景表法

2017年11月20日 (月)

おとり広告告示運用基準の在庫一括管理に関する規定について

おとり広告告示運用基準では、

「高額な耐久財等について全店舗における販売数量が一括管理されており、全店舗における総販売数量に達するまではいずれの店舗においても取引する場合には、その旨の表示がなされていれば足りる〔おとり広告とはみなさない〕(運用基準第2-2(3))

とされています。

しかし、わたしはこれはおとり広告告示の解釈としておかしいと思います。

これにしたがうと、たとえば冷蔵庫などを他の店舗から取り寄せる体制が整っている場合でも、そのような体制をとっているという事実(「その旨」)を明示しなければならないことになってしまいます。

ですが、在庫の一括管理体制をとっている場合に、そのことをいちいち明示しなければ不当表示になるというのは、あきらかに行き過ぎです。

現にそのような体制がとられているのであれば、消費者には何の不利益もないし、社内でどんな体制をとっているかなんて消費者は関心ないし、ある意味営業秘密でもありうるわけですから、知らせる必要もありません。

もし違いがあるとすれば、冷蔵庫をその日のうちに持って帰りたいという顧客もいるじゃないか、ということかもしれませんが、そんな顧客はかなり少数派のはずです。

運用基準があえて、

「高額な耐久財等」

と例示しているのも、その場で自分が持ち帰ることがあまり考えられない、テレビとか冷蔵庫とか家具のようなものを想定しているのでしょう。

それに、「その日のうちに持って帰りたい客が持って帰れない」から、「おとり広告だ」というのは無茶です。

もし広告で「その日のうちにお持ち帰りできます!」と強調していたのに持ち帰れなかった場合には有利誤認表示になるかもしれませんが、それはおとり広告とは別の話です。

と、実質論をいろいろと述べてみましたが、それだけでは法解釈として心もとないので、おとり広告告示の文言をみてみましょう。

おとり広告告示では、

「一般消費者に商品を販売し、又は役務を提供することを業とする者が、

自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を除く。)に顧客を誘引する手段として行う

次の各号の一に掲げる表示

一 取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての表示

二 取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示

三 取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示

四 取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務についての表示」

が、おとり広告であると定義されています。

ぼーっとながめてみただけでも、在庫一括管理している場合は、「取引に応じることができない」(1号)とか、「供給量が著しく限定されている」(2号)とか、「取引の成立を妨げる行為」(4号)とかにはあたらなそうです。

3号の「供給期間」「相手方」「一人当たりの供給量」は、限定列挙なので、在庫一括管理はこれにもあたりようがありません。

というわけで、在庫一括管理に関する前記運用基準の記載は、告示にまったく根拠がありません。

さらに理論的に重要なのは、告示の柱書で、

「自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を除く。)に顧客を誘引する手段として行う」

ということが、おとり広告の要件になっていることです(手段性の要件)。

在庫一括管理の場合に、

「冷蔵庫を買いにきたお客さんに、冷蔵庫をあきらめさせて、テレビを買わせてやろう」

なんて考えているはずはないので、この手段性の要件は満たしません。

というわけで、運用基準を作った人は、告示の条文を読んでいなかったのではないか?と疑われます。

きっと、なんとなく筆が滑っちゃったんでしょうね。

あるいは、手段性の要件を忘れてしまって、その店に在庫が足りない場合がすべておとり広告になる、と勘違いしていたのかもしれません。

景表法関係の運用基準や当局の古い解説には、このような、「条文読んでない」というレベルのものがちらほらみられるので、注意が必要です。

行政というのは、条文を忠実に執行しようというだけではなくて、条文ではグレーなところでも、解釈や運用で(行政効率も含めた意味での)妥当な執行を実現していこうとすることが、ままあるように思われます。

もちろん、それが一概に悪いわけでもないと思います。

ですので、今回取り上げた運用基準も、条文を読んでないのではなくて、わかっていながら確信犯でやった、という可能性も、ないではありません。

でもやっぱり、在庫一括管理していること(店には在庫がないかもしれないこと)を積極的に表示させることで実現される行政目的なんて何もないと思われます。

なので、やっぱり、私は「条文読んでなかった」のではないか、とニラんでいます。

2017年11月19日 (日)

おとり広告の手段要件について

おとり広告告示では、おとり商品の供給量が著しく限定されている場合(運用基準では、予想販売量の半分にも満たない場合)など、おとり広告にあたる場合が4種類限定列挙されています。

若干注意を要するのは、これら4つの場合にあたれば必ずおとり広告にあたるのではなく、さらに、

「自己の供給する商品又は役務の取引・・・に顧客を誘引する手段として行う」

ということが、おとり広告の要件とされていることです。

これを、「手段性の要件」ということができると思います。

なので、自己が販売する別の商品に誘引する意図がなければ、おとり広告は成立しません。

たとえば、もともと1種類の商品しか販売していない事業者が、予想販売数の半分に満たない在庫しかないことを認識しながらその商品の広告をしたとしても、ほかに買わせる商品はないので、おとり広告にはあたらないことになります。

しかも、現行法はおとり広告は有利誤認にはあたらないという整理なので(だからこそ、5条3号の指定告示として指定されているわけです)、このようなおとり広告にあたらない広告を、有利誤認にあたるというのも、難しいんじゃないかと思います。

もちろん、お客さんに不満を持たれないためには、数が限定されていることを広告で明記するのが望ましいのでしょう(そうすると、もっとお客さんが殺到するかもしれず、なやましいところですが)。

ひとつ言えることは、もし商品が売り切れてしまって、お客さんが、

「これはおとり広告じゃないのか?」

と騒ぎ出したら(あるいは、消費者庁や国民生活センターにかけこまれたら)、「そうじゃありません」ということは、自信をもって(?)回答できます。

ただ、実際には、クレームをいうお客さんに理屈で反論すると火に油を注ぐし、売り切れになって不満を持たれるのは理解できるので、謝りたおすしかないのでしょうけれど。

少なくとも弁護士(あるいは法務部)として、このような事例がおとり広告にあたるというアドバイスをすることは、避けなければなりません。

単一商品の事業者の場合は、このように他の商品に誘引する意図がないことがあきらかなのでわかりやすいですが、複数商品を販売する事業者でも、理屈は同じです。

ということは、あまり「ついで買い」が想定されないような業種の場合には、広告を打った人気商品の在庫が十分でなかったために、結果的に品切れになったとしても、まさにその「おとり」商品を販売するために広告をしたのであって、お店に来た消費者に別の商品を買わせるつもりで広告したのではない、というのであれば、おとり広告にはあたらない、ということが十分にありそうです。

