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2025年3月

2025年3月30日 (日)

戻入(れいにゅう)による報酬の事後調整に関するフリーランス法パブコメと下請法ティーガイア勧告との矛盾

フリーランス法のパブコメ2-3-34に、

「・一般的に、長期の継続的契約の締結を目的とする業務の委託を行う場合においては、〔携帯電話の獲得業務みたいなものですかね〕

受託者に対して、長期の契約継続が見込める顧客との契約の締結を促す観点から、

契約から一定の期間内に当該契約が解除された場合には、委託契約において、既払いの報酬を戻入れすることを定める場合がございます。

・この場合、契約当初からその契約の中で、報酬の戻入れが定められていることから、当該報酬の戻入れは「報酬の額を減ずること」(本法5 条1 項2 号)、すなわち、「一旦、決定された報酬の額を事後的に減ずること」(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方(案)P30(ア))には該当しないという理解でよろしいでしょうか。」

という質問と、2-3-35に、

「特定受託事業者が顧客に販売した商品・サービスの提供期間の途中で、当該商品・サービス(の提供に関する契約)が解約された場合に、商品・サービスの代金の一部を顧客に返還することがあります。

これに伴い、特定業務委託事業者から特定受託事業者に当初支払った報酬について、

その一部を戻し入れること、およびその戻し入れ金額の算定方法を委託契約書等であらかじめ定めている場合、

あらかじめ定められた報酬支払条件に則り、報酬額が調整されるものであり、

「一旦、決定された報酬の額を事後的に減ずること」とされている報酬の減額には該当せず、

特定業務委託事業者の禁止事項である「特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること」(本法第5 条1 項2 号)には該当しないと解釈することで宜しいでしょうか。」

という似たような質問があり、これらに対して、

「御指摘のような場合が本法上問題となるかについては、

取引の実態も踏まえて個別の事例ごとに判断されますが、

業務委託時に、特定受託事業者に対し、定められた報酬が戻入の対象であることが明確にされており、

その具体的な金額又は算定方法が明示されているときは、

戻入をした後の金額が、業務委託時に定めた報酬の額であると考えられるため、

特定受託事業者の責めに帰すべき事由の有無を問わず、戻入を行ったとしても、報酬の減額(本法第5条第1項第2号)に該当しないと考えられます。

ただし、戻入した後の金額が、「特定受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い」といえる場合には、買いたたき(本法第5条第1項第4号)として本法上問題となるおそれがあります。」

と回答されています。

(立案担当者本107頁にも上記パブコメへの言及があります。)

他方で、下請法では、ティーガイアに対する2021(令和3)年6月23日勧告で、戻入金が違法な減額であるとされています。

この事件は、携帯電話の一次代理店であるティーガイアが、業務委託先である二次代理店に支払う報酬について、3か月ごとの評価で一定の水準に満たない場合に一定の算出方式で計算していた金額を事後的に減額していた、というものです。

でも、このフリーランスパブコメとティーガイアへの勧告って、矛盾するのではないでしょうか?

ティーガイア事件の担当官解説(公正取引851号86頁)では、

「当該戻入金は、発注時の条件表に明確に定められた本件業務の種類及び量当たりの単価に基づいて具体的に定められる手数料等の額を、その支払後、事後的に「減額」するものである。

これにより、例えば、平成30年9月に提供した本件業務の手数料等であれば、条件表に基づいて具体的に定められた額が同年10月末に支払われた後、その4か月後の平成31年2月末日に「減額」が行われ、いわば遡及適用された。

戻入金が差し引かれる可能性がある旨はティーガイアが下請事業者に対し発注時に交付した条件表に記載されていたものの、

当該下請事業者が戻入金を差し引かれる対象となるか否かは、当該下請事業者が運営する販売店の業務実績のみで決まるのではなく、

向こう3か月の間における他の二次代理店及び一次代理店が運営する販売店の業務実績も踏まえて電気通信事業者が判定する評価結果が一定未満であったか否かという基準によって事後的に決定されていた。

このため、発注時点において、当該下請事業者が戻入金を差し引かれる対象となるか否かは、当該下請事業者及びティーガイアの双方にとって予測不可能であった。

したがって、下請代金の額は戻入金を差し引く前の額であると認定された。」

「ティーガイアは、戻入金の条件については、あらかじめ自社と二次代理店との間で合意の上、定めたものであるとして、公正取引委員会による本件の公表に併せて同社のウェブサイトにおいて、

「代理店様との合意に従った手数料を期間中お支払することに加え、当該期間における代理店様の評価が一定の水準に満たないことが後刻判明した場合に、算式に従って戻入金の支払いをお受けすることをあらかじめ東海地区の代理店様との契約で合意していたことがあったものです。」

とプレスリリースしている。

しかし、仮にティーガイアと下請事業者との間に当該合意があったとしても、下請事業者の責めに帰すべき理由なく下請代金の額を減ずることは下請法に違反するものである。」

と解説されています。

下請法テキスト(令和6年11月版)p62にも、違法な減額の例として、

「㉕ 業務実績の評価結果を理由とした減額

親事業者L社は、電気通信事業者から受託する携帯電話の移動体通信サービス等に係る契約内容の説明、申込みの勧誘等の業務を下請事業者に委託しているところ、

下請事業者の業務実績に対する評価結果が一定の水準に満たなかった場合、

「戻入金」とする金額を下請代金の額から差し引くことにより、評価期間中の下請代金の額を減じていた。」

というのが挙げられています。

この例は、令和3年版から加わったものなので、ティーガイア事件を念頭に置いているものと思われます。

ティーガイア担当官解説は、

「これにより、例えば、平成30年9月に提供した本件業務の手数料等であれば、条件表に基づいて具体的に定められた額が同年10月末に支払われた後、その4か月後の平成31年2月末日に「減額」が行われ、いわば遡及適用された。」

といいますが、フリーランスパブコメのケースも、

契約から一定の期間内に当該契約が解除された場合には、委託契約において、既払いの報酬を戻入れすることを定める場合がございます。」

ということなので、遡及適用である点は同じでしょう。

次に、ティーガイア担当官解説は、

当該下請事業者が戻入金を差し引かれる対象となるか否かは、当該下請事業者が運営する販売店の業務実績のみで決まるのではなく、

ともいいますが、フリーランスパブコメの事例も、契約を途中解除するのは顧客のほうですから、戻入の有無はフリーランスの「業務実績」のみで決まるのではないといえ、この点も両者同じでしょう。

次に、ティーガイア担当官解説は、

「発注時点において、当該下請事業者が戻入金を差し引かれる対象となるか否かは、当該下請事業者及びティーガイアの双方にとって予測不可能であった。」

ともいいますが、顧客が途中解約するかどうかが「予測不可能」であることは、フリーランスパブコメの場合でも同じでしょう。

唯一違う点としては、ティーガイアでは、

「向こう3か月の間における他の二次代理店及び一次代理店が運営する販売店の業務実績も踏まえて電気通信事業者が判定する評価結果が一定未満であったか否かという基準によって事後的に決定されていた。」

というのがあり、ティーガイアでも二次代理店(下請事業者)でもない電気通信事業者(キャリア)の評価で戻入の有無が決まっていた、という点がありますが、担当官解説も、この事実は戻入が当事者双方にとって予測不可能であったこと(←この点はフリーランスパブコメも同じ)の理由として述べているだけであり、かかる電気通信事業者の判定が恣意的だとか、裁量があるとか、そいういったことを問題にしているのではなさそうです。

