景表法

2022年9月24日 (土)

打消し表示はすべての強調表示に付けましょう。

時々受ける質問に、「打消し表示は会社のホームページに載せておくだけではだめなのでしょうか。」というのがあります。

商品パッケージに強調表示を表示する場合、すべてのパッケージに打消し表示をしないといけないのか、という質問です。

ほかには、チラシなどもあるでしょう。

結論としては、すべての強調表示に、都度、打消し表示をする必要があります。

形式的な理由としては、打消し表示は強調表示と同一視野に表示されていなければならないとされているからなのですが、実質的な理由は、商品パッケージだけしかみない、あるいは、チラシしか見ない、という消費者もいくらでもいるからです。

会社法では、官報への公告やホームページでの公告でよしとされていたり、ほかには、個人情報保護法21条(取得に際しての利用目的の通知等)では、

「第二十一条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。」

と、利用目的を本人に知らせるのは公表でよい、ということになっています。

しかしながら、これらは法律の規定に基づいてはじめてそういう一種の通知の擬制方法が認められているから可能なのであって、一般的に公表などですますわけにはいきません。

とくに景表法の場合は消費者保護法ですから、誤認を生じさせるかどうかはあくまで消費者の側に立って考えないといけません。

そうすると、企業の都合で公告ですませたりすることは許されず、消費者がどのように情報を取得するのか、といった消費者の立場に立った解釈が必要であるということがわかると思います。

情報の受け手である消費者の側に立つ、というスタンスは、景表法の不当表示規制では常に必要です。

上記打消し表示も、そのような一般的なスタンスの、1つの応用であるといえます。

また、このように、打消し表示は「付け漏れ」のリスクが常にあります。

ときどき契約書のレビューを依頼してくる人の中に、契約書の本文だけを送ってくる人がいますが、大事なことが別紙に書いてあることはいくらでもあるので、これはリスクがあります。それと似ています。

契約書の本文だけを送ってくる人も、悪気があって(別紙を隠そうと思って)そうしているわけではたぶんなく、単に、別紙と本文が別のワードファイルになっているだけなのではないかと想像します。

そして、M&Aの契約とか、別紙があるのがあたりまえということで定着している契約なら、別紙の存在を忘れてしまうということはまずないのですが、世の中、別紙を使うのが一般的である契約書ばかりではありません。

そうすると、別紙があるかどうかは、契約書の本文を全部見ないとわからない、ということもあるわけです。

これは、結構な手間で、どこかで別紙の存在を見落としてしまうことがあると思います。

というわけで、少々脱線してしまいましたが、打消し表示も、別紙のような扱いをしていると、どこかで「付け漏れ」が出てしまいます。

常に、打消し表示と強調表示は不可分一体のものとして扱う必要があります。

また、打消し表示にはこのような「付け漏れ」のリスクがあるので、強調表示であまり強調しすぎることは避けるべき、ということにもなると思います。

2022年9月22日 (木)

既存顧客に対する物品提供は景品類の提供か。

よく聞かれる質問に、過去に自社の商品を購入してくれた顧客(既存顧客)に対して、たとえば「日頃のご愛顧に感謝して」などと銘打って、粗品や景品を贈呈したりするのは景表法上の景品類に該当するのか、という質問があります。

結論としては、基本的には取引付随性がなく、景品類には該当しません。

この点について、消費者庁ウェブサイトの景品類に関するQ&Aの13番では、

「Q13  昨年1年間に、当店で10万円分以上の商品を購入してくれたお客様を対象として、今後の取引を期待して「お客様感謝デー」を実施し、来店してくれたお客様にもれなく景品を提供する旨をダイレクトメールで告知しようと考えています。この場合、取引の価額を10万円とみてよいでしょうか。」

という設問に対して、

「A 既存の顧客に対して景品類を提供する場合の取引の価額については、原則として、当該企画が、同企画を告知した後の取引を期待して行われるものであると認められることから、

取引の価額は、当該企画を告知した後に発生する通常の取引のうち最低のものということになり、

過去の購入額を取引の価額とすることはできません

御質問のケースは、来店を条件として景品類を提供するものと認められますので、取引の価額は100円又は当該店舗において通常行われる取引の価額のうち最低のものとなり、提供できる景品類の価額は取引の価額に応じたものとなります。」

と回答されています。

もし、この「景品」が、過去の取引と付随していると考えるなら、当然、取引の価額は過去の取引の価額である10万円となりますが、取引の価額を10万円とすることはできないといっているわけですから、過去の取引に附随する提供だとみることはできない(よって過去の取引との取引付随性はない)、ということになります。

ポイントは、問題の取引(取引付随性の有無が問題になる取引)が、企画を告知する前か後かです。

告知後に成立した取引との関係では、当該企画により提供される物品は当該告知後取引との取引付随性は認められますが、告知前に既に成立済みの取引との関係では、当該物品は取引付随性は認められません。

たしかに、条文の文言を形式的に読めば、定義告示の取引付随性の要件は、

「景品類とは・・・事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に附随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益」

と書かれているだけで、企画告知前の「取引に附随」するということも文言的にはありえないわけではないのでしょうけれど、そういう読み方はしない、ということです。

このような考え方は、定義告示運用基準4⑴の、

「(1) 取引を条件として他の経済上の利益を提供する場合は、「取引に附随」する提供に当たる。」

というのにも表れているといえます。

というのは、「取引を条件として」提供したといえるためには、取引をするかどうかを決定する時点で、取引が条件だということが当然消費者に告知されているべきだ、物品が「取引を条件として」提供されるのかどうか消費者にわからないときには、「取引を条件とし」た提供とはいえないのだ、と考えるのが自然(当然)だからです。

取引を条件としない、定義告示運用基準4⑵の場合を見ても、やはり、包装に告知されているとか、入店者に限るとか、取引をする前に企画の存在が消費者にわかるケースばかりです。

というわけで、取引付随性が認められるためには、取引の(意思決定の)前に企画が消費者に告知されている必要があります。

ちなみに、定義告示運用基準1⑵では、顧客誘引性について、

「(2) 新たな顧客の誘引に限らず、取引の継続又は取引量の増大を誘引するための手段も、「顧客を誘引するための手段」に含まれる。」

とされており、既に顧客である人の取引の継続や増大を誘引する場合も顧客誘引性が認められることになっているのですが、取引付随性は顧客誘引性とは別の要件なので、以上で取引付随性について述べたことは影響を受けません。

ただし、単発の企画であれば以上のとおりでいいのですが、同じ企画を繰り返し行って常態化していると、消費者の間では、この商品を購入すればこのような景品がもらえるのだということが知れ渡ることになり、そうすると、企画告知後の取引との間に取引付随性が認められることがあるかもしれません。

このように、単発の企画であれば企画告知前との取引との間には取引付随性は認められない、ということに尽きるのですが、同じ企画を繰り返し行っている場合には問題となる可能性が否定できないので、やや注意が必要です。

ただし、既存顧客の取引との付随性が認められるためには、企画内容の告知がなくてもあたかもあったかのように認識されるというくらいの常態化が必要と考えられるので、そこまでの常態化があるとされることは、かなり稀なことではないかという気もします。

2022年9月 8日 (木)

不実証広告規制は立証責任の転換か?

