景表法

2025年10月14日 (火)

牡蛎販売イベントでの二重価格表示に対する措置命令について

2025年10月10日に、消費者庁は、LH株式会社に対して、二重価格表示で措置命令を出しました

消費者庁リリースによると、違反事実は、

「例えば、令和7年2月22日から同年5月13日までの間、「出張カキ小屋 牡蠣奉行」と称するウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)の「出張カキ小屋『牡蠣奉行』inメガセンタートライアル店2025年3月7日~30日開催」と称するページに掲載したチラシにおいて、「旬の東北のカキを特別価格でご提供!!」、「復興支援価格!!」及び「宮城県産 カキ一盛り(約1kg) ※焼きガキ用 通常価格1,320円(税込)→880円(税込)」と表示するなど、別表2「表示期間」欄記載の期間に、同表「表示媒体・表示箇所」欄記載の表示媒体・表示箇所において、同表「表示内容」欄記載のとおり表示することにより、

あたかも、「通常価格」と称する価額は、「出張カキ小屋 牡蠣奉行」と称するイベントにおいて本件料理について通常提供している価格であり、実際の提供価格が当該通常提供している価格に比して安いかのように表示していた。」

のに、実際には、

「遅くとも令和6年9月13日以降に開催した「出張カキ小屋 牡蠣奉行」と称するイベントにおいては

本件料理を880円又は660円で提供しており、「通常価格」と称する価額で提供した実績はなかった。

ということです。

この事件では、「「通常価格」と称する価額で提供した実績はなかった。」ということなので、二重価格表示の事例でよくみられる、「最近相当期間にわたって提供された実績のないものであった」(例、2024年12月17日デザインワードに対する措置命令)という認定にはなっていません。

それ自体は当然といえば当然なのですが、そこで気になるのが、この種の短期イベントで8週間ルールが適用されるのか、ということです。

この事件で問題になったイベントは、「2025年3月7日~30日開催」という、短期間のイベントであったことからすると、さすがに8週間ルールはその適用の前提を欠くように思われます。

かといって、命令に「「通常価格」と称する価額で提供した実績はなかった。」と書いてあるからと言って、その反対に、実績が(少しでも)あれば不当な二重価格表示にならないのかというと、そんなこともないでしょう。(当該事案において、実績がなかったので実績がないと認定しているだけであって、実績が少しでもあればOKとい意味ではないでしょう。)

でもそうすると、どれくらいの実績があればOKだったのかが、よくわかりません。

命令では、「令和6年9月13日以降に開催した「出張カキ小屋 牡蠣奉行」と称するイベントにおいて」実績がなかった認定されているので、同種の過去のイベントでの実績が問題になるような書きぶりに見えますが、イベントという売り方の性質上、消費者は、個々のイベントを別々のものと認識するように思われます。

そうだとすると、「通常価格」と言ったからといって、過去の同名称のイベントでの実績があった価格であるとは認識しないようにも思われ、そうすると、消費者庁の認定はおかしい気もします。

さらに言えば、「通常価格」が過去の同名称イベントの実績だと認識されないのであれば、はたして本件が有利誤認表示といえるものだったのか、根本的な疑問が生じます。

本件ではたまたま同名称イベントで実績がまったくなかったので、こういう粗い認定でも文面上あきらかにおかしいと見えるような命令にはなっていませんが、若干なりとも実績があったら、8週間ルールがない前提では、どのように判断するのか、興味深いものがあります。

仮に消費者庁が、8週間ルールの適用を念頭に本件を摘発していたとしたら(それもありえそうな話ですが)、それはおかしいと思います。

というのは、「2025年3月7日~30日開催」という表示だけで、2025年3月6日以前には価格云々以前の問題として、そもそも販売されていないことがほぼ明らかだからです。

もう1つ気になるのは、本件が確約になっていないことです。

日経新聞の10月11日の記事によれば、

「同社の担当者は取材に「市場の相場などと比較して表示していたが、不勉強だった。指摘を真摯に受け止め、再発防止を図る」とコメントした。」

とのことです。

もし「通常価格」が市場の相場だったとしたら、実質的には、ぜんぜん実害はないように思います。

そもそも消費者は、この種の短期イベントで、過去の同名称イベントでの価格での実績を気にしているとは考えにくいからです。

市場の相場よりも安ければ、それで十分でしょう。

少なくとも、確約1号案件のcaname(2025年2月26日確約認定)の、期間限定で入会金を値引きするかのように表示していたほうが、ずっと悪質だと思います。

措置命令になると課徴金も出るわけですし、その差は大きいと思います。

確約は建前からすると消費者庁の側から当事者に打診するものなので、仮に当事者が言ってこなくても、「確約がありますよ」くらいは、行ってあげても良かったのではないでしょうか。

代理人が付いていなかったらなおさら教えてあげるべきでしょうし、代理人が確約というものを知らなかったとしても、やっぱり、教えてあげるのが親切というものでしょう。

この事件で確約にならないというのが、どうも納得がいきません。

(ひよっとしたら、確約を申請するのが手間だとか、弁護士費用がよけいに掛かるとかいう理由で、かつ、課徴金も大したことないという判断で、あえてなりゆきにまかせたのかもしれません。それくらいしか、確約にならない理由が思い当たりません。)

あと、この種の短期イベントのような、典型的な小売店での販売でなく、8週間ルールの適用があるのか(ないとしたらどのようなルールが適用されるのか)よくわからない事例において、どう対応したらいいのかというと、要は、比較対照価格がどういう価格なのかを注記しておけばよいのです。

価格表示ガイドラインp6では、

「過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合に、同一の商品について最近相当期間にわたって販売されていた価格とはいえない価格を比較対照価格に用いるときは、

当該価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるか等その内容を正確に表示しない限り

一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある」

とされており、逆に言えば、比較対照価格が「当該価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるか等その内容を正確に表示」していれば、有利誤認表示にはならない、ということです。

ですので、本件でも、「通常価格」のところに、「市場の相場を当社で調べた価格」などと表示しておけばよかったのです。

必ずしも、同名称のイベントでの実績が要求されるわけではありません。

というか、むしろ原則は、比較対照価格の「内容を正確に表示」することであり、8週間ルールはそのような表示がない場合にはじめて問題になるものであることを忘れてはいけません。

2025年10月 5日 (日)

SNSコメント引用に関するステマガイドライン第2・2⑴キの注の解決?

前回、ステマガイドライン第2・2⑴キの、

「(注) ただし、上記キについては、

客観的な状況に基づき、事業者のウェブサイトの一部について第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は、

当該ウェブサイトの一部のみをもって当該事業者の表示とされないことを示すものであって、

当該ウェブサイトの一部を含めたウェブサイト全体が当該事業者の表示とされることは当然にあり得る。

なお、この場合、当該ウェブサイト全体は、通常、当該事業者の表示であることが明らかであるといえる。」

という注の意味について考えてみて、結局結論が出ませんでした(汗)。

その後さらに考えてみて、きっとこういうことではないか、という仮説を思いつくに至りました。

ポイントは、注の文言は無視して、パブコメだけを頼りに解釈する、ということです。

おさらいすると、パブコメのコメント(質問)のほうでは、第三者のコメント欄が広告に当たらないとすると、コメントに虚偽の表示があっても優良誤認表示にならないことになって問題ではないか、という至極全うな指摘がされました。

これに対する消費者庁回答は何を言っているか意味不明で、注も意味不明なのですが、ともかく、このコメント(質問)で指摘された原案の問題点を糊塗するために、この注が挿入された、と読むのです。

そうすると、この注は何を言っているのかというと、優良・有利誤認表示を念頭に、

「客観的な状況に基づき、事業者のウェブサイトの一部について第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合」

であっても、優良・有利誤認表示との関係では

「当該ウェブサイトの一部を含めたウェブサイト全体が当該事業者の表示とされることは当然にあり得る。」

ということを言っているのだ、と解釈すると、いちおう、パブコメの質問には答えていることになります。

「当然に」とあえて強調しているのは、

「このガイドラインはステマのガイドラインなので、優良誤認表示のことを考えているわけないじゃないか。そんな場合に優良誤認表示になるのは当然でしょ。」

という、立案担当者の心の叫びだとみるべきでしょう。

ここで、

「当該ウェブサイトの一部のみをもって当該事業者の表示とされないことを示すものであって、」

の部分が完全にすっ飛ばされていますが、この部分が何をしたかったのかというと、キを原案から維持したにもかかわらず、第三者のコメント欄(「事業者のウェブサイトの一部」)が優良誤認表示にならないことは矛盾しないのだ(矛盾すると思いますが・・・)というように無理矢理つなげたかったのだ、ということであろうと推測されます。

この、無理矢理つなげる感は、

「・・・の場合は、・・・ことを示すものであって、・・・が・・・とされることは当然にあり得る。」

という、接続語(?)だけをつなげて、「流れ」(?)を重視して読み直すと、雰囲気は伝わります。

繰り返しますが、この注は文字どおり読んでも理解できません。

その「心」を読み取るべきなのです。(なんというガイドラインでしょう!)

そして、最後の、

「なお、この場合、当該ウェブサイト全体は、通常、当該事業者の表示であることが明らかであるといえる。」

というのは、何を言いたいのかというと、

「この注で問題にしているのは優良誤認表示のことなので、ステマのPR表記の有無(=「当該事業者の表示であることが明らかである」かどうか)なんて、当たり前すぎて問題になりませんよ。」

ということなんだろう、と推測されます。

ここで、

「この場合」

というのが、どの場合なのかが問題となります。

(こそあど言葉って、とくに法律の文書を読むときは大事です。というより、そこに疑義を生まないように書くことが大事です。)

ふつうに読むと、一番ありそうなのは、

「当該ウェブサイトの一部を含めたウェブサイト全体が当該事業者の表示とされる〔場合〕」

ということでしょう。

でもそう読むと、

「当該ウェブサイトの一部を含めたウェブサイト全体が当該事業者の表示とされる場合、当該ウェブサイト全体は、通常、当該事業者の表示であることが明らかであるといえる。」

となりますが、これでは、その表示が「事業者の表示」(広告)である場合には通常「事業者の表示」(広告)であることが明らか、という意味になってしまい、そんなことを言ってしまうとそもそもステマ規制がなりたたなくなります。

表示該当性(表示主体性)と、判別困難性は、別の話です。

でも、これほど理屈の通らないガイドラインを読んでいると、もうそんな理屈をこねる気にもなりません。

そこでさらに、文言を無視して、とにかく立案担当者の心中を慮ると、「この場合」というのは、「優良・有利誤認表示を問題にする場合」という意味だと読むと、すっきりします(論理的にも解釈論的にも無茶苦茶なので、あくまで気分だけの、しかもちょびっとだけの、すっきり感ですが)。

表示主体性が認められて、かつ、広告判別困難性も認められて始めて成立するのがステマであり、表示主体性はほとんど問題にならず内容だけが問題になるのが優良・有利誤認表示であるとはいえ、論理的には、表示主体性はいずれでも問題になるものです。

それが、注の立案担当者の頭の中では、表示主体性が両者の共通要件だという発想が欠けていて、ステマと優良・有利誤認表示は別だ、と考えられているのだと推測されます。

ほんとうに、おそろしいことです。。。

というわけで、注を書き直すと、

「(注) ただし、上記キについては、

客観的な状況に基づき、事業者のウェブサイトの一部について第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は、

