書を取り交わしていても,別途,個々の運送を委託するたびに3条書面を交付する必要があるか。

A: 契約書の内容が,3条書面の具体的な必要記載事項(下請代金の額については算定方法を記載することも可)を全て網羅していれば,個別の役務提供のたびに3条書面を交付する必要はない。」(p30)

「Q32: 長期継続的な役務取引の場合には,年間契約を締結し,その後1年ごとの自動更新としている場合があるが,

この契約書が3条書面の必要記載事項を網羅している場合,1年ごとに契約書を改めて交付する必要はあるか

A: 契約書中の3条書面に記載すべき必要記載事項に変更がなければ,改めて交付する必要はない

なお,このような場合には,委託代金(下請代金の額)などについて,別途の書面で定めている場合もあると考えられ,別途の書面がある場合は当該書面を代金改定時などに随時交付するとともに,相互の関連付けが明らかになるようにする必要がある。」

というように、共通事項を通知する書面は契約書でもいいことが明らかにされていますし、同テキスト93頁の、

「下請代金支払遅延等防止法第 3 条に規定する書面に係る参考例」

の冒頭では、

「親事業者と下請事業者の間で取り交わされる契約書等の内容が,3条規則で定める事項を全て網羅している場合には,当該契約書等を3条書面とすることが可能であるので,別に書面を作成する必要はない。」

と、契約書に必要な記載がなされていればわざわざ別の書面を作って通知する必要はないことが明らかにされています。

というわけで、Q19は無視してかまいません。

ただ、当局のウェブサイトに書いてあるのに一弁護士が反対のことを言っているからと言って、正面切って逆らいにくい、という場合には、Q19の質問に、

3条書面に記載する必要がある。」

とあるのは、3条書面に直接記載する場合だけでなく、3条書面では契約書に言及する文言を記載(紐付け)しつつ、実際の文言は契約書に書かれている場合でも「3条書面に記載」しているのだ、という解釈をすれば辻褄は合うと思います(文言解釈的には相当無理がありますが)。

いずれにせよ、こういう明らかな間違いは、早く訂正してほしいものです。

2022年9月19日 (月)

下請に対する損害賠償請求の制限に関する下請振興基準第4の2⑶の規定について

2022年7月に改正された下請振興基準の第4の2⑶では、

「親事業者、自ら納品された物品等の検査を行い、又は書面等により委任して下請事業者に物品等の検査を行わせ、当該検査を合格とした場合であって、

その後、親事業者の納入先等からの指摘により当該物品等の引取り、やり直し又は損害賠償を行うこととなったときは、

当該物品等の不具合の有無及びその原因を明らかにし、

その引取り、やり直し又は損害賠償に必要となる人員の手当、金銭の支払い等について、親事業者がすべてを負担せず下請事業者にも負担を求めることの必要性及び合理性の有無を、

十分に確認するものとする。

親事業者は、下請事業者にも当該負担を求めることとなる場合には、

親事業者、下請事業者それぞれが当該物品等に係る納品により得た取引対価を勘案しつつ、

下請事業者と十分に協議を行い、

親事業者及び下請事業者双方が合理的な割合で負担するものとし、

一方的に下請事業者に引取り、やり直し又は損害賠償を負担させないものとする。」

という規定が追加されています。

もともと振興基準には法的拘束力はありませんので、無視しても構わないのですが、パートナーシップ構築宣言をしていたりするとこの規定も守らなければならず、そういう意味では、実務上のインパクトはけっこう大きいのではないかという気がします。

というのは、下請の商品に瑕疵があった場合に損害賠償請求しても下請法に違反しないのか、というご質問はしょっちゅう受けるからです(結論としては、違反しません)。

要するにこの規定が言っているのは、仮に納品物に瑕疵(隠れた瑕疵を含む。)があっても、いったん合格して引き取った以上、親事業者は下請事業者に全額の損害賠償をできず、双方の取引対価を勘案して負担を分担しなければならない、ということです。

