受領拒否して代金減額ができる場合についての中小受託法運用基準第4の3⑵アの読み方
中小受託法運用基準第4の3⑵アでは、
「(2) 「中小受託事業者の責めに帰すべき理由」があるとして代金の額を減ずることが認められるのは、次のア及びイの場合に限られる。
ア 「1 受領拒否」(2)にいう中小受託事業者の責めに帰すべき理由
〔注・1⑵ア瑕疵、イ納入遅れ〕
がある場合であって、次の(ア)又は(イ)に該当するとき。
(ア) 当該理由があるとして、中小受託事業者の給付の受領を拒んだ場合
(減ずる額は、その給付に係る代金の額に限られる。)
(イ) 当該理由がある旨を中小受託事業者にあらかじめ伝えた上でその給付を受領した場合に、委託内容に合致させるために委託事業者が手直しをしたとき
又は
委託内容と適合しないこと等若しくは納期遅れによる商品価値の低下が明らかなとき
(減ずる額は、客観的に相当と認められる額に限られる。)。
〔返品の場合のイ省略〕」
とされています。
まず、返品の場合と異なり、ロット単位での検査云々という規定はないので、受領拒否の場合には、検査の有無や方法によって減額の要件に差はありません。
とはいえ、瑕疵の場合には通常は受け取ってみないと瑕疵があったかどうかわかりようがないので、(ア)の「拒んだ」が適用される場面はあまりないのではないかと思います。
これに対して、納入遅れなら、(ア)の「拒んだ」が適用される場面はいくらでもありそうです。
ここで、納入遅れで受領拒否した場合でも、「(減ずる額は、その給付に係る代金の額に限られる。)」とされていますが、受領していないわけですから、納入遅れの分については代金をまったく支払わなくていい(いわば、全額の減額をしていい)、ということになります。
次に、(イ)の、受領しつつ減額をする場合については、前段の手直しによる減額は、「委託内容に合致させるため」ということなので、瑕疵の場合にしか適用されません。(納入遅れの場合には適用されません。)
その場合(瑕疵ある物を受領した場合)の減額が認められる限度である「客観的に相当と認められる額」というのは、手直し料と、手直ししてもなお戻らなかった価値減少分が、含まれるというべきでしょう。
もちろん、手直し料と、戻らなかった価値減少分の合計額が下請代金額を超えれば、下請代金全額を支払わないことも可能です。
全額減額しても足りない分は別途損害賠償請求すればよいでしょう。
やや問題なのが、減額をその製品Aの代金から減額するのでも、別途損害賠償請求するのでもなく、別の製品Bの下請代金と相殺することができるか、です。
このような、Bの代金から減額できるかという観点からあらためて中小受託法運用基準第4の3⑵をながめてみると、
「(2) 「中小受託事業者の責めに帰すべき理由」があるとして代金〔B〕の額を減ずることが認められるのは、次のア及びイの場合に限られる。
ア 「1 受領拒否」(2)にいう中小受託事業者の責めに帰すべき理由〔Bの瑕疵・納入遅れ〕がある場合であって、次の(ア)又は(イ)に該当するとき。
(ア) 当該理由〔Bの瑕疵・納入遅れ〕があるとして、中小受託事業者の給付の受領を拒んだ場合(減ずる額は、その〔Bの〕給付に係る代金の額に限られる。)
(イ) 当該理由〔Bの瑕疵・納入遅れ〕がある旨を中小受託事業者にあらかじめ伝えた上でその〔Bの〕給付を受領した場合に、委託内容に合致させるために委託事業者が手直しをしたとき又は委託内容と適合しないこと等若しくは納期遅れによる商品価値の低下が明らかなとき(減ずる額は、客観的に相当と認められる額に限られる。)。
イ 「4 返品」(2)にいう中小受託事業者の責めに帰すべき理由〔Bの瑕疵等〕がある場合であって、次の(ア)又は(イ)に該当するとき。
(ア) 中小受託事業者の給付を受領した後、当該理由〔Bの瑕疵等〕があるとして、その給付に係るものを引き取らせた場合(減ずる額は、その給付に係る代金の額に限られる。)
(イ) 中小受託事業者の給付を受領した後、当該理由〔Bの瑕疵等〕がある旨を中小受託事業者にあらかじめ伝えた上でその〔Bの〕給付に係るものを引き取らせなかった場合に、〔Bを〕委託内容に合致させるために委託事業者が手直しをしたとき又は〔Bが〕委託内容と適合しないこと等若しくは納期遅れによる商品価値の低下が明らかなとき(減ずる額は、客観的に相当と認められる額に限られる。)。」
というように〔 〕内のようにBを補足して読むべきように思われ、そうすると、どうも別の製品Bの代金から製品Aの瑕疵等による損害を相殺(減額)することはできなさそうです。
そんな堅苦しいこといわず異なる商品間で相殺を認めてもいいように思いますが、別の製品Bの代金についてまでは減額されないというのも下請事業者の利益だと言えばそういえなくもないので、ここは中小受託法運用基準のすなおな読み方にしたがい、別の製品Bの代金から相殺(減額)することはできない、と解しておきます。
そうするとさらに問題になるのが、たとえば1通の発注書で100個注文していて、1個に瑕疵があった場合、他の99個の代金から相殺(減額)することができるのか、ということです。
これについては、どうも中小受託法運用基準は(注文書単位ではなく)瑕疵のあった製品単位で考えているように見受けられます。
典型的には、第4の3⑵イをみると、
「イ 「4 返品」(2)にいう中小受託事業者の責めに帰すべき理由〔瑕疵〕がある場合であって、次の(ア)又は(イ)に該当するとき。
(ア) 中小受託事業者の給付を受領した後、当該理由〔瑕疵〕があるとして、その給付に係るものを引き取らせた場合(減ずる額は、その給付に係る代金の額に限られる。) 」
とされていて、「その給付」というのは、100個の製品のうちの、瑕疵のあった1個の給付のことを言っていると読まざるをえないように思われます。
この点は、4⑵で、「責めに帰すべき理由」について、
「(2) 「中小受託事業者の責めに帰すべき理由」があるとして、中小受託事業者の給付を受領した後に中小受託事業者にその給付に係る物を引き取らせることが認められるのは、中小受託事業者の給付の内容が明示された委託内容と異なる等の場合であって、次のア又はイに該当するときに限られる。」
と述べており、「委託内容と異なる」給付が、ここでの「その給付」だと解さざるをえないことからも裏付けられると思われます。
民法の世界であれば、契約の趣旨からして100個ぜんぶ瑕疵のないものを納品するのが完全履行であり1個でも瑕疵があったら全部が不履行なのだ(給付の一体性)という議論がありえそうですが、公取委がそんな細かいことを考えているとはとうてい思えません。
というわけで、ここは反対説もあり得そうな気もしますが、ここは積極的に反対する理由もないので、私も運用基準の考え方に立っておきます(つまり、1個分の代金からしか減額できない)。
注文した製品全部に瑕疵があった場合は全額減額してもいいですが、一部にしか瑕疵がなかったというときには、注文金額全額を減額することはできない可能性があるので、気をつけましょう。
そのときには、別途損害賠償請求をしましょう。
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