当該ウェブサイトの一部はステマには該当しないのであって、

当該ウェブサイトの一部を含めたウェブサイト全体が優良・有利誤認表示とされることは当然にあり得る。

なお、優良・有利誤認表示を適用する場合、当該ウェブサイト全体が当該事業者の表示であることはあたりまえなので論点にもならないといえる。」

といったところでしょうか。

ステマだけが見える「ステマメガネ」と、優良・有利誤認表示だけが見える「優良・有利誤認表示メガネ」をかけ替えるイメージでしょうか。

そのバージョンで修正すると、

「(注) ただし、上記キについては、

客観的な状況に基づき、事業者のウェブサイトの一部について第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は、

ステマメガネで見ると、当該ウェブサイトの一部当該事業者の表示とされないことを示すものであって、

優良・有利誤認表示メガネで見ると、当該ウェブサイトの一部を含めたウェブサイト全体が当該事業者の表示とされることは当然にあり得る。

なお、優良・有利誤認表示メガネで見る場合、当該ウェブサイト全体は、通常、当該事業者の表示であることが明らかであるといえる。」

といったところでしょうか。

半分茶化しているようですが、こういうメガネのかけかえを無意識にしている(あるいは、無意識に色眼鏡で見ている)ことは、おうおうにしてありがちなので、注意しないといけません。

今回は、分かりにくい比喩で恐縮ですが、ユークリッド幾何学の前提で話を聞いていたら珍紛漢紛だったのが、ロバチェフスキー幾何学の前提での話だったことがわかった、というのに似た知的スリルを感じずにはおられません(松田克進『スピノザ学基礎論』p35参照)。もちろん、皮肉です。

(最後に余談ですが、この松田克進『スピノザ学基礎論』は、スピノザの『エチカ』がちょっとわかった気になる、というか、なぜわからないのかがわかる、秀逸な書籍です。ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』のようなガチガチに論理的な読み方をしていて上記(注)が理解できなかったのが、今回なんとかこういうことだろうと推測できたのは、同書のおかげです)。

2025年10月 2日 (木)

SNS自社サイト引用に関するステマガイドラインの記述について

ステマガイドライン第2・2⑴キ(p6)では、

「キ 事業者が自社のウェブサイトの一部において、第三者が行う表示を利用する場合であっても、

当該第三者の表示を恣意的に抽出すること

(例えば、第三者のSNSの投稿から事業者の評判を向上させる意見のみを抽出しているにもかかわらず、

そのことが一般消費者に判別困難な方法で表示すること。)

なく、

また、当該第三者の表示内容に変更を加えること

(例えば、第三者のSNSの投稿には

事業者の商品等の良い点、悪い点の両方が記載しであるにもかかわらず、

その一方のみの意見を取り上げ、

もう一方の意見がないかのように表示すること。)

なく、そのまま引用する場合。」

が、

「事業者が第三者の表示に関与したとしても、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められるものであれば、事業者の表示には当たらない。」

ことの例としてあげられています。

そして、キの(注)では、

「(注) ただし、上記キについては、

客観的な状況に基づき、

事業者のウェブサイトの一部について第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は、

当該ウェブサイトの一部のみをもって当該事業者の表示とされないことを示すものであって、

当該ウェブサイトの一部を含めたウェブサイト全体が当該事業者の表示とされることは当然にあり得る。

なお、この場合、当該ウェブサイト全体は、通常、当該事業者の表示であることが明らかであるといえる。」

とされていますが、この注は何回読んでも意味がわかりません(苦笑)。

そこで、その謎を解こうというのが、今回のお題です。

まず、直感的にわかりやすくするために、上記(注)において、

「当該事業者の表示」→「当該事業者の広告」、

「当該ウェブサイトの一部」→「『SNSで話題』欄」、

と置き換えると、上記注は、

「(注) ただし、上記キについては、

客観的な状況に基づき、

『SNSで話題』欄について第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は、

『SNSで話題』欄のみをもって当該事業者の広告とされないことを示すものであって、

『SNSで話題』欄を含めたウェブサイト全体が当該事業者の広告とされることは当然にあり得る。

なお、この場合、当該ウェブサイト全体は、通常、当該事業者の広告であることが明らかであるといえる。」

となります。

まず、上記(注)がわかりにくい理由は、

「(注) ただし、上記キについては、

客観的な状況に基づき、

事業者のウェブサイトの一部について第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は、

当該ウェブサイトの一部のみをもって当該事業者の表示とされないことを示すものであって・・・」

という部分に主語がないからでしょう。

「表示とされ」という受動態を用いていることからすると、その前に主語があってもよさそうなものですが、それが(明示的には)ないのです。

日本語の文章の主語は、ふつう、助詞「は」または「が」(ときどき「も」)の前にあります。

お役所の公文書なら、なおさらです。

でも、上記引用部分の「表示され」より前の部分には、「は」も「が」も「も」もありません。

そこで、「のみをもって」が助詞「は」「が」「も」の代わりを担っているのではないかと疑われます。

そして、ガイドラインパブコメ104番(p67)回答では、

「御指摘については、事業者が第三者の表示をそのまま加工することなく利用する場合に限って、

当該第三者の表示の箇所についてのみ

『第三者の自主的な意思による表示と客観的に認められる場合』〔=非広告〕

となることを記載したものです。

そのため、当該箇所以外の事業者のウェフサイトの表示について、当該事業者の表示主体性が否定されるものではありません。

ただし、御指摘について、文意を明確化するために修正いたします。」

とされており、「当該第三者の表示の箇所についてのみ(≒が)」「第三者の自主的な意思による表示と客観的に認められる場合」であるとの説明がされていて、「当該第三者の表示の箇所」が、「・・・認められる」の主語であろうことがわかります。

「について」を助詞「は」「が」の代わりに用いて主語を作ることは、インフォーマルな日本語としては許されるレベルかと思いますが、いずれにせよこれも、ゆるい日本語の書き方だと思います。

そして、ガイドラインの起草者が、このようなゆるい日本語を使う人であることを想定すると、「のみをもって」を「が」の代わりに使うかもしれない、ということも、十分想定されるように思われます。

これを踏まえて上記注(言いかえ版)を書き換えると、

「(注) ただし、上記キについては、

客観的な状況に基づき、

『SNSで話題』欄第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は、

『SNSで話題』欄当該事業者の広告とされないことを示すものであって、

『SNSで話題』欄を含めたウェブサイト全体が当該事業者の広告とされることは当然にあり得る。

なお、この場合、当該ウェブサイト全体は、通常、当該事業者の広告であることが明らかであるといえる。」

となります。

これでだいぶすっきりしたように思いますが、それでも何がいいたいのか、(これだけでは、ある意味当たり前すぎて)よくわかりません。

そこでやはりパブコメに戻ってみると、コメント104番は、

「第2の2(1)ア(力)〔注・原案では、「第2・2⑴キ」は、「第2・2⑴ア(カ)」でした。〕

「事業者が自社のウェブサイトにおいて、第三者が行う表示を利用する場合であっても、

当該表示を恣意的に抽出(略)せず、

また、第ー者の表示内容に変更を加えること(略)なく、

そのまま引用する(略)場合」

には、当該事業者が「表示の肉容の決定に関与した」とは言えないとのことです。

その場合に、当該ウェブサイト上で、当該事業者の供給する商品について、第三者が、一般消費者に著しく優良であると誤認される表示や著しく有利であると誤認される表示をした場合にも、当該事業者は「表示の内容の決定に関与した」とは言えず、優良誤認表示や有利誤認表示をしているとは判断されないのでしょうか。

仮に優良誤認表示や有利誤認表示に該当する可能性がある場合は、追記してはいかがでしょうか。おとり広告運用基準でも、おとり広告該当性のみならず有利誤認表示該当性について触れられていますし、形式的には可能と考えますがいかがでしょうか。」

というコメントでした。

要は、「第三者のコメントをありのまま自社サイトに引用するのが広告にあたらないとすると、そのコメントに優良誤認の内容が含まれていても事業者は責任を負わないことになり、不当ではないか。」というコメントです。

あきらかにプロの手によると思われる、きわめて鋭い指摘です。

そこで、上記(注)がこのようなコメント(第三者のコメントの引用であっても内容が虚偽であれば優良誤認になるべきというコメント)に対する対応であるとすると、上記(注)は、第三者のコメントの引用の内容が虚偽であれば優良誤認表示になる、という趣旨だ、と読むのが自然でしょう。

(ただし、パブコメ回答者が104番のコメントを正しく理解できていて、かつ、コメントに正面から答えようとしたことを前提とします。)

そういう目線でもう一度104番の、

「御指摘については、事業者が第三者の表示をそのまま加工することなく利用する場合に限って、

当該第三者の表示の箇所についてのみ

『第三者の自主的な意思による表示と客観的に認められる場合』〔=非広告〕

となることを配載したものです。

そのため、当該箇所以外の事業者のウェフサイトの表示について、当該事業者の表示主体性が否定されるものではありません。

ただし、御指摘について、文意を明確化するために修正いたします。」

という回答を読みでみたのですが、やっぱり、この回答自体が104番のコメントの疑問に答えていません。

というか、104番のコメントを理解していません。

というのは104番のコメントは、前述のとおり、「第三者のコメントをありのまま自社サイトに引用するのが広告にあたらないとすると、そのコメントに優良誤認の内容が含まれていても事業者は責任を負わないことになり、不当ではないか。」というものです。

これに対して、

「当該第三者の表示の箇所についてのみ

『第三者の自主的な意思による表示と客観的に認められる場合』〔=非広告〕

となることを配載したものです。」

と答えてしまったのでは、

「当該第三者の表示の箇所についてのみ、非広告となることを配載したものです。」

ということになってしまい、「当該第三者の表示の箇所」(=「SNSで話題」欄)は広告ではない、つまり、優良誤認表示にならない、ということを正面から認めてしまったことになるからです。

さすがに消費者庁も、そんなばかな解釈は採らないと思いますが、それでも、パブコメ104番回答は、そのようにしか読めません。

では、104番回答はパブコメ質問をどのように理解してキの修正と(注)の追加をしたのでしょうか。

そのカギは、キの修正箇所を見るとわかります。

キの原案は、

(カ) 事業者が自社のウェブサイトの一部において、第三者が行う表示を利用する場合であっても、

当該第三者の表示を恣意的に抽出すること

(例えば、第三者のSNSの投稿から事業者の評判を向上させる意見のみを抽出しているにもかかわらず、

そのことが一般消費者に判別困難な方法で表示すること。)

なくせず

また、当該第三者の表示内容に変更を加えること

(例えば、第三者のSN Sの投稿には事業者の商品等の良い点、悪い点の両方が記載しであるにもかかわらず、

その一方のみの意見を取り上げ、もう一方の意見がないかのように表示すること。)

なく、そのまま引用する

(例えば、第三者の表示であることが判別できる方法で表示する。)

