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2026年7月 1日 (水)

受領拒否も返品もしないで(履行として認容して)減額する場合についての中小受託法運用基準の定めの矛盾

中小受託法運用基準第4の3⑵では、

「(2) 「中小受託事業者の責めに帰すべき理由」があるとして代金の額を減ずることが認められるのは、次のア及びイの場合に限られる。

ア 「1 受領拒否」(2)にいう中小受託事業者の責めに帰すべき理由〔瑕疵、納期遅れ〕がある場合であって、次の(ア)又は(イ)に該当するとき。 

〔(ア)省略〕

(イ) 当該理由〔瑕疵、納期遅れ〕がある旨を中小受託事業者にあらかじめ伝えた上でその給付を受領した場合に、

委託内容に合致させるために委託事業者が手直しをしたとき

又は

委託内容と適合しないこと等若しくは納期遅れによる商品価値の低下が明らかなとき

(減ずる額は、客観的に相当と認められる額に限られる。)。

イ 「4 返品」(2)にいう中小受託事業者の責めに帰すべき理由〔瑕疵+速やかな返品 or 瑕疵+ロット単位検査+最初の支払時前〕がある場合であって、次の(ア)又は(イ)に該当するとき。

〔(ア)省略〕

(イ) 中小受託事業者の給付を受領した後、当該理由がある旨を中小受託事業者にあらかじめ伝えた上でその給付に係るものを引き取らせかった場合に、

委託内容に合致させるために委託事業者が手直しをしたとき

又は

委託内容と適合しないこと等若しくは納期遅れによる商品価値の低下が明らかなとき

(減ずる額は、客観的に相当と認められる額に限られる。)。 」

とされています。

さて、このア(イ)(受領拒否しないで減額)とイ(イ)(返品しないで減額)は、似ていますが微妙に異なります。

まず、ア(イ)(受領拒否しないで減額)は、

「(イ) 当該理由〔瑕疵、納期遅れ〕がある旨を中小受託事業者にあらかじめ伝えた上でその給付を受領した場合」

ということなので、「受領」する前(=「あらかじめ」)に、瑕疵または納期遅れを通知しないといけないことになります。

ですが、受領する前に瑕疵があることがわかることなんてふつうないですから、この規定が使えることはまずないでしょう。

逆に、納期遅れの場合にはわざわざ通知しなくても納期遅れであることは下請事業者にもわかっていますから、そのような受領前の通知を要求する意味がわかりません。

要求するならむしろ、「当該理由」(納期遅れ)の通知ではなくて、納期遅れだけれども履行として認容して受領するという通知を要求すべきでしょう。

そして、もしこのような「納期遅れだけれども履行として認容して受領する」という通知がなされれば、その中には納期遅れである旨の通知も論理的に含まれていますから、あらかじめの「当該理由」(納期遅れ)の通知があったとみていいでしょう。

細かいけれど重要かもしれないポイントとして、発注者は「納期遅れだけれども履行として認容して受領する」というつもりで通知したのに、下請事業者のほうは、納期が延期された(免除された)と誤解する、ということが起きそうです。

なので、発注者としては、そのような誤解を招かないために、納期を免除するものではないことを、はっきりと伝えるべきでしょう。

いずれにせよ、実務上トラブルになることが圧倒的に納期遅れよりも多い瑕疵の場合については、受領前の通知をすることが事実上不可能なので、ア(イ)(受領拒否しないで減額)は忘れていいと思います。

そこで、イ(イ)(返品しないで減額)を考えることになりますが、そもそも、ア(イ)(受領拒否しないで減額)とイ(イ)(返品しないで減額)とは、どこが違うのでしょうか?

