高光製薬ステマ措置命令の疑問
高光(たかみつ)製薬が「ノビルン」という子供向けサプリでステマをしたということで、2026年6月29日、消費者庁から措置命令を受けました。
いわゆるSNS引用型のステマですが、通販新聞の7月1日の記事によると、
「SNS投稿からの「画像」のみの転載をステマと判断した」
ということで、コメントなしで画像のみ転載したのが特徴なのだそうです。
画像だけであることが意味があるかというと、あまりないような気もしますが(でも、景表法実務ではそういったことに鼻が利くとも大事だとは思います)、この措置命令にはいろいろ問題があると思います。
1つめは、高光製薬が表示内容の決定に関与した事実が措置命令の記載からは明確でないことです。
ステマガイドラインでは、事業者が表示内容の決定に関与したかどうかが、「事業者の表示」かどうかの究極的な基準になっています。
なので、たとえば高光製薬が投稿者に「こういうアングルで撮って」などと指示していれば、表示内容の決定に関与していたことになります。
実例として、たとえばロート製薬の2025年3月25日措置命令では、
「ロート製薬は、本件商品を一般消費者に販売するに当たり、モニター募集サイトを通じて、第三者に対し、本件商品を無償提供した上、本件商品に関してInstagramにロート製薬が指示する方針に沿った投稿をすることなどを依頼したことによって当該第三者が投稿した表示について、画像部分を抜粋して・・・」
と認定されており、ロート製薬が投稿の方針を伝えていたことがわかります。
でも、高光製薬の措置命令では、
「高光製薬は、本件2商品を一般消費者に販売するに当たり、高光製薬が本件2商品の販売促進活動のために募集を行い、当該募集に応じた第三者に対し、本件2商品を無償提供した上、本件2商品に関してSNSに投稿を依頼したことによって当該第三者が投稿した表示について、画像部分を抜粋して、例えば、本件商品①について、令和7年4月27日から同年10月25日までの間、「ノビルン【公式】-成長期においしく栄養バランス-」と称する自社ウェブサイトにおいて、「SNSでも大人気!」、本件商品①を顔の右側に掲げる人物の画像等を表示するなど、別表「商品名」欄記載の商品について、同表「表示期間」欄記載の期間に、同表「表示媒体・表示箇所」欄記載の表示媒体・表示箇所において、同表「表示内容」欄記載のとおり表示していたことから、高光製薬は、本件2商品に係る同表「表示内容」欄記載の表示内容の決定に関与しているものであり、当該表示は事業者の表示であると認められる。」
とされているだけで、「SNSに投稿を依頼した」ことはわかりますが、投稿内容の指示があったとは認定されていません。
ただ、ステマガイドラインでは、表示内容の決定に直接関与していなくてもステマになる場合というのがあります。
私がいつも講演などで話している内容をざっくりまとめると、ステマガイドラインでは、
①広告主が表示内容の決定に関与したか=表示内容が第三者(表示者)の自主的な意思によるものか
が実は究極的な基準で、この①を判断するために、
②広告主が表示者にある内容の表示を行うよう依頼・指示したか
が考慮される、という構造になっています。
というより、ガイドラインでは、自主的な意思というのと「ある内容の表示を行うよう依頼・指示 」というのとを、ほぼ等置しています(そのようなことが論理的に言えるのかはさておき、ともかくそうなっています。)
さらに、そのような依頼・指示がなくても、①の自主的な意思かどうかを判断するために、
③広告主と表示者との間に、広告主が表示者の表示内容を決定できる関係性があったか
が考慮されるとされ、③の関係性を判断するために、
④⑴広告主と表示者との間のやりとり(メール等)、⑵対価の有無・内容、⑶過去の関係性等を総合的に考慮する
こととされています。
なので、投稿方針の伝達がなくても、究極的には④の総合考量で判断されるわけですが、そのような観点から高光製薬の措置命令をもう一度みると、
「本件2商品の販売促進活動のために募集を行い、当該募集に応じた第三者に対し、本件2商品を無償提供した」
といったあたりから、④の総合考量をしているように見えます。
④⑴の「広告主と表示者との間のやりとり(メール等)」と⑵の「対価の有無・内容」ということですが、この部分のガイドラインを引用すると、第2の1⑵イの、
「客観的な状況に基づき、第三者の表示内容について、事業者と第三者との間に第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性がある」かどうかの判断に当たっては、