場合。」

というものでした。

ちょっとわかりにくいですが、太線が原案オリジナル部分(つまり成案では消された部分)、見え消しが成案追加部分(原案にはなかった部分)です。

そうすると、原案から成案への実質的な変更は、冒頭の「事業者が自社のウェブサイトの一部」のところの、「の一部」を追加しただけだ、ということがわかります。

(「(例えば、第三者の表示であることが判別できる方法で表示する。)」は、あくまで例示なので、論理的にはあってもなくてもいいので、本質的な変更ではありません。)

そこから逆算すると、消費者庁回答は、104番コメントを、キが、「事業者のウェブサイトの全部」について表示主体性を否定しているように読めるのではないかというコメントだと理解(誤解)して、そのような疑義(以下「一部・全部問題」といいます。)を解消するために、「自社のウェブサイトの一部」という文言を追加したもだろうと推測できます。

そのような理解に立てば、(注)(改変版)の、

「(注) ただし、上記キについては、・・・

『SNSで話題』欄が第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は、

『SNSで話題』欄は当該事業者の広告とされないことを示すものであって、

『SNSで話題』欄を含めたウェブサイト全体が当該事業者の広告とされることは当然にあり得る。

なお、この場合、当該ウェブサイト全体は、通常、当該事業者の広告であることが明らかであるといえる。」

というのも、たんにこの「一部・全部問題」に対応しただけ(104番のコメントには対応していない)だということがわかります。

しかも、そもそも、

「『SNSで話題』欄は当該事業者の広告とされない」・・・①

というのと、

「『SNSで話題』欄を含めたウェブサイト全体が当該事業者の広告とされることは当然にあり得る。」・・・②

というのと、

「この場合、当該ウェブサイト全体は、通常、当該事業者の広告であることが明らかであるといえる。」・・・③

との関係も、よくわかりません。

一見すると、①と②は広告該当性、③は認識困難性のことを言っているように見えます。

でも、そうすると、①(「SNSで話題欄」は広告非該当)と②(ウェブサイト全体は広告該当の可能性あり)というのが、矛盾しているようにみえます。

これを矛盾なく説明するとすれば、「ウェブサイト全体」というのを、

「広義のウェブサイト全体(『SNSで話題』欄を含む。)」

「狭義のウェブサイト全体(『SNSで話題』欄を含まない。)」

の2とおりに理解して、

①(「SNSで話題欄」は広告非該当)では狭義のウェブサイトを想定し、

②(ウェブサイト全体は広告該当の可能性あり)では広義のウェブサイトを想定している、

という解釈が思い浮かびますが、結局、「SNSで話題」欄が広告に該当しない(①)と言い切っているわけですから、②とは両立しないように思われます。

しかも、

「この場合、当該ウェブサイト全体は、通常、当該事業者の広告であることが明らかであるといえる。」・・・③

というのが、これを文字どおりに読むと、「SNSで話題」欄には、「PR」表記は不要、ということになってしまいかねません。

なぜなら、「当該事業者の広告であることが明らか」である場合は、「PR」表記がなくても認識困難性の要件をみたさず、ステマにならないからです。

ただし、104番のコメントの質問の問題意識に③が答えているものだとすると、③が言いたいのは、「SNSで話題」欄に虚偽の内容があれば優良誤認表示が成立するのはあきらか(なぜなら、当該ウェブサイト全体が「当該事業者の広告であることが明らか」なので)、ということなのかな、という気もします。

でもそのような読み方は、控えめに言って③とまったく合致していません。

というわけで、キの(注)は、どのように考えてみても理解不能です。

以上のとおり、本日のミッションは失敗に終わりました(苦笑)。

こんな失敗記事をブログに載せてどうするんだという気もしますが、ほかの人が同じ轍を踏まないようにする、という意義はあるように思われます。

実務的な意義としては、キの注にはこういうわけのわからんことが書いてあるだけだということを踏まえて、無視するほかないと割り切るべき、ということでしょう。

少なくとも、

「この場合、当該ウェブサイト全体は、通常、当該事業者の広告であることが明らかであるといえる。」・・・③

というのを真に受けて、インフルエンサーにお金を払って書いてもらった記事を自社サイトに転載しない(転載するときは「PR」と表記する)、という対応が必要と思われます。

(真に受けない、というのは要するに、無視する、ということです。)

あるいは、キを文字どおりに受け取って、第三者のコメントを自社サイトにそのまま転載した場合には「事業者の表示には当たらない」のだから優良誤認表示にはあたらないのだ(だから内容のチェックは不要なのだ)などと、間違っても考えてはならない、ということだと思います。

2025年9月26日 (金)

味の素のステマ確約に対する疑問

9月19日に味の素ほか1社がステマ告示違反で確約認定を受けました。

被疑事実は、

「2社は、「あえて、」と称する冷凍宅配食(以下「本件商品」という。)を共同して一般消費者に販売するに当たり、

第三者に対し、本件商品の無償提供を条件に、

本件商品に関して「Instagram」と称するSNSへの投稿を依頼したことによって当該第三者が投稿した表示を、

例えば、令和6年5月10日から同年8月6日までの間、

本件商品の販売サイトの「使ってみた方の感想 Instagramでの投稿レビュー」との表示箇所等において抜粋するなどして表示していた。」

というものです。

確かに、商品を無償提供して投稿依頼をした投稿を自社サイトに「PR」等の表記をしないで引用したらステマになるというのは、法律論としてはいたしかたないと思いますが、摘発の優先度としていかがなものかと思います。

というのは、広告主の自社サイトに引用されているコメントであれば、広告主に有利なコメントだけが引用されていることは、誰の目から見てもあきらかだからです。

あえて自社に不利なコメントを自社サイトに載せるなんてことは、ありえないでしょう。

(似たようなことは、チョコザップの措置命令について以前も書きました。)

YoutubeとかSNSとかECサイトのレビュー欄では、きっと今でも、ステマ(サクラ)がいくらでもあると推測されます。

そういう、一見公平なレビューに見えるのに実はステマだ、というのが一番問題なわけです。

ところが、消費者庁の過去のステマの事件をみてみると、そういったステマの本丸のような事件がほとんどありません。

というか、こういう、SNS投稿の自社サイト引用のパターンばかりです。

2024年8⽉のチョコザップの事件、2024年11⽉の⼤正製薬の事件、2025年3月のロート製薬の事件、みんなそうです。

唯一、2024年6月の医療社団法人祐真会のグーグルマップ投稿依頼事件が、一見公平なレビューに見えるステマという意味では、ステマの本丸だと言えなくもないですが、クリニックというのは地理的市場が限定されており、ステマ規制がほんらい想定していたインターネットでのやらせレビューのような事例に比べると、かなり小粒です。

消費者庁にしてみたら、SNS投稿の自社サイト引用は、ステマであることが一見して明白で、かんたんに「一丁上がり」という感じで命令の数を稼げる「おいしい」事件なのだということでしょう。

そうではなくて、ステマかどうか、調査報道のように地道に調査して、ほんとうに悪い奴らを捕まえるのが、大事だと思います。

景表法は独禁法などと違って、違反であることが明々白々な事件が多く、密室で違反行為が行なわれるということはあまりありませんでした。

でも、ステマはそうはいきません。

一番問題の大きい、ほんらいのステマは、広告主が裏でこっそりインフルエンサーなどにお金を渡しているわけです。

消費者庁は今まで、そういう隠れた事件を掘り起こすノウハウはなかったと思いますが、ステマはそれではいけないと思います。

「隠れた事件」とはいっても、独禁法のカルテルなどに比べれば、まだ、怪しそうな表示のあたりは付けられるわけで、ほんとうに密室で完結しているわけでもありません。

なのに、これだけSNS投稿引用型ばかりだと、不健全な執行だと言わざるを得ません。

法律を作ったら思わぬところにスポットライトが当たってびっくりすることはときどきあり、同じような事象として、消費税転嫁法で自動販売機の販売手数料がなぜか集中的に摘発されたことがありました。

そういうのは往々にして、重箱の隅をつつくような事件になりがちです。

でも、そういう運用に甘んじていて委はいけないと思います。

今後は消費者庁も、「SNS投稿引用型を1件摘発したら、まともなステマも1件摘発する」くらいの内部基準を作って調査されてはいかがかと思います。

2025年9月14日 (日)

ジャパネットたかたのおせちに対する措置命令についての疑問

消費者庁は2025年9月12日に、ジャパネットたかたのおせちに関する表示が、違法な将来価格の二重価格表示であるとして、措置命令を出しました

私は、この措置命令は間違っていると思います。

理由を一言で言えば、おせちという商品の性質上、セール期間中に売り切れた場合には、セール中に買えた消費者はむしろ、「買えてラッキーだった。」と思うはずであって、「セール後に通常価格で売らなかったから損した。」とは思わないからです。

措置命令の問題の個所は、

「⑷ア ジャパネットたかたは、本件商品を一般消費者に販売するに当たり、

令和6年10月8日から同年11月23日までの間、

自社ウェブサイト(別添写し)において、

「【2025】特大和洋おせち2段重」、「ジャパネット通常価格29,980円が」、

1万円値引き 7/22~11/23」、「値引き後価格19,980円(税込)

及び「~大人気おせちが今ならお得!~早期予約キャンペーン」

と表示することにより、

あたかも、

ジャパネット通常価格は、本件商品について同年7月22日から同年11月23日までのセール期間経過後に適用される将来の販売価格であり、

値引き後価格が当該将来の販売価格に比して安いかのように表示していた。

イ 実際には、本件商品について、当該将来の販売価格で販売される合理的かつ確実な販売計画はなかったものであり、

ジャパネット通常価格は将来の販売価格として十分な根拠のあるものとは認められないものであった。」

という部分です。

この、「合理的かつ確実な販売計画はなかった」という部分は、将来価格ガイドライン(「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」)p2の、

「事業者が自己の供給する商品等について、将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行うと、当該表示を見た一般消費者は、通常、比較対照価格とされた将来の販売価格に十分な根拠がある、すなわち、セール期間経過後に、当該商品等が比較対照価格とされた価格で販売されることが予定されており、かつ、その予定のとおり販売されることが確実であると認識すると考えられる。

したがって、事業者が、比較対照価格とされた将来の販売価格で販売する確実な予定を有していないにもかかわらず、当該価格を比較対照価格とする二重価格表示を行うと、このような消費者の認識と齟齬が生じ、景品表示法に違反する有利誤認表示となるおそれがある。〔中略)

また、事業者が「確実な予定」を有しているか否かについては、当該事業者が、将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う際に有している販売計画の内容等に基づいて判断されるところ、

「確実な予定」を有していると認められるためには、

事業者が、セール期間経過後に比較対照価格とされた将来の販売価格で販売するための合理的かつ確実に実施される販売計画(以下、単に「合理的かつ確実に実施される販売計画」という。)を、セール期間を通じて有している必要がある(注1)」

という部分です。

しかしながら、これは消費者庁のたんなる「執行方針」であり、法律上は何の根拠もありませんし、通常の意味でのガイドラインですらありません。

訴訟になると、裁判所は、この手のガイドラインがパブコメを経て制定されたものであるから合理的なのだとか、小手先の形式論で合理性を認めたりしがちですが、パブコメの内容が合理的でも当局は原案を修正する義務もなく、パブコメを経ているから合理的だというのは眉唾です。

実際、将来価格ガイドライン案のパブコメでも、数々の説得力のあるコメントが付されていますが、消費者庁は全部切り捨てています。

そもそも、将来価格ガイドラインの上記引用部分の、

「事業者が自己の供給する商品等について、将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行うと、当該表示を見た一般消費者は、通常、比較対照価格とされた将来の販売価格に十分な根拠がある、すなわち、セール期間経過後に、当該商品等が比較対照価格とされた価格で販売されることが予定されており、かつ、その予定のとおり販売されることが確実であると認識すると考えられる。」

という部分が、おせちのような商品の場合を考えると、極めて疑問です。

意識高い系の一部の消費者はそうなのかもしれませんが、はたしてふつうの一般消費者が、「セール期間経過後に、当該商品等が比較対照価格とされた価格で販売されることが予定されており、かつ、その予定のとおり販売されることが確実である」なんて、認識するのでしょうか?

