景表法

2018年6月10日 (日)

自他共通割引券の「他の事業者の供給する商品又は役務」の意味

総付運用基準4(2)では、
「自己の供給する商品又は役務の取引
 
及び
 
他の事業者の供給する商品又は役務の取引
 
において共通して用いられるものであって、
 
同額の割引を約する証票」
が割引券に該当し、総付の金額規制の適用除外とされています。
 
いわゆる自他共通割引券の総付適用除外です。
 
さて、ここで、
「自己の供給する商品又は役務の取引」
の意味については、総付運用基準には定義はありませんが、定義告示運用基準3(1)で、
「「自己の供給する商品又は役務の取引」には、
 
自己が製造し、又は販売する商品についての、
 
最終需要者に至るまでのすべての流通段階における取引が含まれる。」
と明記されています。
 
つまり、メーカー(自己)にとっての「自己の供給する商品又は役務の取引」には、当該メーカーの商品を販売する小売店と消費者との取引も含まれる、ということです。
 
これは、「自己の販売する」ではなく、「自己の供給する」とされていることからも明らかといえます。
 
(小売店から買った商品もメーカーの「供給」する商品であることに変わりはない、という意味。)
 
では、
「他の事業者の供給する商品又は役務の取引」
についてはどうでしょうか。
 
これについては、定義告示運用基準はもちろん、他の景品関係の告示や運用基準のどこをみても定義はありません。
 
では、
自己の供給する商品又は役務の取引」
自己が製造し、又は販売する商品についての、最終需要者に至るまでのすべての流通段階における取引(も含まれる)」
と定義したのと同様に、
他の事業者の供給する商品又は役務の取引」
他の事業者が製造し、又は販売する商品についての、最終需要者に至るまでのすべての流通段階における取引」
と定義してよいか、というと、ちょっと問題があります。
 
というのは、もしそのように定義してしまうと、メーカーAが製造する商品Aを小売店Bが販売する場合において、メーカーAが商品Aの割引券を(小売店Bから商品Aを購入する消費者に)提供すると、自他共通割引券の定義に該当してしまいかねず、そうすると、一定率の割引券が「割引券」に該当しなくなってしまうからです。
 
つまり、そのような割引券は、
「メーカーAの供給する商品・・・の取引
 
及び
 
小売店Bの供給する商品・・・の取引
 
において共通して用いられるもの」
に該当するので、
「同額の割引を約する証票」
でないかぎり、総付の適用除外にならないことになってしまうのです。
 
ただ、よく考えてみるとこれは
「他の事業者の供給する商品又は役務の取引」
をどう定義しても出てくる不都合であり、この不都合を回避するには、自他共通割引券を、
「自己の供給する商品又は役務の取引
 
及び
 
他の事業者の供給する商品又は役務の取引(自己の供給する商品又は役務の取引を除く)
 
において共通して用いられるものであって、
 
同額の割引を約する証票」
とでも定義するしかないように思われます。
 
ただ、そのような定義は論理的には正しいかもしれませんが、一見しただけではその意図すら測りかねるような、複雑怪奇な定義だと言わざるをえないでしょう。
 
大事なことは、メーカーAが自社製商品Aを小売店Bを通じて購入する消費者に提供する割引券は、自他共通割引券ではなく、たんなる自社割引券である(よって、値引きなので、そもそも景品類に該当しない)、ということです。 
 
なので、一定額だけでなく、一定率の割引券(2割引券など)も、たんなる値引きとして問題なく提供できます。

2018年5月17日 (木)

フリーテルへの課徴金の算定方法について

倒産したフリーテルが「業界最速」などと不当表示をしていたことに対して、課徴金納付命令が2018年3月23日に出ています
 
その課徴金の算定方法が、同種事案で参考になると思われるので説明しておきます。
 
課徴金導入前、とある研究会で、携帯電話サービスの不当表示について課徴金を課すときに、算定基礎の売上はどれをとるのかなぁと、考えたことがあって、そのときには、「KDDI(株)に対する件(2013年5月21日)」を題材に考えました。
 
この事件は、KDDIが、「au 4G LTE」なる移動体通信サービスを提供するに当たり、あたかも、iPhone 5を使用した場合、2013年3月末日までに全国のほとんどで受信時の最大通信速度が75Mbpsとなるかのように表示していたが、実際には、75Mbpsで利用できるのは人口カバー率14%の地域であった。」という事件だったのですが、では課徴金額の基礎は、 
①不当表示期間中のiPhone 5の全ての通信料収入か、それとも、不当表示期間中に新規契約した加入者からのiPhone 5の通信料収入か、
 
②iPhone 5(端末)の売上も含まれるのか(そもそも端末は「商品」であり、通信サービス(役務)とは別物か) 
という2つの論点がありうるのかなぁ、という発表をしました。
 
そのときの私見は、①については全通信料収入だろう、②については端末は含まれないのだろう、というものでした。
 
条文をよむとそうとしかよめないと考えたからです。
 
でも実質的に考えると、①については、そうすると不当表示前に契約している人への売上にまで課徴金がかかることになり、売上と不当表示との間に因果関係がないのではないか?というのが問題意識でした。
 
理屈の上では、不当表示のために既存の契約者も他社に乗り換えなかった、ということがありえますが、正直、かなり苦しい理屈だと思います。
 
フリーテルの事件も、全通信料収入でした。
 
条文どおりとはいえ、これはけっこうたいへんなことです。
 
たとえば、不当表示前に既存契約者が10万人いて、不当表示中に不当表示をみて1万人が新規に契約した場合、その1万人分に課徴金がかかるのではなく、11万人分にかかる、というわけですから。
 
②の、端末代にはかからない、というのも、不当表示の対象が通信サービスという役務なのだから、条文からいえば通信サービスだけにかかるのだろう、考えました。
 
でも、フリーテル事件をみると、「本件役務」を、
「「FREETEL SIM」と称する移動体通信役務(スマートフォン端末と一体的に供給する場合は、当該スマートフォン端末を含む。」
と定義しているので、端末も含んでますね。
 
研究会での問題意識はまさに、KDDIでiPhone 5を買った人は表示通りの性能が出ると思ったから買ったわけで、もしそうでなかったらドコモやソフトバンクと契約した可能性があるわけで、それなのに端末には課徴金をかけなくていいのか?ということでした。
 
(KDDI事件の当時はSIMフリーのiPhoneは、まだありませんでした。)
 
