景表法

2019年11月18日 (月)

【お知らせ】景表法のセミナーを開きます。

ビジネスロージャーナルに景表法の記事を寄稿させていただいたご縁で、レクシスネクシス主催の景表法セミナーでお話させていただくことになりました。

こちらのURLから申込みできます。

http://www.lexis-seminar.jp/20191209-2-2/

開催日  2019年12月09日(月)

開催時間  09:30~12:00 (受付開始 09:15~)

会場名  トスラブ山王健保会館 (2階会議室)

会場所在地 〒 107-0052 東京都港区赤坂2丁目5−6 トスラブ山王健保会館

参加費  2万2000円(税込み)

ここ数年景表法は興味深い執行例が多く、話題には事欠きません。

景表法のセミナーは今年も何度もご依頼いただいていますが、そのたびに、取り上げるべき新しい事件が発生している印象です。

おそらく本年最後のセミナーになるので、一年の総決算のつもりで気合いを入れて行きたいと思います。

ご興味のある方はぜひお申し込み下さい。

 

 

2019年8月26日 (月)

ビジネスロージャーナルに寄稿しました

ビジネスロージャーナル10月号に、

最近の消費者庁運用例にみる不当表示認定回避のための施策

という論文を寄稿しました。

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 編集部の方からは、こういうふうな表示をすれば不当表示にならないよというような、NGワード集的なものを期待されていたようなのですが、最近の消費者庁の運用に照らすと、そのような小手先の、あるいは、場当たり的な対策ではだめで、一段高いレベルから骨太のチェックしないといけないよ、という思いを込めながら書きました。

教科書的な説明としては、不当表示というのは、通常レベルの消費者を誤認させるかどうかできまるということなのですが、最近は、そういうレベルではなくて、よりより表示に改善できる余地があるなら措置命令で是正させているように思えてなりません。

及第点ではだめで、満点あるいは満点近くでなければならない、というイメージです。

よく依頼者の方からは、どのレベルなら注意止まりで、どのくらいから措置命令を受けるのか、という質問を受けますが、わたしが最近相談を受けた2つの事件でも、どうして一方が措置命令で他方が注意なのか、まったく理解に苦しくというほかないケースがあり、合理的に事前に予測するのはほとんど不可能ではないかと思っています。

(というわけでこの論文にも、注意ですませるノウハウみたいなものは書いていませんのでご了承下さい。)

表示対策課の課長が大元課長から西川課長にかわって、景表法の運用がどう変わるのか、大いに注目です。

ご興味のある方はご一読いただけるとうれしいです。

2019年5月22日 (水)

二重価格表示の「過去8週間の過半」の基準時

わたしは二重価格表示が適法となる要件について、

①比較対照に用いる価格(「通常価格」)での販売期間が通算2週間以上、かつ、

②セールの各時点において、その時点から遡る8 週間において、「通常価格」で販売されていた 期間が当該商品の販売期間の過半数を占めており、かつ、

③「通常価格」で販売された日からセール開始時 までに2週間経過していないこと

と説明することが多いのですが(たとえば公開されているものとして東京都のセミナーのスライドの39頁をご覧下さい)、これの②について、価格表示ガイドラインでは

「一般的には、二重価格表示を行う最近時(最近時については、セール開始時点からさかのぼる8週間について検討されるものとする」

とされているので、「セールの各時点」は「セール開始時点」の間違いではないか、という指摘をたびたび受けます。

セミナー等では時間の関係もあり、「とにかくこの3つの要件だけ、覚えてください」といって理屈を説明しないので、こういう質問が出てしまうのもしかたないなと常々反省しており、今日はこの点についてきちんと説明したいと思います。

実はこの点については、大元他『景品表示法〔第5版〕』(緑本)101頁では、

「・・・最近相当期間価格と認められるためには、

・ 当該商品の販売期間の過半を占めていること(要件a)

・ その価格での販売期間が2週間未満でないこと(要件b)

・ その価格で販売された最後の日から2週間以上経過していないこと(要件c)

の3つの要件を満たすことが必要であると整理できる。」

と整理されており、そのうえで、

「これらのうち要件a〔過半の要件〕とc〔2週間以上経過していないこと〕については、時間の経過によって要件該当性の基礎となる事情が変化していくものであるため、要件の成立時期について、二重価格表示が行われるセールの開始時点で成立していれば足りるのか、それとも、セールが終わるまで常に成立していなければならないのかが問題となる。」

と問題提起されています。

そしてさらに続けて、

「例えば、過去8週間継続して同じ価格で販売してきた商品について、当該価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合、

セールの開始時点では当該比較対照価格は要件aからcを全て満たしているが、

セール期間が2週間となった時点で要件c〔最後の日から2週間以上経過していないこと〕を満たさなくなり、

さらに、セール期間が4週間となった時点で要件a〔過半の要件〕も満たさなくなる(セールが始まった4週間の時点で過去8週間をみると、比較対照価格での販売期間が4週間、セール価格での販売期間が4週間となって、前者〔比較対照価格での販売期間〕が「過半を占める」状況が失われてしまう)が、