いかにも、頭のいいお役人さんが作った基準だといわざるをえません。

仮に「予定のとおり販売されることが確実である」というような認識をするとすれば、コンスタントに販売されてあたりまえの商品でしょう。

そのような商品が世の中には多いことは確かですが、それが当てはまらない商品もいくらでもあるでしょう。

たとえば、将来価格ガイドラインp7に、

「 I通信販売業者が、

「エアコン ただ今限りのセール特価38,000円 8月以降48,000円」

との表示を5月から開始していたところ、

セール開始後の気温上昇による一般的な需要増の結果、売行きが増加して在庫が売り切れたが、追加仕入れをしなかったため、セール期間経過後の8月以降にエアコンを販売しなかったとき。」

という例があげられていますが、これなどは、エアコンなんていくらでも仕入れればいいので、通販業者が在庫が売り切れたのに追加仕入れをしなかったというのは、最初から追加仕入れするつもりがなかったんだろう、というニュアンスがにじみ出ています。

しかも、8月なんてまだ暑い盛りですから(昨今であれば、9月とか、ひょっとしたら10月でもまだエアコンが必要でしょう)、「8月以降48,000円」と表示しておきながら8月以降売らない、ということ自体、不自然です(まあ不自然な例をガイドラインに載せるのが適切なのかという問題はありますが、それは措きます)。

でも、おせちの場合は工業製品ではないわけですから、原材料の確保とかいろいろ大変なはずであり、予定よりも売れたからこまめに追加発注というわけにはいかないでしょう。

ジャパネットの9月12日付プレスリリースでも、

「当社は、⼀括⼤量仕⼊れによって在庫リスクを負い、メーカー様と共に企業努⼒を重ねることで、⾼品質な商品をお求めやすい価格でご提供することを基本⽅針としております。」

とされており、エアコンみたいにこまめに追加発注というわけにはいかないことがうかがえます。

ただ、同プレスリリースでは、

「上記の基本⽅針に沿った当社のビジネスモデルは、通常の店舗やECサイトと⼤きく異なるものであり、今回の消費者庁の指摘に関しては、本当にお客様のことを考えた判断であると到底思えません。」

ともされており、同社のビジネスモデルが通常とは異なるものであることが強調されていますが、私はこの点については、通常の店舗やECサイトでも、程度の差はあれど、おせちの場合はエアコンみたいに売切れたら追加発注というわけにはいかないんじゃないかと思っています。

いずれにせよ、ここでの景表法上の論点は、ジャパネットのビジネスモデルが本当に通常の店舗やECサイトと異なる特殊なものだったかということではなく(そんなことは消費者には見えませんから)、消費者からみておせちという商品がエアコンみたいに売切れたらこまめに追加発注できるものななかどうか(それによって消費者が、二重価格表示に対してどのような認識を抱くのか)、という点です。

そうすると、消費者は、おせちは売切れることもふつうにある、と認識していると思います。

また、売切れた場合、仮にその欠品が短期間であっても、おせちはお正月に届かないと意味がありませんから、欠品したら再補充というのは現実的ではなく、消費者もそのくらいは認識していると思います。

要は、「合理的かつ確実に実施される販売計画」という基準は、エアコンみたいな、いつでも補充がきく商品の場合にはありうる基準かもしれませんが、売り切れによる補充が容易ではないおせちのような商品の場合には、そもそも基準として妥当ではない、ということです。

別の切り口からいえば、「合理的かつ確実に実施される販売計画」の基準だと、将来価格の二重価格表示は、将来に確実に販売されることを保証する表示だ、という意味になりますが、それは行き過ぎだ、ということです。

将来価格の二重価格表示はむしろ、

「将来販売されるとしたら、この価格(比較対照価格)だ。」

という意味だととらえるほうが自然です。

そして、コンスタントに販売されて当たり前なエアコンのような工業製品の場合には、事実上、「としたら」の部分が、かぎりなく、「ときには」になる(と消費者は認識する)、というだけのことだと思います。

それに、エアコンのような工業商品なら、仮にお客さんがお店に行ったときに一時的に在庫切れであっても、遅くとも数週間後には手に入るのが通常でしょう。

でも、おせちだと数週間後に手に入っても意味がない可能性があるわけだし、そもそも消費者は売切れの可能性を十分認識しているはずです。

にもかかわらず、おせちのような商品の将来価格の二重価格表示に対して消費者が、

「将来確実のこの価格で販売されるはずだ。」

と認識するというのは、現実を無視した机上の空論だと言わざるを得ません。

消費者が認識するのは、せいぜい「この価格で」の部分であって(「販売されるとしたら、この価格で」)、「販売されるはず」の部分ではない(将来価格の二重価格表示に、将来確実に販売されることの期待までは抱かない)、ということです。

なので、消費者が、おせちは売切れるかもしれない(し、売切れたあとの追加はない)と認識しているのであれば、セール期間中に売り切れてセール期間後に販売がなかったとしても、怒るはずがありません。

だって、(繰り返しますが)売切れて補充がないこと(あるいは、補充をしていたらお正月に間に合わないこと)を予想できるからです。

むしろ、売切れた場合には、「買えてよかった。得した。」と感じるのが、通常ではないでしょうか。

つまり、エアコンの場合は、「エアコン ただ今限りのセール特価38,000円 8月以降48,000円」という表示をすれば、「今だから1万円引きで買えるんだ。お得だな。」と思っていたのが、セール後も38,000円で買えたらだまされたと思うでしょう。

それが将来価格の二重価格表示の典型例です。

それに対して、セール期間後に「在庫が売り切れたが、追加仕入れをしなかった」なんていうのは、あったとしてもむしろ例外的でしょうし、その場合に消費者が「だまされた!」と思うかというと、ちょっと疑問です。

それでも、いくらでも追加で仕入れができるはずのエアコンをあえて追加仕入れしないところにうさん臭さがただようので、そんなうさん臭いやつを野放しにはできないという感情に訴えることで、なんとかガイドラインの事例として「もっている」のだと思います。

これに対しておせちの場合は、当然売り切れもありうるし、うさん臭くもなんともない、ということです。

もし街角を歩く消費者に、この事件を説明して、

「ジャパネットはセール期間後に販売する合理的かつ確実に実施される販売計画がなかったので、不当表示だと思いますか?」

というアンケートをしたら、大半が、

「は?(意味わかんない)」

となるのではないかと思います。

もう少しかみ砕いて、

「セール期間中に売り切れてしまったのですが、どう思いますか?」

とアンケートしても、せいぜい、

「売切れないようにちゃんと作れ。(買えない人がかわいそうじゃないか。)」

という反応だと思います。

でも、この、

「売切れないようにちゃんと作れ。(買えない人がかわいそうじゃないか。)」

という反応は、

「セール期間中に買った人を二重価格表示でだましてけしからん」

という答えとは、まったくことなります。

もちろん、二重価格表示が不当表示だと言えるために必要なのは、

「セール期間中に買った人を二重価格表示でだましてけしからん」

という一般消費者の反応のほうです。(でも、そんな反応は、まずありえなさそうです。)

つまり、将来価格ガイドラインの考え方は、少なくともジャパネットの事件に関するかぎり、まったく失当です。

不当表示において大事なのは、消費者著のガイドラインではありません。町ゆく一般消費者の、常識的な感覚です。

そもそも、景表法5条2号では、

「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」

と規定されているだけで、「合理的かつ確実に実施される販売計画」なんて、どこにも書いていません。

極論すれば、消費者庁が勝手に言っているだけです。

それぞれの事案をよく見て、「著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」かどうかを考えないといけません。

そして、虚心坦懐に、将来価格ガイドラインはないものとして、5条2号を読めば、本件が「著しく有利」と誤認される事案だとは、誰も思わないと思います。

実は将来価格表示ガイドラインのパブコメp7にも、

「本執行方針案においては、消費者の認識は「セール期間経過後に、当該商品等が比較対照価格とされた価格で販売されることが予定されており、かつ、その予定のとおり販売されることが確実である」、実態は「事業者が、比較対照価格とされた将来の販売価格で販売する確実な予定を有していない」と整理されている。

本執行方針案は、この消費者の認識と実態の違い(翻醐(そご))を捉えて、景晶表示法上の誤認と考えているものと解される。しかしながら、この「翻臨(そご)」は、景晶表示法の「取引条件についての誤認」とはいえないことから、事業者が、合理的かつ確実に奥施される販売計画がないことをもって有利誤認表示に該当するとすることは、行き過ぎである。

セール期間が終わるまでは取引条件に係る消費者の誤認は発生していないので、セール期聞が終了するまで、事業者の表示を有利誤認表示に当たると判断することはできない仮に、本執行方針案のように、販売計画がないことをとらえて景晶表示法で規制しようとするのであれば、景晶表示法第5条第3号に基づき、新たな不当表示の類型を指定することを要する

仮に、事業者がセール開始時に確実な販売計画を有していない場合であっても、(さらには、予告していたような債上げを実行することを全然予定していない場合であっても、)セール期間終了と同時に方針を変更し、予告していたとおりに値上げを実行すれば、消費者の誤認は生じない。このように考えれば、販売計画の有無で有利誤認表示への該当性を決することの誤りは明らかである。」

というコメントがついていて、今あたらめて読み直すと、消費者が騙されたと感じるのは、セール終了後にセール期間と同じ価格で売られていたことを認識したときである(「セール期間が終わるまでは取引条件に係る消費者の誤認は発生していない」)、ということを言っているのだと理解できます。

(ちなみにこのコメントをされた方と意見交換させていただく機会があり、本来出されたコメントをご本人から見せていただきましたが、上に引用した消費者庁の公表版では大事な部分がはしょられていて、わかりにくいコメントになっており、原コメントのほうが、ずっとわかりやすいです。わたしもかつで消費者庁のガイドラインにパブコメを出したことがありますが、いちばん言いたい肝心なところを勝手に書き換えられたことがありました。そのときは消費者庁のたんなる凡ミスかと思いましたが、こういう例をみると、消費者庁はパブコメの内容を、とくに痛いところを突かれていればいるほど、意図的に改変しているのではないかと疑いたくなります。もし意図的な改変ではなく、長文のパブコメを短くまとめただけなのだ、ということなのであれば、要点を理解してまとめる能力のある方にパブコメを担当してほしいと思います。)

私は上記パブコメを見たときは、

「そうはいっても、不当表示かどうかは不当表示の時点で確定してないといけないのだから、「事業者の表示を有利誤認表示に当たると判断することはできない 」というのは、さすがに無理じゃないかなぁ」