事業者と第三者との間の具体的なやり取りの態様や内容
(例えば、メール、口頭、送付状等の内容)、
事業者が第三者の表示に対して提供する対価の内容、
その主な提供理由
(例えば、宣伝する目的であるかどうか。)、
事業者と第三者の関係性の状況
(例えば、過去に事業者が第三者の表示に対して対価を提供していた関係性がある場合に、その関係性がどの程度続いていたのか、今後、第三者の表示に対して対価を提供する関係性がどの程度続くのか。)
等の実態も踏まえて総合的に考慮し判断する。」
とされている部分です。
これでは具体性に欠けて意味がないとおそらく消費者庁が思ったのだと思いますが、消費者庁ウェブサイトではステマQ&Aを出しており、その4番では、
「Q4 当社では、街頭において試供品として自社の商品を無償で配布することを検討しています。
試供品を配布する際には、「よろしければ使用後の感想をSNSに投稿してください。」と声掛けし、SNSへの投稿を依頼することを検討しています。この場合、当該投稿が、告示に違反することはありますか。
という質問に、
「A「事業者の表示」に当たるのは、事業者が表示内容の決定に関与している場合です(これは、客観的な状況に基づき、投稿者の自主的な意思による表示内容とは認められない場合、と言い換えることができます。)。
事業者が、第三者に対して表示の内容を明示的に依頼・指示していなくても、第三者との関係性(例えば、具体的なやり取りの内容、表示に対する対価の内容、当該対価の提供理由、過去の取引関係の有無等)を踏まえ、表示内容の決定に関与していると判断される場合があります(運用基準第2・1・(2)・イ)。
本件において、事業者は、SNSに投稿することを依頼していますが、投稿内容についての指示は行っていません。
また、事業者は、往来する不特定多数の人に対して、SNSに投稿して貰えるかどうかを問わずに試供品として商品を無償配布しているにすぎず、通常、それ以上の関係性はないと考えられるので、表示内容の決定に関与しているとはいえません。
したがって、SNSへの投稿がされたとしても、当該投稿は、通常、「事業者の表示」には当たらず、告示に違反しないと考えられます。」
と回答されていて、さらに関連するQ5では、
「Q5 当社では、インフルエンサーに自社の商品を無償で提供することを検討しています。商品を提供する際には、「よろしければ使用後の感想をSNSに投稿してください。」と声掛けし、SNSへの投稿を依頼することを検討しています。この場合、当該投稿が、告示に違反することはありますか。」
という質問に対して、
「A 街頭サンプリングの場合(Q4)と異なり、特定のインフルエンサーを選定して商品を無償で提供することから、当該インフルエンサーとの間で、何らかのやり取りが行われているなど、その時点で一定の関係性が認められる場合があり得ます。
したがって、インフルエンサーとの間のやり取りの内容、無償提供の内容、無償提供の目的、取引関係の有無(例えば、過去の取引関係や、将来の取引可能性の有無)等の個別具体的な事情によっては、インフルエンサーの自主的な意思による表示内容とは認められず、「事業者の表示」に当たると判断される場合があります。
インフルエンサーの投稿が「事業者の表示」に当たる場合には、当該投稿が「事業者の表示」であることを明瞭にしなければ、告示に違反します。」
と回答されています。
ここまで読むと、投稿を条件としない(「よろしければ」)商品の無償提供は、道行く不特定の人に提供するならステマではないけれど、特定の人に提供するならステマになりうる、という区別が読み取れます。
でも本件は、
「高光製薬が本件2商品の販売促進活動のために募集を行い、当該募集に応じた第三者に対し、本件2商品を無償提供した上、本件2商品に関してSNSに投稿を依頼した」
ということなので、投稿することには同意していた(投稿が無償提供の条件になっていた)といえます。
では、投稿が商品無償提供の条件になっている場合はどうなるのかというと、続くQ6では、無償提供ではなく割引の事例ですが、
「Q6 当社では、一般消費者に対し当社のサービスを利用した後に、予約サイトの口コミ投稿を行うことを条件として、サービスを割引価格で提供することを検討しています。この場合、当該口コミ投稿が、告示に違反することはありますか。
口コミ投稿について、サービスに対する評価として「星5(☆☆☆☆☆)」を付けることを条件としている場合はどうですか。」
という質問に対して、