なので、フリーテル事件では、この論点については、実質的に、端末と通信役務を一体ととらえる運用がなされたことがわかります。
 
あらためて考えてみると、条文上もそのように解することに大きな問題はないように思われますので、この処理が妥当なのかな、と思います。
 
今後は、どこまでが一体的な商品役務なのか、争いがありうるケースも出てくるかもしれません。
 
たとえば、スキューバダイビングスクールで授業料の二重価格表示があった場合に、一緒に売ったダイビングセット(ほかで買うことも可能)も対象になるのか?とかですね。
 
SIMフリーでは端末は自分で調達できるのにフリーテル事件では一体に評価されているので、ダイビングセットも課徴金の対象になる、という意見もあるかもしれません。
 
でも授業料の二重価格表示はダイビングセットの性能とは何の関係もないのだと考えれば、ダイビングセットには課徴金はかからないのでしょう。
 
それに対して携帯電話の場合には、通信速度はサービス(通信網)の性能でもあり、かつ、端末の性能でもある、といえるかもしれません。
 
でもSIMフリーなんだから端末は関係ないじゃないか、と考えれば、ダイビングセットと同じで、端末には課徴金はかけるべきではなかった、というのも一理あるような気もします。
 
なかなか難しいですねcoldsweats01
 
第一印象では、消費者庁の処理が正しいように感じていますが、もうちょっと考えてみたいです。
 
あと、フリーテルの事件では、課徴金対象行為の期間が2016年11月30日から12月22日までの約1か月間で、誤認解消措置をとったのが2017年5月31日です。
 
そのため課徴金対象期間は約6か月間になっています。
 
この事件で措置命令が出たのが2017年4月21日ですから、措置命令が出たのに誤認解消措置まで約1か月かかっていることになります。
 
もし不当表示をやめた(2016年12月22日)のが、消費者庁の調査を受けたためだったとすると、調査を受けてから誤認解消措置まで5カ月もかかっていることになります。
 
そういうわけで、本件では約6か月の課徴金対象期間で約9000万円の課徴金がかかっているので、もし不当表示をやめてすぐ誤認解消措置をやっていれば、9000÷6=1500万円くらいですんだことになります。
 
というわけで、こういう継続的取引の事件で不当表示をしたときには、さっさと誤認解消措置をしないとどんどん課徴金が積みあがっていく、という見本のような事件です。
 
でも考えてみると、継続的取引の場合には、誤認解消措置をとったらそのあとの売上に課徴金がかからないというのも、なんだか釈然としませんね。
 
不当表示につられて契約した人がそのまま契約し続けることもけっこうあるように思われるからです。
 
理屈としては、不当表示でだまされたと思った人は他社に乗り換えるからそれでいいんだ、ということでしょうか。
 
でもそうすると、今問題になっている、2年縛りとかがあると、そう簡単に乗り換えられない、という問題もありそうです。
 
というように、細かく考えていくと、課徴金の算定はこれでいいのか?という疑問がわいてくるのですが、非裁量型課徴金というのは(独禁法でもそうですが)単純に計算できないと制度として回っていかないところがあるので、やむをえないのでしょう。
 
 

2018年5月 9日 (水)

値引と割引券の関係

値引と割引券はどのような関係にあるのでしょうか。

(なお、議論を簡単にするために、割引券は取引付随性があるもののみ考慮し(なので、新聞広告でクーポン券を提供するようなものは考慮しない)、一定率を割り引く割引券と一定額を割り引く割引券(金額証ともいいます)とは区別しないことにします。)

背景として、平成8(1996)年4月に定義告示運用基準が改正されています。

(くわしくは、深町正徳「割引券の提供に関する景品表示法の考え方について」公正取引587号40頁をごらんください。)

つまり、改正前の定義告示運用基準では、

「取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額し、又は受け取った代金を割り戻すこと」(6(3)ア)

は景品類の提供に当たらないとされる一方で、

「ある取引に付随して、他の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票を提供する場合」(6(4)ウ)

は、、景品類の提供に当たるとされていました。

これはどういうことかというと、

「Aの取引に付随して割引券を『提供する行為』と、

Bの取引において割引券を『使用する行為』

を分離して捉え、

後者については景品表示法上の景品類に当たらないが、

前者についてはAの取引に付随した景品類に当たると捉えていた。」

ということだったんだそうです(深町前掲p42)。

つまり、改正前は、

割引券の提供→取引Aに附随する景品類の提供(値引きではない)

割引券の使用→いずれの取引に附随する景品類の提供でもない(取引Bの値引き)

という整理だったわけです。

ただし、これは今も同じですが、総付による割引券の提供については、総付告示で、

「自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票であつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの」

については、

「景品類に該当する場合であつても、前項の規定〔総付の金額規制〕を適用しない。」(総付規制の適用除外)

とされていました。

これに対して定義告示運用基準の改正は、前述の、

「ある取引に付随して、他の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票を提供する場合」

は景品類の提供に当たるとの規定(改定前6(4)ウ)が、削除されました。

また併せて、改定後定義告示運用基準で、

「取引通念上妥当と認められる基準に従い、

取引の相手方に対し、

支払うべき対価を減額すること(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)」(6(3)ア

は、

「原則として、

〔景品類にあたらないとされる定義告示1項柱書ただし書の〕「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」

に当たる。」(6(3)柱書)

とされました。(これは現在もほぼ同じです。)

これはつまり、

「この改正により、複数回の取引を条件として対価を減額する場合でも景品規制の対象とならないと整理された」

ということのようです(p42)。

まとめると、運用基準の改正前は、

割引券の提供→取引Aに附随する景品類の提供(ただし総付規制の適用除外

という整理だったのが、改正後は、

割引券の提供→取引Aの値引(景品類の提供ではない)

と変わった、ということです。

なので、改正後は、割引券の提供と使用を分ける必要もなく、値引であると整理されました。

以上を踏まえて、現行の割引券に関する規定を検討します。

割引券の提供については総付告示2項3号(価額の2割の制限が適用されない場合の1つ)で、

「自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票であつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの」

と言及されており、これを受けて総付運用基準4項では、

「4 告示第二項第三号の「自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票」について

(1) 「証票」の提供方法、割引の程度又は方法、関連業種における割引の実態等を勘案し、公正な競争秩序の観点から判断する。

(2) 「証票」には、

金額を示して取引の対価の支払いに充当される金額証(特定の商品又は役務と引き換えることにしか用いることのできないものを除く。)

