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2026年6月27日 (土)

返品して代金減額が認められる場合についての中小受託法運用基準第4の3⑵の矛盾

中小受託法第4の3⑵では、

「(2) 「中小受託事業者の責めに帰すべき理由」があるとして代金の額を減ずることが認められるのは、次のア及びイの場合に限られる。

〔ア〔受領拒否の場合。実務であまり問題にならないので、省略〕

イ 「4 返品」(2)にいう中小受託事業者の責めに帰すべき理由がある場合であって、

次の(ア)又は(イ)に該当するとき。

(ア) 中小受託事業者の給付を受領した後、当該理由があるとして、その給付に係るものを引き取らせた場合(減ずる額は、その給付に係る代金の額に限られる。)

〔(イ)は、あまり問題にならいので省略。〕」

とされています。

ここで言及されている4⑵は、

「(2) 「中小受託事業者の責めに帰すべき理由」があるとして、中小受託事業者の給付を受領した後に中小受託事業者にその給付に係る物を引き取らせることが認められるのは、

中小受託事業者の給付の内容が明示された委託内容と異なる等の場合であって、

次のア又はイに該当するときに限られる。

ア 当該給付を受領速やかに引き取らせる場合

イ 給付に係る検査をロット単位の抜取りの方法により行っている継続的な取引において、当該給付の受領後の当該給付に係る代金の最初の支払時までに引き取らせる場合。

(この場合にあっては、あらかじめ、当該引取りの条件について合意がされ、その内容が明示され、かつ、当該明示と発注時の明示との関連付けがされていなければならない。)」

です。

なので、仮に発注者が検査をしていなくても、給付受領後速やかに返品(4⑵ア)するのであれば、減額はできる、ということになります。

でも、検査をしていないと、返品はできません。

というのは、第4の4⑶で、

「(3) なお、次のような場合には委託内容と異なること等があることを理由として中小受託事業者にその給付に係るものを引き取らせることは認められない。

〔ア~エ、カ省略〕

オ 給付に係る検査を省略する場合 」

と明記されているからです。

(ちなみに、この検査をしないと返品できないという規定は、"裏金"世耕プランにもとづく平成28年下請法運用基準で導入されたものです。)

このように、検査をしないと返品はできないのに、減額はできる、ということになります。

たしかに、「当該給付を受領速やかに引き取らせ」(第4の2⑵ア)ないといけないので、検査をしないと速やかに返品しにくくはなりますが、「速やかに」というのは「直ちに」とはちがって幅のある概念ですし(1か月くらいなら大丈夫でしょう)、部品を受領してラインで加工をはじめたら瑕疵が見つかったということもそれなりにありうるので、まったく返品できないのにくらべるとだいぶましだといえます。

どうしてこういう、減額と返品での取扱いの差が起きるのかというと、検査省略すると返品できないという規定を4⑵とはわけて4⑶で規定しているからです。

ちなみに下請法運用基準の時代は、第4の3⑵は、返品の部分だけを抜き出すと、

「 (2) 「下請事業者の責に帰すべき理由」があるとして下請代金の額を減ずることが認められるのは、次のア及びイの場合に限られる。

ア ・・・「4 返品」(2)にいう下請事業者の責に帰すべき理由があるとして、・・・下請事業者の給付を受領した後その給付に係るものを引き取らせた場合(減ずる額は、その給付に係る下請代金の額に限られる。)

〔イは、あまり起きないので省略〕」

とされていて、そこで引用されていた4⑵は、

「(2)「下請事業者の責に帰すべき理由」があるとして、下請事業者の給付を受領した後に下請事業者にその給付に係る物を引き取らせることが認められるのは、

下請事業者の給付の内容が3条書面に明記された委託内容と異なる場合若しくは下請事業者の給付に瑕疵等がある場合において、

当該給付を受領速やかに引き取らせる場合

又は

給付に係る検査をロット単位の抜取りの方法により行っている継続的な下請取引の場合において当該給付受領後の当該給付に係る下請代金の最初の支払時までに引き取らせる場合に限られる。

ただし、給付に係る検査をロット単位の抜取りの方法により行っている継続的な下請取引の場合において当該給付受領後の当該給付に係る下請代金の最初の支払時までに引き取らせる場合にあっては、あらかじめ、当該引取りの条件について合意がなされ、その内容が書面化され、かつ、当該書面と発注書面との関連付けがなされていなければならない。

なお、次のような場合には委託内容と異なること又は瑕疵等があることを理由として下請事業者にその給付に係るものを引き取らせることは認められない。

〔ア~エ、カ省略〕

オ 給付に係る検査を省略する場合」

というように、検査省略に関する規定が4⑵の中にありました。

これが、中小受託法運用基準では4⑶に切り出されたのに、減額に関する3⑵ではあいかわらず4⑵だけを引用していたので、結果的に、返品できない(∵4⑵と⑶の両方が適用)のに減額はできる(∵4⑵のみ適用)、という場合が生じた、というわけです。

ですが、ここで問題は、検査を省略した場合にほんとうに「当該給付を受領速やかに引き取らせる場合」(4⑵ア)であれば減額しても大丈夫なのか?という点です。

減額についての3⑵を論理的に読むかぎり、「当該給付を受領速やかに引き取らせる」かぎりで、減額してもよい、ということになります。

ですが、ほんとうに検査省略して返品すると、返品の禁止には違反するといわざるをえません。

そうすると、どうしても減額したい発注者は、返品禁止違反のリスクを覚悟してでも、あえて速やかに返品して減額をする、という方法をとるしかなさそうです。

でも、私はそんなルールは矛盾していておかしいと思います。

ではどうしたらいいのかというと、返品請求権を放棄して代金下額請求権だけを行使すればいいと思います。

たしかに、3⑵には、

「(2) 「中小受託事業者の責めに帰すべき理由」があるとして代金の額を減ずることが認められるのは、次のア及びイの場合に限られる。

〔ア省略〕

イ 「4 返品」(2)にいう中小受託事業者の責めに帰すべき理由がある場合であって、

次の(ア)又は(イ)に該当するとき。

(ア) 中小受託事業者の給付を受領した後、当該理由があるとして、その給付に係るものを引き取らせた場合〔以下省略〕」

と書いてあるので、返品を実行することが減額の要件であるかのように読めます。

しかし、返品ができるというのはあくまで発注者に返品の権利があるということなので、返品請求権を放棄することもできるというべきでしょう。

代金減額をするために返品を義務づけるとか、返品を要件にすることには、合理性はありません。

運用基準もそんな趣旨ではなくて、減額の要件を返品ややり直しから(やや無理矢理)引っ張ってきたことから生まれた言葉の綾に過ぎないというべきでしょう。

(要するに、立法技術的に稚拙なだけです。)

というわけで、受領後速やかに、代金減額請求権の前提となる運用基準第4の4⑵(ア)の返品請求権があることを中小受託事業者に通知して、速やかに減額の意思を伝える、ということでよいと思います。

そういうめんどうなことはいやだということであれば、下請代金から減額しなければいいだけのことで、損害賠償を別途すれば減額にはなりませんから、そのようにすればいいと思います。

振込手数料が余分にかかってしまいますし、下請事業者が倒産しそうなときには別途請求するというのは心もとないですが、多くの発注者はこの別途請求の方法を取るのではないかと思います。

なので、あくまで代金減額したい(たとえば下請事業者が倒産しそうなので)という場合には、上記の返品請求権を放棄する方法を使ったらいいと思います。

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