「A 前段の場合、口コミ投稿の内容についての指示は含まれていません。また、一般消費者の口コミ投稿を促進する目的で、サービスを割引価格で提供するという程度の関係の下であって、割引程度の対価であることも踏まえれば、表示内容の決定に関与しているとはいえません。
したがって、当該口コミ投稿は、通常、「事業者の表示」には当たらず、告示に違反しないと考えられます。
一方で、後段の場合、口コミ投稿に当たって、「星5(☆☆☆☆☆)」を付けることが条件とされており、事業者は表示(投稿)の内容を決定しているといえるため、「事業者の表示」に当たると考えられます。
したがって、「事業者の表示」であることを明瞭にしなければ、告示に違反します。なお、口コミ投稿に当たって、「星5」ではなく、サービスの品質や内容、価格等の取引条件について推奨するコメントをすることが条件とされている場合も同様です。」
という回答がされています。
このQ6からは、商品無償提供ではなく割引の場合(←この違いがどの程度意味があるかはさておき)には、一般消費者に投稿を条件として割引してもステマにはならないが、一般消費者に「星5」など一定の内容を条件とするとステマになる、という基準が読み取れます。
そこでひるがえって本件をみてみると、
「高光製薬が本件2商品の販売促進活動のために募集を行い、当該募集に応じた第三者に対し、本件2商品を無償提供した上、本件2商品に関してSNSに投稿を依頼した」
ということなので、内容を指示してはいません。
なので、Q6と本件とのちがいを想像すると、「本件2商品の販売促進活動のために募集を行い、当該募集に応じた第三者」というのは、一般消費者を相手にしたものではないのだ、という発想が、おそらく消費者庁にはあるのではないか、とうかがわれます。
また、上記でペンディングにした、商品無償提供と割引とでどのくらい違うのか、という点については、実は決定的に違うと消費者庁は考えているのではないかという気がします。
少なくとも、販促活動に応募した一般人と、一般消費者とのちがいよりは、ずっと重視されているように思います。
そして、それは必ずしも理由がないことではないと思います。
というのは、やはり割引とは言え何らかの支出をするということは消費者にとっても痛みがあるわけで、割引を受けたというくらいのことで投稿内容の自由な決定が妨げられるのかというと、そうでもないように思うのです。
つまり、
「こっちも金払ってるんだ。割引したくらいで、投稿内容までガタガタ言うな」
というのが、普通の感覚だと思うのです。
でも、無償提供だと、さすがに、
「ただでもらったものを悪く言うのは申し訳ないな」
というのが、ふつうの日本人の感覚ではないかと思います。
なので、商品が気に入らなかった人は、投稿が条件でなければ投稿しないでしょうし(結果として、高評価の投稿ばかりになる)、投稿が条件であっても、あからさまに低い評価は書かないと思います。
というわけで、実はQ6では
「一般消費者の口コミ投稿を促進する目的で、サービスを割引価格で提供するという程度の関係」
であることが決定的で、逆に、販促目的で応募した投稿者に無償提供するような関係だとステマだ、ということになりそうです。
ですが、そういったことがわかるのもこの高光製薬の措置命令が出たからわかることであって、この措置命令がなかったら高光製薬のような事案でもQ6で内容は指示してないからOKじゃないか、と考える人がいても、私はおかしくなかったと思います。
それに輪をかけるのがステマガイドラインの商品無償提供についての記述の分かりにくさです。
つまり、ガイドライン運用基準第2の1⑵イ(ア)では、
「(ア) 事業者が第三者に対してSNSを通じた表示を行うことを依頼しつつ、自らの商品又は役務について表示してもらうことを目的に、当該商品又は役務を無償で提供し、その提供を受けた当該第三者が当該事業者の方針や内容に沿った表示を行うなど、客観的な状況に基づき、当該表示内容が当該第三者の自主的な意思によるものとは認められない場合」
というのが
「事業者が第三者に対してある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示していない場合であっても、事業者の表示とされる場合」
の例(つまりステマの例)としてあげられていて、逆に第2の2⑴イでは、
「イ 事業者が第三者に対して自らの商品又は役務を無償で提供し、SNS等を通じた表示を行うことを依頼するものの、当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合。」
が、