このような場合〔要件cについてはセール期間が2週間を超えた場合、要件aについてはセール期間が4週間を超えた場合〕に二重価格表示を継続することが景品表示法上問題とならないのであろうか。」

という形で問題提起がなされ、これに答える形で、

「この点については、原則として、要件c〔最後の日から2週間経過していないこと〕についてはセール開始時点で成立していれば足りると考えられるが、

要件a〔過半の要件〕についてはセールが終わるまで常に成立している必要があり

要件a〔過半の要件〕が満たされなくなった後〔セール開始後4週間を経過した後〕は、セールを継続すること〔例えば、「通常100円のところ、60円!」というセールをしている場合に、二重価格表示をせずに60円で売り続けること〕自体は何の問題もないものの、

当初の二重価格表示を継続することは景品表示法上問題となるおそれがある。」

と、過去8週の過半の要件(要件a)はセール各時点で満たす必要があり、セール開始後4週間で過去8週中過半の要件(要件a)は満たさなくなる、と明記されています。

つまり、「過半」の要件は各時点において判断され、セール開始後4週間を経過すると「過半」の要件を満たさなくなる(各時点で過去8週間をさかのぼると、セール開始後4週間経過するとセール後の販売が過去8週の過半になってしまうから)、ということです。

なお、過去8週の過半の要件がセールの各時点で満たす必要があることは、大元100頁で、より端的に、

「この要件〔当該商品の販売期間の過半を占めていること〕は、・・・セール実施期間を通じて満たされている必要がある。」

とまとめられています。これだけ見ると少しわかりにくいですが、前述のように104頁以下の詳しい説明をみると、「セール実施期間を通じて満たされている必要がある」というのは、「セールの各時点で過去8週の過半を満たしている必要がある」という意味だとわかります。

これを短くまとめると、②の「セールの各時点において、その時点から遡る8週間において、通常価格で販売されていた期間が当該商品の販売期間の過半数を占める」という結論になります。

これは、少し考えてみれば当然のことで、たとえば「通常100円のところ、60円!」という表示をした場合、消費者はセールがいつ始まったかなど(開始時を明記しない限り)知るよしもありませんから、それを見た消費者は、その表示を見た時点において「通常は100円なのだな」と認識するわけです。

「通常」は、過去8週間の過半とされているので、消費者が表示を見る各時点(=セールの各時点)において、各時点からさかのぼる8週の過半でなければ、消費者の上記認識とずれてしまいます。

また、セール開始時に「過去8週の過半」を満たせばいいのだとすると、二重価格表示を何年も続けてよいことになり、これはあきらかに不合理です(2年も3年も前の価格を「通常価格」というのはむりです)。

では二重価格表示を4週間を超えて行いたい場合にはどうすればいいのかというと、比較対照価格がいつの時点かわかるように表示すればいいのです。

たとえば「通常100円のところ、60円! 2019年4月1日よりセール開始」と表示すれば、100円は2019年3月31日からさかのぼる8週間の過半の価格だとわかるので、4週間を超えても問題ないと思われます。

この点については、前掲大元104頁では、前記同書引用箇所に続けて、

「ただし、二重価格表示が行われる時点で、セールの期間が明示されている場合には、一般消費者にとって価格の変化の過程が明かであり、セール期間中に要件a〔過半の要件〕が満たされなくなったとしても、直ちに問題とはならないと考えられる。」

と解説されています。

これも考え方は同じで、「通常100円のところ、60円」という二重価格表示とともに、「セール期間2019年4月1日~5月31日」と表示しておけば、比較対照価格は3月31日からさかのぼる8週間の過半の価格だとわかるから問題ない、ということです。

なお、このように理解しているのは私と緑本だけでなく、たとえば加藤他編著『景品表示法の法律相談〔改訂版〕』229頁でも、

「①の要件〔注・比較対照価格で販売された全期間が直近8週間において過半を占めること〕に関しては二重価格表示を継続している期間中は継続して充足していることが必要であるとされています。」

「そうすると、8週間連続して比較対照価格で販売した後、より安い販売価格でセールするとともに二重価格表示を行っていた場合において、セール期間が4週間を超えた時点で①の要件を満たさなくなるという事態が生じ、比較対照価格は最近相当期間価格といえなくなります。」

というように、同趣旨の解説がなされています。

というわけで、正解はあきらかなのですが、価格表示ガイドラインの記載が、

「一般的には、二重価格表示を行う最近時(最近時については、セール開始時点からさかのぼる8週間について検討されるものとする」

というように、これ以上ないくらい非常に明確に書いてあるので、誤解を招くのも当然だと思います。

緑本の解説をみても、なぜガイドラインの「セール開始時点から」という文言にもかかわらず、

「これらのうち要件a〔過半の要件〕とc〔2週間以上経過していないこと〕については、時間の経過によって要件該当性の基礎となる事情が変化していくものであるため、要件の成立時期について、二重価格表示が行われるセールの開始時点で成立していれば足りるのか、それとも、セールが終わるまで常に成立していなければならないのかが問題となる。」

のか、さっぱりわかりません。

ガイドラインをみたら誰だって、文字どおり「セール開始時点から」という意味だと理解するだろうからです。

なので、このガイドラインの文言は、私はまちがいだと思います。

(しょせんガイドラインはガイドラインですから、法律の解釈として間違っていても、論理的にはなんらおかしくありません。)

