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2025年9月26日 (金)

味の素のステマ確約に対する疑問

9月19日に味の素ほか1社がステマ告示違反で確約認定を受けました。

被疑事実は、

「2社は、「あえて、」と称する冷凍宅配食(以下「本件商品」という。)を共同して一般消費者に販売するに当たり、

第三者に対し、本件商品の無償提供を条件に、

本件商品に関して「Instagram」と称するSNSへの投稿を依頼したことによって当該第三者が投稿した表示を、

例えば、令和6年5月10日から同年8月6日までの間、

本件商品の販売サイトの「使ってみた方の感想 Instagramでの投稿レビュー」との表示箇所等において抜粋するなどして表示していた。」

というものです。

確かに、商品を無償提供して投稿依頼をした投稿を自社サイトに「PR」等の表記をしないで引用したらステマになるというのは、法律論としてはいたしかたないと思いますが、摘発の優先度としていかがなものかと思います。

というのは、広告主の自社サイトに引用されているコメントであれば、広告主に有利なコメントだけが引用されていることは、誰の目から見てもあきらかだからです。

あえて自社に不利なコメントを自社サイトに載せるなんてことは、ありえないでしょう。

(似たようなことは、チョコザップの措置命令について以前も書きました。)

YoutubeとかSNSとかECサイトのレビュー欄では、きっと今でも、ステマ(サクラ)がいくらでもあると推測されます。

そういう、一見公平なレビューに見えるのに実はステマだ、というのが一番問題なわけです。

ところが、消費者庁の過去のステマの事件をみてみると、そういったステマの本丸のような事件がほとんどありません。

というか、こういう、SNS投稿の自社サイト引用のパターンばかりです。

2024年8⽉のチョコザップの事件、2024年11⽉の⼤正製薬の事件、2025年3月のロート製薬の事件、みんなそうです。

唯一、2024年6月の医療社団法人祐真会のグーグルマップ投稿依頼事件が、一見公平なレビューに見えるステマという意味では、ステマの本丸だと言えなくもないですが、クリニックというのは地理的市場が限定されており、ステマ規制がほんらい想定していたインターネットでのやらせレビューのような事例に比べると、かなり小粒です。

消費者庁にしてみたら、SNS投稿の自社サイト引用は、ステマであることが一見して明白で、かんたんに「一丁上がり」という感じで命令の数を稼げる「おいしい」事件なのだということでしょう。

そうではなくて、ステマかどうか、調査報道のように地道に調査して、ほんとうに悪い奴らを捕まえるのが、大事だと思います。

景表法は独禁法などと違って、違反であることが明々白々な事件が多く、密室で違反行為が行なわれるということはあまりありませんでした。

でも、ステマはそうはいきません。

一番問題の大きい、ほんらいのステマは、広告主が裏でこっそりインフルエンサーなどにお金を渡しているわけです。

消費者庁は今まで、そういう隠れた事件を掘り起こすノウハウはなかったと思いますが、ステマはそれではいけないと思います。

「隠れた事件」とはいっても、独禁法のカルテルなどに比べれば、まだ、怪しそうな表示のあたりは付けられるわけで、ほんとうに密室で完結しているわけでもありません。

なのに、これだけSNS投稿引用型ばかりだと、不健全な執行だと言わざるを得ません。

法律を作ったら思わぬところにスポットライトが当たってびっくりすることはときどきあり、同じような事象として、消費税転嫁法で自動販売機の販売手数料がなぜか集中的に摘発されたことがありました。

そういうのは往々にして、重箱の隅をつつくような事件になりがちです。

でも、そういう運用に甘んじていて委はいけないと思います。

今後は消費者庁も、「SNS投稿引用型を1件摘発したら、まともなステマも1件摘発する」くらいの内部基準を作って調査されてはいかがかと思います。

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