これは、いくつかの点で驚きです。

まず、隠れた瑕疵(検査で発見できない瑕疵)であっても、親事業者は下請事業者に全額の損害賠償をできない、ということです。

この結論は、上記引用部分で、隠れた瑕疵かどうかを区別していないことからあきらかです。

むしろ、検査に合格したということは、発見できなかった可能性の方が高く、むしろそちらを念頭に置いているとさえ言えます。

次に驚きは、やり直しだけでなく、損害賠償請求もできないとしていることです。

下請法では、やり直しも一定の条件で認められており、損害賠償請求については一切制限がありません。

それに比べて、振興基準は親事業者にとても厳しいものになっています。

ポイントは、

「それぞれが当該物品等に係る納品により得た取引対価を勘案」

しつつ、

「双方が合理的な割合で負担する」

としている点です。

もしこれが、「合理的な割合」だけなら、下請事業者が100%負担することが「合理的」な場合なんて世の中にはいくらでもありますから(むしろ私の経験ではそのようなケースが大半です)、100%下請事業者に負担させることも問題ないことになりますが、「それぞれが当該物品等に係る納品により得た取引対価」を勘案するとしているので、そうもいかなさそうです。

では、「それぞれが当該物品等に係る納品により得た取引対価」とは何でしょう。

まず、下請事業者にとっての「当該物品等に係る納品により得た取引対価」は、親事業者に納品した物品の対価として受け取る下請代金の額のことでしょう。

問題は、親事業者にとって「当該物品等に係る納品により得た取引対価」とは何か、です。

ここでは、

「当該物品等に係る納品により得た取引対価」

というように、「係る」というあえてあいまいな言葉を用いていることがポイントです。

これは、親事業者にとっては、下請事業者から納品を受けた物品等を使って作った製品を顧客に販売して得た対価という意味に解するほかないと思われます。

たとえば、ある自動車部品メーカー(下請事業者)が、ある部品を1個1万円で自動車メーカー(親事業者)に販売し、親事業者は、その部品を使って自動車を完成させ、顧客(ディーラーは単純化のために無視して、消費者をイメージします)に200万円で販売したとします。

このとき、下請事業者にとっての「当該物品等に係る納品により得た取引対価」は、「当該物品等納品により得た取引対価」の意味であり、部品代1万円です。

これに対して、親事業者にとっての「当該物品等に係る納品により得た取引対価」は、「当該物品等〔部品〕に関連して行われた納品により得た取引対価」という意味であり、完成車の代金200万円です。

ここでもし、下請事業者の部品に欠陥があって、リコールが必要になり、リコール代に1台10万円かかったとしましょう。

この10万円のリコール代を両者でどのように分担すべきかというと、親:下=200:1で分担せよ、よって、親=10万×(200÷201)≒9万9500円、下=10万×(1÷201)≒500円、ということになりそうです。

これはあまりにも親事業者に酷な結論に思われますが、振興基準を素直に読むとこう解せざるを得ません。

このように解しない方法としては、

「親事業者、下請事業者それぞれが当該物品等に係る納品により得た取引対価を勘案しつつ」

というのは、あくまで「勘案」するだけなので、取引対価の割合で按分することまでは常に求められていない、と考えることです。

まあそれが「合理的」だとは思いますが、ではいったいなぜ「当該物品等に係る納品により得た取引対価 」という、意味のよく分からない表現が用いられたのか、ますますよくわかりません。

この点について、パブコメ44番では、

「・下記を削除いただきたい。

「親事業者は、下請事業者にも当該負担を求めることとなる場合には、親事業者、下請事業者それぞれが当該物品等に係る納品により得た取引対価を勘案しつつ、下請事業者と十分に協議を行い、親事業者及び下請事業者双方が合理的な割合で負担するものとし、一方的に下請事業者に引取り、やり直し又は損害賠償を負担させないものとする。」