あるいは、ガイドライン制定時は過去8週の過半をいつの時点でみるのかをあまり意識せず、漠然と、「セール開始時点から」とドラフトしてしまって、あとになって、まずい(これでは何年でもセールができてしまう)ことに気づいて、ガイドラインの解釈修正(緑本)という形でしのごうとしているのかもしれません。

(そんなばかなドラフトをすることなんてありうるのか、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、少なくとも当時の公正取引委員会のレベルはそんなもんです。)

というわけで、ここは非常に誤解を招きやすいところなので(というか、どうみてもガイドラインの文言がおかしいので)、ガイドラインを早急に改正すべきだと思います。

間違いを認めるのはけっして恥ずかしいことではありません。

明かな間違いでもけっして認めないのは、政治家だけで充分です。

わたしも今後のセミナー等では、「ガイドラインの文言は違う説明になっているけど、解釈でこのように(上記①~③のように)修正されています」と一言説明しようと思います。

2019年4月 3日 (水)

不当表示の再発防止策を実施済みの事業者に出す措置命令

不当表示については、事業者がすでに不当表示をやめていても、措置命令を出すことができます(既往の行為に対する措置命令)。

このことは、景表法7条1項で、

「内閣総理大臣は、第四条の規定による制限若しくは禁止又は第五条の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。その命令は、当該違反行為が既になくなつている場合においても、次に掲げる者に対し、することができる

一 当該違反行為をした事業者

〔以下省略〕」

と明記されています。

ちなみに独禁法の不当な取引制限に対する排除措置命令は、独禁法7条2項で、

「公正取引委員会は、第三条又は前条の規定に違反する行為が既になくなつている場合においても、特に必要があると認めるときは、第八章第二節に規定する手続に従い、次に掲げる者に対し、当該行為が既になくなつている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる。ただし、当該行為がなくなつた日から五年を経過したときは、この限りでない。

一 当該行為をした事業者

〔以下省略〕」

とされていて、「特に必要があると認めるとき」という条件付ではありますが、やはり既往の行為に対しても出すことができます。

つまり景表法の場合は、「特に必要があると認めるとき」でなくても、措置命令を出すことができるのです。

では不当表示をやめた事業者が再発防止策を実施して、措置命令で命じられそうな措置をすべて先回りして講じておけば措置命令はでないのかというと、そんなことはありません。

まず、上述のとおり、景表法には「特に必要があると認めるとき」という要件がありません。

それに、事業者が任意で措置を講じたのと、命令の強制力のもとで実施するのとでは、意味がちがいます。

つまり措置命令の場合には、それに違反すれば2年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)の対象になりますが(景表法36条)、任意の措置ではそのような担保がありません。

措置命令ではたとえば、

「貴社は、今後、本件商品又はこれらと同種の商品の取引に関し、前記の表示と同様の表示を行うことにより、当該商品の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示をしてはならない」

というような、将来の行為の禁止も命じられるので、これを刑事罰で担保するのかしないのかは大違いです。

したがって、仮に事業者がすでに任意でとった措置を超える措置を命じない場合であっても、措置命令の必要がないことにはなりません。

ましてや、一般消費者への周知が不十分である(たとえばホームページの見えにくいところにこっそり公表する)場合には、措置命令がでても何らおかしくありません。

というわけで、措置命令を避けるためには、公表もしっかりやるし、再発防止策も万全を期する必要があります。

それでも将来の禁止を刑事罰で担保する必要があると消費者庁が考えれば、やはり、措置命令が出る可能性はあると思われます。

平等原則違反だとか、裁量の逸脱だとかいっても、たぶん無理でしょう。

いちど違反をしてしまっている以上、刑事罰などの法的な担保が何もなくても再発しない、というのはかなりしんどいと思います。

2019年2月23日 (土)

会員登録者にクレジットカード番号を記入させてする懸賞企画に関する公取委回答

公正取引615号(2002年1月)37頁「景品表示法相談コーナー」(公正取引委員会事務総局経済取引局消費者取引課)に、
 
「当社は、インターネット上でショッピングサイトを運営し、入会無料の会員サービスを行っている。会員登録してくれた人を対象に抽選で景品を提供したいが、オープン懸賞とすることは可能でしょうか。」
 
という質問があります。
 
これに対して、平成13年4月の「インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて」を引用しつつ、
 
「入会無料の会員登録に際しての景品提供は、その時点で取引を伴うものではありませんので、原則として、オープン懸賞と認められます。」
 
と回答されています。
 
ここまではいいのですが、問題はその次で、
 
「ただし、入会に際して、クレジットカード番号の入力を要件とする等取引そのもに結びつく情報提供を会員登録において要求される場合には、取引に付随した景品提供としてオープン懸賞とは認められません。」
 
と回答されています。
 
しかし、これは間違いです。
 
控えめに言って、上記通達に反します。
 
上記通達では、これ以上ないくらい明確に、
 
「消費者はホームページ内のサイト間を自由に移動することができることから,懸賞サイトが商取引サイト上にあったり,商取引サイトを見なければ懸賞サイトを見ることができないようなホームページの構造であったとしても,懸賞に応募しようとする者が商品やサービスを購入することに直ちにつながるものではない
 