景表法の不実証広告規制は立証責任の転換を定めた規定であると説明されることが多いと思います。

ですが、本当にそうでしょうか?

「立証責任」を有斐閣『法律学小辞典』で調べると、挙証責任の項目に飛ばされ、挙証責任は、

「裁判所が判決をするには、証明の対象となる事項を確定しなければならないが、裁判官の能力や当事者の努力にも限界がある以上、裁判所がある事実について存否いずれにも確定できないこともあり得る。

このような場合にも判決を可能にするために、その事実の存在又は不存在を擬制して法律効果の発生又は不発生を判断するが、その結果、一方の当事者が被る不利益を挙証責任という。

立証責任、証明責任ともいう。

このように、挙証責任は、要証事実の存否について、裁判所が確信を抱くに至らない、真偽不明の場合(ノン・リケット)を処理するための概念であるから、訴訟資料の提出について弁論主義・職権探知主義のいずれを採用しても問題になる。」

と説明されています。

つまり、双方立証を尽くしても真偽不明の場合に、不利に扱われる負担というのが、立証責任です。

ところが、不実証広告規制に関する景表法7条2項では、

「2 内閣総理大臣は、前項の規定による命令〔注・措置命令〕に関し、

事業者がした表示が第五条第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる

この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、同項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。」

と規定されています。

これは、どうみても訴訟で真偽不明の場合の責任を違反者に負わせるというのとは違います。

まず、合理的な根拠を示す資料の提出を求めることが「できる」なので、求めないこともできますし、実際過去にはそのような事例もあります。

そして、措置命令前の段階で消費者庁が合理的根拠を示す資料の提出を求めなかったときには、通常どおり、訴訟においても消費者が立証責任を負います。

さらに、資料の提出を求めたときの効果は、提出した資料が合理的な根拠を示すものでなければ、優良誤認表示であると「みなす」なので、いわば、違反が擬制されます。

これは、真偽不明の場合にどちらに責任を負わせるのかというのとは、ぜんぜん違います。

しかも、要件事実は、問題の表示が優良誤認表示かどうかではなく、措置命令前に提出された資料が合理的根拠を示しているかどうか、です。

つまり、提出済み資料の合理性だけが争点になります。

表示が優良誤認表示なのかと、資料が合理的なのかでは、ぜんぜん意味が違います。

もちろん、措置命令後に出された資料も考慮されません。

訴訟で初めて違反者が提出した証拠は、それが提出ずみの資料の合理性を根拠付けるものなのであれば考慮され得ますが、当該証拠自体で優良誤認表示ではないという立証はできません。

そのようなことは、通常の立証責任の転換ではありえません。

そして、措置命令前に提出された資料の合理性だけが争点になるため、取消訴訟で消費者庁側が積極的にたとえば試験をするなどして優良誤認表示だと立証する必要は、まったくありません。

措置命令前に提出された資料を弾劾するために消費者庁が独自に試験することはあるかもしれませんが、必須ではありません。

実際、翠光トップラインに対する措置命令の取消訴訟では、消費者庁が独自に試験をして証拠として提出した形跡はなく、もっぱら翠光トップライン側の試験方法の批判に終始していますし、裁判所もそのような主張立証でよしとしています。

しかも、この合理性の根拠が、一般的にイメージされるようなものに比べて貼るかに高い厳密性が要求されます。

たとえば、翠光トップライン判決では、査読付学術論文なみの厳密さが要求されているようにみえます。

博士号を持っている知り合いの科学者の人に聞いたところ、理系の世界では、論文は査読付でないと学問的には意味がないそうで、「査読のない論文なんて、エッセーと同じ」なんだそうです。

有名な学者の先生が書いたものだから合理的根拠になると思ったら大間違いです。

なので、査読付論文と同じレベルが要求されるというのは、大変なことだと思います。

しかも、理屈の上では、違反者が資料の合理性の立証に成功しても、それは、優良誤認表示であるとみなす(擬制する)効果がなくなるだけで、いわば更地に戻るだけであり、さらに消費者庁が追加の立証をして(不実証広告規制を経由せずに)裁判所が優良誤認表示であると認定することも、条文の文言上は不可能ではないように思われます。

このように、不実証広告規制は、他に例のない(特商法にもありますが)、きわめて強力な制度だということは、知っておいたほうがいいと思います。

2022年8月 6日 (土)

原産国表示と優良誤認の違い

たまに勘違いされることがあるようですので(公正取引861号50頁など)、原産国告示と優良誤認の違いについて説明しておきます。

原産国を偽っているように見えるのに原産国告示違反ではなく優良誤認とされている事件は、対象商品自体の原産国を偽ったのではなくて、対象商品の原材料を偽った事件です。

ブランド力の差で著しく優良と誤認させるほどのものが優良誤認でそれに至らないものが原産国告示、というわけではありません。

(原産国告示違反には課徴金がかからないので、そういう解釈もあって良いと思いますが、実務の運用はそうなっていません。)

原産国表示は、対象商品自体の原産国を偽った場合に限られます。

原産国告示のうち比較的使われることの多い2項(外国産商品の不当表示)では、

「2 外国で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であつて、その商品がその原産国で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの

一 その商品の原産国以外の国の国名、地名、国旗、紋章その他これらに類するものの表示

二 その商品の原産国以外の国の事業者又はデザイナーの氏名、名称又は商標の表示

三 文字による表示の全部又は主要部分が和文で示されている表示」

が原産国告示違反の表示と定められています。

つまり、あくまで「商品」自体の原産国を偽るのが原産国告示違反であって、商品の原材料の原産国を偽っても、原産国告示違反にはならず、優良誤認表示にしかなりません。

また、原産国告示違反に該当する表示をあえて優良誤認とすることも、理屈の上では可能ですが、そのような運用はされていません。

たとえば、家庭用塩の製造販売業者9社に対する警告(優良誤認)についての公取委報道発表文(平成16年7月21日)では、

「前記1の9社は,家庭用塩について,別紙1のとおり,原料原産地について,あたかも沖縄等で採取された海水を用いたものであるかのように表示していたが,実際には,外国産の天日塩を沖縄等で採取した海水に溶解するなどして再生加工したもの等であり,一般消費者に誤認される疑いがある。」

と認定されています。

つまり、商品である家庭用塩の原産地を偽ったのではなく、その原材料である海水の原産地を偽ったので、原産地告示違反にはならない、ということです。

平成21年11月10日のファミリーマートに対する措置命令(優良誤認)でも、

「ファミリーマートは、平成21年6月11日ころから同月16日ころまでの間、カリーチキン南蛮おにぎりの包装袋に貼付したシール(別添写し)において、「国産鶏肉使用」と記載することにより、あたかも、当該商品の原材料に我が国で肥育された鶏の肉を用いているかのように示す表示をしていたが、実際には、当該商品の原材料にブラジル連邦共和国で肥育されたものを用いていた。」