たとえば、アップルウォッチの広告をみてお店にきたお客さんが、品切れだからといって、かわりにiPhoneを買うのか?(あるいは、店員がiPhoneをすすめるのか)ということです。

このように考えてみると、この手段要件というのは案外盲点かもしれません。

2017年11月16日 (木)

原産国告示の構造

原産国告示は、1項が国産品、2項が外国産品、というように分けて規定されていますが、その内容は非常に似ているものの、少しだけ違います。

まず国産品についての1項は、

「1  国内で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であつて、その商品が国内で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの

一 外国の国名、地名、国旗、紋章その他これらに類するものの表示

二 外国の事業者又はデザイナーの氏名、名称又は商標の表示

三 文字による表示の全部又は主要部分が外国の文字で示されている表示」

が、不当表示だとしています。

これに対して外国産品についての2項は、

「2 外国で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であつて、その商品がその原産国で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの

一 その商品の原産国以外の国の国名、地名、国旗、紋章その他これらに類するものの表示

二 その商品の原産国以外の国の事業者又はデザイナーの氏名、名称又は商標の表示

三 文字による表示の全部又は主要部分が和文で示されている表示」

が不当表示だとしています。

どうして書き分ける必要があったのかと思うくらい似ていますが、ちがいは各項の3号です。

つまり国産品(1項)では、外国語(非日本語)かどうか基準になっていて、外国語であれば不当表示になりえます。

これに対して外国産品(2項)では、当該原産国(たとえば中国)の文字ではない文字(たとえばフランス語)で記載されている場合がすべて不当表示になりうるのではなく、たとえば中国産品に和文の文字表記をした場合にかぎって不当表示になりうる、ということになっています。

中国製ワインにフランス語の表記があって、フランス産ワインと誤解されそうな場合も不当表示にしてよさそうなものですが、そうはなっていません。

指定告示なので、明確さを優先したのでしょうか。

あるいは、文字で原産国に誤解が生じるのは、「国産品→外国語表記」、「外国産品→和文表記」の場合に限られるのだ、と割り切ったのかもしれません。

たとえば、外国産品についても、その国の文字以外を用いてはいけないということになると、フランス産ワインに英語表記をすることが不当表示になってしまいそうですが、英語は万国共通語になっていますので、それは行き過ぎでしょう。

だけどさすがに国産品として偽るために和文表記にしているものは取り締まらないといけないだろう、という発想なのでしょう。

とはいえ、各項の1号、2号とのバランスを考えると、なぜ2項の3号だけが甘いのか(外国間の文字の違いは不問に付すのか)、疑問が生じるかもしれません。

デザイナー名を別の国のものにしてもだめですが、ドイツとオーストリアのデザイナーとか、中国と台湾のデザイナーなんて、名前だけでは区別できなさそうです。

それでも指定告示は形式的なので、デザイナー(たとえばオーストリア人)が原産国(たとえばドイツ)の人ではない場合には、そのデザイナーの名前を表示すると、原産国(ドイツ産)がわかるように、積極的に表示しないといけないことになってしまうのです。

これが、1・2項後段の

「その商品が国内〔その原産国〕で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの」

ということの意味です。

このように、原産国告示は、

①各号記載の表示は原則として不当表示

②①があれば、原産国を明記しなければならない、

という、二段ロケット方式になっているのです。

②が、積極的な義務付け規定になっているのがポイントです。

そもそもすべての商品について原産国を積極的に表記しなければならないという法律はありませんが、1・2項の1~3号の表示をする以上は、原産国を明記しないといけない、ということになるのです。

ただ、形式的には1~3号にあたる表示でも、そこから、原産国をまったく想起できないようなものなら、そもそも誤解は生じないので不当表示にも当たらないと解釈されています。

利部修二『商品の原産国表示の実務』

のp23で、国産品について、

「(ただし、国産品でありながら外国産品と紛らわしい表示がなされている商品に限られ、もともとそのような表示がなされていない国産品については、その旨の表示は何ら必要とならない)。」

とされています。

ちなみに1項と2号を仮にまとめて原産国を「A国」とでもすると、原産国告示は、

「A国で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であつて、

その商品がA国で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの

一 A国以外の国の国名、地名、国旗、紋章その他これらに類するものの表示

二 A国以外の国の事業者又はデザイナーの氏名、名称又は商標の表示

三 文字による表示の全部又は主要部分がA国以外の文字(ただし、A国が外国の場合は和文)で示されている表示」

となり、やはり書き分けた理由は3号しかなさそうです。

2017年10月10日 (火)

村田園万能茶事件と原産国告示

村田園の万能茶に対する措置命令(平成28年3月10日)では、

「日本の山里を思わせる風景のイラストの記載」

が、原材料が国産であるかのように誤解させる表示であるとされて、「そんなものまで不当表示の対象になるのか」と話題になったのですが、こういう、イラストまで「不当表示」にあたるという解釈についてはいろいろと異論もありうるところかと思います。

この点で興味深いのが原産国告示の規定です。

原産国告示1項1号では、国産品について、

「外国の国名、地名、国旗、紋章その他これらに類するものの表示」

が、2項1号では、外国産品について、

「その商品の原産国以外の国の国名、地名、国旗、紋章その他これらに類するものの
表示」

が、それぞれ、原産国をまぎらわしくする表示として規定されています。

この規定について、

利部修二編『商品の原産国表示の実務』(1974年商事法務研究会)

のp53では、

「どの国かがすぐわかる地図はこれ〔国名、地名、国旗、紋章等〕に含まれるが、人物、風景の絵などは含まれない

(公聴会で、これを含めるべきであるとの意見もあったが、明確な判定ができないので、含めないことにした)」

と説明されています。

つまり、風景についても議論はあったけれど、風景はどの国の風景か明確に判定できないので、意図的に告示の対象外にした、ということです。

たしかに、形式的で迅速な執行が肝(きも)である指定告示の場合と、一般の優良誤認表示の場合を同列に論じることはできませんが、当局の考え方も40年以上たつとずいぶん変わるもんだなぁという印象はぬぐえません。

