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2024年6月26日 (水)

代金支払期日を定める義務に関する下請法2条の2の民事上の効力

下請法2条の2では、

「(下請代金の支払期日)

第二条の二 下請代金の支払期日は、・・・親事業者が下請事業者の給付を受領した日・・・から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

2 下請代金の支払期日が定められなかつたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日が、

前項の規定に違反して下請代金の支払期日が定められたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過した日の前日が

下請代金の支払期日と定められたものとみなす。」

と規定されています。

これとほぼ同様の規定であるフリーランス適正化法4条では、

「(報酬の支払期日等)

第四条 特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、・・・当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日・・・から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

2 前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日が、

同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過する日が、

それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。

〔3項以下省略〕」

と規定されています。

そして、フリーランス適正化法の担当官解説である、

松井他「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の概要」(NBL1246号35頁)

の脚注12(4条2項の説明に対する脚注)では、

「12  行政機関による執行との関係で支払期日が定められたものとみなされるだけで、契約当事者間の合意内容を変更させる等、民事上の効果を生ずるものではない。

と断言されています。

下請法2条の2ではこのような解説がなされることはなく、これはかなり驚きです。

しかしながら、フリーランス適正化法4条でこのような解釈がなされている以上、同条とうり二つの下請法2条の2でも同様の解釈がなされると考えるのが自然でしょう。

それに、個人事業者が主体のフリーランス適正化法における保護が、下請で資本金もさほど大きくないとはいえ法人事業者が保護の対象である下請法の場合よりも劣ってよいという理屈もないでしょう(その逆なら、まだ考えられなくもないですが。)

個人的には、上記担当官解説の解説は、どうしてこんな余計なことを突然言い出したのか(しかも、何ら根拠なく)、まったくもって不可解というほかなく、解釈として誤っていると考えています。

そもそも下請法もフリーランス適正化法も、行政が取り上げる事件は全体のごく一部になるはずで、そうすると、世の中の大部分の、民民の交渉に委ねられる事案では、法律上の支払期日の規定は意味がないことになってしまいます。

ともあれ、少なくともフリーランス適正化法については担当官解説がこれだけはっきりと言ってしまっているわけですから、公取委はそういう立場なのだと実務上は考えざるをえません。

(もちろん、同担当官解説にも、「なお、本稿中意見にわたる部分は筆者らの個人的な見解である。」というお決まりのディスクレイマーがありますが、実務的にはこれは建前だと考えるのが大勢でしょう。)

あとは、下請法について何らかの解釈が将来公取委から示されるのかが注目されます。

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