と思いました。

不当表示かどうかは、不当表示行為の時点で確定しているはずであるという、いわば、「要件同時充足のドグマ」とでもいうべき発想です。

でも、このジャパネットの事件を見ていて、まさに上記コメントの「セール期間が終わるまでは取引条件に係る消費者の誤認は発生していない 」というのと、実質的には自分も同じことを言っている(消費者が騙されたと思うのは、セール終了後にセール価格で売られていた時だ)ことに気づかされます。

それでも、刑法の197条2項(事前収賄罪)みたいに、

「2  公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、5年以下の懲役に処する。」

と、条文上「公務員となった場合」というのが客観的処罰条件として規定されているわけではない景表法5条2号の場合には、どうしても「要件同時充足のドグマ」を捨てるのは勇気が要ります。

でも、本件のような事例に「合理的かつ確実に実施される販売計画」という基準を適用すると、この基準が、いかに「要件同時充足のドグマ」にとらわれていて(しかもある意味で、それにとらわれていることを認識できないほどに、深くとらわれていて)、将来価格の二重価格表示の実態(消費者が騙されたと思うのは、セール終了後もセール期間で売られている場合であって、合理的な計画の有無には無関心であるという実態)に目を向けていないのかが、よくわかります。

なので、あらためて、

仮に、本執行方針案のように、販売計画がないことをとらえて景晶表示法で規制しようとするのであれば、景晶表示法第5条第3号に基づき、新たな不当表示の類型を指定することを要する 」

と言われると、「きちんと実態に目を向けていて、確かに正論だなぁ」という気がしてきます。

つまり、「合理的かつ確実に実施される販売計画」という基準は、「要件同時充足のドグマ」を所与の前提としたうえで、将来価格の二重価格表示を不当表示とするためにどうすればよいかと考えて立てられた、きわめて技巧的な基準だ、ということです。

こういう技巧的な基準であっても、立案担当者はどういう場合を想定して作った基準かを理解しているので、おせちみたいな「買えてラッキー」みたいな商品が出てくると、「さすがにおせちにこの事案を適用するのはまずいんじゃないか」という直感がはたらくので、措置命令を打つところまではいかないことが期待できるのですが、あとに続く人たちはそういう立案担当者の悩みも知らないでしゃくし定規に基準を適用してしまう、ということが容易に想像されます。

いったん基準ができてしまうと、それがしゃくし定規に適用される傾向があることは、似たような事件が将来価格ガイドラインの前にはどのように考えられていたのかをみるとわかります。

つまり、平成30(2018)年3月16日のジュピターショップチャンネルに対する措置命令では、テレビショッピングのあとで販売実績がないために、期間限定セールの表示が、不当表示とされました。

命令の関連部分を引用すると、

「⑷ア ジュピターショップチャンネルは、本件32型テレビを一般消費者に販売するに当たり

(ア)a 平成28年12月9日に、CS放送又はBS放送を通じて放送したショップチャンネルにおいて、同日に実施した「オールスター家電祭 2016冬」と称するセール企画として

(a) 「<49%OFF!> 明日以降 ¥192,240  ¥97,800」と、実際の販売価格に当該価格を上回る「明日以降」と称する価額を併記した映像(別添写し1)を放送することにより

(b) 別表2「表示内容」欄記載の音声を放送することにより

あたかも、「明日以降」と称する価額は、本件32型テレビについて当該セール企画終了後に適用される通常の販売価格であって

実際の販売価格が当該価格に比して安いものであり、

かつ、本件32型テレビに係るジュピターショップチャンネルの実際の販売価格は、同日時点において他の販売事業者では通常設定できない安いものであるかのように表示していた。

b 実際には、当該セール企画に係る本件32型テレビの販売は、平成28年12月9日に開始されたところ、

本件32型テレビが当該セール企画終了後に販売される期間は3日間のみであって、ごく短期間のみ「明日以降」と称する価額で販売するにすぎず、

当該価額での販売実績もジュピターショップチャンネルにおいて実質的に問われないものであって、

将来の販売価格として十分な根拠のあるものとは認められず、

かつ、同日時点において、本件32型テレビをジュピターショップチャンネルと同程度又は下回る価格で販売する他の販売事業者が複数存在していた。

(イ)a 平成29年1月2日から同月7日までの間、CS放送又はBS放送を通じて放送したショップチャンネルにおいて、平成28年12月30日から平成29年1月7日までの間に実施したセール企画として、

「期間限定:12/30~1/7 <48%OFF!> 期間以降 ¥192,240 ¥99,800」と、

実際の販売価格に当該価格を上回る「期間以降」と称する価額を併記した映像(別添写し2)を放送することにより、

あたかも、「期間以降」と称する価額は、

本件32型テレビについて当該セール企画終了後に適用される通常の販売価格であって、

実際の販売価格が当該価格に比して安いかのように表示していた。

b 実際には、当該セール企画に係る本件32型テレビの販売は、平成28年12月30日に開始されたところ、

本件32型テレビが当該セール企画終了後に販売される期間は3日間のみであって、

ごく短期間のみ「期間以降」と称する価額で販売するにすぎず、

当該価額での販売実績もジュピターショップチャンネルにおいて実質的に問われないものであって、

将来の販売価格として十分な根拠のあるものとは認められない。」

というものでした。

このように、将来価格ガイドラインの前は、「当該セール企画終了後に販売される期間は3日間のみ」だったとか、「当該価額での販売実績もジュピターショップチャンネルにおいて実質的に問われないもの」であったとか(その意味は今一つよくわかりませんが。。。)、「同日時点において、本件32型テレビをジュピターショップチャンネルと同程度又は下回る価格で販売する他の販売事業者が複数存在していた」とか、有利誤認を基礎づける事情を、その事例に即して、なんとかひねり出そうとしていたことがうかがえました。

でも、ジャパネットのおせちの事件では、そんな悩みは微塵もなく、ガイドラインどおりの「実際には、本件商品について、当該将来の販売価格で販売される合理的かつ確実な販売計画はなかった」というだけの理由しか書いてありません。

その意味するところは、ガイドラインどおりで、要は、「天変地異でもない限り、絶対表示通りの価格で売れ(欠品なんて許さない)」ということでしょう。

また、あらためてジュピターショップチャンネルの事件とジャパネットたかたの事件を比較すると、ジュピターの悪かったところは、もともと売る気もないのにセール後に通常価格で販売するかのように表示していたことだということがわかります。

もし売る気があったら、もちろん売れたでしょう。

だって、ただのテレビですから。

これに対して、ジャパネットたかたの場合、「売る気もないのにセール後に通常価格で販売するかのように表示していた」なんてことは、およそありえなさそうです。

実際、NHKのウェブサイトの9月12日付の、

おせち料理販売で不当表⽰かジャパネットに措置命令消費者庁

という記事によると、

「グループ会社の「ジャパネットホールディングス」は、コメントを発表し、「2022年と2023年は、キャンペーンの終了後に通常価格で販売していて、去年については、キャンペーン期間内に完売したもので、不当な『⼆重価格表⽰』には当たらない」などと反論しました。」

ということのようです。

つまり、「売る気もないのに・・・」ということでは全然なくて、2022年と2023年よりも2024年はちょっと順調に売れた、というだけのことでしょう。

ちなみにこの点についてはジャパネットのプレスリリースの該当部分も引用しておくと、

「2022年、2023年は同キャンペーン終了後に通常価格で販売をしております。

2024年も同様の販売計画でしたが、期間内に完売した時点で販売を終了しております。

お客様に安くご購⼊いただける機会を公平に設けており、表⽰の正当性を失うものではないと考えております。

また、早期予約キャンペーンの企画において、キャンペーン終了後に購⼊できなかったという事実は企画の趣旨に沿ったもので、お客様に誤解を与えてはいないと考えております。」

とされています。

この、

早期予約キャンペーンの企画において、キャンペーン終了後に購⼊できなかったという事実は企画の趣旨に沿ったもの

という部分は、早期キャンペーン企画ではキャンペーン期間中に売り切れてしまうことがむしろ企画の望ましい、あるいはほんらいの姿だ、ということで、この点も、本件の本質を突いていると思います。

つまり、将来価格ガイドラインが想定しているのは、「今だから安くなるよ。セールが終わったら高くなるから、今買わないと損だよ。」という表示をして顧客を誘引するものでしょう。

ジャパネットが言うのは、本件おせちのキャンペーンでは、「今買わないと損だよ」という訴求はしていない、ということでしょう。

そうではなくて、「今、キャンペーンやってるから、今買わないと、売切れるかもしれないよ。」ということでしょう。

またその前提として、同社のプレスリリースでは、

「消費者庁のガイドラインでは「過去に販売した価格」を⽐較対照に⽤いることが認められています。

当社はこれに則り、キャンペーン直前まで「通常価格29,980円」で販売しており、表⽰に適切な根拠があったと認識しております。」

とされています。

つまり、29,980円は、将来の比較対照価格ではなく、過去の比較対照価格だ、ということです。

比較対照価格が過去の価格なのか将来の価格なのかは微妙な問題です。

この点はパブコメ回答1頁でまさに、

「ここにいう「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示」とは、各事例にあるように「〇月〇日からは△円になります」と将来の販売価格を明示した場合に限るのか。

当店通常販売価格〇〇円、10月31日まで△△円」と表示したとき、

消費者は、11月1日以降は通常販売価格である〇〇円に戻ると認識することから、

このような場合も将来の販売価格を比較対照価格とするこ重価格表示になるのではないか。

また、このような表示をして、セール期間を過ぎても価格を戻さない場合は、将来の販売価格を明示して比較対照価格とするこ震価格表示と同棟の問題が生じるのではないか。」

という質問が出ていて、これに対して消費者庁は、

「御指摘のような表示は、一般的には過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示と考えられますが、

当該表示が行われている具体的な状況によっては、将来の販売価格を比較対照価格として暗示した二重価格表示でもあるとみられる可能性もあります。

したがって、不当な価格表示についての景晶表示法上の考え方(以下「価格表示ガイドライン」といいます。)及び本執行方針に基づき個別に判断・取り扱われることとなります。」

と回答しています。

私はこの回答をみたときは、「こんなこと言って、大丈夫かぁ?」と、正直びっくりしました。

このパブコメ回答を前提にすると、本件の表示は、

ジャパネット通常価格29,980円が」「1万円値引き 7/22~11/23

ということなので、まさにパブコメの、

当店通常販売価格〇〇円、10月31日まで△△円

というのと同じで、「一般的には過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示と考えら」れるのではないのでしょうか?