と認定されており、商品のおにぎり自体ではなくその原材料の産地を偽ったので、原産国表示違反にはなりませんでした。

おにぎりの原産国は、たぶん、おにぎりを作った国でしょう。

なので、おにぎりの工場が国内にあれば、そのおにぎりを国産といっても、間違いではないと思います。

でも、材料の鶏肉の原産国を偽れば、これは、優良誤認表示でしょう。

プラスワンに対する令和元年10月16日措置命令(優良誤認)でも、同社が販売する「本件商品」は、

「貴社が運営する「からあげ専門店こがね」と称する店舗のうち別表1「店舗」欄記載の店舗において供給する鶏の「もも」と称する部位(以下「鶏もも肉」という。)を使用した唐揚げ及び当該唐揚げを含む商品の各商品(以下これらを併せて「本件商品」という。)」

と定義され、違反対象商品は唐揚げおよび唐揚げを含む商品でしたが、違反の表示は、

「(4)ア プラスワンは、本件商品を一般消費者に販売するに当たり、例えば、塚本店の看板において、平成28年2月1日以降、「からあげ専門店 こがね」及び「国産若鶏使用 絶品あげたて」と表示するなど、別表1「店舗」欄記載の店舗の看板又は軒先テントにおいて、同表「表示期間」欄記載の期間に、同表「表示内容」欄記載のとおり表示することにより、あたかも、本件商品には、国産の鶏もも肉を使用しているかのように示す表示をしている又は表示をしていた。」

というものであり、唐揚げ自体の原産国(揚げた国ですかね)を偽ったのではなく、その商品に使用された原材料である鶏もも肉の原産地を偽ったわけです。

なので、この事件も優良誤認となりました。

ちなみに、消費者庁ホームページが、

国産有名ブランド牛の肉であるかのように表示して販売していたが、実はブランド牛ではない国産牛肉だった。」

というのを優良誤認の例として挙げていますが、これは、実際も表示も原産地は日本(国産)なので、原産国表示違反にはなりようがなく、優良誤認になるのは当然です。(違反は、「ブランド」牛か、ノーブランド牛か、という点にあり、原産国の点にはありません。)

以上は優良誤認の例でしたが、今度は原産国告示の事件をみてみると、たとえばビック酒販に対する令和3年9月3日措置命令では、

「⑶ ビック酒販は、本件25商品〔お酒〕を一般消費者に販売するに当たり、自社ウェブサイトにおいて、別表「商品名」欄記載の商品について、同表「表示期間」欄記載の期間に、同表「表示内容」欄記載のとおり表示することにより、同欄記載の国名又は地名を表示していた。

⑷ 実際には、本件25商品は、別表「実際の原産国(地)」欄記載の原産国(地)で生産されたものであった。」

と認定されており、商品自体の原産地を偽ったので、原産国告示違反になりました。

令和元年6月13日の高島屋に対する措置命令(原産国表示)でも、

「⑶ 髙島屋は、本件147商品〔化粧品や雑貨〕を一般消費者に販売するに当たり、自社ウェブサイトにおいて、別表「商品名」欄記載の商品について、同表「表示期間」欄記載の期間に、「原産国・生産国」又は「原産国」と記載の上、同表「表示された国名」欄記載の国名を記載していた。

⑷ 実際には、本件147商品は、別表「実際の原産国(地)」欄記載の原産国(地)で生産されたものであった。」

と、「本件147商品」自体の原産地を偽ったので、原産国告示違反になりました。

という具合に、原産国告示は商品自体の原産国、優良誤認は商品の原材料の原産国の偽り、ということです。

それから、原産国告示は商品だけが対象なので、役務の場合には、必ず優良誤認になります。

たとえば、レストランは役務と考えられているので、国産牛ステーキというメニューで料理を出したのが外国産牛肉だったりすると、優良誤認にはなりますが、原産国告示違反にはなりません。

というわけで、みなさん勘違いしないように気をつけましょう。

2022年8月 5日 (金)

晋遊舎に対する措置命令の疑問

晋遊舎がパズル雑誌の懸賞の賞品を送っていなかったとして、2021年3月24日、消費者庁から措置命令を受けました

応募締切から短いもので8カ⽉弱、長いのだと3年10カ⽉後まで賞品が発送されていなかったということです。

本件でも、他の事件と同様、不当表示があったことの公示などとともに、

「貴社は、今後、本件商品又はこれらと同種の商品の取引に関し・・・前記○○の表示と同様の表示を行うことにより、当該商品の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示をしてはならない。」

という、将来同様の表示をすることを禁じる命令がされています。

この手の事件をみて常々思うのですが、措置命令でたんに将来の表示を禁じるだけではなくて、命令の対象になった表示どおりに賞品を送るように命令することはできないものでしょうか。

西川編著『景品表示法〔第6版〕』p305でも、実際の商品役務の内容を表示に合わせることを命じた例として、石川ライフクリエートに対する2003(平成15)年4月16日排除命令が紹介されています。

この石川ライフクリエートの事件は老人ホームの事件だったので、入居している老人の方々にとっては、「不当表示がありました。将来同様の表示はしません」といわれてもあまり意味がなく、施設の内容を改善して表示に合わせる必要性がとくに高かったといえるかもしれません。

でも、雑誌の懸賞だって、「あれはうそでした。将来同様の表示はしません。賞品は表示どおりちゃんと送ります。」といわれても、現に懸賞に応募した人たちにとっては意味がないわけで、ちゃんと懸賞を実施して賞品を送らせるべきだったのではないでしょうか。

不当表示の内容が、「コロナウィルスを寄せ付けません」といった内容だと、表示どおりの商品を提供することはおそらく技術的に不可能ですから、表示をやめさせるほかないわけですが、雑誌の懸賞なら、不可能なことは全然ないと思います。

ひょっとしたら、応募ハガキを捨てちゃったので抽選の実施が不可能だった、ということもあるかもしれませんが、それでも、抽選ハガキが残っている分については実施させることはできるのではないでしょうか。

そのほうが、応募者も喜ぶし、同種事案の抑止にもなると思います。

こういうことが消費者庁内で議論されたのかどうかはわかりませんが、たぶん議論されていないと思うので、問題提起させていただきました。

2022年7月21日 (木)

アフィリエイト広告が広告主の広告とはみなされない場合(「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」注7)

2022年6月29日に改正された「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の注7では、

「アフィリエイターが自らのアフィリエイトサイトに単にアフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者のウェブサイトのURLを添付するだけなど、当該事業者の商品・サービスの内容や取引条件についての詳細な表示を行わないようなアフィリエイトプログラムを利用した広告については、通常、不当表示等が発生することはないと考えられる。

また、アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるものについては、通常、広告主が表示内容の決定に関与したとされることはないと考えられる。」

と定められています。

後半部分は、アフィリエイト広告が広告主の広告ではないと認められる場合(広告主が表示内容の決定に関与していないと認められる場合)について述べているわけですが、「当該表示にかかる情報のやりとり」というのは、具体的にはどのように理解すればいいのでしょうか。

ここで、「当該表示」というのは、その直前の「アフィリエイターの表示」を指します。

要するにアフィリエイト広告のことなのですが、アフィリエイト「広告」といってしまうと広告主の広告であるという意味が込められてしまうので、アフィリエイターの「表示」といっているのでしょう。

では、「当該表示に係る情報」とは、具体的には何でしょうか。

素直に読めば、「当該表示に係る情報」とは、「アフィリエイターの表示に係る情報」です。

広告対象商品に関する情報(性能やスペック、アピールポイントなど)は、文言上、当然には「アフィリエイターの表示に係る情報」に該当しなさそうに見えますが、そこはあまり細かいことは言わず、広告対象商品に関する情報も、「当該表示に係る情報」であると読むのでしょう。