「「客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合」、つまり、事業者の表示とならない場合」
の例(つまり、ステマにあたらない例)としてあげられているのです。
私は、何回読んでもこのガイドラインの部分の意味がわかりません。
さらに、上記第2の1⑵イ(ア)では「当該表示内容が」といっていて、第2の2⑴イでは「自主的な意思に基づく内容」といっていて、いずれも場合も投稿の「内容」が自主的かどうかを問題にしており、投稿するかどうかが自主的かどうかは問題視していないことも、指摘できます。
つまり、ガイドラインはあくまで、ステマに当たる場合も当たらない場合も投稿の「内容」が自主的かどうかを問題にしているのであって、投稿するかどうかが自主的かどうかは問題にしていないのです。
これに対して、高光製薬では投稿の内容についての指示はありません(措置命令では認定されていません)。
なので、ガイドラインをまじめに(論理的に)読めば読むほど、今回のケースを想定するのは困難です。
むしろ、上述のガイドラインの第2の2⑴イの、
「イ 事業者が第三者に対して自らの商品又は役務を無償で提供し、SNS等を通じた表示を行うことを依頼するものの、当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合。」
がステマではないという記載からすると、本件はまさに、
「事業者が第三者に対して自らの商品又は役務を無償で提供し、SNS等を通じた表示を行うことを依頼」
したただけの事案なのではないか、それなのになぜ、
「当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行」
ったのではないことになるのか、措置命令をみてもまったくわかりません。
というか、本件は、ガイドラインのガイドラインの第2の2⑴イのまんまのように、私には見えます。
措置命令の、「本件2商品の販売促進活動のために募集を行い」というのが、なんとなく意味があるのかなと勘繰ったりもしますが、それは、ガイドラインの第2の2⑴イの、
「イ 事業者が第三者に対して自らの商品又は役務を無償で提供し、SNS等を通じた表示を行うことを依頼する」
というのが、当然想定していることでしょう。
募集しないと無償提供のしようもないからです。
この記載だけから、募集しないで無償提供するのが前述のQ&Aの4番の街頭での(=募集しない?)無償配布(だけ?)を想定しているのだと読むことは不可能でしょう。
というより、街頭での無償配布だって、ある意味での「募集」でしょう。
昔、「募ってはいるが募集はしていない」と国会で珍答弁をした首相がいましたが、まさかこれもそういうことなのでしょうか?
というわけで、ガイドラインはまったくあてになりません。
(ガイドラインがあてにならないこと自体は実務家の間では周知の事実だと思うので、驚くに値しないというか、驚いたふりをする気にすらなりません。)
それに比べればまだQ&Aのほうがわかりやすいですが、それでも、Q6の、
「一般消費者の口コミ投稿を促進する目的で、サービスを割引価格で提供するという程度の関係の下であって、割引程度の対価であることも踏まえれば、表示内容の決定に関与しているとはいえません。」
という部分から、反対に、
販売を促進する目的で、商品を無償提供するという関係であれば、表示内容の決定に関与しているといえる
という反対解釈を読み取るのは、なかなか難しいのではないかと思います。
なので、身もふたもない言い方をすれば、ステマについてはQ&Aをまじめに読むことに意味はなく(ガイドラインは論外)、「なんとなくやばそうだなぁ」という”鼻が利く”ことが、大事なのでしょう。
あるいは、Q&Aはぜんぶ反対解釈する(OKといわれているもの以外は、ぜんぶだめ)と読むべきなのでしょう。
次に、この措置命令が問題だと思うのは、「SNSでも大人気!」という表示をしているのに、この部分について優良誤認が何ら問題にされていないことです。
もしSNSの画像の引用がなくて、「SNSでも大人気!」という表示を根拠なくやれば、あきらかに優良誤認でしょう。
なのに、同じ表示にSNSのヤラセ画像が付いたらむしろステマだけ(=課徴金なし)で優良誤認には問われない、という、なんともちぐはぐなことになります。
そもそもステマの何が問題なのかと言えば、中立な第三者の評価であるように装いながら、実は広告主の広告だった、ということでしょう。
これに対して本件で引用された画像をみて、「中立な第三者の評価」を読み取る人がいるでしょうか?