並びに

自己の供給する商品又は役務の取引及び他の事業者の供給する商品又は役務の取引において共通して用いられるものであって、同額の割引を約する証票

を含む。」

と定められています。

では、世の中で普通にある割引券は、どう考えればいいのでしょうか。そもそも景品類に該当するのでしょうか。

ここでの問題意識は、

割引券というのは要するに、それを持っていると値引きが受けられるということであり、たんなる値引と同じなのではないか、

それが、「券」(証票)が発行されるだけで、純粋な「値引」と違うものと評価されるのはおかしいのではないか、

ということです。

この点について、

大元『景品表示法〔第5版〕』(緑本)

のp209では、総付運用基準4の解説として、

「自己の供給する商品または役務の取引において用いられる割引券その他割引を証する証票については、

それが自己との取引に用いられ、

取引通念上妥当と認められる基準に従っているもの

である場合は、

『正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」となり、

そもそも景品類に該当しない(定義告示運用基準6(3)ア・・・)。」

と、オーソドックスな割引券については、定義上そもそも景品類に該当しない(値引なので)、と整理しています。

わたしも、この整理が正しいと思います。

そして、上記引用の緑本p209でも引用されている定義告示運用基準6(3)アでは、

「原則として、「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」に当たる」

場合の具体例の1つとして、

「ア 取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額すること(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)

(例 「×個以上買う方には、○○円引き」、

「背広を買う方には、その場でコート○○%引き」、

「×××円お買上げごとに、次回の買物で○○円の割引」、

「×回御利用していただいたら、次回○○円割引」)。」

という例があげられていますので、緑本も、ここで挙げられている例、たとえば、

「背広を買う方には、その場でコート○○%引き」

に当たる(複数回取引を条件とする点を除き)と考えてよい、「コート〇〇%引券」を背広購入者に提供するのは、値引に該当し、そもそも景品類には該当しないと考えているものと思われます。

この点も、正しいと思います。

さらに続けて緑本では、自他共通割引券について、

「他方、自己だけでなく他の事業者との取引においても共通して用いることができる割引券等(自他共通割引券等)については、

景品類に該当し得る場合もあるものと考えられるが、

仮に該当する場合場合であっても

自己との取引について値引と同様の効果がもたらされる可能性があることから、それが正常な商慣習に照らして適当と認められるのであれば、総付景品の規制の適用除外とされている」

つまり、自他共通割引券については定義上は景品類に該当しうるけれど、特別に総付景品規制の適用除外にしているんだ、と説明しています。

まとめると、割引券は、

①自社割引券→「値引」に該当する(「景品類」に該当しない)

②自他共通割引券→

A 「値引」に該当するもの(「景品類」に該当しないもの)

 

 

B 「値引」に該当しないもの(「景品類」に該当するもの)

 

があり、

 

A→「景品類」には該当しない(定義告示運用基準6(3))

 

B→総付運用基準4の条件(=自他同額の値引き)をみたせば総付規制が適用されない(総付運用基準4)、

というように整理できます。

とすると、総付告示2項3号の「割引券」には、Aの割引券(「値引」に該当するもの)は、論理的に含まれない(あるいは空振り)ということになります。

具体的には、

①自社割引券→値引(景品規制対象外。総付告示2項3号は空振り)
 
②自他共通割引券
(ア)自他同額のもの→景品類だが総付金額規制適用除外
 
(イ)自他同額でないもの→景品類
③他社割引券→景品類
ということになります。
 
このように、かなりの部分で空振り(①)になるにもかかわらず総付告示の
「自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票であつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの」
については総付金額規制を適用しないという総付告示2項の規定が残された理由については、前記深町p42で、
「この規定〔総付告示2項3号〕を置いておく意味は、
 
指定告示上『正常な商慣習に照らして値引』に該当するとは認められないが、製造な商慣習に照らして提供を認めても価格と品質による競争を阻害しないと認められるもの
 
(自他共通割引券(デパート共通〇〇券のようなもの)
 
 
商品とも引き換えられる可能性のある金額証等)
 
について、総付告示の当該規定〔2項3号〕により提供を認める必要があったためと考えられる。」
と解説されています。
 
つまり、シンプルな割引券は総付告示2項3号を待つまでもなく「値引」なので景品類には該当せず(もちろん、総付規制も適用されない)、総付告示2項3号が必要になるのは自他共通割引券や商品とも引き換えられる可能性のある(つまり、一部減額ではなく)金額証などの場合だ、ということです。

2018年5月 7日 (月)

緑本の資料脱落

いつものように
大元編『景品表示法〔第5版〕』(緑本)
で調べ物をしていて気づいたのですが、なぜか巻末資料に、総付告示(p432)に続けて載っているはずの総付告示運用基準(「『一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限』の運用基準について 」)が載ってませんね。
 
第4版までは載っていたのに、編集のときに漏れてしまったんでしょうか。。。
 
すごく探してしまいましたbearing
 
ちなみに、第5版にも総付告示と懸賞告示と懸賞運用基準は載っています。

2018年3月29日 (木)

パズドラの課徴金について

ガンホーに対して3月28日、課徴金納付命令がでました。気が付いたことをメモします。
 
まず対象役務が、
「特別レアガチャ『魔法石10個!フェス限ヒロインガチャ』
とされています(本件役務)。
 
この「ガチャ」は、モンスターを提供する役務なのだそうです。
 
わたしはパズドラはやったことがないので、いつどういうふうにお金を払うのか命令をみてもわかりませんが、「ガチャ」という名前からすると、ガチャ(くじ)を1回引くごとに課金されるものだと思われます。
 
課徴金対象期間は平成28年11月30日から平成29年2月26日までの約3か月と認定されています。
 
そうすると、課徴金が約5000万円(自主申告による減額がなければ1億円)であることからすると、この3か月の売上は、1億円÷0.03≒33億円となります。
 
1か月に10億円も売上があったんですね。。。
 
それはさておき手続面ではまず、上述のとおり、自主申告による減額が認められていることが注目されます。
 
それから、課徴金の算定方法は、
「本件役務〔本件ガチャ〕の売上額に100分の3を乗じて得た額・・・」
とされているので、本件ガチャの売上額全額が基準になっていることがわかります。
 
そもそもこの不当表示はモンスター13体全部について「究極進化」すると表示していたのに2体しか「究極進化」せず、残りの11体はたんなる「進化」だった、というものでした。
 
なので、ガチャで「究極進化」するモンスターを引き当てた取引の売上については課徴金対象売上から除くという考え方もありそうですが、おそらくそれは結果論だということでそのような考え方はとられておらず、すべての売上が課徴金の対象になっています。
 
