外国法令に準拠するための仕様の指定は製造委託か
日本では規格品として売られているものを外国法令に適合するように製造することを注文することは、中小受託法の製造委託に該当するでしょうか。
該当しないと考えられます。
前提として、日本の法令に準拠する製品を作るように指定することは、製造委託には該当しません。
日本で売るためにはその法令に適合しなければならないわけですから、発注者が指定しようがしまいがその法令に適合するように作られるべきなのですから、製造委託に該当しないことは当然のことです。
そう考えると、外国法令に準拠することは、日本の法令に準拠することと同じに考えるべきです。
なので、外国法令に準拠した製品の製造を求めることは、製造委託にはあたらないというべきです。
それに、外国法令に準拠するためにした変更以外の点においては日本国内での規格品と何ら異ならない製品は、その外国ではまさに規格品というべきであり、その意味でも製造委託にはあたらないというべきです。
これに対して、発注者の顧客が独自に定めた規格に準拠するように発注者が受託者に依頼した場合には、もちろん、製造委託に該当します。
これは、あくまで顧客という一企業が定めた規格にすぎないからです。
その規格に合わないからといって、売れなくなるようなものでもありません。
そこのところが、主権国家が定める規格とは決定的に異なるところだと思います。
そう考えていくと、業界団体が定めた規格あたりになると、やや微妙です。
日本の業界団体が定めた日本国内の規格(もちろん法的拘束力無し)の場合には、その規格が業界標準的なものになっていれば、それに準拠するよう注文することは製造委託にはあたらないというべきでしょう。
これに対して、日本の業界団体が定めた日本国内の規格であっても、推奨規格くらいの位置付けて、あまり普及していない規格だったりすると、それに合った製品の製造を依頼することは製造委託にあたるかもしれません。
外国の業界団体の規格も、これと同じと考えていいと思います。
つまり、その国で事実上の標準的な扱いになっている規格なら製造委託にはあたらないし、あまり普及していない規格なら製造委託にあたると考えられます。
ここでは、日本であるか外国であるかを区別するべきではないと考えます。
つまり、「日本企業にとっては外国の規格(国の規格であれ、業界団体の規格であれ)に合わせること自体が特注品みたいなものなので、製造委託にあたる」という考え方はまちがっているということです。
今の時代に、外国の規格に合わせることが特注品だなんていったら、笑われると思います。
委託であることを中小受託法が要求するのは、転売不能な特注品だと発注者が強い立場に立ちがちだからですが、外国の規格に準拠することを要求することで発注者がそのような意味で強い立場に立つということはないというべきです。
つまり、「外国では転売できるかもしれないけれど、日本国内では外国規格準拠品なんて転売困難だ」というような、日本中心主義みたいな考え方はとるべきではない、ということです。
人によっては、「転売困難性など諸般の事情を総合考量すべきだ」というかもしれませんが、そんなあいまいな基準を中小受託法で用いるべきではありません。
中小受託法は、あくまで明確性を追求すべきです。
その意味で、国家が定めたルールに従うことを求めることは製造委託ではない、という基準は明確で合理的だと思います。
ただし、逆に、国家でない機関が定めた基準なら常に製造委託になるのかというと、そういうわけではもちろんありません。
たとえば通信規格に関する国際機関が定める通信規格なんかは、事実上の標準ですから、これに準拠する製品の製造を求めることは製造委託には該当しません。
また、実質的なことをいえば、日本国内の受託者に外国法令準拠の製品を発注したら中小受託法が適用されるなんていうことになると、日本の発注者はますます外国の受託者に発注するようになって、国内産業の空洞化が進みます。
ただし、製造委託にあたるかどうかを分ける際に、発注者が自分で決めた仕様かどうかを基準にすべきではありません。
発注者の顧客が決めた仕様でも、文句なく製造委託にあたるからです。
これに対して、国が決めたものは誰もが従わないといけないので、発注者の顧客が決めたのとはぜんぜん違います。
ちなみに、ここで国家が決めた規格というのは、違反した場合に罰則があるようなものには限られません。
たとえばJIS規格に適語していないからと言って日本で販売できないわけではないですが、JIS規格への適合を求めることは、規格品の製造であり、製造委託には該当しないと考えられます。
というわけで、外国法令に準拠する製品の発注は、製造委託には該当しない(たんなる売買である)と考えられます。
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