画像から読み取れるとしたら、「SNSでもたくさん投稿があったんだな」ということでしょうが、たくさん投稿があったという事実は、表示の内容ではありません。
ここでふと思い出すのが、「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」第2の2⑶で「問題となる事例」とされている、
「○ 商品・サービスを提供する店舗を経営する事業者が、口コミ投稿の代行を行う事業者に依頼し、自己の供給する商品・サービスに関するサイトの口コミ情報コーナーに口コミを多数書き込ませ、口コミサイト上の評価自体を変動させて、もともと口コミサイト上で当該商品・サービスに対する好意的な評価はさほど多くなかったにもかかわらず、提供する商品・サービスの品質その他の内容について、あたかも一般消費者の多数から好意的評価を受けているかのように表示させること。」
という例です。
ここで、優良誤認にあたるためには、評価自体を変動させるくらいの多数の高評価が投稿される必要がある、という考え方が示されています。
優良誤認にあたるためには、1つの高評価があるのでは足りなくて、たくさんあることが大事だ、ということです。
なので、本件で問題なのは、ステマが問題視する、中立な第三者の評価かどうかということではなくて、まさに、たくさんの人がSNSで投稿している(=多数から高評価を受けている)と表示したことではないかと思うのです。
そして、実際の表示物は、下のとおりであり、
転載されている写真は15枚です。(引用元は措置命令)
これだけで「大人気」というのは、ちょっと物足りません。
つまり、この15枚の写真は、投稿が15件あったことを示すために使われているのではなくて、あくまで「大人気!」であることを印象付けるための、いわばデザインとして用いられているに過ぎないのです。
こういったことからも、この画像の引用をステマというのは、ちょっと疑問です。
というより、この15枚の画像をステマというなら、「SNSでも大人気!」という文字のほうが、はるかに問題だと思います。
かつての消費者庁なら、「SNSでも大人気であることの合理的根拠資料を出せ」といったでしょう(葛の花イソフラボン事件。それが法運用としてよいかどうかはさておき。)
それなのに、この表示でステマを認定しておきながら優良誤認は問題視しないというのは、バランスが悪いと思うのです。
ちなみに、現在の高光製薬のサイトでは、下のとおり、「SNSで大人気!」が、「みんなでノビ活!」に変わっています。(高光製薬ウェブサイトより引用)

これをみても、要は、「SNSで」という文言がいけなかったのだ、ということがよくわかります。
でも、こんないかにもインスタっぽい画像で(実際、インスタに投稿されたものなわけですが)、それでも問題なしというなら(消費者庁の承認の上てやっていることはあきらかです)、「SNSで大人気!」と明記したのが消費者庁的には決定的にまずかった、ということなのでしょうね。
ふつうの人がみたら修正後の表示だって、インスタの投稿に見えるのですが、それは問題視されてないわけですから。
事業者さんは、いろいろと考えられますね。感心します。
でも、個人的には、ほんとうにこのような修正で大丈夫なのか、ちょっと疑問に思っています(消費者庁がいいというから、目くじら立てる必要はないのかもしれませんが)。
というのは、修正前の文言は「SNSで大人気!」です。
このうち、「大人気!」かどうかは優良誤認には関係するかもしれませんが、ステマには関係しません。
ステマは商品役務の性能などには関係せず、あくまで表示主体をいつわるものに過ぎないからです。
「大人気!」かどうかは、表示主体には関係ありません。
そうすると、ステマで関係するのは、「SNSで」という部分ということになります。
ですが、修正後のものも、画像を見ればいかにもインスタに投稿されているように見えるわけで(実際のインスタの投稿なのだから当たり前です)、そういう意味では、画像をもってして「SNSで投稿がありました」と語らしめている、ともいえます。
そうすると、修正前のものと、何も変わっていないともいえます。
消費者の目からみた印象も、「大人気!」かどうかはステマには関係ないので無視すると、修正前のものは「SNSで(投稿されました)」という、文字の部分です。
これが、SNSの本物の画像によって、SNSに投稿があった(実際にあったのですが)と語らしめているわけであり、消費者目線で見ても、文字で「SNSで」と書くのとどっこいどっこいなんじゃないかと思います。
私が以前受けた相談で、実際にはテレビで紹介されたことがない商品のウェブ広告で、あたかもテレビで紹介されたかのような演出をした画像(レポーターとおぼしき若い女の子が、マイクを持って、その商品を紹介しているふうの画像で、画面の左上にはめざましテレビの時報を模したようなぶっとい「7:32」みたいな数字まで表示されていました😃)を載せても大丈夫か、という相談がありました。
担当者は、実際にはテレビで紹介されてないのにテレビで紹介されたかのように見えるので優良誤認になるのではないかと懸念していましたが、私は、
「これはよくある、『ニュースです!』みたいな、ニュースを模したたんなる演出ですから、優良誤認にはならないのではないですかね。」
と答えた記憶があります。
これがもし、「NHKで紹介されました」とか文字で書いていたらアウトだったでしょうけれど、画像をみれば本物のテレビ番組でないことはわかりそうな画像だったので、問題ないと考えました。
ところが、本件は、本物のインスタの画像を使っているのですから、事情が違います。
本物の画像を使っている以上、これをみて、「インスタで投稿されたんだな」と思う消費者はいるでしょう(実際に投稿されているのですし)。
そうすると、文字で何も書いていなくても、ふつうはそのインスタは、「事業者の表示」(広告)ではなく、第三者によるたんなる投稿だと思うのではないでしょうか。
インスタの投稿画像をみただけで、「高光製薬のウェブサイトなんだから、高光製薬が依頼して投稿させたに違いない」と思う人は、たぶんいないと思います。
そして、インスタの投稿画像をみただけで「高光製薬のウェブサイトなんだから、高光製薬が依頼して投稿させたに違いない」と思わない人(=表示主体を誤認した人)は、「SNSで大人気!」と書いてあってもやっぱり、「高光製薬のウェブサイトなんだから、高光製薬が依頼して投稿させたに違いない」と思わない(=表示主体を誤認しない)のではないでしょうか?
