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2025年7月 3日 (木)

100円のクーポンの価額は100円か(消費者庁景品類Q&A46番と「景品類の価額の算定基準について」との矛盾)

消費者庁の景品類Q&A46番(「抽選で値引券を提供する場合」)では、

「当店では、一定期間に500円以上購入した者を対象に、次回以降当店で使用できる値引券を抽選で提供したいと考えています。自身の店舗で使用できる値引券は景品類ではないので、景品規制の対象とはなりませんか。」

という設問に対して、

「自己の供給する商品又は役務の取引において、取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額すること(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)は、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益に該当し、景品類に含まれず、景品規制の対象とはなりません。ただし、対価の減額であっても、懸賞による場合は値引とは認められず景品類に含まれることとなり、一般懸賞の規制の対象となります。

本件は、500円が取引の価額となりますので、提供できる値引券の最高額は20倍の10,000円となり、また、提供する値引券の総額を懸賞に係る売上予定総額の2%以内に収める必要があります

なお、値引券が割引率表示(〇%値引券)の場合、割引額の上限額を設定しないと、一般懸賞の規制の範囲を超える可能性があります。

(参照)

と回答されています。

今回注目したいのは、設問の本題である景品規制の対象となるかどうかではなく、

「本件は、500円が取引の価額となりますので、提供できる値引券の最高額は20倍の10,000円となり、また、提供する値引券の総額を懸賞に係る売上予定総額の2%以内に収める必要があります。」

の部分です。

(なお、上記Q&Aのとおり、割引券は総付の場合総付規制の対象外なので、実際に問題になるのは懸賞で割引券を提供する場合です。)

この回答は、割引券を景品類として提供する場合の割引券の「価額」は、割引券の券面額、つまり、100円の割引券であれば100円、ということを、当然の前提にしているといえます。

しかし、果たしてそれで正しいのでしょうか。

この点については、「景品類の価額の算定基準について」の1項では、

「1 景品類の価額の算定は、次による。

(1) 景品類と同じものが市販されている場合は、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入するときの価格による。

(2) 景品類と同じものが市販されていない場合は、景品類を提供する者がそれを入手した価格、類似品の市価等を勘案して、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入することとしたときの価格を算定し、その価格による。」

とされています。

つまり、景品類の価額は、「それを通常購入するときの価格」または「それを通常購入することとしたときの価格」です。

なので、クーポンを景品類として提供する場合は、クーポンを「通常購入するときの価格」が、景品類の価額になるはずです。

少なくとも、「景品類の価額の算定基準について」では、景品類の提供が受ける者が得られる便益や満足度(経済学でいえば「効用」)を基準にしていないことは、明らかなように思われます。

それなのに、100円のクーポンの景品類としての価額を100円だとすることは、まさに、クーポンから得られる効用(=値引額)を景品類の価額にしてしまっている、という間違いを犯しているといえます。

ただ、クーポンが景品の場合に、「景品類〔=クーポン〕と同じものが市販されている場合は、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入するときの価格による」といわれても、「クーポンなんて通常購入できるのか?」「できるとしていくらなの?」という疑問が沸きます。

ですが、世の中には、クーポンおまとめサイトなるものがあり、例えば「クーポンサイト.com」というサイトでは、Uberとかアマゾンとか、いろいろなサイトで使えるクーポンを無料で配っています。

ということは、クーポンは、物によっては無料だ、ということも、ありえないことはないように思われます。

少なくとも、消費者庁Q&A46番の、割引券の券面額を景品類としての割引券の価額とするのは、理論的には誤りであると言わざるを得ないと思います。

とはいえ、似たようなクーポンが無料で配られているから、これから配ろうとしているクーポンの景品類としての価額は0円だ、というのも、なかなか勇気がいると思われます。

他方で、100円のクーポン券をメルカリで100円で買う人もいないでしょうから、クーポンの券面額がクーポンの景品類の価額だ、というのも、割り切りすぎに思われます。

そこで、今メルカリで、「クーポン」で検索したら、「オンワード ファミリーセール 東京 クーポン 300円×3枚 2025年夏」が、600円で出品されていました。

つまり、額面900円のクーポンを600円で出品しているわけです。

あくまで出品価格なので、取引成立価格はもっと低くなるかもしれません。

私はクーポンが嫌い(面倒、要らない買い物をしそう、ちまちまクーポンをためるのは男らしくない、等々)なので(Sex and the Cityのファンの方なら、Season 2のEpisode 10「The Caste System」で、高級レストランでクーポン券を使おうとしたスティーブを、ミランダが冷たい目で見つめるシーンを思い出すかもしれません。)、300円の利益を得るためにメルカリでクーポンを買う人の心理はよく理解できないのですが、ともかく、一定の手間はかかるわけですから、券面額から割り引かないと取引が成立しないのは当然でしょう。

ということから考えても、Q&A46番は「景品類の価額の算定基準について」と矛盾しており、間違っていると言わざるを得ないと思います。

 と、ここまで書いておきながらなんですが、では実際に、懸賞でクーポンを配るキャンペーンにおいて、Q&Aにはっきり書いてあることを無視して、このクーポンの市場価格はいくらだと決めて配って大丈夫なのか、というと、実に悩ましいところです。

100円のクーポンは100円、という考え方は、わかりやすく、かつ、ある意味で常識的でもあり(私も最近までまったくこの論点に気づきませんでした)、絶対におかしいとまでは言えないようにも思えるからです。

これまでこのブログで、消費者庁のQ&Aが間違っていることは何度も指摘してきましたが、Q46のこの部分については、絶対間違っているとまでは断言しにくい、というレベル感です。

あと、割引券の景品類としての価額は、Q46の本題ではないですから、たぶん書いた人も、そもそも論点として意識していなかった可能性はあります。

正面からこの点を尋ねれば、違った答えが返ってきたかもしれません。

ただ私の推測では、その可能性にはあまり期待できないように感じています。

つまり、消費者庁に事前相談したら、きっと「100円のクーポンの景品類としての価額は100円」と言われてしまいそうな気がします。

それでも、ぜひトライしたいという方は、この記事を参考にトライしてみていただければと思います。

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