・全体が長過ぎるため、規定内容がより明確になるよう、箇条書きに変更いただきたい。

・理由

改正案では、下請事業者に帰責性があると認められる隠れたる瑕疵等を原因とした、やり直しや損害賠償を求める場合においても、責任を一部免除されるような内容になっている。責任の範囲は、事案の内容に応じて都度協議すべきものであるが、常時、取引対価の大小に応じた双方負担を前提とすべきと解釈されるような表記は適切ではない。」

という質問に対して、

「改定案第4 2 (3)の前段では、

「当該物品等の不具合の有無及びその原因を明らかにし」、「親事業者がすべてを負担せず下請事業者にも負担を求めることの必要性及び合理性の有無を、十分に確認するものとする」と規定しているに過ぎず、

ご意見の理由にあるところの下請事業者の「責任を一部免除されるような内容」となっているものではありません

また、下請事業者にも負担を求めることとなった場合について、

「下請事業者と十分に協議を行い、親事業者及び下請事業者双方が合理的な割合で負担するものとし」と規定しており、

ご意見の理由に書かれている「事案の内容に応じて都度協議すべきもの」という考え方と共通するものとなっています。

また、規定案は、「親事業者、下請事業者それぞれが当該物品等に係る納品により得た取引対価を勘案しつつ、下請事業者と十分に協議を行い、親事業者及び下請事業者双方が合理的な割合で負担するものとし」と規定しており、

ご意見の理由にあるような「常時、取引対価の大小に応じた双方負担を前提とすべき」と解釈されるような表記となっているものではございません

このため、削除する理由がないと考えます。

また、たとえば、幾つかの事例が文章中に存在しているのであれば、当該事例を箇条書きとすることもありえますが、本規定については、箇条書きとすることによって規定内容が必ずしもより明確となるわけではないと考えます。

このため、原案のとおりといたします。」

と回答されています。

端的に言えば、隠れた瑕疵で親事業者にまったく責任がない場合も下請の責任が一部免除されるのは不当ではないかとの質問に対して、そのような場合は責任の一部免除はされないし、常時取引対価で按分するわけでもない、と回答されているわけです。

(ただし、私には、質問の意味はよくわかりますが、回答の意味はまったくわかりません。)

ということは結局、100%下請事業者に負担させてもいいということになります。

それだったらいったいなぜ改正案のような規定ぶりにしたのかますます意味不明ですし、パブコメ回答まで辿らないとほんとうの意味がわからないというのでは、いったい何のための振興基準なのか、という気がしますが、中小企業庁にしてみればたぶん、「法律の条文じゃないんだからこまかいこと言いなさんな」というくらいの感覚なのでしょう。

というわけで、この規定は実務的には無視してかまわないと思います。

2022年9月18日 (日)

転注に関する下請振興基準の記述について

2022(令和4)年7月29日、下請振興基準が大幅に改正されました。

その中にはいくつも気になる点があるのですが、まず大前提として、下請振興基準には何ら法的拘束力はないということは、改めて声を大にして申し上げておきます。

そのことは中小企業庁のQ&A9番に、

「Q9.振興基準の内容について、違反した場合に行政処分や罰則はありますか。

下請中小企業振興法に基づく振興基準は、下請中小企業の振興を図るため下請事業者及び親事業者のよるべき一般的な基準を定めたものであり、振興基準に定める事項について、主務大臣は、下請事業者又は親事業者に対し指導・助言を行うことがあります。