わたしも講演などでは、

「村田園の風景のイラストがどうして『日本の山里』とわかるのか。韓国や中国かもしれないじゃないか」

と半分冗談でいうのですが、原産国告示の制定時には同じような問題意識があったわけですね。

もう少しまじめにいうと、村田園事件では、「阿蘇の大地の恵み」という文字とセットになっているので、(韓国や中国ではなく)日本の風景だという印象をあたえる、ということなのでしょう。

でも、原産国告示の制定過程の議論のほうが、わたしは、実用的な法律論としては据わりがよいと思います。

なので、「どの国かは風景の絵からはわからない」という原産国告示制定時の議論の趣旨は、優良誤認表示の場合にも十分に参酌すべきだと思います。

指定告示と優良誤認の違いという点も、指定告示の場合には「著しく優良と誤認」という要件の立証が不要だ(景表法5条3号は「誤認させるおそれ」でたりるので)とはいえても、そもそも事実と異なる表示なのかどうか(韓国の山里か、日本の山里か)という点は、両者で判断の仕方を変える理由はないように思います。

最近、どうも長年積み上げてきた実務の知恵を杓子定規な論理でひっくり返すことが多いような気がします。

工業製品は純粋美術と同視できるもののみ著作権で保護されるという従来の判例をくつがえした知財高裁のトリップ・トラップ事件判決(平成27年4月14日)が、よい例です。

景表法の分野では、不実証広告規制の条文には商品の効果・効能に関する不当表示にかぎって同規制を用いることができるという明文の限定がないことを理由に、不実証広告規制のガイドラインを超えて、シェアについて不実証広告規制の適用をしたフリーテルへの措置命令(平成29年4月21日)なんかも、そんな例でしょう。

不実証広告規制のほんらいの趣旨は、商品の性能・効果について消費者庁が立証しないといけないとすると多大な費用と時間がかかるので、一般の立証責任の原則の例外として、事業者側に立証責任を転換する、というものであったはずです。

そういう趣旨からすれば、優良誤認全般について立証責任を転換するかのようなフリーテルの措置命令は問題です。

たとえば二重価格表示を摘発するためには、これまでは消費者庁が店頭での価格表示を見張るなどする必要があったわけですが、今後はそのような必要もなく、事業者の側が価格の変動に関する資料を準備しておかないといけないことになります。

(ただこれはあくまで理屈の話であって、事業者がうそをつく可能性を考慮するなら、実務上は、けっきょく消費者庁は店頭で価格の変動を見張っておく必要があるのだということになると思います。

フリーテルの事件でも、実は消費者庁はシェア立証の準備か、すくなくとも明らかなうそを見破れる程度の各社のシェアの調査くらいはしていたのかもしれません。)

ほかにも、法律解釈ではないですが法治国家のあり方に関係する問題として、安倍首相が、

従来の慣例を無視して日弁連推薦の候補者ではない、実質的には学者の弁護士を最高裁判事に任命したり、

安保法制を合憲と解釈させるために、法制実務には素人の外務省出身者(元フランス大使)を内閣法制局長に任命したり、

憲法53条には

「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」

とされているだけで召集期限は定めてないと言い放ってずるずると召集を遅らせたり(ひいては、民進党が山尾志桜里議員のスキャンダルでガタガタになったのをみるや国会召集して冒頭で解散したり)、

とかいうのも、「法律上明文で禁じられていないなら何をやってもいいだろう」という発想があるように思われてなりません。

話がだいぶそれましたが、要するに、法律は文字に書かれていることがすべてではない、ということです。

法律の精神、心というものを忘れてはいけません。

長年積み重ねられてきた実務にはそれなりの合理性があることが多いものです。

英米法の先例拘束性も、そういう人類の知恵でしょう。

なので、長年の実務をくつがえすには、それなりの理由があるべきだと思います。

優良誤認表示の定義には限定はないので風景のイラストも含まれる、というのは、形式論としては正しいですが、私には、原産国告示制定時の議論のほうが、執行の明確性や事業者の表現の自由に対する配慮があり、文字に落とし込めない法律の心をくみ取ろうとしている点で正しいものがあるようにみえます。

少なくとも、イラストを含めるかどうか議論してあえて外すという判断をしたというのは、とても成熟した大人の判断であったと思います。

村田園は本件について係争中のはずですので、いずれ出る裁判所の判断に注目したいと思います。

2017年10月 5日 (木)

包装に不当表示のある商品をならべた小売店の責任

メーカーが作成した商品パッケージに不当表示があった場合、その商品を、そのまま店頭で並べた小売店も、不当表示の責任を負うのでしょうか。

この問題については消費者庁ホームページのQ&Aの6番で、

「製造業者がその内容を決定した表示が容器に付けられた商品を小売業者が仕入れ、それをそのまま店頭に並べ、消費者がその表示を見て商品を購入した場合、容器に付けられた表示に不当表示があったとき、小売業者も表示規制の対象になるのでしょうか。」

という質問に対して、

「表示の内容を決定したのが製造業者であり、小売業者は、当該表示の内容の決定に一切関与しておらず、単に陳列して販売しているだけであれば、当該小売業者は表示規制の対象にはなりません。」

と、明確に回答されています。

パッケージに不当表示があっても、商品を並べているだけの小売店は不当表示の主体にはならない、ということですね。

でも、これが当然の、唯一絶対の解釈か、というとそういうわけでもありません。

小売店も、表示の存在を認識しながら自己の責任でその商品を販売しているのだから、責任を負うべきだ、という考え方もありえます。

ちょっと古い文献ですが、

利部修二編『商品の原産国表示の実務』(1974年商事法務研究会)

という文献では、「不当な表示の責任主体」という表題のところで、

「不当な表示のされている商品を販売している小売業者もその商品を陳列することによって自らもその不当表示をしていることになる。」

と、断言しているのです!(p82)

さらに続けて、

「しかし、行政的には、実際にその表示を施したメーカーに対して是正措置を命ずるのがもっとも効率的であるし、それによって不当な表示の排除という目的が達せられるので、通常メーカーに対してのみ法的措置を命じている。」

と、小売業者が命令の対象にならないのはあくまで行政効率上の理由にすぎない、とダメ押しされています。

昔の公取委はこういう解釈をしていたのですね。

条文の解釈としては、景表法5条柱書の、

「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。」

でいうところの、表示を「し」というのはどのような行為をさすのか、という問題です。

現在の消費者庁の見解は、表示の内容の決定に関与することが表示を「し」にあたる行為だし、昔の公取委の見解は、自分の責任でその表示を店に並べることでも表示を「し」にあたる、ということなのでしょう。