したがって,ホームページ上で実施される懸賞企画は,当該ホームページの構造が上記のようなものであったとしても,取引に付随する経済上の利益の提供に該当せず,景品表示法に基づく規制の対象とはならない(いわゆるオープン懸賞として取り扱われる。 )(図1-1及び図1-2)。
 
ただし,商取引サイトにおいて商品やサービスを購入しなければ懸賞企画に応募できない場合や,商品又はサービスを購入することにより,ホームページ上の懸賞企画に応募することが可能又は容易になる場合・・・には,取引付随性が認められることから,景品表示法に基づく規制の対象となる。」
 
と明記されているからです。
 
取引付随性が認められるのは、商品購入を応募条件にする場合や、購入で応募が容易になる場合に限られる、とはっきり言ってます。
 
カード番号を入力させるだけで取引付随性が生じるなんてどこにも書いていません。
 
解釈論としても、カード番号を入力させるだけで取引付随性ありなんて、どうかんがえても無茶です。
 
カード番号を入力しただけで、そのうち多くの人が買い物するだろうなんて、なんの根拠もありません。
 
公取委のガイドラインをみても、ここまでゆるやかに取引付随性を認めている例はありません。
 
せいぜい、来店者とか、商品パッケージで企画を告知する場合が載っているくらいです。
 
カード番号だけで取引付随性ありなんて言い出したら、インターネットの無料の会員登録の多くが懸賞規制の対象になり、前記通知が骨抜きになってしまいます。
 
というわけで、この取引課の回答はまちがいですから、無視するほかないと思います。

2018年12月26日 (水)

無料の会員登録で付与するポイントは景品類か?

先日、とある講習会が終わったあとに質問に来られた方の質問に、
 
「オンラインゲームに無料で登録した人に、ゲームで使えるポイントを付与している。
 
取引付随性がないので景品ではないと整理していたが、消費者庁に念のため確認したら、将来の取引を誘引するので景品類に該当するといわれた。
 
おかしいのではないか?」
 
という質問がありました。
 
あくまで質問者の方からの伝聞ですので、事の真偽は確かめようもないのですが、もし消費者庁の回答がこのようなものだったとすると、私も、消費者庁の回答は間違っていると思いますし、質問者の方にもそのようにお答えしました。
 
質問者の方がご理解されていたとおり、どう考えても、取引付随性がありません(無料の登録は「取引」ではないので)。
 
パターンには、全員にポイントをあげるものと、抽選でポイントをあげるものとがありそうですが、どちらでも同じです(取引付随性がありません)。
 
もしこんなのが景品類に該当するとなると、たとえば、新聞のチラシにクーポン券をつけて、クーポン券持参者にスーパーが50円値引きする、というのも、取引付随性あり、となってしまいます。
 
新聞チラシに付けるクーポン券を、新聞社が費用を負担している(スーパーのチラシではあるものの)場合には、新聞という商品を買わせるためにスーパーで使えるクーポンを景品として付けた、ということも理屈の上ではありえますが、世の中にそのようなクーポンチラシはたぶん皆無でしょう。
 
上記質問のケースでは、そのような新聞社の存在すらなく、どこをどうたたいても、取引付随性は認められません。
 
2つめの、抽選でポイントをあげるパターンも、以前は規制されていたオープン懸賞(取引付随性のない懸賞)と同じです。
 
つまり現在では、取引付随性がない場合には、抽選で応募者に経済上の利益を提供することは、景品規制の対象外です。
 
なので、上記質問の抽選のパターンも、景品類には該当しません。
 
もう一つだけ例をあげれば、もし取引付随性がないのに将来の取引を誘引するからというだけの理由で景品類に該当してしまうとすると、むかしヤフーがヤフーBBをやりはじめたときにモデムを路上で無料で配りまくったような、取引付随性がない行為の典型として語られるようなものまで、景品類になってしまいます。
 
こういう、路上で配る物品は、取引付随性はありません。
 
たまたま手元にあった、長谷川古編『新しい景品規制』p80でも、
 
公道の歩行者を対象とするアンケート調査の回答者の謝礼とか・・・は、仮に顧客誘引手段と認められたとしても、・・・取引付随の要件に該当しない・・・ので規制されることはありません。」
 
と、はっきり書いてあります。
 
今回の消費者庁の回答の意図を忖度すると、
 
モデムはメルカリで転売できるなどそれ自体経済的価値が認められるけれど(なので、配った時点で提供が終わる)、
 
オンラインゲームのポイントはゲームで使う以外価値がので、必ずゲームをすることになるから、将来の有料ゲームという取引に付随するのだ(?)、
 
ということかもしれません。
 
つまり、オンラインゲームのポイントの提供は、実はポイント提供の時点では何も提供されていないに等しく、将来有償のゲームをする段階になってはじめて「経済上の利益」が提供されたとみなされるのだ(?)、という理屈です。
 
