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2026年8月 6日 (木)

どのくらい値下げ要求をすると中小受託法の買いたたきになるのか(それとKADOKAWA担当官解説について)

最近、値下げを求めたら中小受託法(または旧下請法)の買いたたきで勧告が出るケースが増えています。

では、どれくらい値下げをさせたら買いたたきになるのでしょうか。

(なお、量産品前提の価格で補修部品を発注したパターンは全く前提が異なりますので、今回は値下げ前後で同じ取引である場合を前提にします。)

KADOKAWAに対する2024年11月12日勧告では、

「KADOKAWAは、令和5年1月、レタスクラブ事業における販売収入や広告収入が減少傾向にある中、資材費、輸送費等のコストも上昇しているとして、自社の収益改善を図るため、本件業務を下請事業者に委託する際の発注単価を改定する旨を記載した「原稿料改定のお知らせ」と題する文書を下請事業者に通知した上で、下請事業者と十分な協議を行うことなく、

当該発注単価を従前の単価から約6.3パーセントないし約39.4パーセント引き下げることを一方的に決定し、令和5年4月発売号以降のレタスクラブに係る本件業務を下請事業者(26名)に委託する際に、当該引下げ後の単価を適用した。」

という事実が買いたたきになっています。

というわけで、従前から6.3%くらいの値下げ要求で買いたたきになっています。

ではほかの事例はどうなのかというと、ホーチキメンテナンスセンターに対する2007年12月6日勧告の公取委プレスリリースでは、

「ア ホーチキメンテナンスセンターは,⾃社の経費削減を図るため,下請事業者に対して,「出精値引」と称して,下請代⾦の額に⼀定率(10.5パーセントから17.5パーセントの間の率をいう。以下同じ。)を乗じて得た額を負担するよう要請し,平成18年1⽉から同19年4⽉までの間,下請代⾦の額に⼀定率を乗じて得た額を当該下請事業者に⽀払うべき下請代⾦の額から差し引くことにより,下請事業者の責に帰すべき理由がないのに,当該下請事業者に⽀払うべき下請代⾦の額を減じていた」

「イ ホーチキメンテナンスセンターは,本件について,当委員会が下請法の規定に基づき調査を開始したことから,前記アの⾏為を取りやめることとした上で,下請事業者に対して,それぞれの事業者と⼗分な協議を⾏うことなく⼀⽅的に,平成19年4⽉末⽇⽀払分まで下請代⾦の額から⼀定率を乗じて得た額を差し引いて⽀払っていた額を,⼀律に,そのまま同年5⽉末⽇以降に⽀払う下請代⾦の額とすることを定めた。

 当該下請代⾦の額は,下請事業者の給付の内容と同種⼜は類似の内容の給付に対し通常⽀払われる対価に⽐し著しく低いものであった。」

という事案で、10.5%の実質的な値下げ要求で買いたたきに認定されていますが、これは、代金減額の脱法的な行為についていわば公取委が見せしめ的に買いたたきを認定したものであり、あまり参考にはならないと思います(この事例の当時10.5%の値下げで買いたたきになるとは、誰も思っていなかったと思います。)

次に、大創産業に対する2014年7月15日勧告では、

「(2) 商品の売行きが悪いことを理由として,発注前に下請事業者と協議して決定していた予定単価を約59パーセントから約67パーセント引き下げた単価を定めて発注した。」

とされており、59%の値引き要求で買いたたきになっています。

(「商品の売行きが悪いことを理由として」という記載からすると、取引実績はあって、それがあまり売れないので、値下げ要求に至った、ということでしょう。)

次に、工機ホールディングスに対する2023年3月27日勧告では、

「⑴ 工機ホールディングスは、子会社又は卸売業者に販売する電動工具向けホースカバーセット(以下「ホースカバーセット」という。)の製造を個人たる事業者(以下「本件下請事業者」という。)に委託していた。

⑵ア 本件下請事業者は、ホースカバーセットの原材料価格の上昇等を背景として、製造原価割れが生じることが明らかであると認識したことから、令和2年12月から令和3年1月までの間に、工機ホールディングスに対して、ホースカバーセットの単価の引上げを求める見積書を提出した。

 イ 工機ホールディングスは、本件下請事業者が提示した見積単価では自社の利益に与える影響が大きく、また、本件下請事業者から単価引上げが必要な理由が十分示されていないと考えていたが、価格交渉が長期化すると自社の生産活動に影響が生じかねないことを踏まえ、令和3年1月12日頃、本件下請事業者に対して、自社の利益を優先し、本件下請事業者の製造原価等を考慮することなく、単に区切りがよいとして設定した金額を提示した上、実際には具体的な単価引上げの計画などなかったにもかかわらず、今後、段階的に単価を引き上げる旨を伝えた。