というのは、(結論先取り感のある理屈ですが)広告対象商品に関する情報を広告主がアフィリエイターに提供している場合には、広告主がアフィリエイターの表示を自己の広告とみなしているといえますし、「このような内容の商品として広告してね」というのでも十分、「広告主が表示内容の決定に関与した」といえるからです。

もし、広告対象商品自体に関する情報は「当該表示に係る情報」に含まれず、「当該表示に係る情報」は広告対象商品自体に関する情報を超えた情報(例えば具体的な広告文言とか、どの競合商品と比較しろとか、この点をアピールしろとかいった指示)に限るとすると、アフィリエイト広告が広告主の広告になる範囲が狭くなりすぎます。

それに、普通の広告の場合に広告主が商品内容だけを広告代理店に伝えて広告代理店が広告内容を考えるようなケース(が実際にあるかどうかは分かりませんが)がもしあれば、問題なく広告主の広告でしょうから、広告主からアフィリエイターに伝えられるのも商品自体に関する情報だけで十分でしょう。

次に、「当該表示に係る情報のやり取り」というように、「やり取り」記されているので、「当該表示に係る情報」が広告主からアフィリエイターに伝達されることはもちろん、「当該表示に係る情報」がアフィリエイターから広告主に伝達される場合も含まれるでしょう。

(なお、「広告主とアフィリエイターとの間で」とされていますが、やり取りは広告主とアフィリエイターとの間で直接なされる必要はなく、現実的には、間に入るアフィリエイトサービスプロバイダーを通じてなされるのでしょう。)

そして、「広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていない」ことが必要なので、広告主からアフィリエイターへの情報の伝達がなくても、アフィリエイターから広告主への情報の伝達があれば、広告主の広告だ、ということになりそうです。

ということは、広告主はアフィリエイターからアフィリエイト広告の内容の報告を受けてはいけない(受けていると広告主の広告になってしまう)、ということになります。

では、広告主が広告内容を一切アフィリエイターに丸投げし、事後チェックもしないのがベストなのか、というと、必ずしもそうとはいえません。

というのは、指針のパブコメで、

「『また、アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にある者については、通常、広告主が表示内容の決定に関与したとされることはないと考えられる』

と記載されているが、

これでは、アフィリエイターに表示内容を丸投げすれば広告主に責任は生じないと読めるのではないか。

しかし、これは「他の事業者に表示内容の決定を委ねた事業者も『表示内容の決定に関与した事業者』に当たる」とする(注6)に挙げている東京高裁ベイクルーズ事件判決に反している。

したがって、この文は削除すべきではないか。

たとえ広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていなくても、広告主がアフィリエイターに表示内容の決定を委ねている以上、アフィリエイターの表示は広告主の表示となると考える。」

という、至極まっとうなコメントがなされており、これに対して消費者庁が、

「御指摘のように、広告主が「アフィリエイターやアフィリエイトプロバイダに表示内容を丸投げ」した場合は、

本留意事項「(注7)」に記載した

「アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるもの」

には当たりません。」

と回答しているからです。

つまり、丸投げは広告だ、ということです。

消費者庁の理屈を想像すると、「丸投げ」は、表示内容の決定を「委ねている」に該当するのだ、ということなのでしょう。

「丸」投げかどうかはどうでもよくて、「投げ」ていることが、「委ねている」ということなのでしょう。

それに、注7を細かく見ると、

「アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど

アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるものについては、

通常、広告主が表示内容の決定に関与したとされることはない」

とされており、情報のやり取りが一切行われていないことはあくまで例示であり、要は、「広告とは認められない実態」があるかどうかが決め手だ、ということがわかります。

しかしそうだとすると、「情報のやり取りが一切行われていない」場合でも、「丸投げ」していれば、結局広告主の広告だということになり、あえて「情報のやり取り」云々に言及する注7の後半は不要なのではないか(あるいは、文字どおり解釈することはできないのではないか)という疑義が生まれ、理屈としては寄せられたコメントのほうが正しいと思います。

つまり、正しくは、

「広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていない」

という部分は、

「広告主がアフィリエイターに広告内容の決定を委ねておらず、かつ、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていない」

と補って読むべきなのでしょう。

でもそうすると、情報のやり取り云々に関する部分は何も意味がないようにも思えますが、これは、情報のやり取りがまったくない場合には委ねていないという反論の余地を認めたのだ(委ねていないかどうかはケースバイケースで判断)、と考えるべきでしょう。

これに対して、情報のやり取りを行っている場合には、「委ねていない」とはいえないでしょう。

そのようなルールで広告主が救われるアフィリエイトプログラムがどれだけ世の中にあるのかはわかりませんが、消費者庁があえてこういうルールを導入した背景には、きっと、広告主が救われるべきアフィリエイトプログラムが世の中に存在する、という認識にもとづいてのことなのでしょう。

ちなみに、改正指針では、「広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていない」といっているだけで、やり取りの時期については限定していません。

この点、広告掲示前に情報のやり取りがあれば(ふつうのアフィリエイトではあるでしょう)、広告主の広告になる方向にはたらくのは明らかです。

では、広告掲示後に情報のやり取りがあるだけのときは、広告主の広告であることは否定されるのでしょうか。

私は否定されないと思います。

まず、改正指針に、やり取りが「一切」行われていない、と書かれており、やり取りの時期に限定はありません。

それに、情報のやり取りは広告内容決定の委託の存在を基礎付ける間接事実というべきで、そうだとすると、広告掲載後のやりとりでも、(広告主による事後チェックなどもありえますから)内容の決定を委ねたことの間接事実となってよさそうだからです。

事後的な事情が広告該当性に影響しうることはパブコメにも出ていて、

「インターネット留意事項の(注7)の第2文の以下の記載、すなわち、

「また、アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるものについては、通常、広告主が表示内容の決定に関与したとされることはないと考えられる。」

の後に以下の記述を追加するべき。

「なお、このような場合であっても、アフィリエイターが消費者を誤認させる内容の表示をしていることを広告主が認知しているにもかかわらず、あえて放置しているような場合は、広告主が、アフィリエイターに対しそのような表示を行うことを委ねていると評価され、表示内容の決定に関与しているとされることがあることに注意する必要がある。」

アフィリエイターが表示を開始した段階で、広告主とアフィリエイターとの間で表示に係る情報のやりとりが行われていなかった場合であっても、広告主が当該問題のある表示を認知し、その後も何ら是正のための対応をとらず、当該表示を自らの商品販売に利用していた場合は、広告主の表示に対する責任を問うべき場合があると考えられるため。」

というコメントに対して、

「御指摘の点は、個別事案ごとの景品表示法上の表示主体についての解釈についてのお尋ねであり、個別の取引実態に応じて判断されるものであることから、お答えすることは困難であると考えております。」

と回答されています。

これは、広告主が事後的に認知した場合でも「委ねている」と評価される場合があることを否定しない趣旨であると考えられます。

でもそうすると、決定を委ねたつもりのない広告主が、自社商品について不当表示のアフィリエイト表示がなされていることに気づいて、そのアフィリエイターに事実関係を問い合わせると、かえって広告主の広告になってしまう、ということになりかねません。