たしかに、「し」という文言だけをながめてもこたえはでなさそうですし、自分の店に並べているのに何も責任を負わないというのでいいのかといわれると、たしかに昔の公取委の見解のほうが合理性があるような気もしないではありません。

不当な表示を消費者の目に触れさせないようにするという措置命令の目的からしても、消費者に一番近い小売店のところで首根っこをおさえたほうが効率的だ、という場合もありえないではありません。(たとえばメーカーが悪徳業者で、夜逃げしてしまったような場合。)

この論点は、実務的にはベイクルーズ事件で決着がついたところですが、上記公取のような解釈も昔はあった、ということは知っておいてよいと思います。

少なくとも、条文の文言をながめても一義的に答えの出ない、実は奥の深い問題なのだ、ということは納得できます。

2017年8月29日 (火)

原材料の産地の不当表示と原産国告示

村田園の万能茶に対して、原材料が国産であるかのように偽ったとして優良誤認表示として措置命令がなされましたが、これをみて、

「どうして原産国告示ではなく優良誤認なんだろう?」

と疑問を持たれた方はいないでしょうか。

理由は簡単で、原産国告示はあくまで商品そのものが国産か外国産かを偽るものだからで、原材料の産地を偽るものではないからです。

念のため原材料告示を確認すると、同告示1項では、

「国内で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であつて、

その商品が国内で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの」

を不当表示であるとしており、(原材料ではなく)「商品が」国内で生産されたことを認識できない表示(≒外国産だと偽る表示)が規制対象です。

同じく告示2項でも、

「外国で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であつて、

その商品がその原産国で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの」

が不当表示であるとされており、その規制対象は(原材料ではなく)「商品が」その原産国で生産されたものであることを判別困難にする表示の(≒日本を含む別の国で生産されたと偽る表示)です。

村田園の事件では、結論には関係ないので措置命令では明記されていませんが、万能茶という商品そのものについては日本で作っていたのでしょうね。

ちなみに原産国告示の定義の運用細則では、緑茶や紅茶の原産国は荒茶の製造をした国だとされているので、万能茶の場合も荒茶(ないしは荒茶に相当するもの)を作ったのが日本であれば、日本が原産国になります。

整理すると

商品そのものの原産国の虚偽表示→原産国告示違反

原材料の産地の虚偽表示→優良誤認表示

ということになります。

ただそうすると、課徴金は原産国告示違反にはかからないので、全体である商品そのものの産地偽装には課徴金がかからないのに、一部にすぎない原材料の産地偽装には課徴金がかかる、という、ちょっとバランスの悪いことになります。

ただこの点については、理論的には、「著しく優良と誤認」などの要件をみたすかぎり、商品そのものの産地偽装に優良誤認表示を適用することも可能だと考えられるので、原産国告示違反だからと高をくくっていると優良誤認でやられてしまう、という可能性もないではないと思います。

もし将来、上でのべたようなアンバランスな事態が発生したら、消費者庁があえて原産国告示を使わず、優良誤認で課徴金をめざす、あるいは、原産国告示と優良誤認を併用する、ということもありえないことはないんじゃないかと思います。

なお、原産国告示でいく場合と優良誤認でいく場合とで、措置命令の内容も異なることになるんじゃないかと思われます。

というのは、原産国告示の場合には、原産国が判別できない表示が不当表示ということになっているので、措置命令では、原産国が判別できるようにすることを命じられます。

たとえば最近のボーネルンドに対する措置命令では、

「実際には、本件16商品の原産国は中華人民共和国であったこと」

の一般消費者への周知が命じられています。

つまり、措置命令では、イギリスなどの国旗と国名を表示していたことについては、そのような国旗と国名を表示していたことを周知すればよいということになっているのですが、肝心の産地については、イギリス産ではないと周知するのでは不十分で、中国産と周知しなさい、というように明記されています。

これに対して優良誤認であった村田園に対する措置命令では、原材料が「外国産」であったこと(つまり、表示どおりの国産ではなかったこと)の周知は求められていますが、原材料の具体的な産地を周知することまでは求められていません。

優良誤認で行く場合も、たんに消極的に国産ではないというだけでなく、積極的に具体的な原産地まで周知することまで求めることも景表法上は可能なんじゃないかという気がしますが、少なくとも現在の運用はこうなっているということは知っておいてもいいんじゃないでしょうか。

2017年8月23日 (水)

比較広告ガイドラインの具体例の疑問

「比較広告に関する景品表示法上の考え方」

では、比較広告で主張する内容は客観的に実証されていなければならないとされていますが、その中に、

「実証は、比較する商品等の特性について確立された方法(例えば、自動車の燃費効率については、10モード法)がある場合には当該確立された方法によって、

それがない場合には社会通念上及び経験則上妥当と考えられる方法(例えば、無作為抽出法で相当数のサンプルを選んで、作為が生じないように考慮して行う調査方法)によって、

主張しようとする事実が存在すると認識できる程度まで、行われている必要がある。」

という説明があります(3(2))。

この前半の一般論の、

「比較する商品等の特性について確立された方法・・・がある場合には当該確立された方法」

によらなければならないというのはよいのですが、その具体例で「10モード法」(今ならJC08モードでしょうか)をあげているのは、ちょっと問題ではないでしょうか。

というのは、10モード法(JC08モードも)は、実際の燃費とはかなりのずれがあるからです。

もしこのガイドラインのように、燃費の比較は10モード法で表示しなければならないとすると、より実態に近い測定方法による比較はできない、ということにならざるをえませんが、それはおかしいでしょう。

この10モードへの言及については、不実証広告規制ガイドラインでも、

「自動車の燃費効率試験の実施方法について、10・15モード法によって実施したもの。」

というのが、

「表示された商品・サービスの効果、性能に関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法」

(2(1)ア)の具体例としてあげられていますが、これも、同様の理由で、不適切だと思います。

比較広告の場合と不実証広告の場合で何か違いがあるのかと考えてみると、比較広告の場合には、同じ条件、同じ方法で測定して比較しなければならないという要請があるので、業界で確立した方法以外を使うのはよくない、ということがあるかもしれません。