逆に、インスタの投稿画像をみただけで「高光製薬のウェブサイトなんだから、高光製薬が依頼して投稿させたに違いない」と思う人(=表示主体を誤認しない人)は、「SNSで大人気!」と書いてあってもやっぱり、「高光製薬のウェブサイトなんだから、高光製薬が依頼して投稿させたに違いない」と思う(=表示主体を誤認する)と思います。
つまり、本件がステマにあたって、修正後のがステマに当たらないためには、
「SNSで大人気!」という文字をみたら「この投稿は高光製薬のウェブサイトだけれど、この投稿は中立な投稿なんだろうな」と思う人(主体を誤認した人)が、
インスタの投稿画像だけ(+「みんなでノビ活!」という表示)を見たら、「この投稿は高光製薬のウェブサイトなのだから、当然、この投稿は高光製薬が投稿させたんだろうな」と思うようになる(主体を誤認しなくなる)
ということが必要なはずだけれど、そんな人いるのか?というのが素朴な疑問です。
どうも消費者庁は、「SNSで大人気!」という、ほんとうは優良誤認で処断すべき不当性を、ステマの不当性に紛れ込ませている(そして、そのことに気づいていない)ように思えてなりません。
まあ、消費者庁にしてみたら、
「文字で『SNS』と書くほうが、SNSへの投稿であることがあえて強調されていて、主体を誤認させる効果が強いのだ」
「インスタの投稿動画は仮に本物でも、あえてSNSであることを強調しているわけではないので、第三者の投稿だと誤認させる効果は小さいのだ」
ということかもしれませんが、ほんとうにそうか?という気がします。
というより、こんな論点があるなんて、そもそも気づいてすらいないのではないでしょうか。
ちなみにこの点については、上で引用した通販新聞の記事では、
「SNS投稿は、画像のみの転載だが、「大人気という表示、画像を併せて見た時に、企業の表示と認識しづらい」(表示対策課)としてステマと判断した。
「画像」のみを転載した場合の判断は「全体印象から判断するため何とも言えない」(同)。」
と報じられています。
通販新聞さんは、いつも他紙よりも一歩も二歩も踏み込んだ取材で、参考になります。
念のためステマガイドラインの関係個所を検討しておくと、同ガイドラインの第3の2⑵オ(ア)では、
「(ア) ただし、事業者自身のウェブサイトであっても、ウェブサイトを構成する特定のページにおいて当該事業者の表示ではないと一般消費者に誤認されるおそれがあるような場合
(例えば、媒体上で、専門家や一般消費者等の第三者の客観的な意見として表示をしているように見えるものの、実際には、事業者が当該第三者に依頼・指示をして特定の内容の表示をさせた場合や、そもそも事業者が作成し、第三者に何らの依頼すらしていない場合)
には、第三者の表示は、当該事業者の表示であることを明瞭に表示しなければならない。」
とされています。
ですが本件では、修正前でも修正後でも、たんなる画像だけですからそもそも「客観的な意見として表示をしているように見える」とはいえなさそうですし、内容の指示はしていませんから「特定の内容の表示をさせた場合」ともいえません。
そうすると一般論としての「当該事業者の表示ではないと一般消費者に誤認されるおそれがあるような場合」という基準でいくしかありませんが、この基準で、修正前の「SNSで大人気!」はだめで修正後の「みんなでノビ活!」ならOKだと判定しろというのは不可能でしょう。
というわけで、ここでもやっぱりガイドラインは役に立ちませんでした(笑)。
なお本件では、商品の効果効能は何ら問題視されていませんが、それは、そもそも表示のどこを見ても「背が伸びる」とは書いていないので当然です。
背が伸びることを印象付ける表示として目につくのは、もちろん、「ノビルン」(伸びるん?)という商品名と(笑)、下のような、上向き矢印の表示(引用元は措置命令)と、