もしパブコメ回答の、

「将来の販売価格を比較対照価格として暗示した二重価格表示」

にあたることをうかがわせる事情があるとすれば、

「~大人気おせちが今ならお得!~早期予約キャンペーン」

という、「早期」という部分でしょうか。

(「今なら」は、過去の価格を比較対照としても使うでしょうから、さすがにこれだけで「将来の販売価格を比較対照価格として暗示した二重価格表示」だというのは無茶でしょう。)

でも、この「早期」というのですら、論理的に意味するところは、「〇〇より早い」ということですから、「~11/23」の部分に加えて何か情報を付け足しているわけでもないように思え、「一般的には ・・・」を打ち消すには弱い気がします。

確かに、「1万円値引き 7/22~11/23」と「早期予約キャンペーン」という表示を併せてみれば、11月24日以降は通常価格に戻るのだと暗示していることになるのかもしれませんが、この程度の記載で「暗示」だと認定するなら、やっぱり、「一般的には過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示と考えられます」というのは、大ぶろしきを広げすぎたのではないかと思います。

というのは、それくらい、役人が使う「一般的には・・・」という表現は、例外が極めて限定的であることを想起させるからです。

「早期予約キャンペーン」というと、英語のearly birdを想起させ、そうでなくても(普通の日本語でも)「早期」に申し込まなかった場合には通常価格に戻る、という意味に取られるような気がしますが、ともかく「一般的には・・・」とか、消費者庁はちょっと言い過ぎたと思います。

いずれにせよ、この消費者庁パブコメ回答にしたがえば、ジャパネットの件が、過去の価格を比較対象価格とする二重価格表示であったと解するほうが自然だと思います。

そうすると、前述のとおりジャパネットのプレスリリースによれば、29,980円は過去の実績のある価格だったということなので、消費者庁パブコメに従えば、何の問題もない、ということになりそうです。

最後に、ジャパネットのプレスリリースでは、

「また、おせちは時期を過ぎると廃棄につながりやすい特性があります。

早期にご予約いただくことで需要を正確に予測し、売れ残りによる廃棄をなくすことは、⾷品ロス削減に向けた企業の社会的責任であると考えております。」

とも述べられています。

これは、けっこう本質を突いた主張だと思います。

というのは、廃棄ロスの出やすいおせちという商品の性質上、今回の「早期予約キャンペーン」のような売り方が合理的だ、ということを強くうかがわせるからです。

「きちんと売り切るためにはこういう表示が必要なんだ」というと、消費者庁はきっと、「需要喚起のためなら、たんに値下げをすればいいのであって、二重価格表示をする必要はない(将来価格を基準にする必要なんて、なおさらない)」と言いそうな気がします。

でも、おせちの価値なんてなかなか素人目にはわからないですから、値段で品質を判断するということが、実際にはあるのではないかと思います。

なので、過去の通常価格と比較してこそ本来の価値がわかるのであって、たんに値引後価格だけを表示していたら、それなりの価格しかないと誤解されるおそれは、大いにあると思います。

廃棄ロス問題が景表法の解釈に直結するとは思いませんが(法律論としては、直結させるべきではないと思いますが)、法律は論理だけで回っているわけではないことも事実ですし、少なくとも、マクドナルドのポケモンカード・ハッピーセット事件のような、(恵方巻とかに比べれば)大して廃棄ロスもないだろうと思われるような案件にまで廃棄ロスを防止しろと行政指導をしてくる消費者庁なわけですから、こういう当事者の主張にはていねいに耳を傾けるべきではないかと思います。

2025年7月24日 (木)

定義告示運用基準の目次(と簡単なメモ)

よく使うので、定義告示運用基準(「景品類等の指定の告示の運用基準について」)の目次をメモしておきます。

1 顧客誘引性

⑴ 親睦やアンケート回収目的でも、あたる

⑵ 取引増大・継続目的でも、あたる

2 事業者

⑴ 非営利の協同組合等も、あたる

⑵ 学校法人も、収益事業は、あたる

⑶ 地方公共団体も、経済活動をする場合は、あたる

⑷ 事業者団体が企画した景品企では、景品提供をした構成事業者に景表法が適用される。

3 商品供給主体性(「取引」)

⑴ 全流通段階の取引を含む

⑵ 賃貸、交換も「取引」

⑶ 銀行、クレジットも「取引」

⑷ 買取も、査定等の役務提供あれば「取引」

⑸ コーラの原液も、「取引」

4 取引附随性

⑴ 取引を条件としての提供は、あたる

⑵ 主たる対象とすれば、あたる

ア 容器包装での告知

イ 取引により獲得容易になる

ウ 小売業者の入店者への提供

エ ①過半出資、②フランチャイジー、③大部分が自己の商品(例、ガソリンスタンド)、の店舗入店者

⑶ 勧誘に際しての提供は、あたる

⑷ 本来の内容は、あたらない(宝くじ、パチンコ)

⑸ セット販売。ただし、懸賞や景品と認識される場合は、附随性あり

ア 明らかにセット(ハンバーガーとドリンクのセット)

イ 商慣習(スペアタイヤ)

ウ 独自の機能(パック旅行)

⑹ たまたま購入者がいても、附随性なし

5 経済上の利益

⑴ 対価支払って取得するものは、あたる。ただし、名誉を表すトロフィー等は、あたらない。

⑵ 安く購入できる利益も、あたる。

⑶ 仕事の報酬は、あたらない。

6 値引

⑴ 公正な競争秩序の観点から判断。

⑵ 公正競争規約を参酌。

⑶ 以下は、値引にあたる。

ア 対価の減額

イ 割戻し

ウ 同一商品の付加(増量値引)

⑷ 以下は、値引にあたらない。

ア 懸賞、使途制限、景品との併用、による対価減額、割戻し。

イ 懸賞、景品との併用、による増量値引

7 アフターサービス

⑴ 公正な競争秩序の観点から判断。

⑵ 公正競争規約を参酌。

8 附属品

⑴ 公正な競争秩序の観点から判断。

⑵ 公正競争規約を参酌。

⑶ 品質保全に必要な範囲の容器包装は、景品にあたらない。

2025年7月 3日 (木)

100円のクーポンの価額は100円か(消費者庁景品類Q&A46番と「景品類の価額の算定基準について」との矛盾)

消費者庁の景品類Q&A46番(「抽選で値引券を提供する場合」)では、

「当店では、一定期間に500円以上購入した者を対象に、次回以降当店で使用できる値引券を抽選で提供したいと考えています。自身の店舗で使用できる値引券は景品類ではないので、景品規制の対象とはなりませんか。」

という設問に対して、

「自己の供給する商品又は役務の取引において、取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額すること(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)は、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益に該当し、景品類に含まれず、景品規制の対象とはなりません。ただし、対価の減額であっても、懸賞による場合は値引とは認められず景品類に含まれることとなり、一般懸賞の規制の対象となります。

本件は、500円が取引の価額となりますので、提供できる値引券の最高額は20倍の10,000円となり、また、提供する値引券の総額を懸賞に係る売上予定総額の2%以内に収める必要があります

なお、値引券が割引率表示(〇%値引券)の場合、割引額の上限額を設定しないと、一般懸賞の規制の範囲を超える可能性があります。

(参照)

と回答されています。

今回注目したいのは、設問の本題である景品規制の対象となるかどうかではなく、

「本件は、500円が取引の価額となりますので、提供できる値引券の最高額は20倍の10,000円となり、また、提供する値引券の総額を懸賞に係る売上予定総額の2%以内に収める必要があります。」

の部分です。

(なお、上記Q&Aのとおり、割引券は総付の場合総付規制の対象外なので、実際に問題になるのは懸賞で割引券を提供する場合です。)

この回答は、割引券を景品類として提供する場合の割引券の「価額」は、割引券の券面額、つまり、100円の割引券であれば100円、ということを、当然の前提にしているといえます。

しかし、果たしてそれで正しいのでしょうか。

この点については、「景品類の価額の算定基準について」の1項では、

「1 景品類の価額の算定は、次による。

(1) 景品類と同じものが市販されている場合は、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入するときの価格による。

(2) 景品類と同じものが市販されていない場合は、景品類を提供する者がそれを入手した価格、類似品の市価等を勘案して、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入することとしたときの価格を算定し、その価格による。」

とされています。

つまり、景品類の価額は、「それを通常購入するときの価格」または「それを通常購入することとしたときの価格」です。

なので、クーポンを景品類として提供する場合は、クーポンを「通常購入するときの価格」が、景品類の価額になるはずです。

少なくとも、「景品類の価額の算定基準について」では、景品類の提供が受ける者が得られる便益や満足度(経済学でいえば「効用」)を基準にしていないことは、明らかなように思われます。

それなのに、100円のクーポンの景品類としての価額を100円だとすることは、まさに、クーポンから得られる効用(=値引額)を景品類の価額にしてしまっている、という間違いを犯しているといえます。

ただ、クーポンが景品の場合に、「景品類〔=クーポン〕と同じものが市販されている場合は、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入するときの価格による」といわれても、「クーポンなんて通常購入できるのか?」「できるとしていくらなの?」という疑問が沸きます。

ですが、世の中には、クーポンおまとめサイトなるものがあり、例えば「クーポンサイト.com」というサイトでは、Uberとかアマゾンとか、いろいろなサイトで使えるクーポンを無料で配っています。

ということは、クーポンは、物によっては無料だ、ということも、ありえないことはないように思われます。

少なくとも、消費者庁Q&A46番の、割引券の券面額を景品類としての割引券の価額とするのは、理論的には誤りであると言わざるを得ないと思います。

とはいえ、似たようなクーポンが無料で配られているから、これから配ろうとしているクーポンの景品類としての価額は0円だ、というのも、なかなか勇気がいると思われます。

他方で、100円のクーポン券をメルカリで100円で買う人もいないでしょうから、クーポンの券面額がクーポンの景品類の価額だ、というのも、割り切りすぎに思われます。

そこで、今メルカリで、「クーポン」で検索したら、「オンワード ファミリーセール 東京 クーポン 300円×3枚 2025年夏」が、600円で出品されていました。

つまり、額面900円のクーポンを600円で出品しているわけです。

あくまで出品価格なので、取引成立価格はもっと低くなるかもしれません。

私はクーポンが嫌い(面倒、要らない買い物をしそう、ちまちまクーポンをためるのは男らしくない、等々)なので(Sex and the Cityのファンの方なら、Season 2のEpisode 10「The Caste System」で、高級レストランでクーポン券を使おうとしたスティーブを、ミランダが冷たい目で見つめるシーンを思い出すかもしれません。)、300円の利益を得るためにメルカリでクーポンを買う人の心理はよく理解できないのですが、ともかく、一定の手間はかかるわけですから、券面額から割り引かないと取引が成立しないのは当然でしょう。

ということから考えても、Q&A46番は「景品類の価額の算定基準について」と矛盾しており、間違っていると言わざるを得ないと思います。

 と、ここまで書いておきながらなんですが、では実際に、懸賞でクーポンを配るキャンペーンにおいて、Q&Aにはっきり書いてあることを無視して、このクーポンの市場価格はいくらだと決めて配って大丈夫なのか、というと、実に悩ましいところです。

100円のクーポンは100円、という考え方は、わかりやすく、かつ、ある意味で常識的でもあり(私も最近までまったくこの論点に気づきませんでした)、絶対におかしいとまでは言えないようにも思えるからです。

これまでこのブログで、消費者庁のQ&Aが間違っていることは何度も指摘してきましたが、Q46のこの部分については、絶対間違っているとまでは断言しにくい、というレベル感です。

あと、割引券の景品類としての価額は、Q46の本題ではないですから、たぶん書いた人も、そもそも論点として意識していなかった可能性はあります。

正面からこの点を尋ねれば、違った答えが返ってきたかもしれません。

ただ私の推測では、その可能性にはあまり期待できないように感じています。

つまり、消費者庁に事前相談したら、きっと「100円のクーポンの景品類としての価額は100円」と言われてしまいそうな気がします。

それでも、ぜひトライしたいという方は、この記事を参考にトライしてみていただければと思います。

2025年4月28日 (月)

同じクーポンを連続して配布するのは有利誤認表示か?

