運送品の所有権と役務提供委託との関係に関する下請法テキスト旧Q22の削除について
令和6年版の下請法テキストQ22では、
「Q22: 鉄鋼メーカーが顧客への製品の運送を運送業者に委託した場合には、本法の対象となるか。
A: 鉄鋼メーカーが顧客渡しの契約で製品を販売している場合など、
運送中の製品の所有権が鉄鋼メーカーにあるときは、
鉄鋼メーカーは自己の所有物の運送を他の事業者に委託しているに過ぎず、
当該役務は自ら用いる役務であるので、役務提供委託には該当せず、本法の対象とはならない。
一方、運送中の製品の所有権が既に顧客に移っている場合で、顧客から有償で運送を請け負う場合には、
他者に提供する役務を他の事業者に委託することになるので、役務提供委託に該当する。」
という設問があったのですが、最新の令和7年版からは削除されています。
私は以前から、運送中の所有権の帰属で下請法の適用の有無が決まるなんておかしいと言い続けていたので、まちがったQ&Aが削除されたのは喜ばしい限りです。
とはいえ、これは公取委が間違いを認めて削除したというよりは、特定運送委託が中小受託法の対象になったからなのでしょう。
改正後の中小受託法で、
「鉄鋼メーカーが顧客への製品の運送を運送業者に委託した場合には、本法の対象となるか。」
なんて質問したら、対象になるに決まっています。
特定運送委託の定義(2条5項)をみても、
「事業者が業として行う販売、業として請け負う製造若しくは業として請け負う修理の目的物たる物品又は業として請け負う作成の目的たる情報成果物が記載され、記録され、若しくは化体された物品の
当該販売、製造、修理又は作成における取引の相手方
(当該相手方が指定する者を含む。)
に対する運送の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」
であり、販売の目的物であれ製造の目的物であれ、運送中の目的物の所有権の帰属を問題にしていないことはあきらかでしょう。
運送中の目的物の所有権が運送委託者にあったとしても、その目的物の所有権が最終的に(たとえば割賦代金完済時に)顧客に帰属するのであれば、それを「販売・・・の目的物」といって何の支障もないでしょう。
(これに対して、一貫して所有権が運送委託者にあるのであれば、「販売」とはいえず、特定運送委託にはあたらないのでしょう。)
製造の目的物の場合も同じでしょう。
さらに、修理の目的物の運送も特定運送委託にあたることからすれば(修理の目的物の所有権は一貫して着荷主にある)、なおさら、販売の目的物の運送中の所有権を云々するのはナンセンスでしょう。
情報成果物を化体した物品についても、物品自体の所有権は問わないのは明らかでしょう。
(さらにいえば、情報成果物の場合には、情報成果物にかかる知的財産権の帰属も中小受託法の適用の有無には関係ありません。)
ただ、仮にQ22が削除された理由が特定運送委託が中小受託法の対象になったからであり、運送中の目的物の所有権が顧客(着荷主)に帰属する場合には役務提供委託に該当するという立場を公取が変えていないとすると、特定運送委託と役務提供委託の重畳適用という、理屈としては興味深い論点が出てきます。
これについてはまた後日考えたいと思います。
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