No.1表示実態報告書について
消費者庁が2024年9月26日に公表した「No.1 表示に関する実態調査報告書」についてメモしておきます。
まず、「① 費用に関する説明」(p13)として、
「1フレーズ10 万円~数十万円とするものが多かった。
調査会社の中には、
「1度調査を行えばランニングコストはかからない。」、
「結果が悪ければ費用は発生しない・返金する。」、
「1位が獲れるまで追加費用なしで再調査する。」
等の文句で勧誘を行っているものも見られた。」
と記載されています。
「1位が獲れるまで追加費用なしで再調査する。」 というのはびっくりですね。
いい結果が出るまで何度でもアンケート(たいていウェブなので簡単)するというのは、1位にならなかった調査結果は隠すわけですから、これ自体が不当な調査であることはいうまでもありません。
機能性表示食品で有意差が出るのを保証するという調査サービスが一時非難を浴びていたことがありましたが、同じですね。
科学的に調査しても、100回に5回は効果がなくても効果がありと出てしまうわけですから(それが有意差5%の意味です)、主観的なアンケート調査なんて、何回もやればいくらでも欲しい結果が出るに決まっています。
こういうことをいう調査会社や広告会社には、ぜったいに依頼してはいけません。
次に、No.1表示における比較対象(競合他社)の選定について、
「① 「○○サービス 満足度No.1」等と表示する場合において、○○に属する同種商品等のうち市場における主要なものの一部又は全部を比較
対象に含めずに、調査を行っている場合」(p18)
が問題がある、とされていますが、逆に言うと「主要なもの」だけでいいとしているのは、業種によってはちょっと問題だと思います。
というのは、業種によっては、全国で知られていない優れた商品役務というのがいくらでもあるからです。
たとえば学習塾とか病院とかは、その地域でしかその良さが知られていないという事業者がいくらでもいると思います。
このように「主要なもの」にかぎっていいといえるのは、競争が全国で行われているもの、たとえば保険とか電気通信とか自動車とか、そういったものにかぎるべきだと思います。
同報告書でヒアリング対象になっている、
「学習塾・予備校、買取サービス、家具・寝具、結婚相談所、呉服・着物レンタル、食品、電子機器、ホテル・旅館、保険、ペット関連、不動産関連、美容エステ・サロン」
のうち、「主要なもの」に限定しても問題なさそうなのは、電子機器と保険くらいで、あとはだめでしょう。
あるいは、「主要なもの」の言葉の意味次第だとしても、相当広く、全国に存在する事業者数(売上や市場シェアではなく、事業者数です)の8割程度はカバーしていないといけないんじゃないでしょうか。
続けて、
「② インターネット検索により、単に検索結果で上位表示された同種商品等を比較対象として選定しているだけで、市場における主要な同種商品等の一部又は全部を比較対象に含めないまま、調査を行っている場合」
というのがだめだとされているのは、注意が必要ですね。
私が以前相談を受けた事例でも、競合他社をどのように選んでいるのかと確認したら、グーグル検索で探した、という例が少なからずありましたが、これも危ないわけですね。
これは、同報告書が主に対象にする「主観的評価によるNo.1 表示」だけでなく、「業界初」とかいう客観的No.1表示でも同じです。
というか、「業界初」とうたってもし初でなかったらどんなマイナーな競合でもアウトですから、かぎりなく100%調査すべきでしょう。
また、だめな打消しの例として、
「比較対象企業選定条件:「○○」で検索上位○社(検索エンジン名)」
というのが、
「また、サンプリング調査では、同種商品等について、〔上記の〕ような注記をしている例が見られた。このような注記をしていても、記載位置、文字の大きさ、文字の色等を踏まえ、一般消費者にとって明瞭でない方法により注記がされている場合は、表示内容と調査結果が適切に対応しているとはいえず、景品表示法上問題となるおそれがある。」
と評価されています。
いちおうここでは、「記載位置、文字の大きさ、文字の色等を踏まえ、一般消費者にとって明瞭でない方法により注記がされている場合」にはだめだと書かれていますが、私はこれはどんなに明瞭に打消ししてもだめだと思います。
やっぱり、主要なものは確実に全部ひろうか、それこそどこと比較したのか明示すべきでしょう(比較された側から刺される可能性大ですが)。
