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2026年6月 8日 (月)

「同一の企画において景品類の提供とを併せて行う場合」(定義告示運用基準6⑷ア)の意味について

定義告示運用基準6⑷では、

「(4) 次のような場合は、「値引と認められる経済上の利益」に当たらない。

ア 対価の減額・・・であっても、・・・同一の企画において景品類の提供とを併せて行う場合(例 取引の相手方に金銭又は招待旅行のいずれかを選択させる場合)」

とされています。

ここで、具体例は、

「取引の相手方に金銭又は招待旅行のいずれかを選択させる場合」

というように、対価の減額(「金銭」)と景品類(「招待旅行」)を選択的に(「又は」)で適用される場合があげられています。

では、対価の減額と景品類の両方を重畳的に提供する場合にも、「対価の減額」は「値引」にはならなくなる(景品類になる)のでしょうか。

この問題について、高居他編著『景品表示法〔第7版〕』234頁では、

「③同一の企画において景品類の提供と〔対価の減額〕を併せて行う場合(取引の相手方に金銭と招待旅行の両方を提供する場合と、これらのうちいずれかを選択させる場合の両方が〔対価の減額が〕景品類の提供にあたる)」

とされており、選択させる場合だけでなく両方を提供する場合も対価の減額は値引にあたらない、としています。

まあ確かに、定義告示運用基準の「併せて行う」という文言からすると、むしろ両方提供する場合を指しているとすら読めます(むしろ選択させる場合が「併せて」といえるのかのほうに疑問が沸いてくる)。

また、緑本にこう書いてある以上は実務的にはこれにしたがわざるをえないとは思います。

でも、これには異説もあり、古川昌平『実務担当者のための景表法ガイドマップ』226頁では、

「(c)同一の企画において景品類の提供を併せて行う場合の例は、値引・キャッシュバックか景品類のいずれかを選択させる、というものである

1つの取引に付随して、値引と景品類提供を両方行う場合には、上記(c)〔注・定義告示運用基準6⑷アの、対価の減額と景品類の提供を併せて行う場合〕には当たらない)。」

とされています。

実際、少なくとも同一の取引に付随して(「同一の企画において」ではないことにご注意ください。同一の企画の対象となる取引は通常複数あるからです。)対価の減額と景品類の提供をする場合には、その取引の、対価減額後の取引価額を基準にして景品類が法定の限度内であれば、過度な景品類が提供されるおそれもなさそうで、対価の減額自体を景品類だといわなくてもいいような気がします。

それに、過去の公取委職員の論考をみると、どうもこの「併せて行う」というのは、対価の減額と景品類の提供が選択的な場合だけを想定していたように思えてならないのです。

たとえば、鈴木満他「『事業者に対する景品類の提供に関する景品表示法上の考え方』について」公正取引456号(1988年)9頁)では、当時あった事業者景品ガイドラインの、

「③同一の企画において金銭の提供とを併せて行う場合

(例えば、相手方事業者に金銭又は招待旅行のいずれかを選択させる場合、

1位のものには金銭を、2位以下のものには景品類をそれぞれ提供する場合)」

という文言についての説明の中で、

「減額若しくは割り戻すか、又は、その分例えば商品券を提供するかを相手方事業者に選択させる場合

(この場合、景品類を提供したのと変わらない。)

は、取引通念上妥当と認められる基準に従い、対価の減額又は代金の割戻しをしたものとは認められないので、『値引と認められる経済上の利益』に当たらない。」

とされていて、選択させる場合であることを明言しています。

ただここで、「選択させる場合」だと、なぜ減額が「景品類を提供したのと変わらない」ことになるのかという理屈は、今一つよくわかりません。

当選者に減額と景品の選択肢を与えたうえで当選者が減額を選んだ場合には、当選者は景品の資格を放棄して減額を選んだのだから、景品を提供したのとかわない、ということなのでしょうか・・・?

また、利部修二「実務家のための景品表示法基礎講座6」公正取引471号〔1990年〕54頁では、

「購入額10万円の人には1万円の値引、5万円の人には5千円の商品券を提供する場合」

を定義告示運用基準6⑷アの例として例示しています。

この例などをみると、消費者に「選択」させることが本質なのではなくて(消費者は5万円の商品ではなく10万円の商品を購入することにより、5千円の商品券ではなくⅠ万円の値引を「選択」しているといえなくもないですが、ちょっと技巧的でしょう)、ともかく1つの企画の中で値引と景品類の両方が提供されていることが重要である(1つの取引で両方もらえるのか片方しかもらえないのかはどうでもいい)、という発想がうかがえます。

このように、対価の減額と景品類を、1つの取引に対して選択的に(どちらかだけ)提供するのか重畳的に(両方とも)提供するのかはどうでもいいのだとすると、にわかに注目すべきなのが、「同一の企画」という縛りです。

つまり、この「同一の企画」という文言や、上記のような公取委関係者の解説などを踏まえると、同一の取引が2つの企画の対象になっていて、一方の企画では対価の減額を提供し、他方の企画では景品類を提供する、という場合には、この定義告示運用基準6⑷アの規定は適用される余地がない、ということです。

(この点、同一取引に複数の景品類が提供される場合の懸賞運用基準5⑵は、

「同一の取引に付随して二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合」

と規定しているので、2以上行なわれるのは「景品類提供」であって、企画が2以上行なわれるかどうかは関係がないのと混同しないようにする必要があります。)

たとえば、値引きのキャンペーンが行なわれている期間中に、その値引対象商品を対象にする景品企画を別途行なったとしても、2つの企画は「同一の企画」ではないので、値引きキャンペーンの値引を景品類とみる必要はない、ということです。

こういう、1つの企画か2つの企画かという基準を導入すると、1つの企画をあえて2つに分割して行なうという脱法的な行為が行なわれるのではないかとか、企画の同一性みたいなあらたな論点が出てくるのではないかとか、厳密に考えてみるといろいろと問題はあるのですが、定義告示運用基準が現に「同一の企画」という文言を使っている以上、同運用基準は企画の同一性なるものを概念していると考えるほかないように思います。

そして、上記の鈴木解説および利部解説はまさに、そういう、ゆる~い観点から「企画の同一性」を考えているように思えてなりません。

つまり、同一の企画にみえる企画の中で(同一取引か別の取引かにかかわらず)景品類と対価の減額を提供していたら、消費者はどっちが景品でどっちが値引かなんて気にしない(ぜんぶひっくるめて景品であるかのように誘引される)のではないか、ということです。

そういう、ゆる~い観点から定義告示運用基準6⑷アをながめてみると、同一取引に対して対価の減額と景品類を選択的に提供する場合でも重畳的に提供する場合でも、定義告示運用基準6⑷アは適用される(対価減額は値引ではない)、という緑本の解説も、納得できます。

逆に言うと、値引きキャンペーンAをやっていて、あとから景品提供キャンペーンBを同時期にやる、というように、あきらかに別々の企画である場合には、同一の取引にAの値引とBの景品の両方が提供されたとしても、Aの値引きを景品類とみなす必要はなく、Aで値引かれた対価を基準にBの景品類が法定の限度を超えないようにすればいい、ということだと思います。

1つの企画をあえてAとBに分けたと認定されるとこういうわけにはいかないかもしれませんが、そういう脱法の意図もなくほんとうにAとBを別々にやっていたのなら、「同一の企画」(定義告示運用基準6⑷ア)にはあたらないというほかないと思います。

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