フリーランス適正化法の適用範囲の広さについて
今年11月に施行されるフリーランス適正化法は、個人事業者とのほぼすべての取引に適用され、その適用範囲が同法が下敷きにしている下請法よりもずっと広いので、注意が必要です。
すなわち、同法で保護の対象となっている「特定業務受託者」(2条1項)は、
「この法律において「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 個人であって、従業員を使用しないもの
二 法人であって、一の代表者以外に他の役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる
者をいう。第六項第二号において同じ。)がなく、かつ、従業員を使用しないもの」
ということで、要するに、従業員のいない個人事業主と、従業員のいない法人事業者です。
そして、保護される取引である「業務委託」(2条3項)は、
「3 この法律において「業務委託」とは、次に掲げる行為をいう。
一 事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む。)又は情報成果物の作成を委託すること。
二 事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。)。」
と定義されていて、こちらもたいへん広いです。
2条3項2号(役務提供委託)の定義で、あえて、
「他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。」
とあえて明記しているのは、下請法で役務提供委託に自己使用役務は(たとえ「業として」行うものであっても)含まないのとは違うのだよ、ということを明確にするためです。
すなわち、下請法で役務提供委託は、
「事業者〔=親事業者〕が
業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を
他の事業者に委託すること・・・」(下請法2条4項)
と定義されており、対象が「業として行う提供の目的たる役務」の委託、つまり役務の再委託に限られており、親事業者が自分のためにする(=他に提供するのではない)役務の委託は、役務提供委託の定義に入らないわけです。
(ですが、立法技術的、ないしは論理的には、フリーランス適正化2条3号2号の「他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。」という部分は、まったく余分だと思います。)
なので、例えば個人でやっている会議通訳者に会議通訳を頼むと、フリーランス適正化法の保護の対象になります。
(下請法では、自己使用役務なので、仮に社内に通訳者がいても、対象になりません。)
そのほか、たとえばオフィスのトイレの掃除の委託とかも役務提供委託になるので、ともかく個人事業者が相手方のときはフリーランス適正化法の適用を疑うべきです。
なので、フリーランス適正化法(正式名は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」ですが)、あるいはフリーランス保護法といいますが、「フリーランス」という色の着いた表現を使うより、「個人事業者保護法」とか、「個人事業者等保護法」とするほうが、実態に合っていると思います。
(私の感覚では、ウーバーの配達員は「フリーランス」という名に値しません。)
新たな法律ができたときには思わぬところに適用されることがあるもので、消費税転嫁法ができたときには、駐車場料金とか、自動販売機設置料とか、予想もしなかった事件が相次いで摘発されました。
なので、フリーランス適正化法も、思わぬ事件が出てくるかも知れません。
個人への業務委託で注意しないといけないのが、会社のOBに業務委託する場合です。
私もクライアントから相談を受けていて、会社を辞めて独立開業した人が社内で同じような仕事をしている、というような状況に出くわしたことがあります。
会社のほうも、OBで顔見知りだし、いろいろ気安く頼んだりする、ということもありえます。
もちろん、情報成果物作成委託にあたるようなものはこれまでも下請法の対象でしたから、新たに対応が必要ということはあまりありません(ただし、厚労省パートの、妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮(13条)などは別です)。
ですが、これまでたんなる役務の依頼をしていただけの場合には、これまでなかった対応が必要、ということになります(新たな法律ができたのですから、あたりまえですが)。
そのほか、事業者の皆さんは社内で個人事業者に依頼していることがないか、いちどチェックされるのがよいと思います。
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