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2026年6月22日 (月)

振興法の「役務提供委託」について(中小受託法とのちがい)

受託中小企業振興法2条1項5号では、

「(定義)
第二条 この法律において「製造委託等」とは、事業者が他の事業者に対し次の各号のいずれかに掲げる行為を委託することをいう。

〔1号から4号省略〕

五 その者が業として行う提供の目的たる役務を構成する行為の全部又は一部」

とされています。

この部分について、中小受託法テキストp153では、

「取適法では、他者に提供する情報成果物の作成に必要な役務である場合に、当該役務の提供を他者に委託することは対象とならないのに対し、

振興法では、例えば映画を作成するために俳優に出演を依頼する等の役務は、役務を構成する役務として、役務提供委託の対象となる。」

と説明されています。

ですが、私には、中小受託法テキストが言っている意味がよく理解できません。

素直に考えるなら、

「映画を作成するために俳優に出演を依頼する等の役務」

というのは、情報成果物(=映画)を親事業者(=映画作成者)みずからが作成するために自ら必要とする役務(=俳優の出演)なので、自己使用役務(よって中小受託法の対象にも振興法の対象にもならない)のではないでしょうか。

つまり、中小受託法テキストの、

「役務を構成する役務」

というのは、

「情報成果物を構成する役務」

となるのがせいぜいではないかと思います。

もし、

「映画を作成するために俳優に出演を依頼する等の役務」

が、

「役務を構成する役務

といえるとすれば、「映画の作成」というのを役務だと考えるしかないでしょう。

それは、論理的にはありうることです。

でもそれをやりだすと、あらゆる情報成果物の作成が、情報成果物の作成という「役務」だ、ということになってしまいます。

さらにいえば、製造委託だって、物品の製造という「役務」の委託をしているのだ、ということになってしまいます。

それでは、製造委託と修理委託と情報成果物作成委託と役務提供委託と特定運送委託をわけて規定している中小受託法の体系が崩壊してしまいます(全部、役務提供委託になってしまいます。)

振興法の体系も基本的に同じというべきでしょう。

ではどうしてこの中小受託法テキストのような解説が出てくるのでしょうか。

ここで、中小受託法の役務提供委託の定義をみてみると、同法2条4項では、建設業法に関する部分を端折ると、

「4 この法律で「役務提供委託」とは、

事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること・・・をいう。」

とされています。

振興法2条5号では、

「五 その者が業として行う提供の目的たる役務を構成する行為の全部又は一部」

とされているのと、微妙に違います。

つまり、中小受託法では、

「業として行う提供の目的たる役務の提供の行為」

であるのに対して、振興法では、

「業として行う提供の目的たる役務を構成する行為」

となっています。

でも、

「役務の提供の行為」(中小受託法)

というのと、

「役務を構成する行為」(振興法)

というのとでは、意味は何も変わらないと思います。

しいていえば、

「役務の提供の行為」(中小受託法)

のほうが、なんとなく、発注者が顧客に提供する役務が物理的に分割できて、そのように分割された役務の全部又は一部を下請事業者に委託するのだ、というニュアンスを感じるのに対して、

「役務を構成する行為」(振興法)

のほうは、発注者が顧客に提供する「役務」は全体が不可分一体で有機的に結合された役務であって、そのような有機的総合体を「構成」する行為(それ自体は必ずしも「役務」である必要すらない)の全部または一部を下請事業者に委託するのだ、というニュアンスを感じます。

ただ、これは両者を横に並べてためつすがめつ眺めてはじめて感じる違いであり、法令解釈としては邪道だと思います。

この点について、中企庁職員の論文である、髙橋諄「下請中小企業振興法の改正について」公正取引898号12頁では、

「提供の目的である役務を構成する役務の委託について、下請法では対象とならない(下請法第2条第4項参照)のに対し、振興法では、対象に含まれる(振興法第2条第2項第5号)。」

と説明されており、振興法の「役務を構成する行為」(振興法2条1項5号)という表現になにか中企庁としての思い入れがあることがうかがわれますが、やはり「役務を構成する行為」(振興法)と、「役務の提供の行為」のちがいは、具体例もないのでよくわかりません。

そこで推測するほかありませんが、中小受託法の役務提供委託では伝統的に、同法の役務提供委託とは役務の再委託であると言われてきました。

ということは、振興法の「役務を構成する行為」ないし「役務を構成する役務」というのは、役務の再委託よりも広い行為である、ということなのでしょう。

では、役務の再委託ではないけれど「役務を構成する役務」というのは何なのかというと・・・やっぱりよくわかりません😵

上述の中小受託法テキストp153の映画の例などもみると(映画は情報成果物ではないか、という難点にはひとまず目をつむり、映画の作成も役務だとして)、「構成する役務」というのは、最終役務(=映画)に溶け込んで不可分一体をなしている(構成している)役務(=演技)なのだろう、と想像できます。

中小受託法テキストp16における中小受託法の「(自ら用いる役務の委託に該当し、役務提供委託に該当しない例)」としてあげられている、

「○ ホテル業者が、ベッドメイキングをリネンサプライ業者に委託すること。

○ 工作機械メーカーが、自社工場の清掃作業の一部を清掃業者に委託すること。

○ カルチャーセンターを営む事業者が、開催する教養講座の講義を個人事業者である講師に委託するこ
と。

○ プロダクションが、自社で主催するコンサートの歌唱を個人事業者である歌手に委託すること。 」

なども、振興法上は「役務を構成する役務」として、対象になるのかもしれません。

たとえば、

「○ ホテル業者が、ベッドメイキングをリネンサプライ業者に委託すること。」

なんていうのは、「役務(=宿泊提供サービス)を構成する役務(=ベッドメイキング)」なので、振興法の対象なのでしょう。

これに対して、

「○ 工作機械メーカーが、自社工場の清掃作業の一部を清掃業者に委託すること。」

は、さすがに「清掃作業」が「工作機械」の製造行為という「役務」(これを「役務」と呼ぶのは難があることはひとまず措きます)を「構成する」というのは無理ではないかと思います。

次の、

「○ カルチャーセンターを営む事業者が、開催する教養講座の講義を個人事業者である講師に委託すること。」

というのは、たしかに「役務(=講座提供サービス)を構成する役務(=講義)」とはいえるのかもしれません。

ですが私は、この例はそもそも、中小受託法の役務提供委託の「業として行う提供の目的たる役務の提供の行為」といってもよいのではないかと思っており、「構成する役務」の説明の根拠としてよいかは、なんとも微妙です。

次の、

「○ プロダクションが、自社で主催するコンサートの歌唱を個人事業者である歌手に委託すること。」

というのは、前述の中小受託法テキストp153の映画作成の例と似ていて興味深いですが、これなんかは、「役務(=コンサート主催)を構成する役務(=歌唱)」といいやすいのではないかと思います(映画の場合のような、役務ではなく情報成果物ではないかといった難点もありませんし)。

というわけで、中小受託法テキストp153の映画作成の例はひとまず措いて、「役務を構成する行為」(振興法)と「役務の提供の行為」(中小受託法)のちがいは、このあたりにあるように思います。

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