つまり、担当官解説に出ている理由付けをみるかぎり、ティーガイア勧告とフリーランスパブコメは、矛盾しているといわざるをえないと思います。

ちなみに、フリーランス法5条(遵守事項)は下請法のコピペですから、両法律で公取委が異なる解釈をとることは、お役所的発想からはまず考えられません。

では、もう少し冷静になって(冷静ですが。笑)、ティーガイア担当官解説を離れて、客観的に両者を区別する理由がないかを想像してみると、たとえば、

フリーランスパブコメの事例のほうは、個々の報酬債権ごとに減額の有無が短期解約の有無という客観的かつ一対一対応の理由で判定されるものであった、

のに対して、

ティーガイアのほうは、個々の債権の減額ではなくて、3か月まとめての報酬額の減額であり、しかも、減額理由が成績一般なので、減額理由と減額が一対一対応ではなかった、

ということがあるのかなぁ、と想像されます。

このように想像される理由の1つは、フリーランスパブコメ回答が、

「戻入をした後の金額が、業務委託時に定めた報酬の額である」

という解釈論を採用しているようにみえることです。

このようにいえるのは、3条書面(3条通知)に記載された個々の下請代金(業務委託料)が、戻入金の合意により書き換えられているからだ、と考えるのが素直なような気がします(われながらあまり説得力はないように思いますが、あくまで公取委の心中を忖度すると、ということです)。

あるいは、もっと根源的で野性的な(アニマルスピリット的で直感的な)価値判断として、

ティーガーアのように、成績全般を理由に、実際やった仕事の分まで減額されるのは、時代遅れのノルマ至上主義のようで、下請事業者がかわいそうだ、

というのに対して、

フリーランスパブコメのように、「受託者に対して、長期の契約継続が見込める顧客との契約の締結を促す」とい理由は納得できる、

というのがあるかもしれません。

長期契約を獲得するインセンティブを与えるのはOKだけど、成績を上げる(お尻をたたく)インセンティブを押し付けるのはだめだ(?)というところでしょうか。

私が弁護士1年目のとき、事務所のクライアントであった保険会社の担当者から、

「今、キャンペーンをやっているので、保険に入ってくれませんか。すぐに解約してもらってもいいので。」

という勧誘を受けたことがあります。

きっと担当者ごとにノルマのようなものがあって、ぺーぺーの弁護士である私にまで(ぺーぺーだからこそ?)勧誘してたのでしょうけれど、すぐに解約してもノルマにはカウントされる仕組みだったのでしょう。

「すぐ解約してもらってもいいから」という勧誘は、クレジットカードでも受けたことがあります(クライアントではありませんが)。

まだおぼこかった私は、世の中の裏側を見せられたようで、ある意味新鮮でしたが、もちろんこういう勧誘がされると、委託者としては困るわけです。

でも、仮にティーガイア事件における公取委の心中が上記の想像のとおりであったとしても、やはり、私はそのような理屈は筋が通らないと思います。

というわけで、やはりティーガイア事件は間違いであったと考えます。(フリーランスパブコメの考えが正しい。)

少なくとも、ティーガイアの事件が優越的地位の濫用になることは、絶対にないと思われます。

(もちろん、戻入の結果、買いたたきレベルになったら別ですが。)

さはさりながら、下請法で現にティーガイアのような事件があるわけですから、下請法で今後同じような戻入金に対する勧告事件があるかもしれないことは十分予想できますし、フリーランス法でも同様の事件がないとはかぎらないと思います。

フリーランス法では、詳細なパブコメやQ&Aが出ているので、これからも下請法に響いてくる見解が公取委からいろいろと出てくるのではないかと期待しています。

最後に、これはティーガイア事件担当官解説を書いた上瀧さんと、同解説を承認した上司の方の名誉のために言っておきたいのですが、この担当官解説はとても詳細で、公取委の考えていることがよくわかります。

だからこそ、私もこれだけ詳細に批判できるわけで、詳細な説明をしてもらえることの社会的意義というのは大きいと思います。

もしこれが、下請法テキストをなぞっただけの、とおりいっぺんの解説だったら、私も批判のしようがなかったでしょう。

実際、担当官解説とフリーランスパブコメを読み比べて、お尻を叩くノルマ至上主義は下請がかわいそうだけれど、短期解約をそそのかして手数料をかせぐ下請はけしからん、という価値判断は、わからないではありません。

でもそれは、2つの事案を比べて初めてわかることであり、私だってティーガイアの事件だけをみたら、こんなもんだろうと思ったかもしれません。

というわけで、法的な議論が発展していくためには、公取委の側からの積極的な情報発信が不可欠だと思います。

ティーガイア事件のような詳細な解説を書かれたことに、敬意を表したいと思います。

2025年3月29日 (土)

フリーランス厚労大臣指針の時点表記要件と元ネタ(職業安定法5条の4)との比較

先日、募集情報の時点の表記を要求するフリーランス法厚労大臣指針が問題であることについて書きました

その時にも、時点を書けとかいう奇妙な規制がいきなりフリーランス法で出てくるわけはなくって(役人の発想としてありえない)、きっとなにか元ネタがあるんだろうなぁと思ったら、ありました。

まず、政府の法令データベースで「正確かつ最新の内容」で検索すると、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)の5条の4(令和四年十月一日 施行)に、

「(求人等に関する情報の的確な表示)

第五条の四 公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者、労働者の募集を行う者及び募集受託者、募集情報等提供事業を行う者並びに労働者供給事業者は、

この法律に基づく業務に関して新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法

(以下この条において「広告等」という。)

により求人若しくは労働者の募集に関する情報又は求職者若しくは労働者になろうとする者に関する情報その他厚生労働省令で定める情報

(第三項において「求人等に関する情報」という。)

を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。

②労働者の募集を行う者及び募集受託者は、

この法律に基づく業務に関して広告等により労働者の募集に関する情報その他厚生労働省令で定める情報を提供するときは、

正確かつ最新の内容に保たなければならない。

③公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者、募集情報等提供事業を行う者並びに労働者供給事業者は、

この法律に基づく業務に関して広告等により求人等に関する情報を提供するときは、

厚生労働省令で定めるところにより正確かつ最新の内容に保つための措置を講じなければならない。」

とありました。

(ちなみに、『フリーランス・事業者間取引適正化等法』(立案担当者解説本)141頁にも職業安定法5条の4への言及があります。)

この5条の4第3項での厚労省令への委任(「厚生労働省令で定めるところにより」)を受けて、職業安定法施行規則4条の3(令和6年4月1日 施行)では、

「(法第五条の四に関する事項)

第四条の三 法第五条の四第一項の厚生労働省令で定める方法は、書面の交付の方法、ファクシミリを利用してする送信の方法若しくは電子メール等の送信の方法又は著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第八号に規定する放送、同項第九号の二に規定する有線放送若しくは同項第九号の五イに規定する自動公衆送信装置その他電子計算機と電気通信回線を接続してする方法その他これらに類する方法とする。

2 法第五条の四第一項の厚生労働省令で定める情報は、次のとおりとする。

一 自ら又は求人者、労働者の募集を行う者若しくは労働者供給を受けようとする者に関する情報

二 法に基づく業務の実績に関する情報

3 法第五条の四第二項の厚生労働省令で定める情報は、次のとおりとする。

一 自ら又は労働者の募集を行う者に関する情報

二 法に基づく業務の実績に関する情報

4 法第五条の四第三項の規定により、求人等に関する情報を提供するに当たつては、に掲げる措置を講じなければならない。

一 当該情報の提供を依頼した者又は当該情報に自らに関する情報が含まれる者から、当該情報の提供の中止又は内容の訂正の求めがあつたときは、遅滞なく、当該情報の提供の中止又は内容の訂正をすること。

二 当該情報が正確でない、又は最新でないことを確認したときは、遅滞なく、当該情報の提供を依頼した者にその内容の訂正の有無を確認し、又は当該情報の提供を中止すること。

三 次のイからヘまでに掲げる区分に応じ、当該イからヘまでに定める措置

イ 公共職業安定所、特定地方公共団体又は職業紹介事業者 

次に掲げるいずれかの措置

(1)求人者又は求職者に対し、定期的に求人又は求職者に関する情報が最新かどうかを確認すること。

(2)求人又は求職者に関する情報の時点を明らかにすること

ロ 法第四条第六項第一号に掲げる行為に該当する募集情報等提供の事業を行う者

次に掲げるいずれか措置

(1)労働者の募集に関する情報の提供を依頼した者に対し、当該労働者の募集が終了したとき又は当該労働者の募集の内容が変更されたときは、速やかにその旨を当該募集情報等提供事業を行う者に通知するよう依頼すること。