法律の解釈としてはそれで正しいと思いますが、課徴金のガイドラインでは、「全品半額セール」で一部にセール対象外のものがあった場合には、実際にセール対象であった商品は課徴金の対象にならないとれている(p12、2(3)想定例②)こととの整合性が、やや気になります。
 
つまり、
全品半額と表示した場合に、半額でなかった商品(例、2万円未満のスーツ)の売上のみが課徴金の対象になる
なら、
全アイテム「究極進化」と表示した場合に、「究極進化」でなかった商品(13体中、11体)のみが課徴金の対象になる
という考えもありえます。
 
おそらく両者が異なるのは、
全品半額セールの場合は、消費者が半額の商品を選べる
のに対して、
全アイテム「究極進化」と表示したガチャの場合、ガチャであるがゆえに消費者が「究極進化」のアイテムを選べない
というのが実質的な理由かな、と想像しますが、やや釈然としないものが残るのもたしかです。
 
ひょっとしたら、むしろ両者を区別する隠れた理由は、
全品半額セールの場合は半額でない(表示違反)ものが、ごく一部にすぎない(とガイドラインはかってに想像している)
のに対して
本件ガチャでは究極進化でない(表示違反の)アイテムがほとんどだった(13体中11体)
ということなのかもしれません。
 
たとえば本件ガチャでもし、13体中12体は究極進化で、1体だけたんなる進化だったら、それでも全体に課徴金がかかったんでしょうか?
 
違反が100体中、1体に過ぎない場合でも、全体に課徴金がかかるのでしょうか?
 
それとも、違反が100体中1体のときは、「著しく優良」とまではいえないとするのでしょうか?
 
と考えると、本件では大半が違反だったから違和感がないものの、もし違反がほんの一部だったら、全体に課徴金をかけるのはかなり違和感があっただろうと思います。
 
(似たような同じ問題は、秋田書店みたに景品の数を間引いた、という事件でも起きるのですが、景品の間引きでは景品と商品の売り上げは直結していないので表示に適合しない売上と適合する売上を区別できないのに対して、本件では、購入対象アイテム自体が表示に適合するかどうかを観念できるので、表示に適合しないアイテムの売上だけに課徴金をかけるという考えに、まだなじみます。)
 
念のため確認しておくと、条文上は、景表法8条1項の、
「当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の・・・売上額」
の解釈の問題であり、
本件では本件ガチャが「役務」なのでガチャ全体の売上に課徴金がかかる
のに対して
半額セールでは個々の商品が「商品」なので個々の商品ごとに課徴金がかかるかどうかを判断する
ということなのでしょう。
 
つぎに、課徴金対象期間については、平成28年11月30日から平成29年2月26日となっています。
 
ただ、課徴金対象行為(不当表示)をした期間は平成28年11月30日から平成29年2月20日までと認定されていますので、課徴金対象行為が終わったあとも課徴金対象期間が続いています(平成29年2月21日から26日まで。26日は最後の取引日です)。
 
(なお誤認解消措置が平成29年2月28日にとられています。)
 
つまり、課徴金対象行為をやめた日(2月20日)のあとも、21日から26日までの間、表示違反のガチャを続けていたことになりそうです。
 
理想をいえば、不当表示がわかった時点で13体全部を究極進化に変えればよかったのでしょうけれど、たんなるプログラムとはいえ、わかったからといってただちに究極進化に変えるというのはできなかったのかもしれません。
 
あるいは、不当表示をやめた時点(2月20日)で、同時に販売を中止する(本件ガチャの購入をできなくする)、という手もあったでしょうが、それも間に合わなかったのかもしれません。
 
前述のように誤認解消措置が取られていることからすると、本件ガチャは引き続き(つまり13体中2体のみ究極進化する形で)販売され続けていたのかもしれません。
 
つぎに、前述のとおり本件では消費者庁への自主申告がなされていますが、自主申告の日付はあきらかにされていません。
 
これは、以前このブログでも紹介した三菱と日産に対する課徴金のケースと同じです。
 
自主申告を失格させる場合はともかく、認めるなら日付までは不要ということなのでしょう。
 
つぎに、本件ではガンホーは返金措置を実施していません。
 
返金は義務ではないので別にかまわないのですが、このあたりに企業の姿勢というものが現れると思います。
 
ところでガンホーに対しては、この課徴金の本案について措置命令が平成29年7月19日に出ていますが、この「究極進化」の優良誤認とは別に、同日、セットでお得だと表示していたのにバラで買うのと値段が変わらなかったという有利誤認についても措置命令が出ています。
 
おそらく「究極進化」の件と「セットでお得」の件は、消費者庁は並行して調査していたでしょうから、 「セットでお得」の件に課徴金納付命令が出ていないのは、売上5000万円の裾きりに満たなかったのではないか、と想像されます。
 
表示期間も、商品により最短1日から最長でも15日間と、比較的短いですから、(誤認解消措置をとらなければ最長6ヶ月延長される余地はあるものの)違反対象売り上げが少なかったということはえりえます。
 
というわけで、課徴金納付命令は、上っ面をなめただけでもこれくらいのことはすぐにいえてしまいます。
 
ということは、出す側の消費者庁もそれなりにいろいろ考えないといけなかっただろうし、ガンホーも、表示をやめるのか、商品の販売までやめるのか、自主申告するのか、返金措置はとるのか、など短期間でいろいろ考えないといけなかっただろうと推測されます。
 
双方のご苦労がしのばれます。

2018年3月28日 (水)

体験談のねつ造と不実証広告規制の功罪

ミーロードに対する措置命令(平成29年3月30日)をみていて感じたのですが、不実証広告規制を適用する場合にも、消費者庁はきちんと広告の真偽を調べた方がよいのではないでしょうか。
 
この事件は、いわゆる豊胸効果をうたう「B-UP」というサプリに不実証広告規制が使われたものです。
 
命令に添付された広告の例をみると、たとえばグラビアアイドルの「ももゆいさん(27歳)」の証言として、
「モデルの仕事は不規則で、食事もカロリーの高いお弁当が多いため、デビュー当時と比べて10kg近く太ってしまいました。
 
そこで毎食キャベツときゅうりだけという過酷な食事制限を決行。
 
体重を戻したのですが、ついでに胸も2カップほど縮んでしまい、かえって仕事がなくなっちゃって(泣)
 
