ステマQ&A17番(インフルエンサーへの無償提供商品の映像使用)について
消費者庁のステマQ&Aの17番では、
「Q17 私はインフルエンサーをしています。X社のB商品の愛用者であることをSNS上で投稿しており、今後も投稿しようと思っていたところ、
X社から、B商品を無償でプレゼントされました。
その際、
「B商品を愛用いただきありがとうございます。今後もよろしければSNSに投稿してください。」
と伝えられましたが、
次から投稿を行う場合には、「広告」「PR」等と記載して投稿しなければならないのでしょうか。」
との質問に対して、
「A 運用基準では、
「事業者が第三者に対して自らの商品又は役務を無償で提供し、SNS等を通じた表示を行うことを依頼するものの、当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合」
には、当該表示(投稿)は、「事業者の表示」に当たらないとしています。
ただし、
事業者がB商品を無償で提供した目的、
無償提供の内容、
その後のX社との間のやり取りの内容、
X社との取引関係の有無
(例えば、将来の取引可能性の有無)
等の個別具体的な事情を踏まえ、
客観的な状況に基づき、あなたの自主的な意思による表示内容とは認められないと判断される場合があります。
したがって、元々B商品を気に入っており、当初から投稿しようと思っていたような場合にまで、「広告」「PR」等と記載して投稿をする必要はありませんが、
今後の投稿において、例えば、X社から無償で提供されたB商品を使っている画像を掲載する場合は、X社からB商品の提供を受けた旨を記載することは有益であると考えられます。」
と回答されています。
質問のほうは、そういうこともあるんだなぁ(=インフルエンサーって、頼みもしないのに商品がタダで送られてくるんだ)というかんじで、なかなか興味深いのですが、回答のほうは、なんとも煮え切りません。
このQ&Aは結局、
「次から投稿を行う場合には、「広告」「PR」等と記載して投稿しなければならないのでしょうか。 」
というのが質問なわけですが、これに対する答えが、要は、
「今後の投稿において、例えば、X社から無償で提供されたB商品を使っている画像を掲載する場合は、X社からB商品の提供を受けた旨を記載することは有益であると考えられます。」
ということで、「しなければならないのか」という質問に「有益である」と答えており、質問に正面から答えていません。
でもこれは、「有益だ」というにとどまるわけですから、回答の意味としては、「PR等と記載しなくてもいい」と読むほかないと思われ、それならそうと言い切るべきだと思います。
さらにいえば、
「元々B商品を気に入っており、当初から投稿しようと思っていたような場合にまで、「広告」「PR」等と記載して投稿をする必要はありません」
という部分は、文脈からして、
「X社からB商品を無償でプレゼントされ た後であっても、 元々B商品を気に入っており、当初から投稿しようと思っていたような場合にまで、「広告」「PR」等と記載して投稿をする必要はありません」
と補って読むべきでしょう。
というのは、無償でプレゼントをされる前の、
「X社のB商品の愛用者であることをSNS上で投稿しており、今後も投稿しようと思っていた」
という部分の「投稿」は、どう転んでもステマになるはずがなく、そもそも質問の対象ですらないからです。
しかもさらによくわからないのが、
「今後の投稿において、例えば、X社から無償で提供されたB商品を使っている画像を掲載する場合は、X社からB商品の提供を受けた旨を記載することは有益であると考えられます。」
という部分です。
この部分は、無償で提供されたまさにそのB商品(the Product B)の画像を掲載する場合のことを言っているとしか読めません。
つまり、同じ商品B(a Product B)であっても、自分で買ってきたものの画像を掲載する場合には、B商品(the Prodct B)の提供を受けたことを記載する必要はない(有益ではない)、ということのようです。
でも、動画に映っているまさにその商品が、無償でプレゼントされたthe Product Bであるのか、自分で買ってきたa Product Bであるのかの違いって、ステマ規制において何か意味があるんでしょうか?