ただし、指導・助言は行政指導であって、振興基準に違反した場合の行政処分や罰則はありません。」

と明記されていることから明らかです。

そこで今回の本題ですが、今回の改正で、第4の1⑴に「〔取引対価の協議に関する望ましくない事例〕」というのが加わり、その中に、

「③ もともと転注するつもりがないにもかかわらず、

競合する他の事業者への転注を示唆して殊更に危機感を与えることにより、

事実上、協議をすることなく

親事業者が意図する取引対価を下請事業者に押し付けること。」

というのが加えられました。

これを見て思い出すのが、優越的地位の濫用ガイドラインの対価の一方的決定における、

「(イ) 他方,

①要請のあった対価で取引を行おうとする同業者が他に存在すること等を理由として,

低い対価又は高い対価で取引するように要請することが,

対価に係る交渉の一環として行われるものであって,

その額が需給関係を反映したものであると認められる場合・・・

など取引条件の違いを正当に反映したものであると認められる場合には,

正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず,優越的地位の濫用の問題とはならない。」

という記述です。

これは、価格交渉における一種のセーフハーバーといえる、非常に重要な規定です。

この、「要請のあった対価で取引を行おうとする同業者が他に存在すること」というのは、まさに、転注の可能性を伝えていることにほかなりません。

そうすると、優越的地位濫用ガイドラインでは転注の可能性を伝えることは問題ないとされているのに、下請振興基準ではさも問題あるかのように記載されていることになり、両者の整合性をどう考えればいいのかが問題になりそうです。

まず大前提として、優越的地位濫用ガイドラインはガイドラインとはいえそれに違反すれば公取委は独禁法違反が成立すると考えているものであるわけですから、ほとんど法律と同じ効果があるといえます。

これに対して前述のとおり下請振興基準は何ら法的拘束力はありませんので、そもそも両者を並べて論じること自体ナンセンスだ、と割り切ってしまうのも一つの考え方だと思います。

もう少し説明すると、下請振興基準の上記引用部分(③)はあくまで「〔取引対価の協議に関する望ましくない事例〕」の1つであり、上記③に該当していても「望ましくない」だけであって、振興基準の違反(?)ではない、と考えられます。

さらにもう少し考えると、振興基準上記引用部分③は、

「③ もともと転注するつもりがないにもかかわらず」

というのが要件になっています。

なので、転注するつもりが少しでもあれば、この③には該当しません。

さらに、

「競合する他の事業者への転注を示唆して殊更に危機感を与える

ことが要件になっているので、「殊更に危機感を与える」ようなやり方でなければいいことになります。

「殊更」とは、

「そこまでする必然性はないのに、意図するところがあってそうする様子。」(『新明解国語辞典』)

なので、「危機感を与える」必然性があればかまわないことになります。

しかしながら、他に発注する可能性を示すことで取引相手方に危機感を与えることは価格交渉の常道ですから、「危機感を与える」ことが「殊更」である(必然性がない)ということも、まともなビジネスの感覚ではあり得ないのではないかと思います。

さらに、

「事実上、協議をすることなく

というのも要件です。

ここで注意が必要なのは、

「競合する他の事業者への転注を示唆して殊更に危機感を与えることにより

事実上、協議をすることなく、」

とされているので、「殊更に危機感を与える」ことが即「事実上、協議をすることなく」とみなされるのではなく、危機感を与えることは手段であり(「により」)、さらに「事実上、協議をすることなく」という要件が必要だ、ということです。

最後の、

「親事業者が意図する取引対価を下請事業者に押し付けること。」

の「押し付ける」というのは、法律の条文ではありえないような、なんとも生ぬるい表現なので、ただのポエム、あるいは陳腐なレトリックとして無視して構わないでしょう。

(もともと振興基準は法的拘束力がないので、生ぬるくても、ポエムでも、レトリックでもかまわないのですけれど。)

というわけで、振興基準上記③は、実際の適用場面ができるだけ狭くなるように、かなり注意して書かれていると思います。

また、そうしないで、転注の可能性を伝えるだけで違反だということになると、上で引用した優越ガイドラインのセーフハーバーと矛盾してしまいます。

ところが、振興基準上記③をぼーっと読むと、あたかも転注の可能性を伝える(「競合する他の事業者への転注を示唆」)だけで、「殊更に危機感を与える」ことになり(転注の可能性を伝えられて危機感を持たない下請がいるでしょうか?)、それは必然的に「事実上、協議をすることなく」(協議拒否)とみなされ、違反になるのだ、と勘違いしかねないのではないかと思います。