(2)労働者の募集に関する情報の時点を明らかにすること

ハ 法第四条第六項第二号に掲げる行為に該当する募集情報等提供の事業を行う者

次に掲げるいずれか措置

(1)労働者の募集に関する情報を定期的に収集し、及び更新し、並びに当該収集及び更新の頻度を明らかにすること。

(2)労働者の募集に関する情報を収集した時点を明らかにすること

ニ 法第四条第六項第三号に掲げる行為に該当する募集情報等提供の事業を行う者

次に掲げるいずれか措置

(1)労働者になろうとする者に関する情報の提供を依頼した者に対し、当該情報を正確かつ最新の内容に保つよう依頼すること。

(2)労働者になろうとする者に関する情報の時点を明らかにすること

ホ 法第四条第六項第四号に掲げる行為に該当する募集情報等提供の事業を行う者

次に掲げるいずれか措置

(1)労働者になろうとする者に関する情報を定期的に収集し、及び更新し、並びに当該収集及び更新の頻度を明らかにすること。

(2)労働者になろうとする者に関する情報を収集した時点を明らかにすること

ヘ 労働者供給事業者

次に掲げるいずれか措置

(1)労働者供給を受けようとする者又は供給される労働者に対し、定期的に労働者供給又は供給される労働者に関する情報が最新かどうかを確認すること。

(2)労働者供給又は供給される労働者に関する情報の時点を明らかにすること。」

と規定されています。

これをみると、情報の時点をあきらかにすべきとする職業安定法施行規則4条の3第4項中の各規定は、職業安定法5条の4第3項の規定によりもとめられている(「厚生労働省令で定めるところにより正確かつ最新の内容に保つための措置講じなければならない。」)措置と位置付けられていることがわかります。

これに対して、フリーランス厚労大臣指針(「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」令和6年5月31日厚生労働省告示第二百十二号)は、その冒頭で、

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号)第十五条の規定に基づき、

特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針を次のように定め、同法の施行の日(令和六年十一月一日)から適用する。」

とされていることからわかるように、フリーランス厚労省指針はフリーランス法15条を根拠にしています。

そして、フリーランス法15条は、

「(指針)

第十五条 厚生労働大臣は、

前三条

〔12条(募集情報の的確な表示)、

13条(妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮)、

14条(業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等)〕

に定める事項に関し、

特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な指針を公表するものとする。」

と規定しています。

つまり、職安法施行規則4条の3の時点表示義務は、職安法5条の4の委任にもとづく法的義務であるのに対して、フリーランス法厚労大臣指針は、その出自からして、法的拘束力のない「指針」にすぎない、という違いがあります。

それからもう1つの違いとして、職安法の時点表示義務は、あくまで選択的な措置であるとされていることです。

たとえば職安法施行規則4条の3第4項3号イでは、

「三 次のイからヘまでに掲げる区分に応じ、当該イからヘまでに定める措置

イ 公共職業安定所、特定地方公共団体又は職業紹介事業者 

次に掲げるいずれかの措置

(1)求人者又は求職者に対し、定期的に求人又は求職者に関する情報が最新かどうかを確認すること。

(2)求人又は求職者に関する情報の時点を明らかにすること。」

とされていて、時点表記は求人者または求職者への定期的確認と代替関係にあります。

最新の情報とするためには、(1)の、定期的に最新かどうかを確認するのがいいにきまってますから、(2)の時点表記はあくまで次善の策というべきでしょう。

時点表記を、「正確かつ最新の内容に保つための措置」(職安法5条の4第3項)といっていいのかは、考えてみればちょっと微妙です。

理屈のうえでは、時点を表記したって、「正確かつ最新の内容に保つ」ことにはならないのでは?という疑問がわくからです。

それでも、「正確かつ最新の内容に保つための措置」を厚労省令に委任することは法律に明記されているわけですから、委任の範囲を超えているというのもむずかしいように思います。

それに、時点表記をしておけば、あんまり古い情報を載せていると信用にかかわりますから、おのずとアップデートしようという誘因がはたらくので、「正確かつ最新の内容に保つ」のに役立つのだ、という理屈も成り立ちそうです。

さらに文言上は、「正確かつ最新の内容に保つための措置」であって、「正確かつ最新の内容に保つために必要な措置」というのでないことも、措置の内容をゆるやかに規定していいという根拠になりそうです。

これに対して、フリーランス法厚労大臣指針第2の4のほうは、

「4 募集情報に係る正確かつ最新の表示の義務特定業務委託事業者は、特定受託事業者の募集に関する情報を正確かつ最新の内容に保つに当たっては、次に掲げる措置を講ずる等適切に対応しなければならない。

・ 特定受託事業者の募集を終了した場合又は募集の内容を変更した場合には、当該募集に関する情報の提供を速やかに終了し、又は当該募集に関する情報を速やかに変更すること。

・ 広告等により募集することを他の事業者に委託した場合には、当該事業者に対して当該情報の提供を終了するよう依頼し、又は当該情報の内容を変更するよう依頼するとともに、他の事業者が当該情報の提供を終了し、又は当該情報の内容を変更したかどうか確認を行わなければならない。なお、情報の変更等を繰り返し依頼したにもかかわらず他の事業者が変更等をしなかった場合、特定業務委託事業者は法第12条違反となるものではない。

・ 特定受託事業者の募集に関する情報を提供するに当たっては、当該情報の時点を明らかにすること。」

という書き方であり、時点表記が他の2つの措置と代替関係にある、というわけでもありません。

(厚労省の見解によれば、3つの措置はいずれも例示ですが。)

というわけで、時点表記に関するフリーランス法厚労大臣指針と元ネタの職安法施行規則4条の3を比べると、

・フリーランス法厚労大臣指針のほうは、法的拘束力のない指針であるのに対して、職安法施行規則4条の3の時点表記は法的義務である。

・ただし、職安法施行規則の時点表記義務は、定期的な確認と代替的な義務である。

というちがいがあることがわかりました。

ですが、職安法施行規則の文言だけをまねて、結果的に、全然違うものにしてしまう(代替的ではない)のは、いかがなものかという気がします。

2025年3月21日 (金)

フリーランス厚労大臣指針の法的拘束力

フリーランス厚労大臣指針(「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」(令和6年厚生労働省告示第二百十二号))の法的拘束力の有無について整理しておきます。

結論からいうと、フリーランス厚労大臣指針には法的拘束力はないと考えられます。

(いうまでもないことですが、指針がカバーしている、フリーランス法12条~14条は、法的拘束力があります。法的拘束力があるのは法律であって指針ではない、ということです。)

フリーランス厚労大臣指針は、冒頭に、

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号)第十五条の規定に基づき、

特定業務委託事業者が

募集情報の的確な表示、

育児介護等に対する配慮

及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題

に関して講ずべき措置等

に関して適切に対処するための指針を次のように定め、

同法の施行の日(令和六年十一月一日)から適用する。」

とあるとおり、フリーランス法15条を根拠にしています。

そして、フリーランス法15条は、

「(指針)

第十五条

厚生労働大臣は、前三条

〔注・12条(募集情報の的確な表示 ) 、

13条(妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮 )、

14条(業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等 )〕

に定める事項に関し、特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な指針を公表するものとする。」

と定めています。

つまり、フリーランス法15条で厚労大臣に指針の公表が義務付けられており(「ものとする」)、その義務を履行するために指針を公表したのだということが、指針の冒頭で述べられているわけです。

