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2025年12月 6日 (土)

着荷主の指示による委託外作業に関する中小受託法テキストQ42の物足りなさ

中小受託法テキストQ42では、

「Q42: 当社が特定運送委託した中小受託事業者が、到達地において、当社の取引先(着荷主)の要請により、委託内容にない荷下ろし作業や長時間の荷待ちを無償で行う場合があるが、発注者である当社が本法を遵守するために留意すべき点はなにか。」

という質問に対して、

「A: 運送の役務を提供する中小受託事業者が、着荷主側の要請により委託内容にはない荷役又は荷待ちを余儀なくされた場合であっても、例えば、着荷主側から荷役等の要請を受けた当該中小受託事業者が委託事業者に対してその対応の要否を確認し、委託事業者の要請に基づいて荷役又は荷待ちを行った場合など、取引の実態に照らして、委託事業者が中小受託事業者に対し経済上の利益を「提供させ」、又は給付の内容を「変更させ」たといえる場合には、不当な経済上の利益の提供要請又は不当な給付内容の変更として本法上問題となることがある。

本法違反を未然に防止するためには、委託事業者は、中小受託事業者との間で、着荷主が当該中小受託事業者に対して荷役等の要請をした場合に当該中小受託事者が提供するべき役務があるときは、その内容及び対価等の条件についてあらかじめ明確にして、中小受託事業者との間で十分協議した上で決定し、その具体的な内容及び対価等の条件について発注時点で明示しておくことが必要である(※対価については算定方法による明示も可能)。」

と回答されています。

この前半の部分が言っていることはわかるのですが、論理的に後半とつながっていないと思います。

前半で、

「例えば、着荷主側から荷役等の要請を受けた当該中小受託事業者が委託事業者に対してその対応の要否を確認し、委託事業者の要請に基づいて荷役又は荷待ちを行った場合など、取引の実態に照らして、委託事業者が中小受託事業者に対し経済上の利益を「提供させ」、又は給付の内容を「変更させ」たといえる場合」

に問題となるといえば、違反を避けるための最も確実な回答は、中小受託事業者からの対応の要否については回答しない(「うちは知らん」という)、ということになるのではないでしょうか。

前半のようにいうのであれば、後半はこのようにはっきりと言ってあげないと伝わりません。

さらにいえば、どれだけ、

「委託事業者〔が〕、中小受託事業者との間で、着荷主が当該中小受託事業者に対して荷役等の要請をした場合に当該中小受託事者が提供するべき役務があるときは、その内容及び対価等の条件についてあらかじめ明確にして、中小受託事業者との間で十分協議した上で決定し、その具体的な内容及び対価等の条件について発注時点で明示

したとしても、着荷主が「委託内容にない荷下ろし作業や長時間の荷待ち 」を中小受託事業者にさせようとすることは防止できないと思います。

着荷主にしてみれば、委託事業者と中小受託事業者との間にそのような「明示」があったかとか、「委託内容」の詳細なんて、知りようもないからです。

なので、必要なのは中小受託事業者に対する取引条件の「明示」ではなく、中小受託事業者に「もし着荷主から委託内容にない荷下ろし作業を依頼されても、やらなくていいよ」とはっきり言ってあげることではないかと思います。

あるいは、こちらのほうをお勧めしますが、発荷主から着荷主に対して、運送業者への委託内容を伝えて、どこまで運送業者にやってもらえるのか、どこからはやってもらえないのかを、あらかじめきちんと伝えておくことだと思います。

そうでなく、上記回答の後半のような対応(発荷主から運送業者への取引条件の明示を求める対応)だと、結局、諾否の判断を全部運送業者に丸投げ、ということになってしまいます。

ひょっとしたら公取委は、「着荷主と運送業者との間には取引はないのだから取引上の優劣関係もなく、運送業者は委託の範囲外だと思えば容易に断れるはずだ(断れないのは初荷主が取引条件を明示しないからだ)」という発想なのかもしれません。

そうでないと、「発荷主から運送業者に取引条件を明示していれば問題は起こらないはずだ」といった上記回答後半部分のような発想にはならないと思います。

というわけで、発荷主としては、もしこのような事態が起こったら、着荷主に対してはっきりと、「委託の範囲外なのでやらせないでください」と伝えるのが、リスク回避としては最も適当だと思います。

少なくとも、上記回答後半部分のような対応では、運送業者から問い合わせがあったときの対応にはなっていません。

別の角度から言うと、前半部分から論理的に、運送業者からの問い合わせに「うちは知らん」といった回答をすることは、リスクがあると思います。

というのは、「うちは知らん」という回答は、少なくとも言外に、

「お前(運送業者)が着荷主と話し合って決めろ」

という意味を含んでおり、これだけで不当な経済上の利益の提供要請があったと認定される可能性があるからです。

スーパーが納入業者に協賛金の提供を依頼する場合、依頼する側としては、「あくまで任意であり、協力してくれる人だけ協力してくれればいい」と思って依頼書を送ることがありますが、それでも十分濫用になります。

ということは、

「うちは知らん」

≒「お前(運送業者)が着荷主と話し合って決めろ」

≒お前がやりたいならやれ

=利益提供の依頼あり

というように認定される可能性が高い、ということです。

というわけで、もし運送業者からこのような問い合わせを受けたら、発荷主は、着荷主に電話を変わってもらって、「それは委託の内容に入っていないのでやらせないでください。」と伝えるべきでしょう。

このようなことをいろいろ考えてみて感じるのは、特定運送委託は発荷主と運送業者との力関係だけを考えていて、着荷主と運送業者との力関係や、発荷主と着荷主との力関係を考慮していないな、ということです。

中小受託法は、資本金と従業員数で適用関係を決めていることもあって、取引関係を(優越的地位の濫用などと比べて)形式的に認定する傾向がありますが、実態に即した柔軟な解釈(とQ&A)も、もっとあっていいのではないかという気がします。

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