ただ、重要な違いは、優越ガイドラインのセーフハーバーは、「要請のあった対価で取引を行おうとする同業者が他に存在すること」が要件です。

なので、そんな価格で取引する同業者がいないのに転注の可能性を示唆すると、振興基準上記③に反する、と言われるかもしれません。

そして、そんな価格で取引する同業者がいないということは、必然的に、「もともと転注するつもりがない」という要件を満たしてしまうでしょう。

というわけで、やっぱり、嘘をついてはいけない(そんな価格で引き受けてくれるところはほかにはなく、転注しようにもできないのにブラフを言ってはいけない)、ということです。

逆に言うと、振興基準上記③が言っているのは、「嘘をついてはいけない」ということに尽きます。

それが、「望ましくない」というのは、当たり前と言えば当たり前です。

ただし、実際に価格交渉をしている方々からすれば、交渉は腹の探り合い、だまし合いであり、あっさりだまされる方が悪いのだ、ということなのかもしれませんし、私はそれを悪いこととも思いません。

だからこそ、「望ましくない」というだけなのかもしれません。

ですが、この、「嘘をついてはいけない」ということから、「転注の可能性を伝えてはいけない」というところまでは、ものすごい距離があると思います。

そのあたりを誤解しないようにしないといけません。

ところが、中小企業庁のいくつかの文書をみると、これを誤解させよう(印象操作しよう)としているフシが見えます。

まず、そもそも、2022(令和4)年5月24日の第16回中小企業政策審議会経営支援分科会取引問題小委員会の資料として配布された振興基準の改正案(事務局案?)では、上記③は、

「③ 競合する他の事業者への転注を示唆すること等を手段として用いることにより、見積価格の引下げを下請事業者に押し付けること。」

という、とんでもない内容になっていました。

これでは、転注を示唆したら即アウトとなり、前述の優越ガイドラインのセーフハーバーと真正面から反してしまいます。

ちなみにこの原案は、パブコメ開始後に(!)成案と同じものに修正されていることが、パブコメ回答(「「下請中小企業振興法第3条第1項の規定に基づく振興基準」の改正(案)に関する意見募集の結果について」。ちなみに同文書の「令和3年7月」という日付は「令和4年7月」の誤記と思われます。)28番の、

「ホームページでお示ししておりますが、パブリック・コメントの手続開始後に修正し、修正後の案を改めてお示ししております。

当該修正案では、

「もともと転注するつもりがないにもかかわらず、競合する他の事業者への転注を示唆して殊更に危機感を与えることにより、事実上、協議をすることなく、親事業者が意図する取引対価を下請事業者に押し付けること。」

としており、

転注の意思がないにもかかわらず転注を示唆することで、親事業者が意図する取引対価を押し付けることを望ましくない事例としています。

実際に転注の可能性を考慮に入れた上での価格交渉と転注自体を否定するものではないため、修正後の原案のとおりといたします。」

という回答から読み取れます。

パブコメ開始後に案を修正するなんて、ぐだぐだ感が半端ないですね💦

ともあれ、「実際に転注の可能性を考慮に入れた上での価格交渉と転注自体を否定するものではない」ことが明確にされたことは、喜ばしい限りです。

それでも、中企庁の2022年5月24日付「振興基準改定案について(説明資料)」という文書では、

「⑴後段 「客観的な経済合理性及び十分な協議手続を欠く協議」の事例として、以下の事例を明示し、「行わないものとする」と規定。(❶)

①目標価格のみを提示し、それと辻褄の合う見積りを要請

②過度に詳細な見積もりを要請し、下請事業者の利幅を探る

下請事業者に転注を示唆する等の手段で、見積価格の引下げを押し付ける

④競合他社が要請していないことや、自社の取引先が認めないことを理由とした協議拒否

(※Gメン調査結果を反映)」

と、しつこく、転注を示唆すること自体が禁止されているかのように記載されています。

ですが、これはパブコメ開始時の旧原案(?)に基づく説明であり、成案にはあてはまらないことは、上述の点から明らかです。

でもきっと、中企庁(の少なくとも一部の担当官)はこの「(説明資料)」の線で執行しようとしてくる可能性がありますから、要注意です。

ほかにも、中小企業庁の令和4年2月10日付「価格交渉促進月間フォローアップ調査の結果について」(※令和4年7月19日一部訂正)では、「<下請Gメンヒアリングによる生声>」(ちなみに、「生声」(なまごえ?)というのは、

