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2025年7月21日 (月)

中小受託法(現行下請法)運用基準案の一括決済方式または電子記録債権による支払に関する記述の疑問

2025年7月16日に、中小受託法(現行下請法)運用基準案が公表され、パブコメに付されました。

そのp12で、中小受託法5条1項2号(支払遅延)の、

「二 製造委託等代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと

(当該製造委託等代金の支払について、手形を交付すること

並びに

金銭及び手形以外の支払手段であつて当該製造委託等代金の支払期日までに当該製造委託等代金の額に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるものを使用すること

を含む。)。」

の、

当該製造委託等代金の支払期日までに当該製造委託等代金の額に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるもの

の部分について、

「「当該製造委託等代金の支払期日までに当該製造委託等代金の額に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるもの」とは、

金銭による支払と同等の経済的効果が生じるとはいえない支払手段をいう。」

と定義しなおしたあと、その具体例として、

「例えば、

①一括決済方式又は電子記録債権の支払の期日(いわゆる満期日・決済日等)が製造委託等代金の支払期日より後に到来する場合において、

中小受託事業者が製造委託等代金の支払期日に金銭を受領するために、・・・

割引を受け・・・る必要があるもの

②一括決済方式又は電子記録債権を使用する場合に、

中小受託事業者が当該支払手段の決済に伴い生じる受取手数料等

を負担する必要があるもの

がこれに該当する。」

と説明されています。

さらにそのあとにダメ押しのように、

「満期日・決済日等が製造委託等代金の支払期日より後に到来するものについては、

委託事業者が支払期日における割引料等を負担することとする場合であっても、

支払期日に金銭を受領するために、中小受託事業者において割引を受ける等の行為を要するときは、

金銭による支払と同等の経済的効果が生じるとはいえないことから、

「当該製造委託等代金の支払期日までに当該製造委託等代金の額に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるもの」

として取り扱う。」

と述べています。

しかし、そもそも同法5条1項2号の、

「当該製造委託等代金の支払期日までに当該製造委託等代金の額に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるもの」

を、

「金銭による支払と同等の経済的効果が生じるとはいえない支払手段」

と解釈するのは、明らかに文言上無理だと思います。

ここで、5条1項2号の、

「当該製造委託等代金の支払期日までに当該製造委託等代金の額に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるもの」

というのは、いかにも長いので、

「当該製造委託等代金の支払期日」=X (例、2025年7月31日)

「当該製造委託等代金の額に相当する額の金銭」=Y (例、100万円)

と置くと、

「XまでにYと引き換えることが困難であるもの」

と書けます。

もっと短く書くと、

引換困難(X, Y)

でしょうか。

要は、違法かどうかは引換困難かどうかだけで決まります(引換困難性)。

これはどう読んでも、引換を要すること自体は認めたうえで、引換が困難なら違法で、困難でないなら適法、ということでしょう。

これに対して、

「金銭による支払と同等の経済的効果が生じるとはいえない支払手段」

というのは、ちょっと言葉足らずなので、言葉を足すと、

当該製造委託等代金の支払期日までに当該製造委託等代金の額に相当する額の金銭による支払を受けるのと同等の経済的効果が生じるとはいえない支払手段」

ということでしょう。

次にこれも簡単に書くと、

XまでにYを受けるのと同等の経済的効果が生じるとはいえない支払手段」

となるでしょう(非同等性)。

これもさらに短く書くと、

非同等(X, Y)

と書けます。

ここで、「同等の経済的効果」というのがいまいち不明確なので、運用基準案の具体例を見てみると、

「満期日・決済日等が製造委託等代金の支払期日より後に到来するものについては、・・・

支払期日に金銭を受領するために、中小受託事業者において割引を受ける等の行為を要するときは、

金銭による支払と同等の経済的効果が生じるとはいえない」

認められない、とされています。

つまり、Xまでに割引(≒引換)を要する支払手段は、それだけで(=引換が容易かどうかにかかわらず)違法だ、と言っています。

このような運用基準案の解釈(=「XまでにYを受けるのと同等の経済的効果が生じるとはいえない支払手段」)が、5条1項2号の、

「XまでにYと引き換えることが困難であるもの」

という文言に反することは、あきらかです。

つまり、

非同等(X, Y)≠引換困難(X, Y)

であることは、あきらかです。

しかも、長澤先生が指摘されているように、公取委は国会答弁(第217回国会 参議院 経済産業委員会 第7号 令和7年5月13日)で、

「今回の改正法におきましては、約束手形を禁止をするということとともに、例えば電子記録債権とかファクタリング、そういうものについては禁止をしないわけでございますが、これで払う場合には、その支払期日にその満額、支払期日まで代金の額に相当する額が満額支払われるような方法ではないと認めないというようなルールにするということでございます。

ということで、今後、電子債権とかファクタリングでもし払うということになりますと、支払期日に満額が得られるような満期を設定するとか、場合によってはその手数料分を発注者が負担をするというような取引になるというふうに考えておるところでございます。」

という答弁をしており、運用基準案はこれと真っ向から反します。

(この「手数料分」というのは、やや不明確ですが、

「支払期日に満額が得られるような満期を設定するとか、場合によってはその手数料分を発注者が負担をするというような取引になる」

と言っていることからすると、

「支払期日に満額が得られるような満期を設定するか、

支払期日よりも後に満期を設定するのであれば、支払期日に満額が得られない分の割引手数料分を発注者が負担をするというような取引になる」

という意味だと解されますし、質問者の藤巻議員がこの答弁の前後でもっぱら金利(割引料)の話をしていることからしても、ここでの「手数料」は割引料のこととしか解せません。)

こんなふうに、条文の文言にも明らかに反し、国会答弁にも明らかに反するような解釈を運用基準で出すなんて、公取委は国会を何だと思っているのでしょうか?

もしこんな解釈を取りたかったなら、法案段階から、

「金銭及び手形以外の支払手段であつて当該製造委託等代金の支払期日までに当該製造委託等代金の額に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるものを使用すること」

というような、現行法の割引困難手形に引きずられたようなわけのわからない文言ではなく、端的に、

「金銭及び手形以外の支払手段であつて当該製造委託等代金の支払期日までに満期が到来しないものを使用すること」

あるいは、もう少し正確に、

「金銭及び手形以外の支払手段であつて当該製造委託等代金の支払期日までに当該支払手段の支払期日が到来しないものを使用すること」

とでもすべきだったのです。

当該製造委託等代金の額に相当する額の金銭」の支払を受けられるものであることは、一部現金、一部電子記録債権等で支払う場合もありうることからすると、むしろ入れる必要はありません。

(ここで、改正法の文言では、「当該製造委託等代金の額に相当する額の金銭」という文言があるために、一部現金、一部電子記録債権等の支払が、仮に電子記録債権等の支払期日が下請代金の支払期日より前であっても、一切認められなくなってしまうのではないか、という問題があることに気づきました。これくらいは解釈で何とかなりそうですが、面白いのでちょっと考えてみます。)

このままでは、国会軽視も甚だしいと思います。

運用基準案は、何としても修正されるべきでしょう。

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