いろいろ無理やり考えてみましたが、でもやっぱり、これらの理屈には条文上の根拠がなく、成り立たないと思います。
 
この問題をもう少し深く考えるのに参考になるのが、
 
深町正徳「割引券の提供に関する景品表示法の考え方について」(公正取引587号、1999年)
 
という論文 です。
 
この論文では、1996年4月に行われた割引券に関する規制の変更について説明するものです。
 
簡単にまとめると、A取引に付随してB取引で使える割引券を提供する場合、変更前は、
 
①A取引に付随して割引券を「提供する行為」
 
 
②B取引において「割引券を使用する行為」(わたしはこれは、提供する事業者の側からみて、「割引券を使用させる行為」というほうが正確だと思います)
 
を分離してとらえ、②は景品類の提供にはあたらないが、①についてはあたる、と考えられていました。
 
これに対して変更後は、①も景品類の提供にはあたらないこととされました。
 
これを今回のポイント付与に応用すると、無料の会員登録者にポイントを付与する行為は、
 
①’無料の会員登録に付随(?)してポイントを「提供する行為」
 
 
②’将来ゲームをするときにポイントを「使用させる行為」
 
に分離でき、現在は①’が(有償取引との)取引付随性が認められても景品規制の対象外(②’はもともと対象外)なのだから、いわんや、無償の会員登録に付随するだけなら、景品類に該当するはずがない、ということになります。
 
つまり、将来有償行為に使用する(②)というのに引きずられて提供行為(①)が景品類の提供になるとは考えられておらず、それは運用変更前も変更後も同じだということです。
 
というわけで、いずれにしても、前記消費者庁の回答は誤り、ということになります。
 
もし消費者庁のご担当の方がこのような回答をされているなら、それはまちがいですから、改めていただきたいと思います。
 
もしそのような回答はしていないというなら、今回の記事は訂正しますのでご連絡いただければ幸いです。
 
(不確かかもしれない情報を流すのもどうかなと思いましたが、聞いたところ事実のようでしたし、きわめて実務的なインパクトが大きいと思ったので、書くことにしました。)
 

2018年10月12日 (金)

東京都の措置命令事件に消費者庁が課徴金を課した事例

ストッキングをはくだけで脚が細くなるなどの不当表示をして東京都から措置命令を受けていた(株)ギミックパターンという会社に対して、消費者庁から課徴金納付命令がなされました
 
都道府県知事には課徴金納付命令の権限がないので、都道府県が調査した案件に課徴金を課すべきことがわかったときにはどうするのか気になっていたのですが、この点については、2014(平成26)年8月26日第170回消費者委員会本会議において、白石座長代理から、
 
「都道府県知事には措置命令権限はあるが課徴金権限がないということは、その事件については消費者庁が受け取って課徴金の手続をするということになるのでしょうか。
 
非裁量制なので必ず手続に入るということなのか、どうなのか、その点を伺えればと思います。」
という質問があり(議事録p14)、これに対して、消費者庁松本課徴金制度検討室企画官から、
 
「・・・今、考えているのは、課徴金納付命令に関する手続については、消費者庁で行うということでございますので、仮に都道府県における措置命令において課徴金を課すべき対象があるとすれば、これは消費者庁のほうで対応していくことになるかと思います。」
 
という回答がなされていました(p15)。
 
さらに続けて河上消費者委員会委員長から、
 
「基本的には、措置命令と課徴金に関する手続というのは、別個に動いていると理解することになるのですか。」
 
という質問がなされ、これに対して消費者庁菅久審議官から、
 
「考えておりますのは、例えば都道府県が調査している場合。
 
1 つは、今回の法改正を受けて都道府県が担当するのは県域内の違反行為となりますので、そもそも規模基準とかいろいろ考えますと、課徴金の対象になるものが少ないのではないかと思っています。
 
ただ、都道府県が調査した途中の段階で、これが措置命令の後、課徴金納付命令の対象になり得ると判断した場合には、消費者庁にそこで通知ないし知らせてもらうと。
 
そこから先、消費者庁が調査する。つまり、措置命令を都道府県が出して、その後受け取って課徴金額を計算するというのは実務上、非常にやりにくいですので、むしろ途中の段階でわかった場合には、消費者庁のほうに移管なり連絡をしてもらうことを想定しています
 
ただ、実際上は県域内の違反行為にとどまりますので、都道府県の対象の事件で課徴金納付命令の対象になるものは少ないのではないかと思っております。」
 
という回答がなされていました(p15)。
 
こういう回答があったので、私はてっきり、都道府県が調査した案件で売り上げ規模が課徴金対象となるくらいに大きければ消費者庁に移管されるのだと思っていました。
 
でも今回のギミックパターンの処理をみると、東京都で措置命令まで出して、課徴金だけ消費者庁がかける、というようになっています。
 
法律上は、課徴金対象となるくらい違反売上が大きい事件に都道府県が措置命令を出していけない理由は何もないですし、大型事件は消費者庁に移管するあつかいにすると、かえって都道府県は小粒の事件しか扱えなくなってしまって、実質的には改正により権限が縮小してしまったようになり妥当ではありません。
 