あとは、下のような成長期に必要な栄養素が凝縮されていることを示す表示くらいです(引用元は措置命令)。

あとは、管理栄養士さんのおすすめくらいでしょうか。
まあ、この手の健康食品の効き目といえば栄養補給くらいのものだというのは常識的にわかるわけですから(もし薬効があったり遺伝子に働きかけるとしたら、親は怖くて買わない)、少なくとも景表法の観点からは、背が伸びる(少なくとも、背が伸びるのを助ける)くらいは表示してもよいように思いますが、そうすると薬機法や食品表示法にひっかかるから、表示できないのでしょう。
この種の表示を考える方々のご苦労がしのばれます。
あと、細かいことですが、措置命令の、
「高光製薬は、本件2商品を一般消費者に販売するに当たり、高光製薬が本件2商品の販売促進活動のために募集を行い、当該募集に応じた第三者に対し、本件2商品を無償提供した上、本件2商品に関してSNSに投稿を依頼したことによって当該第三者が投稿した表示について、画像部分を抜粋して、例えば・・・」
という認定は、SNSへの投稿が無償提供の条件だったのかどうか、少々あいまいですね。
常識的に言えば、SNSへの投稿を条件に無償提供することを応募条件として募集したのだろうと推測できますが、理屈のうえでは、SNSの投稿はとくに条件にしないで希望者に商品を無償提供するという販促方法もありうるわけで(あるいは、まったく無条件ではないにせよ、アンケートに回答するとかは条件で、SNS投稿は任意、というハイブリッド型もあるかもしれません。)、この認定ではSNS投稿が無償提供の条件だったのか、よくわかりません。
むしろ、「販売促進活動のために募集を行い、当該募集に応じた第三者に対し、本件2商品を無償提供した」という文言を論理的に読むなら、「募集」は(無条件の)募集としてあって、応じた人に「無償提供した」のであって、そのあとの、「本件2商品に関してSNSに投稿を依頼したことによって当該第三者が投稿した」というのとは応募とは関係がない、あるいは、無償提供した「上」で(≒あとで)、投稿依頼したのであり、募集時には投稿は条件でなかった、とも読めます。
もしこの読み方が正しくて、消費者庁が意図的にこのような命令文にしたとしたら、これは国民に対する大きな欺まんでしょう。
担当官解説でしっかり説明してほしいところです。
ちなみに大正製薬事件では、
「大正製薬は、本件商品を一般消費者に販売するに当たり、第三者に対し、本件商品の無償提供及び対価の提供を条件に、本件商品に関してInstagramに投稿を依頼したことなどによって当該第三者が投稿した表示について・・・」
というふうに、対価支払を条件に投稿依頼したことが明示的に認定されていますし、ロート製薬事件でも、
「ロート製薬は、本件商品を一般消費者に販売するに当たり、モニター募集サイト(注・事業者が宣伝したい商品等についてのモニターを募集し、当該モニターに対し、当該商品等を無償提供するなどして、口コミ投稿や、アンケートへの回答を求めるなどのいわゆる「モニターサービス」を提供するウェブサイト)を通じて、第三者に対し、本件商品を無償提供した上、本件商品に関してInstagramにロート製薬が指示する方針に沿った投稿をすることなどを依頼したことによって当該第三者が投稿した表示について・・・」
というふうに、無償提供の条件として口コミ投稿を求めるモニター募集サイトへの応募であることが、はっきり認定されています。
こういうのと比べると、高光製薬の措置命令には、いかにも意図的にあいまいに書いてあるように思えてきます。
こういうことを考えるにつけ、やっぱり措置命令を出すことは大事ですね。
確約だったら、こんなこまかいあらは見えなかったと思います。
(ステマは確約ができないので、基本措置命令になります。)
こういうところから、確約の弊害(不透明な法運用のリスク)がみえてくるように思います。