けっして、指針の法的拘束力(あるとすれば。ありませんが)の根拠がフリーランス法15条にある、ということではありません。

なお、指針の発出主体は厚労省ではなく、厚労大臣です。

フリーランス厚労大臣指針の形式は、「告示」です。

そこで、告示の法的拘束力が問題になりますが、国家行政組織法14条1項では、告示について、

「各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。」

と定めています。

告示の中には、

法源としての命令(行政機関が定立する法)に該当するもの(法規としての性質を持つもの)と、

そうでないもの

があります(宇賀『行政法概説Ⅰ』8頁)。

たとえば、固定資産税評価基準(昭和38年自治省告示第百五十八号。根拠は地方税法388条1項)は、法的拘束力がみとめられています(千葉地判昭和57年6月4日、東京地判平成2年12月20日、最判平成25年7月12日)。

根拠の地方税法388条1項では、

「(固定資産税に係る総務大臣の任務)

第三百八十八条 総務大臣は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)を定め、これを告示しなければならない。この場合において、固定資産評価基準には、その細目に関する事項について道府県知事が定めなければならない旨を定めることができる。」

と規定されており、「固定資産税評価基準」が「固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続」であることがあきらかにされています。

いろいろと理由付けはありうるのでしょうけれど、「固定資産の評価の基準」である以上は、拘束力がないと意味がない(基準たりえない)、というのが法的拘束力がみとめられる根本的な理由なのでしょう。

次に、中学校学習指導要領(平成20年文部科学省告示第28号。根拠は学校教育法48条および学校教育法施行規則74条)も、法的拘束力がみとめられています(最大判昭和51年5月21日〔旭川学力テスト事件〕、福岡高判昭和58年12月24日〔伝習館高校事件〕とその上告審の最判平成2年1月18日)。

中学校学習指導要領の根拠規定である学校教育法48条では、

「第四十八条

中学校の教育課程に関する事項は、第四十五条及び第四十六条の規定並びに次条において読み替えて準用する第三十条第二項の規定に従い、文部科学大臣が定める。」

と規定されており、学校教育法施行規則74条では、

「第七十四条

中学校の教育課程については、この章に定めるもののほか、教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する中学校学習指導要領によるものとする。」

と規定されており、中学校学習指導要領が、中学校の「教育課程の基準として」さだめられていることがわかります。

これも、「教育課程の基準」である以上は、拘束力がって当然だ、というのが根本的な理由なのでしょう。

われわれになじみのある「不公正な取引方法」(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)。いわゆる一般指定。法的根拠は独禁法2条9項6号および72条)は、もちろん法的拘束力があります。

これらに対して、「二酸化窒素に係る環境基準について」(昭和53.7.11環境省告示38号。根拠法は環境基本法16条1項)は、法的拘束力はないと解されています(東京高判昭和62年12月24日)。

この基準の根拠法である環境基本法16条1項では、

「第十六条 政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。」

とされており、あくまで「望ましい基準」なので、法的拘束力はないのも当然といえます。

また、前掲宇賀『行政法概説Ⅰ』10頁では、

「町または字の区域の変更の告示(地方自治法260条2項)のように、法規でも行政行為でもなく事実を周知するためのものもある。」

とされています。

たしかに、根拠法である地方自治法260条2項をみると、

「第二百六十条 

市町村長は、政令で特別の定めをする場合を除くほか、市町村の区域内の町若しくは字の区域

新たに画し若しくはこれを廃止し

又は町若しくは字の区域若しくはその名称を変更しようとするときは、

当該市町村の議会の議決を経て定めなければならない。

② 前項の規定による処分をしたときは、市町村長は、これを告示しなければならない。」

と規定されており、町・字の区域の変更は、市町村議会決議を経て市町村長がおこなうものであり、市町村長の告示はあくまでそのような処分を周知するに過ぎないものだ、と理解できます。

そのほか、市町村の選挙管理委員会による投票所の告示は、その根拠規定である公職選挙法41条1項をみると、

「(投票所の告示)

第四十一条 市町村の選挙管理委員会は、選挙の期日から少くとも五日前に、投票所を告示しなければならない。」

と規定されており、もちろんこれは法規ではなく、事実を広く知らせるためのものであることがわかります。

そのほかの告示の例として、貨物自動車運送事業法7条(緊急調整地域の指定)では、

「(緊急調整措置)

第七条 国土交通大臣

特定の地域において

一般貨物自動車運送事業の供給輸送力

(以下この条において単に「供給輸送力」という。)

が輸送需要量に対し著しく過剰となっている場合であって、

当該供給輸送力が更に増加することにより、

第三条の許可を受けた者

(以下「一般貨物自動車運送事業者」という。)

であって

その行う貨物の運送の全部又は大部分が当該特定の地域を発地又は着地とするものの相当部分について事業の継続が困難となると認めるときは、

当該特定の地域を、

期間を定めて

緊急調整地域として指定することができる。

2 国土交通大臣は、

特定の地域間において供給輸送力

(特別積合せ貨物運送に係るものに限る。)

が輸送需要量に対し著しく過剰となっている場合であって、

当該供給輸送力が更に増加することにより、

専ら当該特定の地域間において特別積合せ貨物運送を行っている一般貨物自動車運送事業者の相当部分について

事業の継続が困難となり、

かつ、

当該特定の地域間における適正な特別積合せ貨物運送の実施が著しく困難となると認めるときは、

当該特定の地域間を、

期間を定めて

緊急調整区間として指定することができる。

3 前二項の規定による指定は、告示によって行う。」

と規定されていますが、これなんかも、告示は法規ではなく(法的拘束力があるのは1項と2項の「指定」のほう)、あくまで「指定」という行政処分があった事実を広く一般に知らせるものであるといえます。

このように「告示」といってもさまざまである点について、有斐閣の『法律学小辞典』では、「告示」の説明として、

「公の機関が、必要な事項を公示する行為又はその行為の形式。〔中略〕

行為の意味での告示は、

法規命令〔注・国民の権利義務に関する法規範を内容とする、行政機関が制定する法規範命令〕、

行政規則〔注・行政機関の定立する一般的定めのうち法規たる性質を有しないもの〕、

一般処分〔注・不特定多数の人を対象とする行政行為〕、

事実行為

など様々の性質のものを含んでおり、その法的性質は個別的に判定されねばならない」

とされています。

「個別的に判定」というだけではいかにも心もとないですが、要は、個々の告示(行為の意味での告示)の根拠規定を読めばそれが法的拘束力のあるものなのかどうかがだいたいわかる、といえます。

別の言い方をすれば、告示が法的拘束力を持つのは、根拠法が法的拘束力を持つ告示を発出する権限を告示の発出権者にあたえている場合であるといえます。

裏から言えば、告示に「~しなければならない。」とか、「~するものとする。」とか書いてあっても、それだけではその告示に法的拘束力があるのかどうかはわからない、ということです。

場合によっては、告示のタイトルに「指針」とあるから、拘束力のないたんなる指針なのだろう、とかいったことも考慮されるでしょう。

民法的な表現でいえば、発出者の意思表示の解釈の問題だといえます。

もちろん、告示発出権限がないのに発出すれば、権限踰越が問題になります。

少し実質的な言い方をすると、憲法41条では、

「第四十一条

国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」

とされているので、国民の権利義務を制限するには国会の法律によらなければならないわけですから、法律の根拠なく国民を拘束できる告示を出すことができるはずがありません。

だいぶ前置きが長くなりましたが、ではフリーランス厚労大臣告示はどうなのかといえば、前述のとおり、その根拠規定であるフリーランス法15条は、

「(指針)

第十五条 厚生労働大臣は、前三条

〔注・12条(募集情報の的確な表示 ) 、

13条(妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮 )、

14条(業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等 )〕

に定める事項に関し、特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な指針を公表するものとする。」

と定めています。

これを読むと、フリーランス厚労大臣指針は、あくまでフリーランス法12~14条に「適切に対処するため」の「指針」だ、ということなので、法的拘束力はない、ということになるのだと思われます。