   なお、このとき工機ホールディングスが提示した金額は、本件下請事業者によるホースカバーセットの見積単価よりも約46パーセント少ない金額であった。

 ウ 本件下請事業者は、前記イで工機ホールディングスから提示された金額では製造原価割れが継続すると認識していたものの、工機ホールディングスから伝えられた、段階的に単価を引き上げる旨の言動を信頼し、令和3年1月22日頃、前記イで工機ホールディングスから提示された金額を記載した見積書を再提出した。

 エ 工機ホールディングスは、前記ウで再提出された見積書を用いて単価改定の社内稟議を行い、令和3年1月29日から新単価を適用した。これにより、ホースカバーセットの単価は、従来と比較して約17パーセント上昇したが、当該新単価でも本件下請事業者の製造原価を下回っていた

⑶ 工機ホールディングスは、前記⑵イの言動に反して、令和3年1月29日以降、本件下請事業者に対するホースカバーセットの単価を引き上げることはなかった。

⑷ ホースカバーセットの製造は、本件下請事業者に生じた事由により、一定数量納品したところで、他の事業者に引き継がれることになった。工機ホールディングスが、令和4年5月18日に、当該他の事業者と価格協議を行って定めたホースカバーセットの単価は、前記⑵エの新単価の3倍を超える額であった。」

という、ちょっと変わった事例で買いたたきが認定されていて、従来よりも17%上昇したのに、それでも原価割れであったことから、買いたたきと認定されています。

元の価格が原価割れで、上げた後の価格も原価割れ、ということなら、従来から値上げした場合でも買いたたきになってしまうのはやむをえないところでしょうか。

次に、ビッグモーターに対する2024年3月15日勧告では、

「ア ビッグモーターは、創業者である前代表取締役社長が中心となって策定した「経営計画書」において、「借入金利、陸送費など事業活動に必要なあらゆる経費は、しつこいぐらい値切る」と定めていた。

また、ビッグモーターは、営業本部の一部の者と関西・北陸エリアの販売店の店長が業務上のやりとりを行うメッセージアプリのグループにおいて、令和3年3月10日、当時の営業本部次長から各店長に対し、コーティング加工の施工料金について「各店、施工料金がバラバラなので、形状ごとの最安値の金額に価格交渉して合わせてもらいましょう」と指示しているところ、

翌日には複数の店長から従来の施工料金よりも11.1パーセントから33.3パーセント引き下がった旨の報告が行われていた。このような状況の下、本件では次のイの事実が確認されている。

イ 単価の一方的な引下げ

   ビッグモーターは、令和3年12月頃、前記アにおいて営業本部次長であった当時の店長から、下請事業者に対し、営業本部等の意向を踏まえたコーティング加工の発注単価の引下げを要請し、従来単価から27.7パーセント引き下げた単価を設定した(下請事業者1名)。」

という事実で、買いたたきが認定されています。

なお、11.1%のほうは、そういう社内報告があったという認定にすぎないので、買いたたきが認定されたのは27.7%のほうだけです。

というわけで、工機ホールディングスの原価割れという特殊な場合をのぞけば、従来からの引き下げ幅が最も少なくて買いたたきになったのはKADOKAWAの6.3%引きということになります。

でも、ここで一言いいたいのが、KADOKAWAの担当官解説(公正取引892号69頁)です。

この担当官解説のp72では、

「本件の下落率は過去の買いたたき勧告事例(冒頭の要旨部分で紹介した4件〔注・ホーチキメンテナンスセンター、大創産業、工機ホールディングス、ビッグモーター〕)の引下率とほぼ同等の水準となっている。」

とされています。

どこがほぼ同等の水準なんですか?!

違法と認定したことを正当化するために過去の事例を持ってくるなら、違法認定された中で最も軽い(値段の高い)ものを比べるのが当然でしょう。

そうすると、ホーチキメンテナンスセンターは10.5%減、大創は予定価格の59%現、工機ホールディングスは見積単価の46%減、ビッグモーターは従来単価の27.7%減、です。

最も低いホーチキですらKADOKAWAの6.3%引きに比べたら67%(=10.5÷6.3ー1)も多く減額しています。

いわんや他の事例においておや、です。

サバを読むにもほどがあると思います。

というわけで、KADOKAWAの勧告は、これまでの先例を大きく踏み越えた事件と評価すべきでしょう。

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