なので今後は、本件のように、都道府県で措置命令を出して、消費者庁が課徴金納付命令を出す、という運用が定着するのではないかと思われます。
 
それから菅久審議官の
 
「今回の法改正を受けて都道府県が担当するのは県域内の違反行為となります」
 
という部分も、考えてみるとそのようなしばりは法律上なにもなくて、公表された東京都の措置命令概要をみても、ギミックパターンの不当表示は同社ウェブサイト上のものなので、違反行為が東京都内に限って行われたというわけではありません。
 
おそらく被害者が東京都に集中しているということもないでしょう。
 
同社の所在地は東京都ですが、それはどの都道府県が(あるいは消費者庁と都道府県のいずれが)処理すべきかという問題とは、あんまり関係ないでしょう(執行のしやすさという意味では関係ありそうですが)。 
 
この事件は課徴金額も8480万円と、けっこうな金額です(三菱自動車の4億8507万円、プラスワン・マーケティングの8824万円についで、歴代3位です)。
 
というわけで、この事件は都道府県でも大きな事件を摘発するんだという先例となるものであり、大変意義深いと思います。 
 
でも考えてみると、大型案件は消費者庁に移管、というのは、消費者庁の都合なのであって、都道府県にしてみらたら、せっかく内偵までして手間暇かけて調査したのに、課徴金がかかるとわかったとたんに手柄をぜんぶ消費者庁に取られてしまうわけで、そんな制度だと都道府県のやる気が萎えてしまうと思います。
 
また、都道府県が仮に消費者庁に移管しても、措置命令もまだ出ていないわけですから、消費者庁が握りつぶしてしまう(というと聞こえは悪いですが、注意にとどめる)ということも、可能性としてはありうるわけです。 
 
これに対して都道府県が措置命令まで出してしまえば、課徴金は義務的ですから、消費者庁はどうしたって課徴金を課さざるを得ないでしょう。
 
つまり、今回のような運用だと、都道府県が掘り起こした案件を消費者庁が握りつぶしてしまう(あるいは、注意にとどめてしまう)ということができないわけです。
 
というわけで、この、措置命令の権限を都道府県に与えつつ、課徴金は消費者庁でしかも義務的、という制度は、正式事件の掘り起こしという意味では、じわじわと効いてくる制度なのかもしれません。

2018年7月29日 (日)

マクドナルドへの措置命令について

マクドナルドに対して7月24日、優良誤認で措置命令が出ました
 
「東京ローストビーフバーガー」などの商品に成形肉を使っていた、ということです。
 
しかしこの事件、なんとも評価がむずかしい事件です。
 
措置命令を読むと、
 
「ローストされた牛赤身の肉塊をスライスする映像を放送」
 
するなどした表示が、
 
「あたかも、本件料理に使用されている「ローストビーフ」と称する料理には、牛のブロック肉を使用しているかのように示す表示」
 
であるとして、不当表示だと認定されています。
 
たしかに命令書の別表をみると、肉の塊を包丁で切っている写真が載っています。
 
ところが措置命令をよくみると、肉の塊を包丁で切る映像だけでなく、商品(「東京ローストビーフバーガー」)の写真そのものも、不当表示としてあげられています。
 
ではこの事件、いったい何がいけなかったのでしょう。
 
わたしはこの事件を最初に報道でみたとき、フォルクスが成形肉を「ステーキ」として提供していた事件を思い出しました(2005年11月15日排除命令)。
 
このフォルクス事件では、「ビーフステーキ」などのメニュー名が、
 
「あたかも,当該料理に使用している肉は,牛の生肉の切り身であるかのよう」
 
な表示であり、
 
「実際には,牛の成型肉(牛の生肉,脂身等を人工的に結着し,形状を整えたもの)であった。」
 
ので不当表示だ、とされました。
 
つまり、「ステーキ」という言葉は牛の生肉の切り身を焼いた料理を意味するのだから、成形肉を焼いた料理は「ステーキ」と呼んではいけない、という理屈です。
 
あくまで、「ステーキ」という言葉の意味の問題であることが、ポイントです。
 
わたしはこのフォルクスの事件が報道されたとき、まあ確かにステーキって、肉の塊を切って焼いたものっていうイメージがあるから、そういう解釈もあるのかな、と思いました。
 
といった過去の経緯も考えると、今回のマクドナルドの事件でも、「ローストビーフ」という言葉の意味が問題とされた可能性は大いにあります。
 
でも、「ローストビーフ」の意味からして、これはやや微妙です。
 
たとえば『広辞苑』では、「ローストビーフ」は、
 
「蒸焼にした牛肉」
 
とだけ説明してあり、固まり肉でなければならないとはされていません。
 
次に『新明解国語辞典』では、「ロースト」の説明として、
 
「牛肉や鶏肉などを焼くか蒸焼きにすること(した料理)。「-ビーフ5⃣・-チキン5⃣4⃣」
 
と説明されており、固まり肉であることを要求していません。
 
これに対して『大辞林』では、「ローストビーフ」を、
 
「牛のかたまり肉を天火で焼いた料理。」
 
と説明されています。
 
まあ確かに、ローストビーフのイメージは固まり肉を焼くか蒸すかしたもの、というイメージはわからなくもありません。
 
なので、もし今回の措置命令が「ローストビーフ」をそのような意味だと解釈して(いわばフォルクス事件で「ステーキ」は一枚肉を焼いたものに限ると解釈したのと同様に)、成形肉を使ってはいけない、と考えたのなら、先例にしたがった判断ということもできそうです。
 