そんな時、同じグラビア仕事をしている先輩に薦めてもらったのが『B-UP』。
 
もう無理はしないと心に決め、毎晩の1粒とバストアップ体操を日課にした結果・・・、わずか2ヵ月で元のスタイルに戻すことができました~。」
というコメントが載っています。
 
同様の例として、平成29年9月29日のティーライフ(株)に対する「ダイエットプーアール茶」に関する措置命令でも、
「2年半で-43kg」
とか、
「6ヶ月で-10kg」
とか、
「8ヶ月で-12kg」
とか、お茶を飲んだだけでそんなに痩せるわけないだろうという体験談が並んでいます。
 
(ちなみにティーライフの措置命令では、わざわざ、
「なお、ティーライフは、自社ウェブサイトにおける〔違反の〕表示内容を記載したウェブページにおいて、例えば、『個人の感想であり、実感には個人差がございます。』と記載するなど・・・していたが、当該記載は、一般消費者が〔違反の〕表示から受ける効果に関する認識を打ち消すものではない。」
と、体験談であるとの注記が打消し表示とは認められないと明記しており、消費者庁の強い姿勢が出ていて注目されます。)
 
ですが、これらの体験談はねつ造である可能性が濃厚です。
 
こういう効果は事実としてありえなさそうだ、というのが一つと、私が以前かかわった不当表示の事件で似たような「体験談」を載せた広告があったのですが、消費者庁から「この証言は本当に本人のものか?」といったことは一切聞かれなかったからです。
 
でもそれでいいんでしょうか?
 
たしかに不実証広告規制は消費者庁の労力を省くという点で非常に有益な制度だと思います。
 
でもその陰で、こういうあきらかに虚偽あるいはやらせの「体験談」については、明示的に虚偽あるいはやらせであると認定されることもなくなってしまいます。
 
いちおう措置命令別表1では、これらの体験談も不当表示を構成するものとして(全文ではないもの)掲示はされていますが、それだけでは問題の本質がみえてきません。
 
つまり極論すれば、体験談のねつ造は、仮にその商品に効果があったとしても、それ自体不当表示になりうべきもののはずです。
 
もし体験談がねつ造であることまで措置命令で認定できれば、命じる社告の中にも、「体験談はねつ造でした」という一文を入れさせられるはずです。
 
社告でたんに、
「実際のものよりも著しく優良であることを示すものであり、景品表示法に違反するものでした。」
といわせるだけよりも、
「広告の体験談はねつ造でした」
と認めさせるほうが、消費者にとってインパクトはずっと大きいと思います。
 
調べるのも、事業者にねつ造かを確認すれば多くの場合簡単に片が付くでしょうし、タレントであればタレント本人を呼びつけて「あなたが本当にそういったのか」と聞くこともできるはずであり、そんなに手間はかからないでしょう。
 
そうすることで、タレントも「ありもしない体験談を載せることに同意したら大変なことになる」ということを認識できるのではないでしょうか。
 
もちろん、事業者が体験談をねつ造する抑止力になるでしょう。
 
載っている体験談の全部ではなくても、そのうち一つでもねつ造があれば、それを措置命令で明記する(そして社告でも明示させる)インパクトはとても大きいと思われます。
 
現行の、新聞折込チラシの配布日や配布地域までこまごま認定することに手間をかけるくらいなら、こちらのほうに手間をかける方がずっと費用対効果も高いと思います。
 
消費者庁にはぜひ、ご検討いただければと思います。

2018年3月 1日 (木)

他社の懸賞に追加して懸賞で景品を提供する場合

懸賞告示運用基準5(2)では、
「(2) 同一の取引に附随して二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合については、次による。
 
ア 〔省略。同一事業者が行う場合→合算〕
 
イ 〔省略。複数事業者が共同して行う場合→合算〕
 
ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」
とさだめられています。
 
さて、このウは、どのような場合を想定しているのでしょうか。
 
大元編著『景品表示法〔第5版〕』(緑本)p195では、
「例えば、メーカーが商品の購入者に懸賞による景品類(最高額の限度内)を提供しているときに、
 
小売業者が独自にその懸賞の当選者に別途の懸賞による景品類を追加して提供する場合は、
 
小売業者にとって景品類の合算額が最高額の制限を超えないようにしなければならない。」
と解説されています。
 
具体的にはどういうことでしょうか。
 
これについては消費者庁ホームページの景品類Q&Aの34番(メーカーと小売店が同時期に実施する懸賞企画の考え方)に、
「メーカーが、商品A(1,000円)の購入者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施し、同時期に、
 
小売店が、メーカーが行う懸賞とは別に、商品Aを必ず含んで、1,500円分以上の商品を購入した者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施する場合、
 
提供できる景品の最高額及び総額はどのように算定すればよいでしょうか。
 
なお、この2つの企画は、それぞれ独自に実施するものであり、共同企画ではありません。」
という設問があります。
 
ここで、
(景品提供者)=(懸賞・総付の別;参加条件1,参加条件2,・・・)
というスタイルで2つの懸賞をあらわすと、
(メーカー)=(懸賞;商品A〔1000円〕)
 
(小売店)=(懸賞;商品A〔1000円〕,1500円)
となります。
 
さて、回答は、この事例は運用基準5(2)ウにあたるとしたうえで、
「この場合において、重複当選を制限していないのであれば
 
提供できる景品類の最高額は、
 
メーカーの懸賞では、商品Aの価額〔1000円〕の20倍(2万円)であり、一方、
 
小売店の懸賞では、応募の条件である1,500円の20倍(3万円)からメーカーが提供する景品類の価額を差し引いた価額です
 
(例…メーカーが、最高15,000円の景品類を提供する場合、小売店が提供できる景品類の最高額は、30,000円-15,000円=15,000円となります。)。」
としています。
 
ここで
重複当選を制限していないのであれば
という部分は、運用基準5(2)ウの
その懸賞の当選者に対して更に
の部分に対応しているわけですね。
 
逆に言うと、もし重複当選を禁止するなら、運用基準5(2)ウの、
その懸賞の当選者に対して更に
の要件はみたさないので、運用基準5(2)ウは適用されないわけです。
 
では重複当選を禁止する場合にはどうなるのかといえば、それは当然、それぞれの懸賞企画の限度額いっぱいまで景品を出せると解されます(両方の企画から景品を受け取るひとがいないので、あたりまえです)。
 
ここで注意を要するのは、運用基準5(2)ウが想定しているのは、Q34のように、
(メーカー)=(懸賞;商品A〔1000円〕)
 