そうしないと、みんなが自分に都合のいい基準で比較しはじめて、収拾がつかなくなるからです。

でも私は、だからといって1つの測定方法を比較広告において強制しなければならないということはないんじゃないでしょうか。

たしかに、「比較」であることを重視しして、正確性(実燃費に近いこと)よりも、公平性(測定方法が確立していること)を重視する、という考え方もあるかもしれません。

しかし、

「うちは、JC08モードではライバルに負けるけど、実用燃費ではむしろ勝っている」

という広告をしたいことはあるでしょうし、その場合に比較広告で数値を載せたいこともあるでしょう。

その場合に、比較広告でJC08モード以外を使ったらいけないというのは、むしろ消費者に正しい情報が伝わらないことになって問題だと思います。

ちなみに最近の三菱自動車の燃費偽装の措置命令(平成29年1月27日)では、違反事実は、

「三菱自動車工業は、eKワゴン11商品を一般消費者に販売するに当たり、これらの各商品について、・・・

燃料消費率を別表・・・中の「表示内容燃料消費率JC08モード(国土交通省審査値)(㎞/L)」欄記載のとおり記載すること・・・により、

あたかも、国が定める試験方法に基づく燃費性能は、同各表「表示内容 燃料消費率JC08モード(国土交通省審査値)(㎞/L)」欄及び「表示内容 燃費基準達成状況」欄記載のとおりであるかのように示す表示をしていた。

というように認定されていて、JO08モードで測定されたように表示したけどそうじゃなかったということを問題にしています。

つまり、ずばり実際の燃費よりも優れていると表示していた、とは認定されていないんですね。

もしJC08モードが唯一ゆるされる燃費測定方法だとしたら、こんな認定にはならなくて、たんに、「燃費を実際より良く表示した」という認定になったはずです。

このことからも、消費者庁はJC08モードが唯一ゆるされる燃費測定方法だとは考えていないということがうかがえます。

そういうわけで、比較広告ガイドラインの10モードの言及はちょっと不用意というか、不適切だと思います。

ついでに指摘しておくと、このガイドラインにはちょっと面白いところがあって、同じく3(2)の「実証の方法および程度」のところに、

「例えば、一般に、自社製品と他社製品に対する消費者のし好の程度について、相当広い地域で比較広告を行う場合には、相当数のサンプルを選んで行った調査で実証されている必要がある。

これに対して、中小企業者が、味噲のような低額の商品について、一部の地域に限定して比較広告を行うような場合には、比較的少ない数のサンプルを選んで行った調査で足りる。」

という記載があります。

前半はよいのですが、後半は変じゃないでしょうか。

どうして中小企業の低額な商品ならサンプル数が少なくてもいいのでしょうか。まったく理解不要です。

あえて理由を考えれば、販売地域も販売数量・額も少ないので消費者への実質的な被害が少ないことが多い、ということかもしれません。

しかし、それは消費者庁が事件として取り上げるかどうかの判断をするときに考えればいいことで、実証方法が適切かどうかとは関係のない話だと思います。

ちなみに、このガイドラインの解説である

生駒賢治他「『比較広告に関する景品表示法上の考え方』について」(公正取引439号21頁・1987年)

では、比較対象商品を製造している者がパンフレット等の公表資料にのせている数値を使ってもよい(3(2))、としている理由について、

「なお、これは、特に中小企業に配慮して、比較広告が行いやすいように配慮したものである。」

と明言されています。

中小企業が味噌を売るという具体例についても、同じ発想ですね。

なにか政治的圧力でもあったんじゃないかと勘繰りたくなります。

ところで、よく考えてみると、比較広告ガイドライン3(2)の、

「比較対象商品等を供給する事業者がパンフレット等で公表し、かつ、客観的に信頼できると認められる数値や事実については、当該数値や事実を実証されているものとして取り扱うことができる。」

というのも、文字どおり受け取ると問題がおこりうると思います。

というのは、比較広告で用いる場合には、数字は同じ条件で測定する必要があります。

なので、ライバルのパンフレットに載っていた数字だからといってそのまま使う場合には、自社商品の数値も、ライバルと同じ方法で測る必要があるはずだからです。

でも一般的には、ライバルのパンフレットには細かい測定方法までは書いてないでしょう(せいぜい「自社調べ」くらいではないでしょうか)。

ここはガイドラインに良いと書いてあるから良いんだ、というのも一つの割り切りですが、私はそれはちょっと危ないと思います。

少なくともライバルから、「同じ測り方でないので不当だ」といわれたら反論できないと思います。

とくに、業界で確立された測定方法がないときに問題です。

ふつうの広告であれば、測定方法が2つあって、どちらもそれなりに正しく、だけどどちらが絶対に正しいということがいえない、という場合であれば、どちらの方法でも優良誤認にはならないのでしょう。

けれど、比較広告の場合には、やっぱり基本的には、同じ測定方法でないといけないと思います。

(異なる測定方法でも結果としてウソにはなっていないという場合もあるでしょうから、異なる方法だと絶対にダメということもないのでしょうけれど。)

あるいは少なくとも、比較広告をする以上は同じ測定方法をめざすべきでしょう。

たとえば、ある会社のパソコンは、「1メートルの高さから落としても壊れない」と表示していたとします。

別の会社のパソコンは「2メートルでも大丈夫」と表示していたとします。

でも、このような別々の広告がある場合に、この2つのメーカーのテストの仕方がおなじだという保証はありません。

それでも、パソコンの落下テストについて業界で確立された唯一の方法がない以上は、いずれのやり方も景表法上許される可能性は大いにあります。

そして、それぞれの会社が、それぞれ合理的なやり方でテストして、自社の広告を打つかぎりは、いずれも不当表示とはいえないのでしょう。

けれど、それを比較広告でやる場合には、消費者は同じ条件でテストしたのだと思うでしょうから(それが比較広告の特徴でしょう)、やっぱり同じテスト方法でないとまずいんじゃないかと思います。

2017年8月 4日 (金)

ボーネルンドに対する措置命令について

おもちゃの輸入業などをおこなうボーネルンドに対して、原産国告示違反で6月23日に措置命令が出ました

おもちゃのチラシにイギリスなどの国旗や国名を表示していたけれど、実は中国製だった、というものです。

この事件でボーネルンドは、

「国旗はメーカー所在国であると記載したが、⽣産国として誤解を与える表⽰だった。深く反省している」

とコメントしたそうです(6月23日付日経新聞ウェブ版)。

また、

「消費者庁によると、同社は2016年12⽉7〜9⽇に配布した新聞折り込みチラシに、玩具の写真と共に⽶国や英国、⽇本などの国旗を掲載。

裏⾯に⼩さく「国旗の表記はメーカー所在国です」と記していたが、同庁は『消費者が⽣産国と誤認する恐れがある』と判断した。」

と伝えられています(同日付時事ドットコム)。

これらをあわせて読むと、消費者が国旗の表示を生産国と誤認しないようにしておけば(たとえば「国旗の表記はメーカー所在国です」という記載を同一視野に大きく記載していれば)不当表示にならなかったかのような印象を与えますが、実はそうではありません。