しかしそれは改正指針の文言を杓子定規にとらえた屁理屈と言うべきで、そのような推認はすべきではないのでしょう。

このように、注7の後段は、よく考えてみると論理的には不明な事が多く、きっと読む人が読めば「あ、自分のことだ!」と思うのだろう、という謎に満ちた内容になっているように思います。

消費者庁は、何かの機会に、いったい注7の後段はどのようなケースを想定しているのか、きちんと説明した方がよいと思います。

2022年7月20日 (水)

スシローのおとり広告について

2022年6月9日、あきんどスシローがおとり広告で措置命令を受けました

この事件は、オーソドックスなおとり広告告示1号だけではなく、4号違反も成立していて、1号と4号の関係について興味深い論点を提供しているように思われるので検討してみます。

おとり広告告示1号と4号では、

「一 取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての表示」

「四 取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務についての表示」

が不当表示とされています。

「取引の申出に係る商品又は役務」を、わかりやすく、「おとり商品」といい、余分な部分を端折って違反要件を切り出すと、

一 おとり商品について・・・取引に応じることができない場合

四 おとり商品について・・・取引する意思がない場合

ということになります。

つまり、

1号が、取引できない(取引能力がない)場合

4号が、取引意思がない場合

ということになります。

(意思,能力)の、有り無しで分けると、

(意思、能力)=

(○,○),

(○,×),

(×,○),

(×,×),

の4パターンになります。

取引能力も意思もある場合((○,○))には、他の号を無視すれば違反にはならないので問題なし、です。

取引意思はあるけれど能力がない場合((○,×))は、1号にあたります。

取引意思はないけれど取引能力はある場合((×,○))は、4号になります。

では、取引意思も取引能力もない場合((×,×))は、どちらにあたるのでしょう?

これは、取引に応じることができない場合(1号)としてしまっていいと思います。

告示の規定上、1号(取引に応じることができない場合)が先に来ていますし、これがおとり広告の典型例ですし、取引に応じることができない場合は取引の意思も通常ないでしょうから(×,×)の場合を1号から除くのも不自然だからです。

逆に言うと、取引意思も能力もない場合に1号と4号の重畳適用とかをする必要はない(1号だけでいい)、ということです。

さて、スシロー事件では、3つのキャンペーンにおける3つの料理が問題になっています。

1つめのキャンペーンの期間は2021年9月8日~20日で、足りなくなった料理は「新物!濃厚うに包み」(以下「うに包み①」)です。

うに包み①については、スシローは、足りなくなることがわかり、9月13日に、同月14~17日の提供停止を決定しています。

措置命令の別表1-1を見ると、丸1日まったく提供していない日は、最も早くて9月14日、最も遅くて17日(9月14日~17日)です。

2つめのキャンペーンの期間は9月8日~10月3日で、足りなくなった料理は「とやま鮨し人考案新物うに 鮨し人流3種盛り」(以下「うに3種盛り②」)です。

うに3種盛り②についても、スシローは、9月13日に、18~20日の提供停止を決定しています。

別表1-2をみると、丸1日まったく提供していない日は、最も早くて9月18、最も遅くて9月20日(9月18日~20日)です。

最後に、3つめのキャンペーンの期間は2021年11月26日~12月12日で、足りなくなった料理は「冬の味覚!豪華かにづくし」(以下「かにづくし③」)です。

かにづくし③については、本部による停止決定はなく、別表1-3をみると、一番早い店で11月26日(つまりキャンペーン初日! 380番の歌島店等)から、一番遅い店(というよりほとんど全ての店)で、キャンペーン最終日である12月12日まで、提供をしていません。

そして、措置命令では、うに包み①とうに3種盛り②については、告示4号(合理的理由がないのに実際には取引する意思がない場合)に該当するとされ、かにづくし③については、1号(取引を行うための準備がなされていない場合)に該当するとされています。

ここで、かにづくし③が1号(取引を行うための準備がなされていない場合)にあたるとされ、違反期間はそれぞれの店舗で実際に提供をできなかった日であることについては、とくに問題はないでしょう。

これに対して、うに包み①とうに3種盛り②については、本部が提供中止を指示した9月18日~20日の3日間なのか、それとも、各店舗ごとに実際に取引をしていなかった日なのかは、やや問題です。

この点については、本部で中止を指示しているとはいえ、実際には店舗で提供している以上(つまり、本部の指示が徹底されていなかった)、実際には取引する意思がないとまではいえます、実際に提供している店舗については4号には該当しないというべきでしょう。

なお、うに包み①とうに3種盛り②については、1号が認定されていないということは、本部が中断を指示した期間よりもあとは、ちゃんと提供されていたのだとうかがえます。

というのは、もし中止指示により中止をしていた期間のあとにも提供されていなかったとしたら、1号(取引を行うための準備がなされていない場合)に該当したはずだからです。

もし、消費者庁が、中止指示のあとにも提供できていない日があったのに1号を適用せず、本部が中止を決定した事実に引きずられて4号を適用してしまって、指示による中止期間後の不提供を不問に付していたとしたら問題でしょう(きっとそのようなことはないと思いますが)。

とすると、スシロー、うには4日間または3日間の中断だけで、よく再開にこぎ着けたなぁ、とむしろ感心します。

本件で問題なのは、うに包み①について、9月13日に、14~17日の提供停止を決定しているにもかかわらず、広告は、ウェブサイトで9月14日から同月20日まで、テレビCMは9月8日から20日まで、そのまま行われていることです。

うに包み①の中断は4日間だけなので、テレビCMを中断するまでの判断には至らなかったのかもしれません(前の日のCMをみて翌日来店する人もいるでしょうから、提供中断期間だけCMを止めればいいというものでもないでしょう)。

これに対して、うに3種盛り②は、9月13日に、18~20日の提供停止を決定しているのに合わせてなのか、ウェブサイトでの表示期間は9月8日~17日と認定されており、提供停止期間中の宣伝はされていません。

でも、消極的にウェブサイトでの広告をやめたというだけではやっぱりだめで、積極的に中断を告知しないといけないんでしょうね。

では具体的にどう告知すればいいかというと大問題で、テレビCMまでやってると、それをみてお店まで来てしまう人はいるでしょうから、各店舗で「売り切れ」みたいな掲示を出すだけではだめでしょうね。

どの店舗で売り切れなのかを毎日CMで告知するのも非現実的かつ効果が薄そうで、たぶん、どうしようもないのでしょう。

かにづくし③については、そもそも提供中止決定はされていませんが、事実上の提供中止(≒売り切れ)後も、ウェブサイトで、2021年11月24日から同年12月12日までの間、テレビCMで11月26~12月12日までの間、広告をしています。

ちなみに、スシローの広告では「売切御免」とも表示されていましたが、措置命令では一切考慮されていません。

この点に関しては、告示2号の、

「二 取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示」

について、運用基準に、

「2-(3) 複数の店舗で販売する旨を申し出る場合について

単一の事業者が同一の広告、ビラ等においてその事業者の複数の店舗で販売する旨を申し出る場合においては、原則として、各店舗毎の販売数量が明記されている必要がある。

広告スペース等の事情により、各店舗毎の販売数量を明記することが困難な場合には、当該広告、ビラ等に記載された全店舗での総販売数量に併せて、店舗により販売数量が異なる旨及び全店舗のうち最も販売数量が少ない店舗における販売数量の表示が必要である。