これに対して、イメージ調査(「アンケートの回答者に対して、対象商品等や、これと比較する商品等を提供する各事業者のウェブサイトのURLを示し、当該ウェブサイトの閲覧を促した上で、例えば、後記のとおり質問をする調査」p14)の打消し表示について、p19~20に、
「く注記の例>
① サイトイメージ調査
② 本調査はサイトのイメージをもとにアンケートを実施しています。
③本ブランドの利用有無は聴取していません。」
という注記が、
「これらの注記があったとしても、「顧客満足度No.1」という表示内容と調査結果が適切に対応していないことに変わりはなく、景品表
示法上問題となるおそれがある。」
とされ、こちらでは「記載位置、文字の大きさ、文字の色等を踏まえ、一般消費者にとって明瞭でない方法により注記がされている場合」であるかどうかは問題にしていません。
ほんらいこうあるべきでしょう。
次に、不適切な調査方法の例として、
「① 自社に有利になるよう回答を誘導する場合
(例えば、複数の商品等の中から「おすすめしたいJ商品等を選択して回答させる場合に、自社の商品等を、選択肢の最上位に固定する等して、選択されやすくする場合を含む。)」(p21)
というのがあげられており、要注意ですね。
さほど悪意がなくてもいわば条件反射的に自社の商品をアンケート回答欄のトップに書くことは少なくないのではないでしょうか。
やはり一番上の選択肢が選ばれやすくなるというのが社会調査の定説らしいので、これはだめだということですね。
では2番とか3番に置けばよいのかというと、そうするとむしろ不利になってしまいますので、解決策としては、
「自社の商品等を、選択肢の最上位に固定する」
のがいけないとされているので、アンケート用紙を複数パターン作って(例えば選択肢が10個なら10とおり作って・・・でなくてもいいですが)、あるいは選択肢の順位がランダムで画面に出るようにして、常に自社商品が1番にくるようにはしない、ということです。
続いて、
「② 自社の商品等が1位になるまで調査を繰り返している、1位になったタイミングで調査を終了するなど、結論ありきの調査が行われている場合」
というのもダメな例としてあげられていますが、当然でしょう。
さらにいえば、仮に一発勝負で1位が出たとしても、2位との間に統計的な有意差がなければ、私はだめだと思います。
大半の回答が自社を1位とする結果が出たら統計的処理を云々する必要もないのでしょうけれど、1位と2位の差が微妙な場合(たとえば1位が10%の支持で、2位が9.9%の支持)は、たまたま1位になった可能性も大いにあります。
なので、有意水準5%で有意差があるかどうかを確認することは必須だと思います。
機能性表示食品に関する事後チェック指針でも、
「・主要アウトカム評価項目における介入群と対照群の群間比較で統計的な有意差(有意水準5%)が認められていない場合」
が不適切だとされています。
この報告書もそうですが、No.1表示についてはどうも消費者庁にこのような統計学的発想がなくって、私は大いに不満です。
次に、「医師の〇%が高評価」みたいな、「高評価%表示」について、
「①調査回答者が医師かどうかを自己申告により確認するだけで、医師であることを客観的に担保できていない場合」
というのは、見ようによってはなかなか厳しいですね。
自分が医師であることを自己申告により確認するだけではだめだとすると、医師国家試験合格証でも出させるのでしょうか?
あるいは、その医師が病院での勤務実態があることをインターネットで調べればいいのでしょうか?
弁護士なら日弁連ホームページの弁護士検索で調べればすぐわかりますが、お医者さんって、どうやるんでしょうね。
続いて、
「②調査対象者である医師の専門分野(専門の診療科など)が、対象商品等を評価するに当たって必要な専門的知見と対応していない場合」
というのもだめな例として挙げられていますが、判断に迷うケースもあるでしょうね。
皮膚のサプリなら皮膚科かな、くらいはわかりますが、肥満の場合は、どうなんでしょう?
最後に、
「業務マニュアル等を策定している事業者においては、本報告書を踏まえた具体的なチェックポイントを記載すること(②)等も有益と考えられる」(p25)
と書かれているので、事業者の皆さんは、そのような取り組みをされるとよいと思います。
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