(小売店)=(懸賞;商品A〔1000円〕,1500円)
というような場合であって、けっして、
(メーカー)=(懸賞;商品A〔1000円〕)
 
(小売店)=(懸賞;商品A〔1000円〕,メーカー企画当選,1500円)
という場合ではありません。
 
ふつうの日本語で言うと、運用基準5(2)ウは、追加提供する事業者〔=小売店〕が最初の事業者〔=メーカー〕の懸賞の当選者だけに参加資格を与えるものにかぎられない、ということです。
 
もう一度運用基準5(2)ウをみると、
「ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞〔=メーカーの懸賞〕の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」
とされており、うっかりすると、メーカーの懸賞の当選者のみにに参加資格をあたえるようなものを想定しているのかなと思ってしまうのですが、注意してよむと、運用基準5(2)ウが言っているのは、
「ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞〔=メーカーの懸賞〕の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」
といっているのであり、小売店企画の参加資格をメーカーから景品をもらった人(メーカー当選者)に限ろうが限るまいが、結果的にメーカー当選者に追加で景品をあげるなら(つまり重複当選可能なら)、文言上、
当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した
にあたることはあきらかであり、よって、小売店の企画の参加資格自体がメーカー当選者である必要はないこともあきらかです。
 
もし、小売店がメーカー当選者だけに懸賞参加資格をあたえる場合を想定しているなら、運用基準5(2)ウは、
「(改ウ) 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類の提供を受ける資格を与え、当選者に景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」
となっていたはずです。
 
ただ、運用基準5(2)ウにも難点があります。
というのは、この定め方だと、あらかじめ重複当選を禁止していなくても、結果的に重複当選しなければ、結果オーラーで許されてしまうと解されかねないのです。
 
そういう目で運用基準5(2)ウをじーっとながめると、たしかに、
「ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」
といっており、これは現に「追加した」場合のことをいっているのであって、結果的に追加しなかった(両方の企画に当選した人はいなかった)場合については触れていない、と読まざるを得ません。
 
もしこういう結果オーライを認めない規定にするなら、
「(改ウ) 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加提供する可能性がある場合は、追加する事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」
とすべきなのでしょう。
 
もちろん現行の運用基準もこのような結果オーラーを認める趣旨ではないと思われますし、前記緑本ものそのような解説になっています。
 
もし、このような抜け穴を意識しながら、それを埋める意図でこういう解説をしているとしたら、なかなかやるなぁ、と思います。
 
ちなみに、1等同士を合計すると限度額をこえるときには重複当選を一切禁止しなければならないわけではなく、たとえばメーカー懸賞1等と小売店懸賞2等を合計しても限度額を超えないなら、メーカー1等当選者に小売店が2等を当選させる(重複当選させる)ことはもちろん可能です。
 
伝統的なクジなら、当たりくじがでたのに「失格」というのは非常に忍びないので、こまかい重複当選の要件設定は現実味が低そうですが、コンピューターのくじなら、失格する場合にははじめから「ハズレ」を出すようにできるので、あんがい現実味があるかもしれません。

2018年2月22日 (木)

「打消し表示に関する実態調査報告書」について

消費者庁が昨年7月に出した掲題報告書についてコメントしておきます。
 
この報告書でびっくりしたのは、体験談についての以下の記述です(84頁)。
「今回の調査結果から、実際に商品を摂取した者の体験談を見た一般消費者は「『大体の人』が効果、性能を得られる」という認識を抱き、「個人の感想です。効果には個人差があります」、「個人の感想です。効果を保証するものではありません」といった打消し表示に気付いたとしても、体験談から受ける「『大体の人』が効果、性能を得られる」という認識が変容することはほとんどないと考えられる。
 
また、広告物は一般に商品の効果、性能等を訴求することを目的として用いられており、広告物で商品の効果、性能等を標ぼうしているにもかかわらず、「効果、効能を表すものではありません」等と、あたかも体験談が効果、性能等を示すものではないかのように記載する表示は、商品の効果、性能等を標ぼうしていることと矛盾しており、意味をなしていないと考えられる。
 
このため、例えば、実際には、商品を使用しても効果、性能等を全く得られない者が相当数存在するにもかかわらず、商品の効果、性能等があったという体験談を表示した場合打消し表示が明瞭に記載されていたとしても一般消費者は大体の人が何らかの効果、性能等を得られるという認識を抱くと考えられるので、商品・サービスの内容について実際のもの等よりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。」
つまり、体験談を見た人は、仮に「個人の感想です」という打消し表示をみても効果があると認識するので、打消し表示には意味がない、不当表示だ、というのです。
 
その根拠として報告書では、打消し表示を見る前と見た後で「『大体の人』が効果が得られると思う」とした人が42.8%から36.6%に変化し、数値としては下がっているが依然としてかなりの人が効果があると認識しているという事実が確認できた、ということをあげています。
 
こういう、実験をして具体的なデータを示されるととても説得力があり、この報告書のハイライトといえるでしょう。
 
わたしはあまり体験談が広告で使われるようなダイエット食品とかを買わないので実感がわかないのですが、たしかに、体験談というのはインパクトが強いんだろうなあという気がします。
 
そうすると、報告書が述べるところはたしかにそのとおりなのですが、体験談がこれだけ世の中に氾濫していることからすると、報告書の立場は注目に値します。
 
もちろん体験談自体がねつ造ややらせであったら不当表示なのは当然で、世の中にはこの手のものが少なくないと想像します。
 
一般消費者のようなふりをして実は役者が演技していた、というのも完全なやらせです。
 
わたしが以前経験した中にも、八百屋さんかなにか(と思われる)人物が顔写真入りの新聞広告で、「効果抜群で驚いています」みたいなコメントをしていたのを、とある役所か広告媒体から問題があると指摘されて、その会社は次の日には別のコメントに差し替えてきた、というのがありました。
 
一日で本人に取材したわけではないので明らかに会社が勝手にコメントを差し替えていたのですが(そうすると、最初にそもそも本当に取材したのかも怪しいもんですが)、世の中の広告なんてしょせんこんなものなんだなあと思いました。
 
個人の体験談なんて、たまたまその人だけに効いたのかどうかもわからないし、その人だって別の理由で効いた(食事や、運動や、プラシーボ効果)のかもしれません。
 
現に医薬品では、
「(5)使用体験談等について 愛用者の感謝状、感謝の言葉等の例示及び「私も使っています。」等使用経験又は体験談的広告は、客観的裏付けとはなりえず、かえって消費者 に対し効能効果等又は安全性について誤解を与えるおそれがあるため以 下の場合を除き行ってはならない。
 