なお、・・・広告した商品又は役務の取引を行わない店舗がある場合には、その店舗名が記載されている必要があり、記載されていない場合には、当該店舗において広告商品等について取引を行うための準備がなされていない場合(告示第1号)に当たる。」

と規定されており、本件でも、「複数の店舗で販売する旨を申し出る場合」である以上、1号(供給不能)または4号(供給意思なし)の事件であるとはいえ、「各店舗毎の販売数量が明記されている必要」があったのではないか、という疑問がないではありませんが、本件のようなキャンペーンで店舗ごとの販売数量を明記するというのは非現実的ですし、措置命令もそこまでは求めていません。

ということは、消費者庁は運用基準第2の2ー(3)の上記規定は1号の場合には適用しないという解釈なのでしょう。

節の通し番号も「2-(3)」となっていて、2号を想定したものであることがうかがわれます(私は文言で解釈すべきで、項の番号とかで立案者の意図を忖度するのには反対ですが)。

さらに、告示3号では、

「三 取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示」

が告示違反とされ、運用基準では、

「3 告示第3号の限定の内容が「明瞭に記載されていない場合」について

供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量の限定については、実際の販売日、販売時間等の販売期間、販売の相手方又は顧客一人当たりの販売数量が当該広告、ビラ等に明瞭に記載されていなければならず、これらについて限定されている旨のみが記載されているだけでは、限定の内容が明瞭に記載されているとはいえない。」

とされています。

本件ではこれら(「供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量」)が限定されていたわけではない(少なくともスシローには限定する意図はなかった)ので3号は適用されないという理屈なのだと思います。

つまり、「取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されている」というのは、客観的に限定されていることではなく(もし客観的に限定されている場合を含むと、スシローの事件も限定されていることになってしまいます)、事業者の意図ないし計画として限定している場合、という意味なのでしょう。

ともあれ、もし3号の事件であれば、「実際の販売日、販売時間等の販売期間、販売の相手方又は顧客一人当たりの販売数量」が明瞭に記載されていなければならず、これらについて限定されている旨のみが記載されているだけでは足りない、ということです。

これとのバランス上、1号の事件でも、「売切御免」というだけではだめなのでしょう。

ですが、ほんとうに悪意のあるおとり広告の場合にはこれでもいいのでしょうけれど、蓋を開けてみたら予想外に好評だった、というような、「善意の売り切れ」の場合には、なかなか厳しいものがあります。

というのは、善意の売り切れの場合には、「顧客一人当たりの供給量」なんてそもそも想定しようもない(あるいは限定するつもりもない)ですから、書きようがないからです。

1号の場合も、基本的には同じでしょう。

こういう、善意の売り切れの場合に備えてか、運用基準第2の「1-(1)」では、「 告示第1号の「取引を行うための準備がなされていない場合」について」として、

「〔「取引を行うための準備がなされていない場合」〕において、

〔①〕それが当該事業者の責に帰すべき事由以外によるものと認められ、かつ、

〔②〕広告商品等の取引を申し込んだ顧客に対して、広告、ビラ等において申し出た取引条件で取引する旨を告知するとともに

〔③〕希望する顧客に対しては遅滞なく取引に応じているとき

には、不当表示には当たらないものとして取り扱う。」

という安全弁が設けられています。

合理的な計画を立てていたのに売り切れてしまったという場合には①の「責に帰すべき事由」がないとしても(これでありとされたら、震災とかだけに適用されることになり、この安全弁は適用の余地がほとんどなくなります)、回転寿司を食べに来ている人に遅滞なく(数日後?)取引に応じても、それで違反にならないかというと、ちょっと疑問ですね。

つまり、回転寿司みたいに、その場ですぐ消費して満足を得る類いの商品役務の場合には、「遅滞なく取引に応じる」ことにして告示違反を免れようとするのは、ちょっと難しい気がします。

2022年5月27日 (金)

オンラインモールの商品供給主体性についての緑本第6版の解説について

西川編『景品表示法〔第6版〕』(2021年)48頁では、オンライン・ショッピングモールの運営事業者の供給主体性(自己の商品役務を供給しているか)について、

「オンライン・ショッピングモールの出店者(以下「出店者」という)が販売する商品に関し、出店者が供給主体性を有することについては議論の余地はないが、

当該オンライン・ショッピングモールの運営事業者(以下「運営事業者」という)も供給主体性を有しているといえるかについては、

当該商品の販売について運営事業者がどのように関与しているかといった、当該商品の提供・流通の実態を見て実質的に判断することになる。

したがって、当該オンライン・ショッピングモールの事業形態や

システム

(例えば、出店者と購入希望者とのマッチング、受注、決済等に関するシステム)

の態様、

当該商品に関する販売キャンペーン企画・実施状況

(例えば、運営事業者が出店者と共同して当該販売キャンペーンを企画し実施しているか)

等に鑑みて

実質的に判断した結果、

運営事業者が出店者と共同して供給主体性を有するとみられる場合があると考えられる。」

と解説されています。

この解説は第5版までにはなく、第6版で新たに加わったものです。

(なお、これは、不当表示規制に関する解説ですが、景品規制における表示主体性も条文上同じ文言(自己の供給する商品又は役務)を用いているため、同様に考えてよいと思われます。)

しかしながら、この解説を見ても、緑本がいったいどのような場合にオンラインモールの運営事業者に供給主体性が認められると考えているのか、さっぱりわかりません。

まず前提として、2017年12月27日のアマゾンジャパンに対する措置命令書2⑵では、

「アマゾンジャパンは、本件5商品を、本件ウェブサイトを通じて一般消費者に販売している。」

とされており、アマゾンジャパン自体が販売者であるもののみが命令の対象になっていることがわかります。

そこで上記緑本の解説も、アマゾンマーケットプレイスで販売されるものまでアマゾン(モール運営者)を供給主体とするものではないと理解できます。

上記の緑本のエッセンスを取り出すと、オンラインモールの運営者が供給主体となるかは、

商品の販売について関与態様を含む、商品の提供・流通の実態から実質的に判断する

といっているようです。

これだけでは、供給主体性は「実質的に判断する」といっているだけで、結局何が言いたいのかわかりません。

次に、

「オンライン・ショッピングモールの事業形態」

を考慮する、とされています。

しかし、「事業形態」を考慮すると言っても、やはり、具体的に何が言いたいのかわからない、といわざるを得ません。

少なくとも、店子に単に場所(サイト上のスペース)をかすだけの典型的なオンラインモールの「事業形態」であれば、運営者に供給主体性が認められないことは明らかでしょう。

そこで、緑本では、

「出店者と購入希望者とのマッチング、受注、決済等に関するシステム」

の態様が考慮される、とするのですが、まず、

「マッチング・・・に関するシステム」

については、商品名などを入力する通常の検索エンジンで検索結果が表示されるだけのものは、「マッチング・・・に関するシステム」といえますが、このようなものでは、運営事業者に供給主体性は認められないでしょう。