問題は、措置命令が違反だと明示している「ローストされた牛赤身の肉塊をスライスする映像」です。
 
こういった映像一般が不当表示になるとすると、かなり広告実務への影響が大きいのではないでしょうか。
 
こういう、大きな塊肉を豪快にスライスするような映像って、広告宣伝では普通にイメージ映像として使われそうですよね。
 
今回の命令は、そういうイメージ映像もだめだ、とはっきり言っています。
 
「肉汁のしたたる大ぶりの塊肉を豪快にナイフでカットする映像を流すんだから、実際の商品もそうやって作れ!」
 
というのは、表示と実際を厳密に一致させるという意味では間違っていないのかもしれません。
 
でも、それってちょっと、広告の表現の幅を狭めてしまいすぎないでしょうか。
 
たとえばレストランのメニューの写真や食品サンプル(蠟でできた本物そっくりのサンプル)をみて、大きくて立派なエビフライだったので注文したら実物はずいぶん小さかった、というような経験って、誰でも一度や二度はしているのではないでしょうか。
 
インターネットの広告でも、こういうイメージ的な表現はいくらでもありそうです。
 
それも不当表示だというのも一つの見解ですが、法律で取り締まらないといけないものなのかなあという気がします。
 
ともあれ、どこまでのイメージ映像が広告上一般に許される誇張なのか、今後は厳しく問われることになりそうです。

2018年7月11日 (水)

老人ホーム「イリーゼ」に対する措置命令について

HITOWAケアサービス(株)という、老人ホーム運営会社が、7月3日、老人ホーム告示違反で措置命令を受けました
 
違反の内容は、パンフレットに、
 
「終の棲家として暮らせる重介護度の方へのケア」
 
「寝たきりなど要介護度が思い方もお過ごしいただくことができます。」
 
「ご希望の方には、医療機関と連携しご家族様のお気持ちに寄り添いながら看取り介護にも対応しております。」
 
と記載していたのに、実際には、
 
「入居者の行動が、
 
他の入居者又は自社の従業員の生命若しくは身体に危害を及ぼし
 
又は
 
その切迫したおそれがある場合であって、
 
イリーゼにおける通常の介護方法又は接遇方法ではこれを防止することができないときは、
 
当該入居者との入居契約を解除すること」
 
があった、というのが、老人ホーム告示6項違反とされました。
 
老人ホーム告示6項では、
 
「有料老人ホームにおいて、
 
終身にわたって入居者が居住し、
 
又は
 
介護サービスの提供を受けられるかのような表示であって、
 
入居者の状態によっては、
 
当該入居者が当該有料老人ホームにおいて終身にわたって居住し、又は介護サービスの提供を受けられない場合があるにもかかわらず、
 
そのことが明りょうに記載されていないもの」
 
が、不当表示として指定されています。
 
しかし、これって、事業者に厳しすぎないでしょうか。
 
告示6項の、
 
「入居者の状態によっては」
 
というところからイメージされるのは、要介護度が重くなったとか、本人の健康状態の悪化とか、そういうことなんじゃないでしょうか。
 
これに対して、本件の「実際のところ」は、
 
「入居者の行動が、他の入居者又は自社の従業員の生命若しくは身体に危害を及ぼし」
 
というようなことだった、ということです。
 
でも入居者の行動が人の生命身体に危害を及ぼす場合に退去させられることがあるなんて、あたりまえのことのような気がします。
 
それをいちいち明確に表示しないと不当表示というのは、告示6項の読み方として、ちょっと厳しすぎるように思うのです。
 
そして措置命令の「実際には」の認定は、その書き方からあきらかに、入居契約の文言のようにみえます。
 
でも、本件でいちばん大事なのは、入居契約の文言ではなくて、実際にどうだったか、ということなんじゃないでしょうか。
 
つまり、実際に解除した事例があったのか、あったとして、ほんとうに周りの人に危害を加えるおそれがあったのか、ということが大事なははずです。
 
わたしは常々、
 
「契約書で消費者に不利な条項はきちんと広告で表示しておかないと不当表示になりますよ」
 
と説明していますし、その意味で、本件措置命令は、ありうる判断だとは思います。
 
たとえば、入院保険の約款で、入院給付金の条件に、パンフレットに記載がないような条件があるような場合です。
 
事例としては、日本生命のがん保険のパンフレットが公取委の排除命令の対象になったものがあります(2003年)。
 
でも、人に危害を加えるおそれがある場合には退去させることがあるというのはあたりまえのことであり、それを表示しておかないと不当表示になる、というのはちょっと厳しすぎるように思うのです。
 
本件は指定告示の事件で(なので課徴金もかかりません)、老人ホーム以外には理屈の上では関係ない事件ですが、告示6項自体は景表法の一般論からそれほどはずれた規定ぶりではないので、考え方としては、優良誤認表示や有利誤認表示にも適用があったとしてもおかしくないと思います。
 
たとえばアパートの賃貸借契約で、退去時に敷金から床面積に応じた清掃費を控除する、なんていうのも、不動産屋さんの広告に明示しないといけないんでしょうか?
 