受領拒否しない、ということは、受領はする、ということです。

返品しない、ということは、やはり、受領はする(だけど、返品はしない)、ということです。

いずれも、受領して返品しない(いわば、履行として認容して受領する)、ということなので、何も違いがないように思います。

「返品しない」という否定形が気になる人(私なんかはそうですが)、受領してそのまま占有する、といってもいいでしょう。

それなのに、ア(イ)(受領拒否しないで減額)とイ(イ)(返品しないで減額)をわけて書くことの意味がわかりません。

とくに、上述のように、ア(イ)(受領拒否しないで減額)は受領前の理由の通知を要求するために、きわめて使い勝手の悪い(とくに、瑕疵の場合には、事実上使えない)規定になっています。

しかも、少なくとも運用基準の文言を素直に読むかぎり、イ(イ)(返品しないで減額)における中小受託事業者の責めに帰すべき理由(4⑵)というのが、(これは運用基準のドラフトのミスだと思いますが)そもそもイ(イ)(返品しないで減額)のときに成り立たないのではないか、という疑問があります。

というのは、運用基準第4の4〔返品〕⑵は、

「(2) 「中小受託事業者の責めに帰すべき理由」があるとして、中小受託事業者の給付を受領した後に中小受託事業者にその給付に係る物を引き取らせることが認められるのは、中小受託事業者の給付の内容が明示された委託内容と異なる等の場合であって、次のア又はイに該当するときに限られる。

ア 当該給付を受領後速やかに引き取らせる場合

イ 給付に係る検査をロット単位の抜取りの方法により行っている継続的な取引において、当該給付の受領後の当該給付に係る代金の最初の支払時までに引き取らせる場合。(この場合にあっては、あらかじめ、当該引取りの条件について合意がされ、その内容が明示され、かつ、当該明示と発注時の明示との関連付けがされていなければならない。)」

とされていて、いずれも、「引き取らせる」ことが条件だと読めるからです。

つまり、「引き取らせる場合」に「責めに帰すべき理由」があるとされるのであれば、引き取らせないかぎり「責めに帰すべき理由」はないことになるのではないか、という疑問です。

まあここは、運用基準のドラフトミスには目をつむって、「引き取らせる場合」というのは、あくまで返品の場合の話であって、減額の場合には、

「(改ア) 当該給付を受領後速やかに減額の意思を伝える場合」

「(改イ) 給付に係る検査をロット単位の抜取りの方法により行っている継続的な取引において、当該給付の受領後の当該給付に係る代金の最初の支払時までに減額の意思を伝える場合。〔以下省略〕」

とでも読み替えておくことにしましょう。

あるいは、「引き取らせる場合」という条件自体をまったく無視するという読み方もありうると思います。

といいますか、今の運用基準の文言なら、「減額の意思を伝える」なんてことはどこにも書いてないわけですから(上記解釈は公取委の言いたいことを忖度して加えただけですから)、そういう読み方(無視する読み方)をされても仕方ないと思います。

と、ここまで考えてみてあらためて気づくのが、ア(イ)(受領拒否しないで減額)とイ(イ)(返品しないで減額)のアンバランスさです。

つまり、イ(イ)(返品しないで減額)の場合は、上記解釈によれば、瑕疵さえあれば受領後速やかに減額の意思を伝えれば減額できるのに、ア(イ)(受領拒否しないで減額)の場合には、受領前に瑕疵を伝えることが事実上できないために、減額が事実上できない、ということです。

中小受託法運用基準では、検査を省略すると(返品できないため)減額できないという規制が外れたため(∵検査省略したら返品できないという規定が第4の4⑶に独立したため)、イ(イ)(返品しないで減額)が使えるケースが増えたので、まだいいですが、これが下請法運用基準の時代には、検査を省略すると返品のみならず減額もできなかったため(∵検査省略したら返品できないという規定が第4の4⑵に規定されていたため)、まじめに考えるとけっこう大変でした。

それでもなお、ア(イ)(受領拒否しないで減額)の規定が事実上空振りになることには変わりはなく無駄なので、次の改正あたりで整理してはどうかと思います。

そもそも、減額できる要件を受領拒否と返品の要件から借りてこようとするからこういうわけのわからないことになるわけで、ともかく瑕疵があったら減額できる場合というのを、受領拒否や返品の要件とは別に、独立して定めたらいいと思います。

公取委のみなさま、ご検討ください。

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コメント

毎回、勉強させていただいています。ありがとうございます。
最後の方ですが、講習会のテキストのP83の図では相変わらず検査を省略してたら
返品不可となっているので、 いざ、この部分が公取との議論になったときにどうなる
のかな?と思いました。

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