こんなものが供給主体となったら、すべてのオンラインモールの運営事業者が供給主体になってしまいます。

少なくとも、もっと手の込んだマッチングのシステムである必要があるでしょう。

たとえば、エクスペディアなどの旅行サイトでフライトを予約しようとして、出発地と目的地と出発日を入力すると、各航空会社のフライトが出てきて、直行便から乗り継ぎ便までいろいろ選択肢を提示してくれて、ただの検索に比べると手が込んでいて利便性も高いですが、この程度の「マッチング」でエクスペディアがフライトの供給主体になるかといえば、無理でしょう。

さらに、フライトに見合ったホテルやレンタカーまで提案してくれますが、これでも、エクスペディアが宿泊サービスやレンタカーの供給主体になるのかといえば、やはり無理だと思います。

では、エクスペディアで提案されるフライトとホテルとレンタカーのセット商品だと考えて、そのようなセット商品を提案(マッチング)するエクスペディアがセット商品の供給主体といえるかというと、やはり無理な気がします。

リアルの旅行代理店との対比で考えると、旅行代理店にフライトやホテルの予約も全部任せると、旅行代理店がフライトやホテルの供給主体になるのかといえば、やっぱりならないように思うので、オンラインモールの運営者はならなおさら供給主体にはならなさそうです。

(ちなみに、旅行代理店の場合には、旅行業法12条の8で虚偽誇大広告の責任を負うので、景表法の表示主体性のを議論する実益があまりなさそうです。)

と、いろいろ考えてみても、やはりどんな「マッチング・・・に関するシステム」なら問題なのか、思いつきません。

次に、「受注・・・に関するシステム」については、たとえば注文がモールのシステムを通過するというだけでは、モールの運営主体は供給主体にはならないでしょう。

それを言い出すと全てのモールで運営者が供給主体となってしまうし、かといって各店子が受注システムを自前で準備しないと運営者が供給主体になってしまうとしたのでは、オンラインモールがあまりに非効率的なものとなってしまいます。

というわけで、どのような「受注・・・に関するシステム」であればモール運営者が供給主体になるのか、やはりわかりません。

次に、「決済・・・に関するシステム」についても、たんに店子がモールの決済システムを利用しているだけでは、モール運営者に供給主体性は認められないでしょう。

では、モールの決済システムがどのようなものであればモール運営者の供給主体性が認められるのかと言えば・・・やはり想像もできません。

次に、

当該商品に関する販売キャンペーン企画・実施状況」

が考慮されるとされ、具体的には、

「(例えば、運営事業者が出店者と共同して当該販売キャンペーンを企画し実施しているか)」

を考慮するとされていますが、まず、ここでいう「販売キャンペーン」というのは、文章を素直に読む限り、当該販売キャンペーンの内容について不当表示があった場合に限られないという趣旨でしょう。

たとえば、当該販売キャンペーン期間中に販売したキャンペーン対象商品に、キャンペーンの内容・表示とは関係のない(よってモール運営者がその作成に関与しない)原産国表示について違反があった場合でも、供給主体性は認められ得る、ということでしょう。

その前提であっても、さすがに、キャンペーン期間外に当該商品に不当表示があった場合には、モール運営者の供給主体性は否定されるのでしょう。

というのは、販売キャンペーンの企画・実施状況を供給主体性の根拠とするためには、当該販売キャンペーンにおいて店子とモール運営者が共同で当該商品を販売していたと認定するほかないはずで、キャンペーン期間外の販売はどう考えても共同販売にはなりそうにないからです。

でも、モール運営者が店子と共同で供給しているといえるほどモール運営者が深く関与するようなキャンペーンというのは、あまり考えられないのではないかと思います。

たとえば、モール運営者がその原資でポイント2倍キャンペーンをした、というくらいでは、到底、モール運営者が、店子と共同で商品を供給した、とはいえないでしょう。

そのようなキャンペーンはモール運営者が基本的には一方的に決めてやるものでしょうから、

「運営事業者が出店者と共同して当該販売キャンペーンを企画し実施している」

とはいえないでしょうし、そのようなものが全部共同供給になるなら、モール運営者は怖くてキャンペーンなんてできなくなります。

モール運営者が参加者を募って、参加する店子だけが対象になるキャンペーンも、やはり運営者が一方的に企画しているものですから、モール運営者が共同供給主体にはならないでしょう。

とすると、モール運営者が特定の店子に企画を提案するなり、店子が運営者に提案するなりすることをきっかけに、本当の意味で共同して行ったキャンペーン、という場合くらいしかないのではないでしょうか。

もしそういう一本釣り的なキャンペーンであれば、確かに共同供給主体ということもあり得るのかも知れませんが(また逆に、そのような結果を避けるための方策も色々ありそうですが)、そういうことはオンラインモール以外ではいくらでもあることであり、あえてオンラインモール運営者だから気をつけなければいけないと言うことでもないように思います。

逆に言えば、通常のオンラインモールの運営をしている限りは、やはり、モール運営者が共同供給主体となることは、まず考えられないだろうと思います。

これが、前記緑本解説についての私の理解です。

2022年3月 6日 (日)

アフィリエイト広告の内容を広告主が自ら決定していたことの認定

公正取引853号11頁の座談会で、消費者庁の片桐審議官が、

「T.S.コーポレーションが表示内容を自ら決定していたという認定の根拠ですが、本件では

T.S.コーポレーションは

広告代理店との間でアフィリエイト広告の作成を内容とする契約を締結し、

広告代理店と契約関係にあるASPを通じて本件商品に関する情報等を共有して表示内容について指示をし、

アフィリエイトクリエイターが制作した広告案を確認するとともに、

本件アフィリエイトサイトを通じて得られた成果に対して全て報酬を支払っていた

というような事実関係が認められており、

以上のことからT.S.コーポレーションがこの表示内容を自ら決定したというふうに認定したということです。」

と発言しています。

ここで、

「広告代理店と契約関係にあるASPを通じて本件商品に関する情報等を共有して表示内容について指示をし」

というのが、誰と「情報等を共有」し、誰に「表示内容について指示」をしたという意味なのかが、今ひとつよく分かりません。

文言だけを追っていけば、

「広告代理店と契約関係にあるASPを通じて本件商品に関する情報等を広告代理店と共有して表示内容について広告代理店に指示をし、」

という解釈も成り立たないわけではないと思いますが、アフィリエイトプログラムの一般的な仕組みは、

広告主→(広告代理店)→ASP→アフィリエイトクリエイター

ですし、その前後の文脈からしても、この部分は、

「広告代理店と契約関係にあるASPを通じて本件商品に関する情報等をアフィリエイトクリエイターと共有して表示内容についてアフィリエイトクリエイターに指示をし」

という意味ではないかと思われます。

そうすると、広告主がアフィリエイト広告の内容を自ら決定したといえるための要件は、

①広告主が、広告代理店に、広告の作成を依頼する

②商品に関する情報等をアフィリエイトクリエイターと共有する

③表示内容についてアフィリエイトクリエイターに指示をする

④アフィリエイトクリエイターが制作した広告案を確認する

⑤アフィリエイトサイトを通じて得られた成果に対して報酬を支払う

といったあたりになりそうです。

ここで、これらの要素が、広告主がアフィリエイト広告の内容を自ら決定したと言えるための要素である(他に委ねたことの要素ではない)ことからすると、②の共有情報内容も、③の指示された内容も、④の広告案も、すべて不当表示に該当するものであることが当然の前提になっていることが前提であると考えられます。