同じような質問をたびたび受けるので、掲題の件について私の考え方を記しておきます。

最近は、インターネットやアプリでクーポンを配布するということがよくあるようで、そのようなクーポンを期間を空けずに繰り返し発行してもいいのか、という質問です。

たとえば、4月5日(土)に、「100円引きクーポン。有効期間4月5日から11日まで」というクーポンを発行して、4月12日(土)に、「100円引きクーポン。有効期間4月12日から18日まで」というクーポンを発行して、4月19日(土)に、「100円引きクーポン。有効期間4月19日から25日まで」というクーポンを発行して・・・ということを繰り返してもかまわないか、という質問です。

キャンペーンのくりかえしのアナロジーで、これもダメなんじゃないか、と思う人が多いようです。

実際、こちらのBuyee Connectというサイトでは、

「全く同じクーポンを連続して発行することは景品表示法違反にあたるため、クーポン種別や金額などを変えたクーポンにする必要があります。」

というルールになっているようです。

ですが、私は、同じクーポンのくりかえしの発行は、基本的には問題ないと考えています。

(「基本的には」と断るのは、景表法の常ですが、常に実際の表示をみないと断定できないからです。)

この点を理解するためには、基本にもどって、不当表示とは表示と実際の不一致だ、という点をよく理解する必要があります。

そもそも同じ期間限定キャンペーンのくりかえしが不当表示になるのは、

「4月末まで期間限定。5割引き」

という表示をみた消費者は、

「5月になったら、通常価格に戻るのだな。」

と認識するのに(表示の意味の確定)、実際には5月になっても5割引きだったら、表示の意味(5月には通常価格に戻る)と実際(5月も5割引き)との間に不一致があるからです。

では、クーポンの場合、

「100円引きクーポン。有効期間4月5日から11日まで」

という表示に、4月12日になっても同じクーポンは配らない、という意味が含まれると読み取れるのか、というと、読み取れないでしょう。

スーパーが毎週土曜日にチラシを配って、チラシに同じようなクーポンを印刷しても(そのクーポンを切り取って持参したら100円引きしてもらえる)、翌週に同じようなクーポン付チラシが配られるはずがないと考える消費者がいるでしょうか?

そんなこと、誰も考えないと思います。

なぜ誰も考えないかというと、

「100円引きクーポン。有効期間4月5日から11日まで」

という表示には、その当該クーポンの有効期限が4月11日までだということだけしか書いていないのであって、翌週のチラシのことなんて何も読み取れないからです。

「同じことを繰り返したら不当表示なんだ」と、ぼーっと考えていたら、このような違いには気づかないだろうし、チコちゃんにも叱られると思います。

ほかに、クーポンの繰り返し発行とキャンペーンのくりかえしの違いをあげると、クーポンは、そのクーポン1枚をつかったら、ふつうはそれで終わりです。

もう1回割引を受けたかったら、ご近所さんにチラシをもらうしかありません。

つまり、クーポンの場合、そのクーポンに記載されている利益を受けられるのは、通常、そのクーポンを使う1回だけの取引だけなのです。

オンラインで発行するクーポンも、基本的には同じようなものでしょう。

また別の切り口からいうと、

「100円引きクーポン。有効期間4月5日から11日まで」

という表示が不当表示にならないために、たとえば、

「※4月12日以降に同じ内容のクーポンを発行することがあります。」

と打消し表示をすることを求めることが、合理的でしょうか?

そんな打消し表示をしなくても、同じクーポンが発行されるかもしれないことは、あたりまえだと思います。

逆に言えば、クーポンの繰り返し発行でも不当表示になり得るのは、暗に、このクーポンを発行するのは今回限り、とほのめかすような場合です。

たとえば、期間中何度でも使えるクーポンのようなものがあるとすれば、それは、期間限定キャンペーン(期間中なら何度買い物をしてもキャンペーン価格で買える)とかなり似てくるので、一つ間違うと、有効期限が過ぎれば本来の取引条件に戻るのだ(=同じクーポンの追加発行はないのだ)、という印象をあたえるようなものになるかもしれません。

(そんなクーポンがあるのかどうか知りませんが。)

というわけで、ふつうのクーポンは、繰り返し発行しても、あるいは、有効期間中に同じクーポンを追加発行しても(追加で新聞チラシを配るのと同じ)、基本的には問題ないと思います。

2025年4月24日 (木)

電子マネーのチャージと支払いは「同一の取引」か(消費者庁景品FAQ115番)

消費者庁景品FAQの115番では、

「Q115 当社は前払い式のキャッシュレス決済事業者です。当社の電子マネーに10,000円のチャージをしてくれた場合にもれなく景品を提供し、さらにこの電子マネーで3,000円の支払いをしてくれたらもれなく景品を提供したいと考えています。

この場合の取引の価額は10,000円と3,000円と考えて、それぞれ総付景品の規制の範囲で景品を提供してもよいでしょうか。」

という設問に対して、

「A 前払い式のキャッシュレス決済事業者が提供する取引とは決済手段の提供であり、この決済手段の中には「チャージ」のほか加盟店での「支払い」も含まれます。

したがって、チャージでの景品提供と支払いを条件とした景品提供とを同時に実施した場合、新たにチャージした金額での支払いを条件としているととらえられ、同一の取引とみられる可能性があります

本件が同一の取引とみられることを前提とすれば、2つの景品類の価額の合計を10,000円のチャージで提供できる景品類の最高額2,000円(10,000円の10分の2)の範囲内にする必要があります。

したがって、3,000円の支払いで提供できる景品類の最高額は600円(3,000円の10分の2)ですが、10,000円のチャージで提供できる景品類の最高額は、2,000円から3,000円の支払いで提供する景品類の額を差し引いた額となります

(例えば、3,000円の支払いで提供する景品類の価額が500円であれば、10,000円のチャージで提供する景品類の価額の最高額は1,500円となります。)。」

という回答が示されています。

でも、これはおかしいと思います。

チャージと支払が「同一の取引」であるはずがありません。

まず前提として、ここで言っている「同一の取引」というのは、同Q&Aが総付運用基準1⑸アを引用していることからもわかるように、

「(5) 同一の取引に附随して二以上の景品類提供が行われる場合については、次による。

ア 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。」(総付運用基準1⑸ア)

の、「同一の取引」のことです。

しかし、ここでの「同一の取引」は、たとえば緑本第7版243頁によれば、

「例えば、本店が全国的な懸賞販売の企画を実施しているときに、支店が同一の商品について別個の懸賞販売の企画を自己の管内において実施したような場合」

を意味しています。

つまり、同じ商品や役務の取引について複数の景品を出すときに、「同一の取引」にあたるということです。

しかしながら、電子マネーのチャージと支払は、チャージという取引と、支払という取引という、それぞれ別の取引であることはあきらかだと思います。

したがって、Q&A115番は誤りですから、無視してかまいません。

それでも、いち弁護士の個人的見解にもとづいてお上の公式見解を無視するのははばかられる、という方もいらっしゃるかもしれませんので、以下、Q&Aの内容を少し細かくみていきます。

まず、Q&Aがこのような回答をする理由を想像するに、要は、たとえば1万円をチャージしてその1万円分の電子マネーで決済しただけで(2万円の20%の)4000円も景品をあげられるのは、実質1万円の取引を2回カウントすることになっておかしい、ということでしょう。

いわば、同じお金を右から左に流すだけなのに、という発想です。

このように、「お金を右から左に流すだけ」の場合に限定するために、Q&Aは、2つの景品提供を「同時に実施した場合」に限定したうえで、さらに同時に実施すると常に「同一の取引」になるのではなくその「可能性があります。」とお茶を濁して、かつそのような「可能性」に基づいて同一の取引とみなされることを「前提とすれば」2つの景品提供を合算しなければいけない、とか、実に回りくどい言い方をしているのだと思います。

ですが、「同一の取引」になる理由付けとして、

「チャージでの景品提供と支払いを条件とした景品提供とを同時に実施した場合、新たにチャージした金額での支払いを条件としているととらえられ、同一の取引とみられる可能性があります。」

として、あたかも消費者(まさか、消費者庁が、ではないでしょう。)の認識を根拠にしているかのように読めるのは、まったく意味不明です。

仮に「同一の取引」かどうかが、客観的に「新たにチャージした金額での支払いを〔景品提供の〕条件としている」かどうかで決まる、というのであれば、そのような回答にすべきでしょう。

そこで議論のために、「新たにチャージした金額での支払いを〔景品提供の〕条件としている」場合にはチャージと支払が「同一の取引」になるのかを考えてみましょう。

そのためにはまず、「新たにチャージした金額での支払いを〔景品提供の〕条件としている」キャンペーンというのは、どのようなうたい文句のキャンペーンになるのかを考えてみる必要があるでしょう。

最もオーソドックスなのは、

「キャンペーン期間中に、1万円チャージして、その(the)1万円で1万円のお買い物をすると、〇〇プレゼント」

といったものでしょう。

でも、電子マネーに色は付けられませんから(※技術的には、電子マネー1円ごとにIDをふるなどして「色」をつけられるのかもしれませんが、さしあたりその可能性は無視しておきます。)、このキャンペーンは、実際には、たんにキャンペーン期間中に1万円のチャージと1万円の支払いの両方をしなければならない、という内容だということになるのでしょう。

つまり、実質的には、「キャンペーン期間中に、1万円チャージして、1万円のお買い物をすると、〇〇プレゼント」という企画と同じ、ということです。

消費者庁が、「新たにチャージした金額での支払いを条件としているととらえられ」るとみているのは、きっとこのようなキャンペーンでしょう。

つまり、キャンペーン期間中に、1万円のチャージという取引と、1万円の支払いという取引の、2つの取引をおこなうことを条件として景品がもらえるキャンペーン、ということです。

でも、2つの取引をおこなうことを条件に景品類を提供したら、それら2つの取引が「同一の取引」になるというのは、理屈として無理があります。

2つの取引を行うことを条件にした景品は、それら2つの取引両方と取引付随性がある、ということになるだけでしょう。

もしチャージと支払を「同一の取引」だというなら、チャージと支払は実質的に全体で一つの取引だ(同じお金を右から左に動かしているだけだ)、とでも言わないと無理でしょう。

そして、この考え方には理由がないわけではないと思います。

というのは、電子マネーでの支払いには、同額の電子マネーのチャージが論理必然的に先行するからです。

(なおさしあたり、ここでは、電子マネーが別のキャンペーンでプレゼントされるとかいう、例外的な場合は無視しておきます。)

ですが、電子マネーの支払いにチャージが先行することが理由で両者が「同一の取引」になるというのであれば、チャージによる景品キャンペーンと支払による景品キャンペーンを「同時に実施」した場合に限って両者を「同一の取引」とみなす必要はなく、およそチャージと支払は常に「同一の取引」とみなすべきでしょう。

でも、Q&Aはそこまではいっていません。

なので、この点でもQ&Aは不徹底ないし矛盾しているといわざるをえまえん。

それに、およそチャージと支払が常に「同一の取引」だというのも、解釈論上無理があると思います。

(立法論としては、電子マネーのチャージと電子マネーでの支払については二重に景品提供できない、とすることは、ありえるとは思いますが。)