なお、いずれの場合も過度な表現や保証的な表現とならないよう注意すること。
 
①目薬、外皮用剤及び化粧品等の広告で使用感を説明する場合
 
ただし、使用感のみを特に強調する広告は、消費者に当該製品の使用目的を誤らせるおそれがあるため行わないこと。
 
②タレントが単に製品の説明や呈示を行う場合 」
と、体験談を広告で使うことが原則禁止されています(薬生監麻発0929第5号別紙)。 
 
報告書を出すだけでは「言いっぱなし」なので、ぜひ消費者庁には、実際の事件で体験談を取り上げていただきたいところです。
 
ところで、この報告書は、どれくらいの人がふだんから打消し表示を読むかもアンケートで調べていて、それはそれでおもしろいのですが、この点はちょっと視点がずれているように思います。

というのは、広告を目にする人の中にも、まったくその商品に関心のない人もたくさんいるわけで、そういう人が打消し表示まで読まないのはあたりまえだし、不当表示ということでもないと思います。

まずは目を惹いて、興味を持ってもらえたひとに打消し表示を読んでもらえたらいいのであって、一般的に打消し表示を見る人が少ないからといって、それ自体を問題視する必要はないでしょう。

要は、購入する意思決定をするまでの間にきちんと商品の内容や取引条件がわかればいいのであって、広告を見た瞬間に細かいところまですべて理解させるのは無理でしょう。

なので、広告を目にした人や、広告に興味をひかれた人を分母にするのはちょっとずれていて、実際に買った人(と、買おうと思ったけど打消し表示をみてやめた人)を分母にするのが正しいのではないかと思います。

2018年2月21日 (水)

医療機器と雑貨のちがい

薬機法では、医療機器と、いわゆる健康雑貨の区別がよく問題になります。
 
ある商品が医療機器に該当するなら承認をえないと製造できないし、広告もできません。
 
これに対して雑貨ならそのような規制はありません。
 
そこで医療機器と雑貨のちがいは大きな問題です。
 
では、薬機法の規制がおよぶ医療機器とは何でしょうか。
 
薬機法2条4項では、医療機器は、
「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、
 
又は
 
人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすこと
 
目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、
 
政令で定めるもの」 
と定義されています。
 
ここでポイントは、医療機器の場合は医薬品とちがって、「政令で定めるもの」という明確な限定があることです。
 
つまり、いくら医療機器っぽい効果をうたっていても、政令で定めるものにあたらないのであれば、定義上、医療機器には該当するはずがありません。
 
これに対して医薬品の場合には、たとえば薬機法2条1項2号では、 
「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、
 
機械器具等
(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム
(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)
及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)
でないもの
 
(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)」
というように、基本的に目的で定義される形になっているので、治療目的をうたう健康食品は定義上医薬品に該当してしまうわけです。
 
ところが前述のように、医療機器の場合には、「目的」も要件にはなっていますが、治療目的があるからといってそれだけで医療機器になるわけではなく、さらに、「政令で定めるもの」に該当する必要があるのです。
 
この、医療機器と医薬品の定義の構造のちがいは非常に重要で、しばしば誤解されているところです。
 
たとえばこちらのサイトでは、 
「例えば、サポーターのような健康用品において、「着用するだけで、自然と骨格が改善され、筋力もアップします」と広告表記した例で考えてみます。
 
薬機法上、医療機器とは、「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であって、政令で定めるものをいう。」と規定されており(法第2条第4項)、上記商品の効能効果を読んでいると、「人の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具」に該当するように思えます。「機械器具」ってなんやねんっていう解釈上の問題もありますが、実務的に言うと、もろに該当しています。
 
そのように、薬機法上の「医療機器」に該当するにもかかわらず、広告宣伝を行う際に、「健康雑貨」と標ぼうするだけで、薬機法の広告規制が及ばないとすることは、無承認無許可医療機器の広告を禁止した法の趣旨を没却させることになりかねず、妥当ではありません。
 
要するに、「健康雑貨(または美容器具類)」と標ぼうして広告を行ったとしても、上記定義に照らして、「医療機器」に該当する場合には、法第68条に違反していることになります。十分にご注意ください。
 
※ なお、「医療機器」と「健康雑貨類」との区別基準については、「医薬品」と「食品」との区別のように、通達によって明確な区別基準が示されているわけではありません。」
と説明されています。
 
しかしこれでは、
「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)」
の部分は説明していますが、
「政令で定めるもの」
の部分の説明はすっぽり落ちています。
 
そしてここでの「政令」というのは薬機法施行令1条で、同条では、
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「法」という。)第二条第四項の医療機器は、別表第一のとおりとする。」
と規定されており、別表第一をみると医療機器が、「手術台及び治療台」など限定列挙されているのがわかります。
 
そしてそれぞれの項目の具体的な内容は、昭和36年2月8日薬発第44号別表2に詳しく書かれています。
 
たとえば、 
「八三 医療用物質生成器」
については、
「オゾン治療器、医療用電解水(放射能含有水を含む。)製造装置医療用物質を生成する器械(その製造した医療用物質の販売を主な目的とする器械類を除く。)をいう。」
といった具合です。
 
しかし前記サイトの「サポーターのような健康用品」にあたりそうなものは、政令のどこをみても出てきません。
 
したがって「サポーターのような健康用品」については、医学的な治療効果を標榜しても、定義上、医療機器には該当しないことになります(政令に載ってないので)。
 
またこちらのサイトでは、
「電動のもみ玉を内蔵したクッションの販売を考えています。医療機器として販売するか、雑貨として販売するか迷っていますが、違いなどあれば教えてください。」
という質問に対して、 
「医療機器の該当性は、機器の構造と標榜する効能の2側面から決まります。
 
電動式のもみ玉を使ってマッサージする構造のもので、コリや血行促進を標榜する場合は、クラスⅡの家庭用管理医療機器に該当します。
 
医療機器のクラス分類の考え方はリスクに基づいた分類方法と考えてください。
 
クラスⅠは不具合が生じても人体への影響がほとんどないもの、クラスⅡは影響が軽微なものです。
 
Ⅰは例えば体温計や聴診器ですが、Ⅱは家庭用のマッサージ器などが該当します。
 
人体に埋め込むもの等さらにリスクの高いものはクラスⅢやⅣに区分されます。
 
次は雑貨について考えてみましょう。
 
上述したものと同じような、電動のもみ玉を使った構造のものであっても、コリや血行など医療機器的な効能を標榜しなければ、医療機器には該当せず、雑貨で販売することが可能です。
 