ちなみに、「適切に対処するために必要な指針」で政府法令データベースをキーワード検索すると、職業安定法48条の、

「(指針)

第四十八条 厚生労働大臣は、第三条、第五条の三から第五条の五まで、第三十三条の五、第四十二条、第四十三条の八及び第四十五条の二に定める事項に関し、職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者が適切に対処するために必要な指針を公表するものとする。」

とか、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」10条の、

「(指針)

第十条 厚生労働大臣は、第五条から第七条まで及び前条第一項から第三項までの規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。」

とかがヒットしたりしますので、このあたりが元ネタでしょう。

われわれにもなじみの深い景表法上の管理措置指針(「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(平成26年11月14日内閣府告示第276号))については、その根拠規定である景表法22条で、

「(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置)

第二十二条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、景品類の提供又は表示により不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう、景品類の価額の最高額、総額その他の景品類の提供に関する事項及び商品又は役務の品質、規格その他の内容に係る表示に関する事項を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。

2 内閣総理大臣は、前項の規定に基づき事業者が講ずべき措置に関して、適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において単に「指針」という。)を定めるものとする。

3 内閣総理大臣は、指針を定めようとするときは、あらかじめ、事業者の事業を所管する大臣及び公正取引委員会に協議するとともに、消費者委員会の意見を聴かなければならない。

4 内閣総理大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

5 前二項の規定は、指針の変更について準用する。」

と規定されています。

この「適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」という書きぶりからすると、管理措置指針もあくまで、それを守れば22条1項の措置の適切かつ有効な実施を図れるという指針に過ぎず、それ自体に法的拘束力はない、といえそうです。

余談ですが、この手の指針の例をさがすために再び政府法令データベースで、「『指針』」(かぎかっこつき)でキーワード検索すると、古いところでは大規模小売店舗立地法4条に、

「(指針)

第四条 経済産業大臣は、

関係行政機関の長に協議して、

大規模小売店舗の立地に関し、

その周辺の地域の生活環境の保持を通じた小売業の健全な発達を図る観点から、

大規模小売店舗を設置する者が配慮すべき事項に関する指針(以下「指針」という。)を定め、

これを公表するものとする。

2 指針においては、次に掲げる事項について定めるものとする。

一 大規模小売店舗を設置する者が配慮すべき基本的な事項

二 大規模小売店舗の施設

(店舗及びこれに附属する施設で経済産業省令で定めるものをいう。次条第一項において同じ。)

の配置及び運営方法に関する事項であって、

次に掲げるもの

イ 駐車需要の充足その他による大規模小売店舗の周辺の地域の住民の利便及び商業その他の業務の利便の確保のために配慮すべき事項

ロ 騒音の発生その他による大規模小売店舗の周辺の地域の生活環境の悪化の防止のために配慮すべき事項

という規定があったりして、これを根拠に、「大規模小売店舗を設置する者が配慮すべき事項に関する指針(平成19年2月1日経済産業省告示16号)」がさだめられています。

この大店法4条の指針は、「配慮すべき事項に関する指針」という表現からすると、それ自体に法的拘束力はなさそうにもみえますが、この指針が大店法でどのように扱われているかというと、同法9条1項で、

「(都道府県の勧告等)

第九条 都道府県は、前条第七項の規定による届出〔=大規模小売店舗新設の届出〕又は通知の内容が、同条第四項の規定により都道府県が述べた意見を適正に反映しておらず、当該届出又は通知に係る大規模小売店舗の周辺の地域の生活環境に著しい悪影響を及ぼす事態の発生を回避することが困難であると認めるときは、市町村の意見を聴き、及び指針を勘案しつつ、当該届出又は通知がなされた日から二月以内に限り、理由を付して、第五条第一項又は第六条第二項の規定による届出をした者に対し、必要な措置をとるべきことを勧告することができる。」

とされていることからもわかるように、都道府県が勧告をする際に「勘案」されるだけです。

たしかに、大店法9条4項では、

「4 都道府県から第一項の規定による勧告を受けた者は、当該勧告を踏まえ、都道府県に、必要な変更に係る届出を行うものとする。」

とされているので、勧告にしたがわないと一定の届出義務が生じますが、これはあくまで勧告の効果であって指針の効果ではないというべきでしょうし、9条7項では、

「7 都道府県は、第一項の規定による勧告をした場合において、当該勧告に係る届出をした者が、正当な理由がなく、当該勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。」

とされているので、勧告に違反すると公表という不利益を受けるのですが、これも、指針違反の効果ではなく勧告違反の効果というべきでしょう。

なお、大店法4条の「配慮」という言葉だけから指針の法的拘束力を否定するのは妥当ではないと思われます。

たとえば、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」8条では、

「(事業者における障害を理由とする差別の禁止)

第八条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。」

と規定されていて、合理的配慮が義務として規定されています。

(ちなみに障害者差別解消法の合理的配慮というのは、障害者権利条約2条で定義されるreasonable accomodation (necessary and appropriate modification and adjustments not imposing a disproportionate or undue burden, where needed in a particular case, to ensure to persons with disabilities the enjoyment or exercise on an equal basis with others of all human rights and fundamental freedoms)の訳語なので、日本語の「配慮」のような、”察し気配り”のようなニュアンスはありません。)

要は、「配慮」という文言だけで義務か義務でないかを判断することはできない、ということです。

また話がそれてきたのでフリーランス厚労大臣指針に話を戻して話をまとめると、同指針は、

①根拠法であるフリーランス法があくまで「指針」であることを示していること、

②同指針のタイトルに「指針」とあること、

③形式が告示であること、

④内容も事業者への義務付けとみられるものがないこと、

などの理由から、法的拘束力がないたんなる指針であるとみてよいでしょう。

④の内容面については、たとえば、「「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(案)」等に対する意見の概要及びそれに対する考え方」(フリーランスパブコメ回答)3-1-23(133頁)では、

「募集情報を正確かつ最新の内容に保つために講ずべき措置として挙げているものは、あくまで例示

であるとされていることは、同指針があくまで指針であることを示しているといえそうです。

(ちなみに、指針第2の4(募集情報の的確な表示)の冒頭には、

「特定業務委託事業者は、特定受託事業者の募集に関する情報を正確かつ最新の内容に保つに当たっては、次に掲げる措置を講ずる適切に対応しなければならない。」

と記載されていて、この「等」という部分に例示であるという趣旨を読み込むことも可能だと思います。)

また同じパブコメの個所で続けて、

「指針において例示されている措置以外の方法で、募集情報を正確かつ最新の内容に保つ必要があります。」

とされているのは、フリーランス法12条2項の、

「2 特定業務委託事業者は、広告等により前項の情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない。」

という部分にあくまで法的拘束力があるのだ、ということを言い表しているものと理解できます。

というわけで、法的拘束力があるのはあくまで法律であって、指針ではない(指針の文言をぎりぎり詰めても意味がないこともある)、という点には留意が必要だと思います。

2025年3月18日 (火)

フリーランスへの再委託における支払期日の例外(4条3項)の対価関連性要件について

フリーランス法4条3項では、

「3 前二項の規定〔注・フリーランスへの報酬支払は給付受領日から60日以内とする規定〕にかかわらず、

他の事業者

(以下この項及び第六項において「元委託者」という。)

から業務委託を受けた特定業務委託事業者が、

当該業務委託に係る業務

(以下この項及び第六項において「元委託業務」という。)

の全部又は一部について

特定受託事業者に再委託をした場合

(前条第一項の規定により再委託である旨、元委託者の氏名又は名称、元委託業務の対価の支払期日

(以下この項及び次項において「元委託支払期日」という。)

その他の公正取引委員会規則で定める事項を特定受託事業者に対し明示した場合に限る。)

