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2024年5月27日 (月)

キャンペーンのくり返し(同一性)に関するセドナエンタープライズに対する措置命令の担当官解説の疑問

(株)セドナエンタープライズがキャンペーンのくり返しをしたとして、2022年3月15日に有利誤認表示で消費者庁から措置命令を受け、その担当官解説が公正取引867号64頁に掲載されています(羽原広一「株式会社セドナエンタープライズに対する景品表示法に基づく措置命令について」公正取引867号64頁)。

この事件は、セドナエンタープライズが、その販売する脱毛器について、期間限定で、30%の値引きに加えレビューを投稿すればさらに15%のポイントを付与するキャンペーンと20%のポイントを付与するとのキャンペーンを交互に行っていたことが、有利誤認表示と認定されました。

つまり、同じ付与率で付与をくり返していたわけではないけれど、それでも有利誤認表示になるのかが問題となりました。

この点について前記担当官解説p65では、

「(1) 「乗り換え割」の期間限定表示

「乗り換え割」〔注・不要になった脱毛器と交換すると割引でセドナの脱毛器が購入できるキャンペーン〕の期間限定表示については、

1か月毎に期限を区切って月交代で5%違うポイント〔注・15%と20%〕を繰り返し付与していたことから、

ポイント数に着目すれば「期間限定」であったともいい得ることから、

毎月繰り返されるポイントの付与に変更があった場合でも、その前後のキャンベーンと同ーのキャンベーンであると評価できるのかという点が問題となる。」

「この点、ポイントの付与は、レビューを投稿すれば、代金の15%又は20%相当額のポイントが付与されるかのように表示をしていたが、

付与されるポイントに5%の違いがあるにせよポイントが付与されることに変わりはなく

一般消費者は、同ーのキャンベーンであると認識するものと考えられる。

したがって、本件乗り換え割の期間限定表示の取引に付随するポイントの付与については、

毎月繰り返されるポイント数に若干の変更があった場合でも、これらは同ーのキャンベーンと評価されることから、乗り換え割の期間限定表示は、有利誤認表示に該当するとされたと考えられる。」

と解説されています。

しかし、私はこの解説はおかしいと思っています。

キャンペーンのくり返しが有利誤認表示になるのは、先行する第1キャンペーンと後続の第2キャンペーンが「同一のキャンペーン」だからではありません。

キャンペーン終了後の取引条件に関する第1キャンペーンの表示が実際と異なるから、優良誤認表示になるのです。

たとえば、第1キャンペーンで「期間限定、通常価格より50%OFF」と表示していれば、その意味するところは、キャンペーン期間が終了したら「通常価格」に戻る、ということでしょう。

なので、キャンペーン期間が終了したら、通常価格に戻さないといけません。

当然のことだと思います。

たしかに、第1キャンペーンと第2キャンペーンが同一の内容であれば、第1キャンペーンの表示は有利誤認表示になるのでしょうけれど、同一内容である場合というのは、キャンペーン期間終了後の取引条件に関する第1キャンペーンの表示内容が実際と異なる場合の一例に過ぎません。

セドナの事件での問題の表示は、

「・「乗り換え割って? 不要になった脱毛器 ※光脱毛器・レーザー脱毛器のみ 除毛マシーンやシェーバーは不可 or 脱毛サロ
ン会員証 ※脱毛ラボ以外 を送ることで・・・ 3/14までレビュー投稿で45〔※2〕%OFFで脱毛ラボ Home Edition(新古品※3)を購入できる超おトクなサービスです!」

・「※2 レビュー投稿なしのお場合は30%お値引き、レビュー投稿ありの場合は30%お値引き+15%ポイント付与で実質45%お値引き価格で購入いただけます」

というものでしたが、このように、「3/14までレビュー投稿で45〔※2〕%OFF」と表示すれば、3月15日以降は45%オフをしない、つまり、通常価格に戻す(0%オフにする)、という意味であると解するのが自然だと思います。

私見と軌を一にするといえるものとして、消費者庁の「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」(将来価格ガイドライン)の第2-1では、

「事業者が、セール期間経過後に比較対照価格とされた将来の販売価格で販売するための合理的かつ確実に実施される販売計画・・・を、セール期間を通じて有している必要がある」

とされており、有利誤認表示とならないためには「比較対照価格とされた将来の販売価格」で販売しなければならないことを当然の前提にしているものといえます。

ほかにも前記担当官解説にはいろいろと問題があって、まず、

「レビューを投稿すれば、代金の15%又は20%相当額のポイントが付与されるかのように表示をしていた」

という部分ですが、実際に15%または20%のポイントは付与されていたわけですから、「15%又は20%相当額のポイントが付与されるかのように表示をしていた」というのはまずいと思います。

これではまるで、15%または20%のポイントを実際には付与していなかった(のに付与するかのように表示していた)かのようです。

ここは正しくは、

「レビューを投稿すれば、キャンペーン期間に限り、代金の15%又は20%相当額のポイントが付与されるかのように表示をしていた」

というべきでしょう。

また、仮に同一内容かどうかを基準にする消費者庁の見解に立っても、

「付与されるポイントに5%の違いがあるにせよポイントが付与されることに変わりはなく

一般消費者は、同ーのキャンベーンであると認識するものと考えられる。」

という理由付けは荒っぽすぎると思います。

ここで言っていることを文字どおりに理解すれば、同一性(有利誤認表示の成否)は、ポイントキャンペーンか、そうでない(例えば、単純な値引き、抽選でハワイ旅行プレゼント、記念品進呈、など)か、で判断し、ポイントキャンペーンであるかぎりは付与率にかかわらず(「ポイントが付与されることに変わりはなく」)、一般消費者は、同ーのキャンベーンであると認識する、といっているのです。

しかし、ポイント付与率(≒値引率)に5%もの差(15%と20%の比を取れば33.3%の差)があれば、顧客誘引力もずいぶんと違うでしょうから、それなのに「同一のキャンペーン」というのは、ちょっと無理なんじゃないかと思います。

もちろん私見でも、ポイントキャンペーンとハワイ旅行プレゼントは別のキャンペーンと考えています。

しかしそれは、「期間限定でポイントを付与する」という表示が、キャンペン期間経過後はポイントを付与しないという意味に解されるにとどまり、およそいかなるキャンペーンも行わないとまでは読めないからです。

ほかには、担当官解説は、

付与されるポイントに5%の違いがあるにせよポイントが付与されることに変わりはな(かった)」・・・①

と指摘する一方で、

「毎月繰り返されるポイント数に若干の変更があった場合でも、これらは同ーのキャンベーンと評価される」・・・②

とも言っており、

①では、ポイント付与率の違いは意味がなく、ポイントが付与されることに変わりがなければ違反なのだ、

とも取れる説明をしながら、

②では、「若干の」変更を超える変更であれば、同一キャンペーンと評価されず違反にはならないのだ、

とも取れるような説明をしており、いったいどっちなんだと言いたくなります(たぶん、②でしょうけれど)。

こんな大事なところの説明は、もうちょっと気を遣ってほしいものです。

このように、担当官解説には理論的な問題があるのですが、実務的には、15%と20%くらいの差でも同一のキャンペーンとみなされてくり返しが有利誤認表示になるということがはっきりしたことが大きいと思います。

これは、ポイントキャンペーンだけでなく、値引きキャンペーンでも同じでしょう。

ですので、キャンペーンの内容を多少変えれば違反を免れられると考えるのは、危ないと思います。

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