例えば、もみ玉による効果が「リフレッシュする」や「気持ちよくなる」「活き活きする」等の抽象的な変化なら医療機器の効能とはいえません。
 
雑貨の場合は販売に当たって許可などは不要ですが、クラスⅡの医療機器は第2種の医療機器製造販売業許可が必要になります。」
と説明されています。
 
この説明も、政令への明示的な言及がなく、機器の構造と標ぼうする効能の2点だけから医療機器かどうかが決まるかのように説明しており、字面だけみると誤解をまねきそうな説明ですが、質問の「電動のもみ玉を内蔵したクッション」は政令別表5の
「79 指圧代用器(指圧の原理を応用して治療する器具類)」
に該当しうるという前提なのでしょう。
 
そうであれば、まあ結論としては間違ってはいないのかな、と思います。
 
反面、
「医療機器的な効能を標榜しなければ、医療機器には該当せず」
と断言するのは疑問です。
 
薬機法上、医療機器の定義は治療等目的と政令という2つの要件からなるのであり、目的さえあれば1つめの要件は満たすわけです。
 
あくまで、医療的な効果の標ぼうは、機器の構造と同じく、治療等目的の判断の一要素である、と考えるべきでしょう。
 
その意味で、同じ構造の機器でも、治療等目的を標榜すれば医療機器にあたり、標ぼうしなければあたらない、ということはありえるでしょう。
 
ちなみに、治療等目的があるからといって当然に医療機器にあたるわけではない(政令で列挙されているどれかにあたらないといけない)ということは、厚労省の通達にもあらわれています。
 
つまり、
「医薬品等の広告について(平成10年3月31日医薬監第60号)」
では、医療機器と雑貨を同一紙面で広告する場合についてですが、
「医薬品等薬事法で規制されるものと、いわゆる雑貨等薬事法で規制されないものを同一紙に掲載する場合であって、雑貨等があたかも医薬品等的な効能効果があるごとく一般消費者に認識させる場合には、薬事法第68条に基づき指導する
とされています。
 
もし、雑貨が医療的効果を標ぼうするだけで医療機器に該当するなら、薬機法68条(未承認医薬品等の広告禁止)違反なのですから、「指導する」だけですむわけはなく、「68条違反である」とされたはずです。
 
そうされなかったのは、ほかでもなく、雑貨について医療的効果を標ぼうするだけでは68条違反にはならないからです。
 
なので、行政指導も法律と同じくらい大事だという事業者の方は、雑貨について治療等効果を標ぼうするのは控えるべきでしょうし、わたしも雑貨に治療等効果を標ぼうするのは望ましくない(場合によっては景表法違反にもなる)と思いますが、少なくとも薬機法の解釈論としては、政令でまったく指定されていない物(サポーターなど)が治療等効果を標ぼうするだけで医療機器に該当するということはありえません。
 
ちなみに、広告媒体によっては、治療等効果を標ぼうする雑貨は医療機器に該当するかどうかにかかわらず広告に載せない、という基準を採用しているところもあるようです。

2017年12月10日 (日)

「予想を上回る注文をいただいています」という表示

機能性表示食品について措置命令が出たことで注目された葛の花由来イソフラボンですが、この事件では地味ですがもう一つ重要な判断が示されています(2017年11月7日措置命令)。

違反者の一つのCDグローバルに対する命令で、

「CDグローバルは、本件商品を一般消費者に販売するに当たり・・・

自社ウェブサイトにおいて、

「先日販売を開始しました『葛の花イソフラボン青汁』につきまして、弊社の予想を大きく上回るご注文を頂いており、生産が間に合わない状態が続いております。」

と記載するなど・・・表示することにより、

あたかも、本件商品の販売数量に関する具体的な予想を立て、当該予想販売数量を上回るほどの相当程度多数の注文を受けているかのように示す表示をしていた」

けれど、

「実際には、具体的な数値予想を立てておらず、前記(ア)記載の表示期間中における注文数は僅少であった」

というのが、優良誤認表示とされているのです。

つまり、

「予想を大きく上回るご注文を頂いています」

というような表示をする場合には、具体的な数値予想を立てないとそれだけで不当表示になる、ということです。

これはかなり実務的にインパクトがあるのではないでしょうか。

というのは、こういう広告は、なんとなく「ノリ」で書いていて、まじめに数値目標まで立てていないことのほうが多いように思われるからです。

予想もしてないのに予想を超えたというのは不当表示だと言われればそのとおりなので、反論のしようもないですが、今までは、これくらいの誇張は広告として許される範囲内だと考えていた事業者も多いのではないでしょうか。

こういうのがダメだとなると、

「大変ご好評をいただいています」

というのも、きちんと好評を得ていることの根拠を示せないといけないでしょうし、

「絶賛発売中」

というのも、絶賛されていることの根拠を示せないといけないでしょう。

「ご好評」も「絶賛」も、顧客からの評価だととられる表現だからです。

ほかには、

「若い女性に人気」

というのもよく見かけるコピーですが、ひょっとすると、購入者に占める女性の数のデータを年齢別に取っておくようにいわれかねないような気がします。

(まあ「絶賛発売中」くらいは、世の中であまりにありふれているので、措置命令まではいかないんじゃないかという気がしますが。)

これに対して、似ていますが、食品で、

「絶品〇〇」

なんていうのは、事業者が絶品だと自信を持っているという主観的評価ととられる表現なので、「絶品」であることの根拠をしめせとかは、さすがに言われないでしょう。

もちろん、

「予想を超えた」

と、「予想」という言葉を広告で使ったからダメで、そう書かなかったらOKだったというわけではなく、たんに品薄であることを強調するのも、実際に品薄でなかったのなら、不当表示になるのでしょう。

この事件でたんに「予想」という言葉を使ってたのでそれに引っ掛けて命令を出すのが手堅いと思われたから、こういう命令の出し方になったのでしょう。

これを、「言葉尻をとらえて」などと非難しても始まりません。

くれぐれも、言葉尻をとらえられない広告をこころがけましょう。

あとこの命令もそうですが、最近、売上のような調べればすぐわかることについても不実証広告規制を使うことが続いていますね。

不実証広告規制ガイドラインでは商品の性能や効果に関する優良誤認表示だけに同規制が適用されるかのような書きぶりだったので、消費者庁の運用が大きくかわったといえます。

より以前の記事一覧