には、

当該再委託に係る報酬の支払期日は、

元委託支払期日から起算して三十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。」

と規定しています。

この、「再委託をした場合」の意味について、フリーランスFAQ問49に、

「「再委託をした場合」に該当するかはどのように判断されるのでしょうか。」

という設問があり、

「答 特定業務委託事業者が元委託者から受託した元委託業務と、特定受託事業者に委託した業務との間に業務の関連性及び対価の関連性が認められる場合には「再委託をした場合」に該当します。

業務の関連性については、特定業務委託事業者が特定受託事業者に委託した業務が元委託業務に含まれる場合に認められます。

対価の関連性については、特定業務委託事業者から特定受託事業者に支払われる報酬が、元委託者から特定業務委託事業者に対して支払われる元委託業務に係る報酬に関連して定められている場合に認められます。

なお、特定業務委託事業者が同一の特定受託事業者に委託している業務が複数ある場合には、それぞれの業務について業務の関連性及び対価の関連性が判断されます。

また、特定業務委託事業者が一つの元委託業務を切り分けて、複数の特定受託事業者に委託する場合は、それぞれの特定受託事業者に委託されている業務について、業務の関連性及び対価の関連性が判断されます。」

と回答されています。

では、ここでいう、

「特定業務委託事業者から特定受託事業者に支払われる報酬が、元委託者から特定業務委託事業者に対して支払われる元委託業務に係る報酬に関連して定められている場合」

というのは、具体的にはどういう場合なのでしょうか。

まず、このFAQはあくまでFAQであって、法律でもなければガイドラインでもありません。

ですので、このFAQにより、フリーランス法4条3項にあらたに「対価の関連性」(対価関連性要件)という要件を付け加えられたものと解釈することができないことは、いうまでもありません。

つまり、基本はあくまで「元委託業務・・・の全部又は一部について特定受託事業者に再委託をした場合」にあたるかどうかです。

そして、「再委託」という言葉にフリーランス法上の定義はありませんので(だからFAQがあるわけですが)、「再委託」という用語の常識的な意味で解釈すればよい、というのが基本でしょう。

とはいえ、「再委託」と広辞苑で引いても出てきませんから、もう少し近いところで下請法をあたってみると、下請法2条9項(トンネル会社規制)では、

「9 資本金の額又は出資の総額が千万円を超える法人たる事業者〔=実質親事業者〕から役員の任免、業務の執行又は存立について支配を受け、かつ、その事業者から製造委託等を受ける法人たる事業者〔=トンネル会社〕が、

その製造委託等に係る製造、修理、作成又は提供の行為の全部又は相当部分について再委託をする場合

(第七項第一号又は第二号に該当する者がそれぞれ前項第一号又は第二号に該当する者に対し製造委託等をする場合及び第七項第三号又は第四号に該当する者がそれぞれ前項第三号又は第四号に該当する者に対し情報成果物作成委託又は役務提供委託をする場合を除く。)

において、

再委託を受ける事業者〔=トンネル会社〕が、役員の任免、業務の執行又は存立について支配をし、

かつ、

製造委託等をする当該事業者〔=実質親事業者〕から直接製造委託等を受けるものとすれば前項各号のいずれかに該当することとなる事業者であるときは、

この法律の適用については、再委託をする事業者〔=トンネル会社〕は親事業者と、再委託を受ける事業者〔=下請事業者〕は下請事業者とみなす。」

と規定されています。

ここでは、業務の関連性(業務関連性要件)は当然必要だと解されますが、対価関連性要件については要求されていないようにみえます。

実際、対価関連性がトンネル会社規制で要求されないのは当然です。

というのは、トンネル会社規制では、トンネル会社が受注する注文と、トンネル会社が発注する(下請事業者が受注する)注文との間には、1対1の対応関係がなくてもいいからです。

これに対して、フリーランス法における再委託は、元委託業務と再委託業務が1対1の関係にあるか、少なくとも、特定の再委託業務をさかのぼって特定の1つの元委託業務にたどりつけることが必要です。

このことは、上記FAQの49番に、

「なお、特定業務委託事業者が同一の特定受託事業者に委託している業務が複数ある場合には、それぞれの業務について業務の関連性及び対価の関連性が判断されます。

また、特定業務委託事業者が一つの元委託業務を切り分けて、複数の特定受託事業者に委託する場合は、それぞれの特定受託事業者に委託されている業務について、業務の関連性及び対価の関連性が判断されます。」

とされていることからあきらかです。

このように、元委託業務と再委託業務との間の関連性を要求することは、フリーランス法4条3項の再委託の支払期日の例外が、特定業務委託者(発注者)の資金繰りに配慮する趣旨であることからも妥当な解釈といえます。

またフリーランス法4条3項の文言も、

「元委託者・・・から業務委託を受けた特定業務委託事業者が、当該業務委託に係る・・・元委託業務・・・の全部又は一部について特定受託事業者に再委託をした場合」

としていて、元委託業務が、フリーランスへの再委託者が元委託者から受託した、まさにその「当該業務委託に係る」ものであるという規定ぶりであることからも、すなおな解釈であるといえます。

これに対して下請法2条9項のトンネル会社規制は、

「〔実質親事業者〕から役員の任免、業務の執行又は存立について支配を受け、かつ、〔実質親事業者〕から製造委託等を受ける〔トンネル会社〕が、その製造委託等に係る製造、修理、作成又は提供の行為の全部又は相当部分について再委託をする場合」

という規定ぶりであり、この「相当部分」は、トンネル会社が実質親事業者から受託する業務全体について(たとえば過半数とか)判断されることになっているので、トンネル会社の個々の受託業務とトンネル会社から下請事業者への個々の委託業務との対応関係はあまり問題にする必要がありません。

というわけで、同じ「再委託」という文言を使う下請法のトンネル会社規制での解釈を手がかりにフリーランス法の「再委託」の意味を探る(対価関連性要件の意義ないし是非を問う)道はあきらめるほかなさそうです。

そのほか、政府の法令検索データベースで「再委託」で検索すると、たくさん例が出てきますが、対価関連性要件が必要になりそうな文脈で「再委託」という文言が使われているのは、ざっとみたかぎり、ありませんでした。

ちなみに建設業法24条の3第1項には、

「(下請代金の支払)
第二十四条の三 

元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けときは、

当該支払の対象となつた建設工事を施工した下請負人に対して、

当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、

当該支払を受けた日から一月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない。」

という、フリーランス法4条3項と似たような規定があります(支払いを早める方向の規定なので、フリーランス法4条3項とは逆ですが)。

このように、他の法令にはなかなか手がかりがないので、特定業務委託者(発注者)の資金繰りに配慮するというフリーランス法4条3項の趣旨に立ち返って実質論一本で考えてみると、「再委託」に対価関連性要件を要求するのは、あながち不合理なことではないように思います。

というのは、特定業務委託者(発注者)の資金繰りに配慮する必要があるのは、特定業務委託者(発注者)が、特定業務受託者(フリーランス)への支払を、元委託事業者からの報酬の中から支払おうとしている場合であると考えられるからです。

ひらたくいえば、「受け取ったものから支払う」という関係です。

でもそうすると、FAQ49番の、

「特定業務委託事業者から特定受託事業者に支払われる報酬が、元委託者から特定業務委託事業者に対して支払われる元委託業務に係る報酬に関連して定められている場合」

というのを、あまり厳格に解釈するのは疑問です。

たとえば、特定業務委託者(発注者)が、元委託者から受注した業務をフリーランスに丸投げする場合に、フリーランスへの報酬を元委託者から受け取る報酬の8割と定めるような場合は、あきらかに「元委託業務に係る報酬に関連して定められている」に該当するといってよいでしょう。

(なお説明の便宜上、あるいは社会的実態にかんがみて、フリーランスへの発注額は特定業務委託者が決めると考えておきます。)

つまり、発注者が、受領報酬額の何%と明確に意識して、フリーランスに再委託する場合です。

ですが、発注者が、明確に受領報酬の何%と意識して再委託の報酬を算定していなくても、自分の手元にのこる利益を意識しながらフリーランスには世間相場で発注する、ということもありうると思います。