もし電子マネーのチャージと支払が常に「同一の取引」だということになると、定期預金への預金とその解約も「同一の取引」なのか、とか、投資信託の購入と売却も「同一の取引」なのか、とか、そもそも銀行預金の預け入れは「取引」なのか、とか、際限なく問題が出てくるように思われます。

このように、Q&Aの矛盾がまたあきらかになってしまいましたが、めげずにQ&Aの分析に話を戻すと、まず、この回答はその適用対象を明らかに、

「チャージでの景品提供と支払いを条件とした景品提供とを同時に実施した場合」

に限定しており、「同時に実施」していない場合には2つの景品提供を合算する必要がないことはあきらかです。

そこで、2つの景品提供を「同時に実施」するとはどのような意味かを検討すると、チャージの景品提供キャンペーンの時期と支払の景品提供キャンペーンの時期とが、「同時」である、という意味だと思われます。

何を言っているのかというと、「景品提供」が「同時」というのは、景品類を渡すタイミングが「同時」という意味ではない、ということです。

次に、チャージの景品提供キャンペーンの時期と支払の景品提供キャンペーンの時期が「同時」というのは、両キャンペーンの期間が完全に一致している場合に限られるのか、それとも、一部重なっている場合も含まれるのかが問題となります。

この点については、(その理屈が正しいかどうかはさておき)チャージの景品提供と支払の景品提供が「同時」だという事実が、チャージと支払が「同一の取引」だという帰結を導くのだ、というQ&Aの発想がなぜ出てくるのかを、いま一度考えてみる必要があるでしょう。

(消費者庁がわけのわからないことを言い出したら、そのようなわけのわからないことを言い出す消費者庁の頭の中はどうなっているのだろう、と、消費者庁になりきるのが分析のために有益です。)

それはつまり、前述のとおり、チャージのキャンペーンと支払のキャンペーンが「同時」だと、その「同時」のキャンペーン期間中に消費者はチャージと支払をおこない、同じお金を右から左に流しているだけから、という発想でしょう。

そういう発想を前提にすると、

「チャージでの景品提供と支払いを条件とした景品提供とを同時に実施した場合」

というのは、2つのキャンペーンの期間が完全に一致している(というか、2つのキャンペーンを1つのキャンペーンとして表示している)場合のみを指すと考えるのが、Q&Aの読み方としては自然だと思います。

でも、そもそもキャンペーン期間が同時期であることから、同じ原資が「右から左に」流れるだけだといえるのかというと、そんなことはまったくありません。

たとえば、チャージのキャンペーン期間も、支払のキャンペーン期間も、1月1日の1日だけだったとします。

しかしながら、このような場合を想定しても、お金を「右から左に」流すことになるわけでは必ずしもありません。

確かに、ある人が、その電子マネーの取引を1月1日に開始して、1月1日午前10時に1万円チャージして、1月1日午前10時1分に1万円の買い物をしたら、同じ1万円を「右から左に」流しただけだといえるかもしれません。

ですが、たとえばある人が前年の6月30日に10万円チャージしていて、(その後その電子マネーを使わず)1月1日午前10時にその電子マネーで1万円の買い物をし、1月1日午後3時に5万円チャージした場合、1万円の買い物と5万円のチャージは、どうみても同じ取引にはなりそうもありません。

さらに前提を変えて、2つのキャンペーンの期間がいずれも1月1日から1月31日までであったとして、1月1日に(すでにチャージ済みの電子マネーを使って)1万円の買い物をし、1月31日に3万円のチャージをした場合、この買い物とチャージは、やはり別々の取引だといわざるをえないように思われます。

このように、チャージの景品提供キャンペーンと支払の景品提供キャンペーンが「同時」というのが、両キャンペーンの期間が完全に一致している場合に限られると考えてすら、すでに消費者庁の論理は破綻しているのに、さらに一部重なっている場合も含まれると解すると、その論理の破綻はいっそうあきらかです。

たとえば、支払のキャンペーンが1月1日から31日までとして、チャージのキャンペーンが1月31日から2月28日までだとすると、両キャンペーンは一部1月31日がかぶっていますが、それだけのために1月1日にした(先の)支払と2月28日にした(後の)チャージとが「同一の取引」だというのは、どう考えても無理があります。

このようなこともあって、Q&Aでは、「同一の取引とみられる可能性があります」という表現を用いることによって、2つのキャンペーンが「同時」であっても、常に「同一の取引」とみなされるわけではない、と予防線が張られているのではないか、と想像します。

そして、「同一の取引とみられる可能性があります」という場合に、「同一の取引」とみらるためには、上述のとおり、最低限、2つのキャンペーンの期間が完全に一致している必要がある、と読むのがQ&Aの自然な読み方だと思われます。

次に、「同一の取引とみられる可能性があります」というにとどめて、常に同一の取引とは言っていないことから、実務上どのような対応策が考えられるのかというと、同一の取引とみられないような打消し表示をすることが考えられます。

つまり、Q&Aが、

「新たにチャージした金額での支払いを条件としているととらえられ、」

るがゆえに、

「同一の取引とみられる可能性があります。」

といっているのですから、

「新たにチャージした金額での支払いを条件としているととらえられ

ないように、たとえば、支払を条件としたキャンペーンの告知に、

「キャンペーン期間前にチャージした電子マネーで支払をしてもらっても、キャンペーンの対象です。

新たにチャージした金額で支払いをする必要はありません。」

といったことを書くことが考えられます。

(いかにも弁護士の思いつきそうな浅知恵ですね。自分で書いていて気恥ずかしくなります😵)

あるいは、Q&Aが、

「新たにチャージした金額での支払いを条件としているととらえられ」

ることを問題視していることからすると、先に支払をしてからチャージしてもいいことを明らかにする趣旨で、

「チャージと支払の順番は問いません。先に支払をして、あとでチャージをした場合でも、支払とチャージの景品の両方をさしあげます。」

などと表示することも考えられます。

そして、このような打消し表示をしておけば、2つのキャンペーンの期間が完全に一致する場合(実質1つのキャンペーンに見える場合)でも、チャージと支払が「同一の取引」とみられることはないのだろうと思います。

このように、いろいろと考えてみましたが、やっぱり端的な結論としては、115番の考え方は間違っているというほかないと思います。

2025年3月 6日 (木)

ステマQ&A13番(「このサイトはプロモーションを含みます。」との表記)について

ステマQ&Aの13番では、

「Q13 アフィリエイト広告について、アフィリエイトサイトの冒頭に、

「このサイトはアフィリエイト広告を利⽤しています。」、

「このサイトはプロモーションを含みます。」

等と表⽰していれば、「事業者の表⽰」であることが明瞭となっていると考えてよいですか。」

との質問に対して、

「A アフィリエイトサイトの表⽰内容全体からみて、⼀般消費者にとって「事業者の表⽰」であることが明瞭となっているかどうかが重要となります。 したがって、アフィリエイトサイトの冒頭に、「このサイトはアフィリエイト広告を利⽤しています。」等と記載がされていても、⽂字のサイズや⾊なども踏まえ、⼀般消費者にとって、「事業者の表⽰」であることが明瞭となっていることが必要です。

また、アフィリエイトサイト内の⼀部に、「事業者の表⽰」ではないと⼀般消費者に誤認されるおそれがある表⽰

(例えば、専門家の客観的な意⾒のように記載されているものの、実際には、当該専門家に報酬を⽀払ってコメントを依頼して
おり「事業者の表⽰」に当たるもの)

が含まれている場合には、その付近に

「○○社から○○先⽣に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。」

といった記載をするなど、当該⼀部を⾒ただけであっても、⼀般消費者にとって、「事業者の表⽰」であることが明瞭となっている必要があります。」

と回答されています。

でも、実務的な観点からは、この設問の一番のポイントは、

「このサイトはプロモーションを含みます。」

というような、ぜんぶではないけれど一部に広告もありますよ、というような表記を冒頭に包括的にするのでもよいのか、という点なのではないでしょうか。

この点がスルーされているのはいかにも残念ですが、だからといって、この設問をもって、この点が問題視されないと解釈することはできないでしょう。

具体的な表示物を見てみないと前提に誤解があるかもしれないのですが、

「アフィリエイトサイトの冒頭に」

書く表記であることが前提のようなので、もしこのアフィリエイトサイトに、アフィリエイト広告とそうでない記事が混在しているのであれば、冒頭に「含みます」と書くのでは不十分だと思います。

どれがアフィリエイト広告でどれがそうでないのかを区別できる必要があることは、いうまでもありません。

もしこのような表記ですませているアフィリエイトサイトがあるのであれば、即刻改めるべきです。

次に、もしこのアフィリエイトサイトの記事全部がアフィリエイト広告である場合に「含みます。」という表記をするのは、どうでしょうか。

私はそれもダメだと思います。

なぜなら、具体的に特定の記事がアフィリエイト広告なのかどうか、消費者には判断がつかないからです。

(アフィリエイトサイト運営者は、ぜんぶアフィリエイト広告だと知っているわけですが、そんなことはそとからみてもわかりません。)

なので、「⽂字のサイズや⾊など」を云々するまえに、「『含みます』ではどれが広告なのか特定できないので認められません。」と、はっきり回答すべきだったのではないかと思います。

なお、これと似ているけれど違うのは、動画に「プロモーションを含みます。」という表記がある場合です(Q&A15番)。

Q&Aの15番では、

「Q15 動画において「事業者の表⽰」である旨の表⽰を⾏う場合に、動画の冒頭に「広告」、「この動画はプロモーションを含みます。」などと表⽰していれば、事業者の表⽰であることが明瞭となっていると考えてよいですか。」

との質問に対して、

「A 動画の場合、⼀般消費者が途中から視聴する場合も考えられるため、冒頭に「広告」などと表記するだけでは、当該表記を⾒逃すおそれがあります。したがって、事案によっては、動画の冒頭に「広告」と表⽰していても、表⽰内容全体から、⼀般消費者にとって「事業者の表⽰」であることが明瞭となっていないと判断される場合があります。

画⾯上に常に「広告」と表⽰するなど、動画全体を通して「事業者の表⽰」であることが明瞭となるようにしておくことが望ましいと考えられます。」

とだけ回答されていて、「含みます」という表現自体は論点にはなっていませんが、1つの独立した動画の場合にはその中でどの部分が広告でどの部分が広告ではないなどと区別することは不可能かつ無意味ですから、「含みます」という表記で、全体として広告だという意味が伝わるといってよいと思います。

でも、13番において、もしアフィリエイトサイトにアフィリエイト広告とそうでない記事が混在しているなら、冒頭に「プロモーションを含みます。というのでは不十分です。

このようなことがゆるあれると、たとえば、ヤフーのサイトで冒頭に「プロモーションを含みます」と書けば、通常のニュース記事と区別できないような態様でアフィリエイト広告を掲載してもよい、ということになりかねません。

というわけで、もしサイト冒頭に「プロモーションを含みます。」と表記するだけで済ませているアフィリエイトサイト運営者の方がいらしたら、即座にあらためていただければと思います。

より以前の記事一覧

フォト
無料ブログはココログ