中部電力フリーランス法勧告(弁護士への発注書面不交付)の衝撃
2月2日、中部電力がフリーランス法違反で勧告を受けました。
公取委のプレスリリースの違反事実の概要では、
「中部電力は、個人であって従業員を使用しない事業者又は法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しない事業者(以下「特定受託事業者」という。)に対し、総務・広報、人事・労務、経理・法務、研究・開発、設備の管理・評価等に関する支援業務を委託している(以下、これらの委託を「本件業務委託」と総称する。)。」
というだけで、具体的にどういう業務内容を委託していたのかはっきりしないのですが、こちらの読売新聞の、
「中部電力がフリーランス法違反、弁護士ら専門家に支払期日など条件の一部明示せず…公取委が勧告」
という記事によると、
「発表によると、中部電は2024年11月~昨年9月、弁護士や税理士、医師などの専門家ら39人に対し、自社の法務や経理に関する相談や助言、社員の健康管理といった業務を委託する際、支払期日など一部の条件を明示していなかったという。このうち14人に対する支払い遅延の違反も認定された。」
ということで、弁護士も相手方に含まれていたようです。
事務員のいない事務所や、事務員がいる事務所でもアソシエイト弁護士がフリーランスに該当することは、フリーランス法のガイドラインのパブコメのころからけっこうな話題になっていたので、結論自体はやむをえないのですが、ほんとうに勧告してしまうとは驚きです。
世の中にはいろいろな弁護士さんがいるのでいちがいにはいえないのかもしれませんが、フリーランス法で保護されたいと思っている弁護士さんなんて、世の中にほとんどいないのではないでしょうか?
中には、「毎月請求書出さないといけなくなって、めんどうだなぁ」という弁護士さんもいるかもしれません。
私は共同事務所のパートナーですし、事務員もアソシエイトも雇っていますので、フリーランスにはあたらないので、厳密には当事者とはいえないのですが、同じ弁護士として、いわば半ば当事者として、これは迷惑だなぁと思います。
しかも、依頼者の方にしてみたら、その弁護士さんがフリーランスかどうかなんて、本人に聞いてみないとわからないことも多いのではないでしょうか?
なので、こんな事件でお客さんが勧告を受けたとしたら、ふつうの弁護士の感覚としては、「自分がフリーランスであることをお伝えできておらず、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」と平身低頭謝るのではないかと思います。
もっとシビアなことをいえば、フリーランスである弁護士は、発注書面等が交付されていなかったらフリーランス法違反であることはわかっているのですから、発注書面を交付しないとフリーランス法違反ですよとアドバイスしてあげないと、弁護過誤になるのではないでしょうか。
万が一弁護士会に懲戒請求されたら、反論のしようもないと思います。
弁護士は法律のプロなわけですから、「フリーランス法を知らなかったです」ではすまないでしょう。
「自分は発注書面なんて不要だったし、60日以内に報酬を払ってもらわなくても困らないので、フリーランス法のことを伝えませんでした。」というのも、気持ちとしてはわかりますが、今回のような勧告が出てしまうと、そうもいっていられません。
さらに、こういう規制がかかってくると、依頼者のかたにしてみたら、「あの先生はフリーランスでめんどうだから、ほかの先生に頼もう」ということが現実に起こるのではないか(少なくともフリーランスの弁護士さんは本気でそういう心配をしないといけないのではないか)、という気もします。
本件でも、発注書面の交付を受けられなかった弁護士さんが公正取引委員会に中部電力を申告しているとは考えにくいですから(もししていたら、もっと驚きですが)、きっと公取委が職権で調査したらフリーランスの弁護士もいることがわかったので勧告に加えた、ということではないかと想像されます。
でも、それが迷惑だと、半ば当事者として申し上げたいです。
法律ができてしまったのはどうしようもないとしても、公取委には、もうちょっと運用のところで何とかしてもらいたいものです。
先に引用した読売新聞の記事では、
「士業や医師などの専門家は、事務所や病院といった組織に所属していても、個人に仕事を依頼する場合はフリーランスの扱いになることがある。同法施行時に注意すべき点として、公取委が適切な対応を取るよう事業者に求めていた。」
とのことですが、少なくとも弁護士についてはそんな「適切な対応」は不要ですから、そういう「求め」はしないでほしいです。
というわけで、「フリーランス法の保護なんて迷惑だ。困っている」というフリーランスの弁護士さんは、声を上げられてはいかがでしょうか?
フリーランスではない私が言うのでは説得力がないかもしれませんが、本当にフリーランスの弁護士さんから多数のそういう声が寄せられたら、公取委も考え方を変えるかもしれません。
もちろん、「いや、自分は保護されたい」という人が声を上げれば、それはそれで議論が深まってよいとは思いますが。
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