私は、何も意味はないと思います。
ステマかどうかは、広告主が、
①「事業者が表⽰内容の決定に関与している」
かどうか、言い換えれば、
②「客観的な状況に基づき、投稿者の⾃主的な意思による表⽰内容とは認められない」
かどうか、であり(Q4で①と②が相互互換的だと明記されています)、
①(=②)に該当するのに、そこに映っているのが企業からのプレゼントでないからステマでない、
ということも、
①(=②)に該当しないのに、そこに映っているのが企業からのプレゼントだからステマになる、
ということもないはずだからです。
そもそも、回答で自由意思の考慮要素としてあげられている、
「事業者がB商品を無償で提供した目的、
無償提供の内容、
その後のX社との間のやり取りの内容、
X社との取引関係の有無
(例えば、将来の取引可能性の有無)」
のどこをみても、無償提供商品が映像で使われたかどうかはひっかかってこなそうに思います。
あえて想像力たくましく考えれば、
「事業者がB商品を無償で提供した目的」
のところで、設問における事業者の目的が、SNSでの「映(ば)え」を狙って商品を映してもらう「目的」であったことが、①(=②)をみとめる要素として考慮される、ということが思いつきますが、常識的に考えてインフルエンサーが商品をSNSで紹介するときにはその商品を映しながら紹介するでしょうから、X社から無償提供される前からSNSには商品Bが映っていたと想定するのが合理的だと思います(商品Bが一度も映らなかったというのは不自然です)。
ということは、プレゼント前のa Product Bであっても、プレゼント後のthe Prodct Bであっても、広告効果の点でもなんら異ならないというべきでしょう。
ということは、無償でプレゼントすることでそのthe Prodct BをSNSで映してもらう「目的」をX社が有していたと想定すること自体が、きわめて不自然に思われます。
というわけで、その商品自体(the Prodct B)をSNSで映してもらうという目的はなく、そうすると、上記各考慮要素のどれにもヒットしない、ということにならざるをえないと思われます。
(もちろん、素直に、好意的なレビューを期待して商品を無償提供したのなら、「事業者がB商品を無償で提供した目的」がレビュー内容に影響を与える目的であったことになり、ステマを肯定する要素になるのは当然ですし、変に想像力をたくましくするより、最初からそのように素直に考えるべきでしょう。)
以上のような小難しい理屈(厳密な論理的解釈)は抜きにして(笑)、もっとゆる~い頭でこのQ&Aの意図を忖度すると、たぶん消費者庁は、このインフルエンサーがSNSで、「こちらの商品B、X社さんからいただきました~💓」というようなコメントをしたら、ちゃんと利害関係を開示しているので、消費者に変な誤解を与えないので望ましいのだ、ということを漠然と考えていたのではないか、と思います。
でも、ここでまた小難しい理屈に戻ると、回答の「有益である」というのが、何にとって「有益」なのかが、いまひとつはっきりしません。
つまり、「有益である」の目的語はなにか、ということです。
文法的に未完成な単語が突如現れた時には、常に、その主語は何なのか、目的語は何なのかを、明示的に補わないといけません。
ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』風にいえば、あらゆる命題を、「〇〇は~である。」という要素命題に部会するイメージです。
そして、ここでの「有益である」というのが、ステマを防止するのに「有益である」というのは成り立たない、というのは上で説明したとおりです。
そうすると、どうも消費者庁は、表示の内容の決定への関与と、広告主との利害関係の開示とを、ごっちゃにしているのではないか、という疑惑がわいてきます。
つまり、表示内容の決定に関与したかどうかはさておき、「もらったものはもらったものだと断って映しなさい」と素朴に考えてしまっているのではないか、ということです。
結局ここでも、表示内容の決定への関与というベイクルーズ基準をステマで使ってしまったことの矛盾のうえに、素朴なバランス感覚が上乗せされて、理論的にはわけのわからない回答になっている、ということなのだろうと思います。
ここまでボタンの掛け違えが進んでくると、なんだか消費者庁さんお気の毒というか、哀れに思われてきます。
そもそもこの設問の趣旨は、
今まで好きでPRしてきただけなのに、プレゼントをもらったとたん、「広告」と表示しないといけないの?
ということでしょう。
そうなんだったら、素直な回答は、
これまでの延長で投稿をするかぎり、広告ではありません。
でしょう。
消費者庁の回答も、そういう趣旨なんだと思われ、でもそう言い切るのがはばかられるので(プレゼント後、投稿のトーンが突然絶賛にかわったらどうなのか、とか、プレゼント直前直後は従来の投稿の延長とはいえても未来永劫そうなのか、とか、考え出すときりがない)、「有益である」といった、なんとも歯切れの悪い回答になっているのだと思います。
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