« 指定価格制度における広告宣伝費の負担に関する改正流取ガイドラインの疑問 | トップページ | 入札で競合他社に一部下請に出したり競合他社から一部部品を調達することの問題点 »

2026年7月27日 (月)

中小受託法4条の発注書に「委託代金は見積書記載のとおり」と書いてよいか?

中小受託法適用対象取引の発注書(4条明示)に具体的な代金額を書かず、「見積書記載のとおり」と書くことは許されるでしょうか。

許されないと考えます。

理由は簡単で、見積書は受託者が発注者に示したものであって、発注者が受託者に示した(明示した)ものではないからです。

4条明示は、取引関係を明確にするためのものですから、それを見れば取引内容がわかる必要があります。

もし見積書を4条明示で引用することをみとめると、受託者が見積書の写しを(最長2年間)手元に取っておかないといけないことになりかねません。

でも中小受託法上受託者にはそのような義務はないのですから、そういう余計な義務を負わせることになる解釈もみとめられないと考えられます。

この点、中小受託法4条では、

「(中小受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)

第四条 委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、中小受託事業者の給付の内容、製造委託等代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により中小受託事業者に対し明示しなければならない

ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により中小受託事業者に対し明示しなければならない。

2 委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、中小受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。

ただし、中小受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。」

と規定されて、これを受けて、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」(4条明示規則)1条では、

「第一条

〔1項省略〕

2 前項第四号の製造委託等代金の額について、具体的な金額の明示をすることが困難なやむを得ない事情がある場合には、製造委託等代金の具体的な金額を定めることとなる算定方法の明示をすることをもって足りる。

3 第一項各号に掲げる事項が一定期間における製造委託等について共通であるものとして、あらかじめその旨を書面の交付又は電磁的方法による提供により明示したときは、その期間内における製造委託等に係る当該事項の明示は、あらかじめ明示したところによる旨を明示することをもって足りる。

4 法第四条第一項ただし書の規定に基づき未定事項を明示するときは、未定事項以外の事項の明示との関連性を確認することができるようにしなければならない。」

と規定されていて、規則1条3項で共通事項の明示がみとめられていますが、共通事項自体も発注者があらかじめ共通事項を「明示した」ことが必要とされています。

つまり、共通事項も、発注者から受託者に宛てた書面または電磁的記録に記載する必要があるわけです。(もちろん、両者が署名した契約書でもかまいません。)

よって、代金額も、別の書面の記載を引用するにせよ、その書面は発注者から受託者に宛てた書面であることを要すると考えられます。

もし、発注者から受託者に宛てた書面でなくてもいいとすると、それこそ「代金はあのとき口頭で伝えたとおり」と4条明示に書くのでもOKになってしまいます。

あるいは、もう少し現実的な例としては、「支払期日・方法等は、当社〔発注者〕のウェブサイト掲載の『支払方法等について』によります。」というのはどうか、というのが問題になりそうですが、これもダメでしょう。

このようなウェブサイトの掲示は、発注者から受託者に宛てたものとはいえないからです。

この電磁的方法の作成者と宛先については、4条明示規則2条でも、

「第二条 法第四条第一項の公正取引委員会規則で定める電磁的方法は、次に掲げる方法とする。

一 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)を送信する方法

二 電磁的記録を記録した記録媒体を交付する方法」

とされていて、「受信をする者を特定」してするものでなければならないとされています。

このことからも、「ウェブサイトを見といてね」というのはダメだということがわかります。

なので、4条明示の代金額は、「見積書記載のとおり」と書くのではなく、具体的な金額で書きましょう。

どうしても見積書を引用する形にしたいなら、見積書(コピーも可)を4条明示に別紙として貼り付けて、「別紙見積書記載のとおり」とすればよいでしょう。

これなら、発注者から受託者に宛てて明示していることになりますし、物理的に一体なので一覧性もあり、問題ありません。

4条明示をメールでするなら、メールに見積書のPDFを添付して、「代金は添付の見積書のとおり。」と書けばよいでしょう。

4条明示をメールでする場合に、同じチェーンメールのなかに見積条件を記載した受託者のメールがある場合に、「代金は下記メール記載の見積条件記載のとおり。」と書くのも、ちょっと微妙ですが、やめておいたほうがいいと思います。

やっぱり、そのメールだけで1つの明示とみるべきで、チェーンメールの部分は別文書と考えられるからです。

まあこの点については、

「チェーンメールが当然に一体となって最後のメールの作成者の作成文書になるわけではないにしても、明示的に引用しているかぎりはコピーとして(チェーンメールとして)相手にもわたっているのだから、4条明示として有効とみていいのではないか。」

とのご意見もあるかとは思いますが、そういう細かいことを弁護士さんに検討させてタイムチャージを払うくらいなら、さっさと金額を4条明示にコピペするほうが賢明だと思います。

« 指定価格制度における広告宣伝費の負担に関する改正流取ガイドラインの疑問 | トップページ | 入札で競合他社に一部下請に出したり競合他社から一部部品を調達することの問題点 »

下請法」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 指定価格制度における広告宣伝費の負担に関する改正流取ガイドラインの疑問 | トップページ | 入札で競合他社に一部下請に出したり競合他社から一部部品を調達することの問題点 »

フォト
無料ブログはココログ