そうでないと、

①は普通にありそうですし、

②は、情報共有を全くしないとアフィリエイト広告をアフィリエイトクリエイターが書くのはそもそも困難ですし、

③は、指示した内容と違うアフィリエイト広告まで広告主が「その内容を自ら決定した」と言われるのはさすがに酷な気がしますし、

④は、(ランダムサンプリングなどで)確認がもれた広告に不当表示があったために広告主が責任を負わせられると、むしろ確認をしないほうがいいことになってしまいますし、

⑤は、報酬を払うのは当然

だからです。

ですので、T.S.コーポレーションのケースは広告主がアフィリエイト広告に対してかなり強いコントロールを及ぼしていた(まさに内容を自ら決定していた)といえる事例なのでしょう。

ですが問題は、アフィリエイト広告の内容の決定を他に委ねた場合も広告主が責任を負うことです。

(座談会の上記片桐審議官の発言も、白石先生の、

「もちろん、そこまでの〔T.S.コーポレーションのような自ら内容を決定したという〕事実関係がなくても、もう少し広く景品表示法の適用が可能であるということが前提になっていると思いますが」

という前置き付きの質問に答えたものです。)

つまり、いくら「内容を自ら決定」したとみられる場合だけを議論しても、ではどこからが違法になるのかはわかりません。

ただ、消費者庁が実際に広告主に措置命令を出すのは、広告主がアフィリエイトクリエイターに対してかなりきつい拘束をかけていた場合なのであろう、ということは読み取れます。

2022年1月25日 (火)

カラダファクトリーの措置命令とキャンペーンの繰り返し

同じキャンペーンを「好評につき延長」などといって繰り返すとどのような場合に景表法違反になるのかはしばしば質問を受ける論点ですが、この点について参考になる事例として、(株)ファクトリージャパングループに対する2019(令和元)年10月9日措置命令があります。

この事件では同社が運営する整体施術のフランチャイズで、初回だけ割り引く同じ内容のキャンペーンが連続して繰り返し行われたことが有利誤認表示とされました。

問題になったコースは5つあるのですが、一番違反期間が長い「全身整体コース」についてみると、違反表示期間は、

第1期 2015年8月(ただしセール期間は同年9月と合わせて2ヶ月間)

〔空白期間8ヶ月〕

第2期 2016年6月~2017年2月(セール期間も同じ)

〔空白期間1ヶ月〕

第3期 2017年4月(セール期間は同年5月と合わせて2ヶ月間)

〔空白期間3ヶ月〕

第4期 2017年9月~2018年5月(ただし2017年12月26日~31日はのぞく。また2017年11月に8,424円から8,964円に値上げ)

〔空白期間1ヶ月〕

第5期 2018年7月~8月

の5回でした。

なお、それぞれの表示は、毎月きっちり、当月末までの期間限定キャンペーンであることを謳い、それを毎月繰り返していた、というものです。

(ただし上述のように、第4期の2017年12月の表示はキャンペーン期間が12月1日から25日までだったので、厳密に言えば、翌月まで6日間空白があったことになります。)

さて、以上のような事実関係でまず注目されるのは、第1期が、たった1ヶ月のキャンペーンを、たった1回、1ヶ月だけ延長しただけで不当表示とされている、ということです。

1回くらいの延長は大目にみてもらえるのではないか、と思いたくなるのはやまやまですが、これだけはっきり命令でだめだといわれると、なかなかそうも言っていられないように思われます。

次に、第2期と第3期の間、および、第4期と第5期の間は、それぞれ1ヶ月しか空いていませんでしたが、それでも、第2期と第3期が通算されることも、第4期と第5期が通算されることも、ありませんでした。

このことから、連続するキャンペーンは、間に1ヶ月空ければ、連続とはみなさないと消費者庁は考えているのではないか、ということが想像できます(あくまで想像です)。

1ヶ月空ければいいというのはまったく根拠がないわけでもなくて、価格表示ガイドラインのいわゆる8週間ルール(過去8週の過半の比較対照価格での販売実績などを要求するルール)の考え方にしたがえば、過去8週間の過半つまり4週間の実績があれば比較対象に用いて良い、というのは合理的であるように思われます。

逆に、第4期中の2017年12月26日から31日までは途切れているのですが、この6日間空いていたからといって、連続性は否定されていません。

将来価格二重表示ガイドラインが、比較対象将来価格での2週間の実績があれば不当表示としないというルールを採用していることからすると、2週間空ければいいのではないかという議論もありえますが、何ヶ月もキャンペーンをやってて2週間あけたらまたやっていいというのはいかにも短すぎる感じがするので、やはり1ヶ月は空けるべきでしょう。

ほかには、第4期の途中の2017年11月に、通常料金が8,424円から8,964円に値上げされており、それにともない、キャンペーンの初回限定割引価格もそれまでの3,980円から4,520円に値上がりしています。

同じ内容のキャンペーンを繰り返すのがだめなら少し内容を変えればいいのではないか、と誰もが思うところですが、少なくとも500円程度の値上げでは同一性は否定されないということでしょう。

さらにいえば、このケースでは、通常料金からの値下げ幅は従来の4,480円(=8,424-3,980)から、4,444円(=8,964-4,520)と、あまりかわっていないともいえます。

ところがさらにおもしろいのは、このケースでは、翌月の2017年12月には、通常料金は8,964円で据え置いたものの、初回限定の値引は従来どおりの3,980円に戻している、ということです。

きっと、お客さんが思ったよりも減ってしまったのでしょう。

なので、2017年12月以降(2018年5月まで)の初回限定割引は4,984円(=8,964-3,980)となっており、従前の4,480円と比べるとそれなりに高くなっているようにもみえます。

ただ、通常料金と比べていくら安いかを考えても意味はなく、キャンペーンの異同を考える際には実際に支払う額を基準に考えるべきでしょう。

つまりこのケースでは、初回支払額は、

2017年10月まで、3,980円

11月 4,520円(プラス540円)

12月~翌5月 3,980円(マイナス540円)

となります。

なので、支払額が3,980円くらいのときに、540円くらい増額しても、キャンペーンの同一性は否定されない(連続とみなされる)と考えるべきでしょう。

さらにいえば、このような命令の発想からすると、やっぱり、キャンペーン期間が終わったら、いったんは、元の価格(8,424円)に戻さないといけないのではないかと思います。

ちなみに、第3期以降は、それまでの3,980円にくわえて、平日午後だと3,500円になるというキャンペーンになっていますが、消費者庁が認定した連続期間の途中で加わったプランではないので、論点にはなっていません。

もし期間の途中でこのようなプランが加わったとしても、連続性は否定されないでしょう。

今だからお得だと思って言ったら、翌月には新プラン(3,500円)が加わってさらにお得になった(つまり「今」はむしろ損だった)ことになるからです。

なお細かいことを言えば、第4期の2018年1月から2月は、2ヶ月分まとめて延長しており、次の3月から4月も2ヶ月分まとめて延長していますが、もちろん、連続性は認められています。

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