「謡などで、稽古をつんでいない生地(きじ)の声」(『広辞苑』)

という意味なので、「生の声」の誤記と思われます。公文書はポエムではありませんから、正しい日本語を使いましょう。)として、

「▲原材料価格やエネルギーコストの上昇を踏まえ、度々、下請代金の値上げを要請しているが受け入れられていない。当社における当該
事業者の売上シェアが高いが故に、転注、失注を恐れるがあまり、強い価格交渉が出来ない面もある。」(金属)

「▲海外価格との競合になっており、常に転注リスクがあるので、値上げ交渉は過去10年以上していない。業界でも聞いた事がない。」(化学)

「▲原材料の上昇分ですら価格交渉が難しい状況で、労務費(最低賃金)やその他のコスト上昇分について交渉することはできない。業界的に横並びの意識が強く、自社だけ交渉を行うと転注されたり納入比率を下げられたりすることを懸念している。」(紙・紙加工)

「▲原材料等が高騰しても、採算割れの限界までは社内の努力で耐えている。転注が恐いので、なかなか価格交渉が出来ない。」(建材・住宅設備)

「▲各製品毎に価格の目安を提示され、これに合わせるよう要求される。できなければ転注すると言われるため、応じざるを得ない。」(建材・住宅設備)

「▲原材料が大幅に上がっている製品については、価格改定の要望を認めてもらえたものの、親事業者の方から転注をほのめかされた。」(素形材)

「▲新規受注時に一方的に毎年数%程度のコストダウンをコミットさせられ、毎年自主的にコストダウンするかのような書面を提出させられる。

以前、原材料費の価格交渉を申し出たところ、「転注する」とおどされた。部品のなかには原材料費は上昇しているのに、数十年以上も価格が変わってないものもある。」(自動車・自動車部品)

「▲業界団体や経営陣には取引適正化という取組は認識しているかもしれないが、親事業者の調達担当者は自社の利益を優先した旧態依然で交渉にあたっており、下請事業者の言葉に耳を貸さない。また、こちら(下請事業者)からも転注が怖くて言い出せない。」(自動車・自動車部品)

「▲見積の都度、労務費の上昇分を価格に転嫁したい旨交渉するが、安い事業者があり転注を示唆してくるので強気で交渉できず受け入れて貰えない。購買担当者は、原価に対して理解がない。担当者の多くは作業品質について理解しておらず、単に価格のみを追っている。」(印刷)

「▲価格交渉は行える状況になく、下請代金へは反映できていない。1クルー、番組時間の単価が10年以上変わっていない。同業他社が相場価格を下回る価格を提示していることもあり、価格交渉を申し出た場合に、他社に転注され取引がなくなるおそれがある。」(放送コンテンツ)

「▲原材料価格の値上がりが続いており、値上げしたいが転注を懸念し、限界まで値上げ交渉を申し入れることができない。」(建設)

「▲設計~見積書の提出~納品まで期間が長いもので3年にもなり、その間に原材料価格が上昇しても再見積もりが認められず、実際の原材料価格が下請代金に反映できない場合が多い。原材料価格の上昇により再見積もりを求めた場合に転注される恐れがある。」(建設)

といった転注に関する記載のオンパレードであり、転注をほのめかすことがいけないかのような印象を与えるためにいかに中企庁が必死であるかがわかります。

しかし、私に言わせれば、転注や取引量の削減をほのめかさないで、どうやって価格交渉するのか、という気がします。

このように、旧原案からパブコメ開始後に案を修正までしたのに、亡霊のように「転注の示唆は望ましくない」という示唆が公取や中企庁からなされるおそれがあるので、発注者のみなさんは十分注意してください。

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