重要事項説明書に記載するのでは不十分なのでしょうか?
 
というわけで、約款や契約書を使って消費者と取引をしている事業者の方は、いま一度、広告で表示すべきような条項がないか、きびしい目で点検することをお勧めします。

2018年7月 2日 (月)

景品Q&A57番の疑問(ポイント充当額は「取引価額」か)

消費者庁ホームページの景品に関するよくある質問の57番に、
 
「当店ではポイントカードを発行しており、100円お買上げごとに1ポイント提供しています。
 
貯まったポイントは次回以降の買い物の際に1ポイントを10円として支払に充当することができます。
 
この度、2,000円のA商品の購入者を対象とする懸賞企画を実施しようと考えているところ、
 
A商品を購入する際に、貯まったポイントを使用した場合であっても懸賞企画に参加することは可能とします。
 
このように貯まったポイントを対価の支払に充当することにより商品を購入することが可能な場合の取引価額はどのように考えるのでしょうか。」
 
という設問があり、その回答として、
 
「本件の場合、貯まったポイントをA商品の購入の際に使用するか否かは購入者の判断によるものであり、
 
貯まったポイント分を対価の一部に充当することによりA商品を購入することは、
 
現金とポイントによって2,000円という対価の支払が行われたものと考えられるので、
 
本件における取引価額は2,000円となります。」
 
と回答されています。
 
まあ消費者庁がこれでいいというんだし、景品規制で措置命令が出ることはまず考えられないのでとやかくいう必要はないのかもしれません。
 
しかも、このような解釈でないとこの手の企画は回っていかないのだろうとも想像されます(ポイント充当者には懸賞参加資格を与えないとお客さんが怒りそうだし、ポイント充当額(の裏返しの、現金支払い額)で参加資格を判断するのはめんどう)。
 
しかしそれでも、このQ&Aは、理屈としてはおかしいと思います。
 
というのは、景表法上、ポイント制というのは、複数の取引を条件とする値引きと整理されており、値引きされた部分をふくめ「取引価額」というのは矛盾があるからです。
 
つまり、定義告示運用基準6(3)アで、
 
「取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減 額すること(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)」
 
とされていますが、この中の、
 
「複数回の取引を条件として対価を減額する場合」
 
という部分が、割引券やポイント制を想定しているものです。
 
つまり、最初の1000円の取引でポイントが10%(=100円)ついて、次の取引(たとえば2000円)にポイントを充当すると1900円で買える(100円値引きされる)、ということです。
 
この場合、2つめの取引の取引価額が1900円であることは、あきらかだと思います。
 
もしQ&A57番のように、ポイント充当分も取引価額を構成するという立場をとるなら、ポイントは値引きではない(ポイントという独自の財貨による支払充当である)と整理しないといけないでしょう。
 
でも、現行の告示や運用基準のどこをみても、そのような整理(ポイントが独自の財貨であるとの整理)が出てくるのか、わたしにはわかりません。
 
もしポイントが独自の財貨だという整理をしてしまうと、「値引」の3類型、つまり、
 
①減額(定義告示運用基準6(3)ア)
 
②割り戻し(同イ)
 
③増量値引(同ウ)
 
のどれにも当たらないことになり、そもそも値引と整理できなくなり、ひいては、ポイントは景品類なので取引価額の2割までしか提供できない、という困ったことになりかねないように思います。
 
それに、Q&A57番の、
 
「貯まったポイントをA商品の購入の際に使用するか否かは購入者の判断によるものであり」
 
という部分も、なぜそれが「値引」でない理由になるのか、さっぱりわかりません。
 
それはたんに、購入者が、今回の商品Aの取引で値引きを受けるか、それとも値引きを受けないか(将来の取引のためにポイントをとっておくか)を選択できるというだけで、今回の商品Aの取引で値引きを受けることを決めた以上、値引き以外の何物でもないのではないでしょうか。
 
Q&A57番のような解釈でないとこの手の企画は回っていかないんじゃないかということを上に述べましたが、これも考えようで、現金で2000円払った人にだけキャンペーン参加資格を与える、というのは何もおかしくないような気がします。
 
しかも、「取引価額」の考え方については、総付告示運用基準1(1)(懸賞告示運用基準でも準用)で、
 
「 購入者を対象とし、購入額に応じて景品類を提供する場合は、当該購入額を「取引の価額」とする。 」
 
と、はっきり書いてあるので、ポイント充当額も「購入額」を構成するのだと解釈しないかぎり、この規定と矛盾してしまいます。
 
(でも、ポイント充当額はあくまで「値引」であり、「購入額」にはふくまれようがないことは、先に述べたとおりです。)
 
というわけで、このQ&Aは、理屈の上ではおかしいのですが、消費者庁が実務の必要性に配慮して理屈を曲げてくれたと好意的に取るべきなのでしょう。
 
それでも、景表法のアドバイスをする弁護士としては、理屈だけで答えると消費者庁の解釈とはちがう解釈になることがあることを印象づけられるものであり、つくづく、景品規制のアドバイスはむずかしいと思わされます。

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