原産国告示上は、国旗を記載するときには、本当の原産地(本件では中国)がわかるように明示しないと違反になるのであって、国旗が原産国でないと明示するだけでは足りないからです。

原産国告示の該当箇所をみてみましょう。

同告示2項(外国産品の不当表示)では、次の表示が不当表示だとさだめられています。

「2  外国〔中国〕で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であつて、

その商品がその原産国〔中国〕で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの

一 その商品の原産国〔中国〕以外の国〔イギリス〕の国名、地名、国旗、紋章その他これらに類するものの表示

(2号以下略)」

まず本件では、原産国(中国)以外の国(イギリス)の国旗を表示しているので、そのイギリス国旗の表示は1号に該当します。

そして、1号に該当する以上は、

「その商品がその原産国〔中国〕で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難」

でないかぎり(つまり容易に中国産と判別できないかぎり)、柱書の要件をみたしてしまい、不当表示になるのです。

仮に

「国旗の表記はメーカー所在国です」

と、イギリス国旗の表示と同一視野に大きく記載していたとしても、イギリス産ではないということはわかっても(※)、中国産と容易に判別できることにはならないわけです。

(※実は、この表示でも、メーカー所在国がイギリスだといっているだけで、ほんとうに製造地がイギリスではないということまで明示していることになるのか、疑問がないわけではありません。)

そういうわけで、ボーネルンドの

「国旗はメーカー所在国であると記載したが、⽣産国として誤解を与える表⽰だった。」

というコメントは、原産国告示に照らすとやや的はずれで、問題の本質は、イギリス国旗によりイギリスが生産国と誤認されるかどうかではなくて、イギリス国旗を表示する以上、中国産であることを明示しないといけなかった、ということなのです。

ちなみにボーネルンドの社告では、

「・・・これらの〔原産国である中国以外の国の国旗や国名の〕表示は、当該16商品の原産国が中華人民共和国であることを一般消費者が判別することが困難なものであって、景品表示法に違反するものでした。」

と、原産国告示2項柱書に沿った表現になっていて、イギリス国旗がイギリス製と誤認させるものであったとは一言も述べられていません。

(ちなみに社告の案は通常消費者庁から示されるので、本件もそうだと思われます。)

というわけで、もしボーネルンドが「国旗の表記はメーカー所在国であることを同一視野に大きく書いておけば違反にならなかった」と思っているとしたら、それは原産国告示の解釈を誤っていますし、自らの社告とも食い違ってきます。

もし大きく同一視野に「国旗の表記はメーカー所在国です」と記載していたら、消費者には実害がないということで、消費者庁は事件として取り上げなかったかもしれません。

そういう意味で、「国旗の表記はメーカー所在国です」と記載することは無意味ではないのですが、景表法違反かどうかといえば、やはりそれでも景表法違反だといわざるをえないでしょう。

この事件をみてもわかるように、原産国告示は実はけっこうやっかいで誤解されがちな告示です。

個人的には、これだけ企業の国際分業化が進んだ現代において、おもちゃのチラシにイギリス国旗が表示されているだけでそのおもちゃがイギリス国内で製造されたものと誤認する消費者がどれだけいるのか疑問だと思っており、ちょっと原産国告示は割り切りすぎのような気がします。

イギリス国旗がついていても、私なんかは、「イギリス人がデザインしたんだろうなぁ」とか「イギリスの会社が作ったんだろうなぁ」というくらいの期待しかしないと思うし、それで十分です。

おもちゃの工場がどこかなんて、どうでもいいわけで、イギリスの伝統とか、おもちゃに対する哲学とか、設計思想とか、そういったものがあれば十分で、別にだまされた気にもなりません。

もちろん「イギリス製」と書いたらあきらかにウソですが、イギリス国旗は漠然とイギリスのおもちゃであることをイメージさせるにはよい表現手段であり、もうちょっと融通がきかないのかなぁと思います。

しかも問題になるのは国旗だけでなく、国の地図なんかもアウトです(原産国告示運用基準1項)。

と、いろいろ言っても、現に原産国告示が今のような形で存在する以上、これを守らないといけません。

思わぬところで誤解しないよう、原産国告示は注意深く読む必要がありそうです。

それから、原産国告示は優良誤認と違って、いちいち優良性を認定する必要がないのが、消費者庁による迅速かつ画一的な運用ができるポイントです。

たとえばドイツ製のワインをイタリア製と偽った場合に、一般消費者にとってイタリア製ワインのほうがいいものだと認識されていることの立証は不要です。

このような優良性の立証が不要であることにくわえて、誤認を生じさせるかどうかという点についても原産国告示はかなり割り切った考え方をしているんだなぁということを感じさせたことも、今回の事件の特徴であったように思います。

2017年7月28日 (金)

期間限定商品の売れ残りと不当表示

だいぶ前のことですが、あるメーカーのクライアントから、

「期間限定販売」(たとえば2015年3月まで)

と銘打って、通常商品とはちがうパッケージでおまけもつけて販売した商品が、予想外に小売店で売れ残ってしまって(想定では発売と同時にすぐ売り切れるはずだった)、期限を過ぎても店頭に並んでいる状況だけれどどうしたらいいか、という相談を受けました。

このときは、やっぱり期間限定と表示しながらそれを過ぎていつまでも販売されているというのは有利誤認表示のおそれがあるので回収すべきでしょうね、というアドバイスをしました。

でも課徴金制度が施行されのにあわせて公表された課徴金のガイドラインの考え方によると、このケースが不当表示にあたるのかはなかなか微妙です。

というのは、課徴金ガイドライン(「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」)では、そもそも事業者(メーカー)のどの行為が表示行為に該当するのかについて、商品パッケージでの表示の場合には商品を取引相手方に引き渡す行為が表示行為であり、そのあと店頭に陳列されているのは小売店の行為であって、メーカーとは関係ない、と整理されているからです。