そして、このように結果的に世間相場で発注していても、発注者が、自分が持ち出しにならないように意識しながらフリーランスへの発注額を決めている場合もまた、

「特定業務委託事業者から特定受託事業者に支払われる報酬が、元委託者から特定業務委託事業者に対して支払われる元委託業務に係る報酬に関連して定められている場合」

に該当すると考えてよいように思います。

というのは、フリーランスへの発注者の資金繰りへの配慮という趣旨からすれば、受領報酬額を代入すれば自動的にフリーランスへの報酬が決まるような明確な算定式にもとづくものでなくても、赤字にならないように配慮しながらフリーランスへの発注額を決めているという場合であれば、発注者は保護されるべきと考えられるからです。

逆に、フリーランスへの発注者にフリーランスへの発注料金の「料金表」みたいなものがあって、その料金表にしたがって再委託されていて、個々の受託業務についてはフリーランスへの発注者は赤字になることもある、というような場合だと、

「特定業務委託事業者から特定受託事業者に支払われる報酬が、元委託者から特定業務委託事業者に対して支払われる元委託業務に係る報酬に関連して定められている場合」

には該当しないように思われます。

逆に言えば、それくらい対価関連性が薄い場合をのぞけば、対価関連性要件は原則として認められると解するのが妥当だと思います。

なお、

「特定業務委託事業者から特定受託事業者に支払われる報酬が、元委託者から特定業務委託事業者に対して支払われる元委託業務に係る報酬に関連して定められている場合」

というのを素直に読むと、まず、

「元委託者から特定業務委託事業者に対して支払われる元委託業務に係る報酬」

というのが決まっていて、それに

関連して」、

あとから

「特定業務委託事業者から特定受託事業者に支払われる報酬」

が「定められている場合」、というのが思い浮かびますが、この順番は逆でもよくて、まずフリーランスへの発注者がフリーランスから見積もりをとって、その見積額に自分の利益を上乗せして元委託者に見積もりを出す、というのでも、

「特定業務委託事業者から特定受託事業者に支払われる報酬が、元委託者から特定業務委託事業者に対して支払われる元委託業務に係る報酬に関連して定められている場合」

に該当すると考えてよいと思います。

少なくとも、そのような場合もフリーランス法4条3項が想定している再委託の典型例の1つであることはあきらかでしょう。

しょせん、FAQはFAQなのです。

2025年3月 6日 (木)

ステマQ&A13番(「このサイトはプロモーションを含みます。」との表記)について

ステマQ&Aの13番では、

「Q13 アフィリエイト広告について、アフィリエイトサイトの冒頭に、

「このサイトはアフィリエイト広告を利⽤しています。」、

「このサイトはプロモーションを含みます。」

等と表⽰していれば、「事業者の表⽰」であることが明瞭となっていると考えてよいですか。」

との質問に対して、

「A アフィリエイトサイトの表⽰内容全体からみて、⼀般消費者にとって「事業者の表⽰」であることが明瞭となっているかどうかが重要となります。 したがって、アフィリエイトサイトの冒頭に、「このサイトはアフィリエイト広告を利⽤しています。」等と記載がされていても、⽂字のサイズや⾊なども踏まえ、⼀般消費者にとって、「事業者の表⽰」であることが明瞭となっていることが必要です。

また、アフィリエイトサイト内の⼀部に、「事業者の表⽰」ではないと⼀般消費者に誤認されるおそれがある表⽰

(例えば、専門家の客観的な意⾒のように記載されているものの、実際には、当該専門家に報酬を⽀払ってコメントを依頼して
おり「事業者の表⽰」に当たるもの)

が含まれている場合には、その付近に

「○○社から○○先⽣に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。」

といった記載をするなど、当該⼀部を⾒ただけであっても、⼀般消費者にとって、「事業者の表⽰」であることが明瞭となっている必要があります。」

と回答されています。

でも、実務的な観点からは、この設問の一番のポイントは、

「このサイトはプロモーションを含みます。」

というような、ぜんぶではないけれど一部に広告もありますよ、というような表記を冒頭に包括的にするのでもよいのか、という点なのではないでしょうか。

この点がスルーされているのはいかにも残念ですが、だからといって、この設問をもって、この点が問題視されないと解釈することはできないでしょう。

具体的な表示物を見てみないと前提に誤解があるかもしれないのですが、

「アフィリエイトサイトの冒頭に」

書く表記であることが前提のようなので、もしこのアフィリエイトサイトに、アフィリエイト広告とそうでない記事が混在しているのであれば、冒頭に「含みます」と書くのでは不十分だと思います。

どれがアフィリエイト広告でどれがそうでないのかを区別できる必要があることは、いうまでもありません。

もしこのような表記ですませているアフィリエイトサイトがあるのであれば、即刻改めるべきです。

次に、もしこのアフィリエイトサイトの記事全部がアフィリエイト広告である場合に「含みます。」という表記をするのは、どうでしょうか。

私はそれもダメだと思います。

なぜなら、具体的に特定の記事がアフィリエイト広告なのかどうか、消費者には判断がつかないからです。

(アフィリエイトサイト運営者は、ぜんぶアフィリエイト広告だと知っているわけですが、そんなことはそとからみてもわかりません。)

なので、「⽂字のサイズや⾊など」を云々するまえに、「『含みます』ではどれが広告なのか特定できないので認められません。」と、はっきり回答すべきだったのではないかと思います。

なお、これと似ているけれど違うのは、動画に「プロモーションを含みます。」という表記がある場合です(Q&A15番)。

Q&Aの15番では、

「Q15 動画において「事業者の表⽰」である旨の表⽰を⾏う場合に、動画の冒頭に「広告」、「この動画はプロモーションを含みます。」などと表⽰していれば、事業者の表⽰であることが明瞭となっていると考えてよいですか。」

との質問に対して、

「A 動画の場合、⼀般消費者が途中から視聴する場合も考えられるため、冒頭に「広告」などと表記するだけでは、当該表記を⾒逃すおそれがあります。したがって、事案によっては、動画の冒頭に「広告」と表⽰していても、表⽰内容全体から、⼀般消費者にとって「事業者の表⽰」であることが明瞭となっていないと判断される場合があります。

画⾯上に常に「広告」と表⽰するなど、動画全体を通して「事業者の表⽰」であることが明瞭となるようにしておくことが望ましいと考えられます。」

とだけ回答されていて、「含みます」という表現自体は論点にはなっていませんが、1つの独立した動画の場合にはその中でどの部分が広告でどの部分が広告ではないなどと区別することは不可能かつ無意味ですから、「含みます」という表記で、全体として広告だという意味が伝わるといってよいと思います。

でも、13番において、もしアフィリエイトサイトにアフィリエイト広告とそうでない記事が混在しているなら、冒頭に「プロモーションを含みます。というのでは不十分です。

このようなことがゆるあれると、たとえば、ヤフーのサイトで冒頭に「プロモーションを含みます」と書けば、通常のニュース記事と区別できないような態様でアフィリエイト広告を掲載してもよい、ということになりかねません。

というわけで、もしサイト冒頭に「プロモーションを含みます。」と表記するだけで済ませているアフィリエイトサイト運営者の方がいらしたら、即座にあらためていただければと思います。

2025年3月 5日 (水)

ステマQ&A17番(インフルエンサーへの無償提供商品の映像使用)について

消費者庁のステマQ&Aの17番では、

Q17  私はインフルエンサーをしています。X社のB商品の愛用者であることをSNS上で投稿しており、今後も投稿しようと思っていたところ、

X社から、B商品を無償でプレゼントされました。

その際、

「B商品を愛用いただきありがとうございます。今後もよろしければSNSに投稿してください。」

と伝えられましたが、

次から投稿を行う場合には、「広告」「PR」等と記載して投稿しなければならないのでしょうか。」

との質問に対して、

「A 運用基準では、

「事業者が第三者に対して自らの商品又は役務を無償で提供し、SNS等を通じた表示を行うことを依頼するものの、当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合」

