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2026年7月29日 (水)

入札で競合他社に一部下請に出したり競合他社から一部部品を調達することの問題点

よくある質問として、

「入札をするときに、全部自分でできればいいのだけれど、一部自分ではできないときがある。

そのとき、できない部分だけを、入札が見込まれる競合他社に下請けに出してもいいか。」

とか、

「入札をするときに、自社で作っていない一部の部品を、入札が見込まれる競合他社から買わないといけないことがある。

そのときに、入札前にその競合他社とその部品の販売価格の交渉をしてもいいか。」

というのがあります。

結論としては、基本的には問題ないのですが、場合によっては微妙なこともあり、以下、基本的な考え方を述べておきます。

ポイントは、その下請ないし調達をすることで、競争を促進することになるのか、競争を阻害することになるのか、です。

もし、競合他社に一部下請に出したり、競合他社から一部調達しないとその工事をすることができない(入札できない)なら、そのような下請や調達を禁止すると競争単位が1社減ってしまうので、むしろ競争が阻害されます。

なので、そのような場合には、競合他社へ一部下請に出したり、競合他社から一部調達することは競争促進的であり、独禁法上問題ない、ということになります。

もちろん、こういう競合他社とのやりとりは、入札前にしてもかまいません。

競合他社がいくらで下請してくれるのか(部品を売ってくれるのか)があらかじめわかってないと、競争的な、攻めた入札価格で入札することができないからです。

とくに、その一部の工事が特定の競合他社にしかできないとか、その部品が特定の競合他社しか作れないとかいう、いわば不可欠施設的な場合には、当該特定の競合他社に下請に出すことを認めたり当該特定の競合他社から調達することを認めたりすることが競争促進的である(これを禁止することは競争阻害的である)ことがあきらかであり、何ら問題ありません。

そのような不可欠施設みたいな一部工事や一部部品があるときには、その不可欠施設を供給できる事業者が工事全体を受注できる能力があると、当該事業者が必然的に落札できてしまいますし、そのような事業者が工事全体を受注できる能力がない場合であってもできない部分をほかに下請けに出せばいいだけ(反対に、他社はその事業者の協力がないと絶対に落札できない)なので結果的にその事業者が落札できてしまいますが、それは不可欠施設を持つ事業者が落札できただけなので、独禁法上問題はありません。

そういうことがいやな発注者は、そのような不可欠施設的な特定の一部工事や一部部品を他社にリーズナブルな価格で供給することを入札条件にして入札をすることが考えられます。

関連する別の質問として、そのような不可欠施設的な能力を持つ会社から、

「他社には落札させたくないので、もし他社から下請の打診があったらべらぼうに高い下請価格で見積もりを出しても問題ないか?」

というのがありますが、問題ありません。

不可欠施設的な能力がある以上、入札で勝ってしまうのは競争上当然だからです。

以上のような、絶対に自分ではできない、という場合はわかりやすいですが、「自分でも全部やろうと思えばできるけれど、一部は他社にまかせたほうが安いし品質もいい」という場合はどうでしょうか。

この場合も、問題ありません。

安く調達することをみとめたほうが、より競争的な入札をすることができるからです。

自分でやったほうが安いのか、他社に頼んだほうが安いのか、聞いてみないとわからない、という場合もあるでしょうから、自分でできる場合にも、他社に入札前に一部下請の打診をするのは問題ありません。

ただし、(ここらへんからがきな臭いところですが)他社に下請を打診する時に、

「うちが落札出来たらおたくに下請けに出すから、入札は辞退してほしい」

なんてことをいうと、もちろんアウトです。

はっきりそういわないまでも、目くばせしながら暗黙の合意をすることも、いけません。

そういう微妙なリスクがあるといえばあるので、全体工事の担当者と一部工事の担当者を分ける(相手に分けてもらう)など、情報管理には気を遣ったほうがいいと思います。

そもそも前提として、自分でやったほうが安くできるという場合には、他社に下請を打診してはいけません。

他社に頼まなければならない必要性がない(競争促進的な要素がない)からです。

相入札者となることが見込まれる競合他社にはこのような微妙な問題があることから、できれば、自分だけで全部工事ができる競合他社には頼まないほうが、無難と言えば無難です。

ですが、かといって、自分だけで全部工事ができる競合他社が最も安い価格で必要な一部下請を受けてくれる場合には、その競合他社を断って他社に下請けに出すまでの必要はないと思います。

そのような下請を禁止すると、競争的な応札ができなくなるからです。

というわけで、想像力たくましくいろいろなパターンを考えるといろいろなことが言えてしまうのですが、要は、その下請や調達を許すことが競争促進的なのか競争阻害的なのかがポイントであることをご理解いただければと思います。

その際、私などは、

「全体の工事と一部工事についてのこちらの利益率がこれくらいで、あちらの全体工事と一部工事の利益率がこれくらいで、なのでこの2社がくっついたほうがより効率的かな。逆にリスクがあるのはこういう場合かな。」

などと頭を巡らせながら考えて、アドバイスするようにしています。

独禁法のアドバイスには常に経済学的な(というほどおおげさなものではありませんが)発想が有効であることを示す一例です。

あと、ここまで書いて思い出しましたが、独禁法違反のリスクをはかるうえで大事なのは、他の競合他社の状況です。

具体的には、下請に出す競合他社のほかに、どれくらい、何社くらい、有力な入札参加者がいそうか、です。

他に有力な入札参加者がいるなら、その2社間で協調したって、競争制限なんてできるはずがありません。

なので、他に有力な入札参加者が見込まれるなら、2社間で協調するとしたら、競争促進的な理由しか考えられません。

よって、そのような状況なら、だいたい何をしても(なりゆきにまかせても)大丈夫です。

経済学的に言えば、その協調をすることによって自社の直面する需要曲線の需要の弾力性がどれだけ非弾力的になるか(需要曲線が右肩下がりになるか)、という問題です。

協調しても需要が弾力的なままなら、協調して価格を引き上げることはできません。

ひたらくいえば、協調することで、効率性の向上(=限界費用の低下)以外の理由で受注確率が上がるのか、ということです。

効率性以外の理由で受注確率が上がるとしたら、競争制限が疑われます。

受注の確率があがる理由(機序)が、効率性の向上なら競争促進的だし、需要の弾力性の増加なら競争制限的です。

両方あるときは両者のバランスで考えます。

でも実際には、ほとんどの場合が、需要の弾力性が増えることはない(他に有力な競争者がいる)、という場合です。

そのようなことを頭の中でイメージしながら、どのへんに、どれくらいのリスクがあるかを見定めています。

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