つまり、ガイドライン8頁の第41(5)想定例①では、

「商品a を製造する事業者Aが、

小売業者を通じて一般消費者に対して供給する商品a の取引に際して、

商品a について優良誤認表示を内容とする包装をし、

その包装がされた商品a を、平成30 年4月1日から同年9月30 日までの間、毎日小売業者に対し販売して引き渡した場合、

事業者Aの課徴金対象行為をした期間は、平成30 年4月1日から同年9月30 日までとなる

小売業者の一般消費者に対する販売行為は、事業者Aの行為ではない

なお、当該小売業者が事業者Aとともに当該優良誤認表示の内容の決定に関与していた場合は、当該小売業者が一般消費者に対して商品a を販売して引き渡す行為について、別途課徴金対象行為の該当性が問題となる。)。

事業者Aは、課徴金対象行為をやめた日の翌日である平成30 年10月1日以降は商品a の取引をしていないため、課徴金対象期間は、平成30 年4月1日から同年9月30 日までとなる。」

とされており、包装の不当表示では商品の引渡しが不当表示行為であり、その後の小売業者の販売行為は関係ない、とされています。

不当表示行為が措置命令と課徴金納付命令とでちがう内容を持つとは考えられないですから、これは措置命令の場合にもあてはまるのでしょう。

そうすると、少なくとも景表法との関係では(企業の道義的責任を無視すれば)、販売したあとの行為は関係ないんだから回収する必要はない、ということになりそうにもみえます。

(なお個人的には、不当表示行為の考え方をこのガイドラインのように割り切ってしまっていいものか、疑問がないではないと思っていますが、ここまではっきり書いてあるわけですし、ひとまずガイドラインにしたがっておきます。)

しかし、話はそう単純ではありません。

期間限定販売の場合、何が有利誤認なのかを考えると、限定期間中にその表示に接して、今しか手に入らないんだと思った消費者が、「今買わなきゃ」と思う点に問題があります。

限定期間後に店頭に並んでいる商品をみて、「あれ、期限過ぎてるのにおかしいなぁ」と思いながら買う消費者は、別に誤認していません。(期限が過ぎていることは明らかなので。)

つまり、限定期間中に、「今しか買えないと思ったから買ったのに、実はいつでも買えた」というのが有利誤認なわけです。

そうすると、メーカーとしては、「今しか買えない」という表示をするなら、今しか買えないようにしておく必要があります(そうしないと、有利誤認表示になります)。

では具体的にどうすればいいかというと、やはり、小売業者が期限後は販売しない(返品してもらう)ようにする必要があります。

上記ガイドラインとの関係では、あくまで不当表示行為は商品の引渡しだけれど、期限後は販売されないように契約なりで手当てをしておかなければ、すでに引渡しの時点で有利誤認表示をしていることになるのだ、ということです。

厳しい(そしておそらく論理的には正しい)見方をすれば、期限後には販売されないような手当をしておかないと、仮に期限内に完売しても、やはり有利誤認表示にあたる、ということなのではないかと思います。

もし期限内に売り切れても、それは結果オーライだっただけで、さかのぼって不当表示でなかったことになるわけではないように思われます。

さらに厳しいことを言えば、表示行為(商品の引渡し)時点で返品などのとりきめを小売業者としておかないかぎり、事後的に回収しても、やっぱり、引渡し時点での不当表示行為が適正な表示行為になるわけではないのではないかと思います。広い意味でいえば、事後的な回収も結果オーライの一種に過ぎないわけです。

事前にそういう取り決めをしていたにもかかわらず、小売業者が取り決めに違反して返品せず、期限後も販売を続けてしまった、という場合はどうでしょう。

過失がなくても措置命令は出る、という景表法の建前に忠実にしたがうなら、小売業者が契約違反をしても(=メーカーに過失がなくても)結果的に不当表示になってしまったなら、それはメーカーの責任である(措置命令が出る)、ということになりそうです。

ふつうであれば期限後まで売れ残ることはとうていありえないというような商品ないしは期限の設定なのであれば、小売業者との明示的な取り決めがなくても、全体的・規範的に評価して、不当表示ではない、ということも可能かもしれません。

そういう意味で、小売業者との取り決めが不当表示を避けるために必須の要件だということはないのかもしれません。

しかし、現に売れ残ってしまったという事実がある場合にはとりわけ、売れ残りの可能性が表示行為(商品引渡し行為)のときからあった、と認定される可能性が高いのではないかと思われます。

表示が事実と異なることになるのかどうかが将来の事実にかかっているようにみえる場合でも表示の時点で不当表示性を判断すべきことをうかがわせるものとして、価格表示ガイドラインの将来価格を比較対照価格にする二重価格表示に関する記述があります。

すなわち、同ガイドライン第4の2(1)イでは、

「販売当初の段階における需要喚起等を目的に、将来の時点における販売価格を比較対照価格とする二重価格表示が行われることがある。

このような二重価格表示については、表示された将来の販売価格が十分な根拠のあるものでないとき(実際に販売することのない価格であるときや、ごく短期間のみ当該価格で販売するにすぎないときなど)には、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある。」

とされており、表示の時点で「十分な根拠」があるかどうかが問題にされており、結果的に比較対照価格とされた価格で販売すれば表示の時点でどうであれ問題ないという立場はとられていないように思われます。

以上のケースと似ているけれど違う例として、表示が事後的に事実と異なってしまうことがあります。

たとえば「業界唯一の〇〇」と謳っていたのに、同じ性能の商品が事後的に出てきたような場合です。

この場合は、表示行為(商品の引渡し)の時点では「業界唯一」だったことは事実であり、その後もずっと業界唯一であることを保証した表示とはみられないでしょうから、事後的に事実と異なってしまっても、さかのぼって不当表示だといわれることはないのだろうと思います。

これに対して、「期間限定」の例は、事後的に事実と異なってしまったのではなく、(返品の取り決めをしてくなどしないかぎり)表示の時点で事実と異なる(ただ、事実と異なる事態が顕在化するのは期限経過後にすぎない)ということなのだろうと思います。

ほかに似たような例としては、客寄せの目玉商品を販売したら、思いのほか反響が大きくてぜんぜん在庫がまにあわず、結果的におとり販売になってしまった、という場合もあります。

この場合に、結果的に反響が小さくて在庫が足りても、やはりそれは結果オーライに過ぎないのであって、厳密には(論理的には)おとり販売になりうるのではないかという気がします。