には、当該表示(投稿)は、「事業者の表示」に当たらないとしています。

ただし、

事業者がB商品を無償で提供した目的、

無償提供の内容、

その後のX社との間のやり取りの内容、

X社との取引関係の有無

(例えば、将来の取引可能性の有無)

等の個別具体的な事情を踏まえ、

客観的な状況に基づき、あなたの自主的な意思による表示内容とは認められないと判断される場合があります。

したがって、元々B商品を気に入っており、当初から投稿しようと思っていたような場合にまで、「広告」「PR」等と記載して投稿をする必要はありませんが、

今後の投稿において、例えば、X社から無償で提供されたB商品を使っている画像を掲載する場合は、X社からB商品の提供を受けた旨を記載することは有益であると考えられます。」

と回答されています。

質問のほうは、そういうこともあるんだなぁ(=インフルエンサーって、頼みもしないのに商品がタダで送られてくるんだ)というかんじで、なかなか興味深いのですが、回答のほうは、なんとも煮え切りません。

このQ&Aは結局、

次から投稿を行う場合には、「広告」「PR」等と記載して投稿しなければならないのでしょうか

というのが質問なわけですが、これに対する答えが、要は、

「今後の投稿において、例えば、X社から無償で提供されたB商品を使っている画像を掲載する場合は、X社からB商品の提供を受けた旨を記載することは有益であると考えられます。」

ということで、「しなければならないのか」という質問に「有益である」と答えており、質問に正面から答えていません。

でもこれは、「有益だ」というにとどまるわけですから、回答の意味としては、「PR等と記載しなくてもいい」と読むほかないと思われ、それならそうと言い切るべきだと思います。

さらにいえば、

「元々B商品を気に入っており、当初から投稿しようと思っていたような場合にまで、「広告」「PR」等と記載して投稿をする必要はありません」

という部分は、文脈からして、

X社からB商品を無償でプレゼントされ た後であっても、 元々B商品を気に入っており、当初から投稿しようと思っていたような場合にまで、「広告」「PR」等と記載して投稿をする必要はありません」

と補って読むべきでしょう。

というのは、無償でプレゼントをされる前の、

X社のB商品の愛用者であることをSNS上で投稿しており、今後も投稿しようと思っていた

という部分の「投稿」は、どう転んでもステマになるはずがなく、そもそも質問の対象ですらないからです。

しかもさらによくわからないのが、

「今後の投稿において、例えば、X社から無償で提供されたB商品を使っている画像を掲載する場合は、X社からB商品の提供を受けた旨を記載することは有益であると考えられます。」

という部分です。

この部分は、無償で提供されたまさにそのB商品(the Product B)の画像を掲載する場合のことを言っているとしか読めません。

つまり、同じ商品B(a Product B)であっても、自分で買ってきたものの画像を掲載する場合には、B商品(the Prodct B)の提供を受けたことを記載する必要はない(有益ではない)、ということのようです。

でも、動画に映っているまさにその商品が、無償でプレゼントされたthe Product Bであるのか、自分で買ってきたa Product Bであるのかの違いって、ステマ規制において何か意味があるんでしょうか?

私は、何も意味はないと思います。

ステマかどうかは、広告主が、

①「事業者が表⽰内容の決定に関与している」

かどうか、言い換えれば、

②「客観的な状況に基づき、投稿者の⾃主的な意思による表⽰内容とは認められない」

かどうか、であり(Q4で①と②が相互互換的だと明記されています)、

①(=②)に該当するのに、そこに映っているのが企業からのプレゼントでないからステマでない、

ということも、

①(=②)に該当しないのに、そこに映っているのが企業からのプレゼントだからステマになる、

ということもないはずだからです。

そもそも、回答で自由意思の考慮要素としてあげられている、

「事業者がB商品を無償で提供した目的、

無償提供の内容、

その後のX社との間のやり取りの内容、

X社との取引関係の有無

(例えば、将来の取引可能性の有無)」

のどこをみても、無償提供商品が映像で使われたかどうかはひっかかってこなそうに思います。

あえて想像力たくましく考えれば、

「事業者がB商品を無償で提供した目的」

のところで、設問における事業者の目的が、SNSでの「映(ば)え」を狙って商品を映してもらう「目的」であったことが、①(=②)をみとめる要素として考慮される、ということが思いつきますが、常識的に考えてインフルエンサーが商品をSNSで紹介するときにはその商品を映しながら紹介するでしょうから、X社から無償提供される前からSNSには商品Bが映っていたと想定するのが合理的だと思います(商品Bが一度も映らなかったというのは不自然です)。

ということは、プレゼント前のa Product Bであっても、プレゼント後のthe Prodct Bであっても、広告効果の点でもなんら異ならないというべきでしょう。

ということは、無償でプレゼントすることでそのthe Prodct BをSNSで映してもらう「目的」をX社が有していたと想定すること自体が、きわめて不自然に思われます。

というわけで、その商品自体(the Prodct B)をSNSで映してもらうという目的はなく、そうすると、上記各考慮要素のどれにもヒットしない、ということにならざるをえないと思われます。

(もちろん、素直に、好意的なレビューを期待して商品を無償提供したのなら、「事業者がB商品を無償で提供した目的」がレビュー内容に影響を与える目的であったことになり、ステマを肯定する要素になるのは当然ですし、変に想像力をたくましくするより、最初からそのように素直に考えるべきでしょう。)

以上のような小難しい理屈(厳密な論理的解釈)は抜きにして(笑)、もっとゆる~い頭でこのQ&Aの意図を忖度すると、たぶん消費者庁は、このインフルエンサーがSNSで、「こちらの商品B、X社さんからいただきました~💓」というようなコメントをしたら、ちゃんと利害関係を開示しているので、消費者に変な誤解を与えないので望ましいのだ、ということを漠然と考えていたのではないか、と思います。

でも、ここでまた小難しい理屈に戻ると、回答の「有益である」というのが、何にとって「有益」なのかが、いまひとつはっきりしません。

つまり、「有益である」の目的語はなにか、ということです。

文法的に未完成な単語が突如現れた時には、常に、その主語は何なのか、目的語は何なのかを、明示的に補わないといけません。

ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』風にいえば、あらゆる命題を、「〇〇は~である。」という要素命題に部会するイメージです。

そして、ここでの「有益である」というのが、ステマを防止するのに「有益である」というのは成り立たない、というのは上で説明したとおりです。

そうすると、どうも消費者庁は、表示の内容の決定への関与と、広告主との利害関係の開示とを、ごっちゃにしているのではないか、という疑惑がわいてきます。

つまり、表示内容の決定に関与したかどうかはさておき、「もらったものはもらったものだと断って映しなさい」と素朴に考えてしまっているのではないか、ということです。

結局ここでも、表示内容の決定への関与というベイクルーズ基準をステマで使ってしまったことの矛盾のうえに、素朴なバランス感覚が上乗せされて、理論的にはわけのわからない回答になっている、ということなのだろうと思います。

ここまでボタンの掛け違えが進んでくると、なんだか消費者庁さんお気の毒というか、哀れに思われてきます。

そもそもこの設問の趣旨は、

今まで好きでPRしてきただけなのに、プレゼントをもらったとたん、「広告」と表示しないといけないの?

ということでしょう。

そうなんだったら、素直な回答は、

これまでの延長で投稿をするかぎり、広告ではありません。

でしょう。

消費者庁の回答も、そういう趣旨なんだと思われ、でもそう言い切るのがはばかられるので(プレゼント後、投稿のトーンが突然絶賛にかわったらどうなのか、とか、プレゼント直前直後は従来の投稿の延長とはいえても未来永劫そうなのか、とか、考え出すときりがない)、「有益である」といった、なんとも歯切れの悪い回答になっているのだと思います。

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