このように、いろいろと複雑な問題が生じることからすると、「期間限定」という商品を販売するときにはくれぐれも注意してやることが必要だということがわかります。

以前相談を受けたそのケースでも、

「『期間限定』のところに、『2015年3月末メーカー出荷分まで』とか記載しておくべきでしたね」

というのが、将来への反省点でした。

2017年7月12日 (水)

東京ガスへの措置命令について

昨日(2017年7月11日)東京ガスとその販売会社2社に対して、不当な二重価格表示(有利誤認表示)で措置命令がでました

ガスコンロなどを販売するにあたり、メーカー(リンナイ、パロマ、ノーリツ)がメーカー希望小売価格を設定していないのに、東京ガスにおいて勝手に「メーカー希望小売価格」を設定し、そこから比べて安くなっているという、不当な二重価格表示をおこなったものです。

この事件、一見するとよくありがちな二重価格表示の事件ですが、課徴金を視野にいれると、なかなか興味深いものがあります。

まず、不当表示の記載がされた媒体が、「東京ガスのガス展2016」というイベントにおける販売のためのチラシだ、ということです。

イベントのチラシだと、CMや新聞広告よりもチェックが甘くなってしまうこともあるかもしれません。こういう表示にも課徴金がかかってくるので、要注意です。

次に、本件では、チラシは直接的には前記イベント(開催期間は平成28年11月3日から6日までの4日間)での販売のためのチラシですが、課徴金の対象になるのはそのイベントで売上に限られるのか、という問題があります。

この問題については、

「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」

の第4の2(10頁)では、

「課徴金対象行為は優良・有利誤認表示をする行為であるから、

「課徴金対象行為に係る商品又は役務」は、優良・有利誤認表示をする行為の対象となった商品又は役務である。

その「商品又は役務」は、課徴金対象行為に係る表示内容や当該行為態様等に応じて個別事案ごとに異なるものであるから、全ての場合を想定して論じることはできないが、

以下、「課徴金対象行為に係る商品又は役務」に関する考え方の例を記載することとする。」

としたうえで、

「(1) 全国(又は特定地域)において供給する商品又は役務であっても、

具体的な表示の内容や実際に優良・有利誤認表示をした地域といった事情から

一部の地域や店舗において供給した当該商品又は役務が「課徴金対象行為に係る商品又は役務」となることがある。」

との基準をあきらかにし、<想定例>として、

「① 事業者Aが、自ら全国において運営する複数の店舗においてうなぎ加工食品a を一般消費者に販売しているところ、

平成30 年4月1日から同年11 月30 日までの間、

北海道内で配布した「北海道版」と明記したチラシにおいて、

当該うなぎ加工食品について「国産うなぎ」等と記載することにより、

あたかも、当該うなぎ加工食品に国産うなぎを使用しているかのように示す表示をしていたものの、

実際には、同期間を通じ、外国産のうなぎを使用していた事案」

「事業者Aの課徴金対象行為に係る商品は、

事業者Aが北海道内の店舗において販売する当該うなぎ加工食品となる。」

という例があげられています。

ここではあきらかに、チラシに「北海道版」と明記されていたことが重視されています。

上の(1)の一般論で、「具体的な表示の内容」を具体化したものです。

次の具体例では、

「② 事業者Bが、自ら東京都内で運営する10 店舗において振り袖bを一般消費者に販売しているところ、

平成30 年9月1日から同年11 月30 日までの間、

東京都内で配布したチラシにおいて、

当該振り袖について「○○店、××店、△△店限定セール実施!通常価格50 万円がセール価格20 万円!」(○○店、××店、△△店は東京都内にある店舗)等と記載することにより、

あたかも、実売価格が「通常価格」と記載した価格に比して安いかのように表示をしていたものの、

実際には、「通常価格」と記載した価格は、事業者Bが任意に設定した架空の価格であって、○○店、××店、△△店において販売された実績のないものであった事案」

「事業者Bの課徴金対象行為に係る商品は、

事業者Bが東京都内の○○店、××店、△△店において販売する当該振り袖となる。」

という例があげられています。

ここでは、

○○店、××店、△△店限定セール実施!」

と限定されていたことが重視されています。

これは、20万円で買えるという取引条件が適用されるのがこの3店舗だけだったので、課徴金対象売上もその3店舗での売り上げとなるのは、わかりやすいですね。

そこで、本件での東京ガスのチラシをみると、

「ガス展特価」

と明記されているので、ガス展で販売された売上にだけ、課徴金がかかる、ということになりそうです。

もし「ガス展特価」と書いていなかったら、全国での売上に課徴金がかかった可能性もあるので、結果オーライというか、わずかな違いで大きな差になった可能性があります。

(ただ、報道によれば、本件では、対象商品は東京ガスのプライベートブランドで、ふだんはメーカー名も出していなかった、ということのようなので、そのような場合に、メーカー名を出して売っている商品(ナショナルブランド的な売り方をしている商品)と、プライベートブランドで売っている商品が、物理的には同じ商品だけれど景表法法上は同じ商品なのかどうか、という論点も出てきそうです。(本件では前述のように課徴金の対象はガス展での売上に限られそうなので、この論点は顕在化しませんが。))

二重価格表示の問題については、当該チラシで、

「ノーリツ プログレ メーカー希望小売価格320,220円(税込)のところ、195,800円(税込・工事費別)」

と書いてあれば、当該イベントで195,800円で買えるということもさりながら、メーカー希望小売価格は32万円以上もするんだ、という誤認も生じうるので、別の機会に25万円で販売している場合ですら、7万円も得した、という誤認を生じる可能性があるわけですが、このような点をガイドラインが事前に明らかにしていたことは、卓見というほかありません。

というわけで、本件では仮に課徴金がかかるといても当該イベントでの売り上げに限られるということになりそうですが、それでもあえて指摘すれば、比較的短期間の不当表示でも課徴金がかかりうるという点には注意が必要です。

つまり本件では、チラシの配布期間(不当表示行為期間)が、新聞折り込みで1日だけとか、手配りでも約20日間くらいとか、比較的短期間です。

しかしながら、課徴金の対象となる売上の期間は、不当表示の期間だけではなく、原則として(誤認解消措置をとらないかぎり)その後6か月間継続するので、たとえば1日だけの広告でも、最大6か月の売上には課徴金がかかることを覚悟しないといけません。

というわけで、課徴金が導入されると、いかに細かい表示にまで気を配らなければならないか、ということを実感させてくれる事件だったと思います。

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