« スタートアップガイドラインに対するいくつかの疑問 | トップページ | キャンペーンを繰り返した場合の課徴金について(ファクトリージャパン) »

2024年2月 1日 (木)

手形で下請代金を支払う場合の割引料の上乗せについて(続々・パートナーシップ構築宣言の落とし穴)

下請振興基準第4、4⑶では、

「⑶ 約束手形・・・により下請代金を支払う場合には、

当該手形等の現金化に係る割引料等のコストについて、下請事業者の負担とすることのないよう

当該コストを勘案した下請代金の額を、親事業者及び下請事業者双方で十分に協議して決定するものとする。

当該協議を行う際、親事業者及び下請事業者双方が、手形等の現金化に係る割引料等のコストについて具体的に検討できるよう、

親事業者は、

〔①〕支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額並びに

〔②〕支払期日に手形等により支払う場合の下請代金の額及び

〔③〕当該手形等の現金化に係る割引料等のコスト

を示すものとする。」

とされています。

つまり、下請代金を手形で支払う場合には、割引料を下請事業者に負担させることは許されず、割引料相当額を手形券面額に上乗せしなさい、ということです。

例えば、100万円の発注をする場合、もし100万円の手形を割り引くのに5万円の割引料がかかるとすると、手形で支払う場合には105万円の手形を振り出さないといけない、ということです。

特に、パートナーシップ構築宣言をしている企業は振興基準を守る義務がありますから、そのようにしましょう。

そして、振興基準のこの部分に対する実質的な解説に該当するのが、中小企業庁ウェブサイトの

FAQ『下請代金の支払手段について』

です。

同FAQのQ4では、

「Q4:親事業者は、割引料等のコストを勘案した下請代金の額を協議する際、

〔①〕現金により支払う場合の下請代金の額等を示す必要があるとのことですが、

いつ、どのように示せばよいのか教えてください。」

との質問に対して、

「下請事業者と支払手段や下請代金の額を協議するに当たって、

例えば下請事業者に見積依頼を行う際に、〔②〕手形等により支払う場合の額に加えて、

〔①〕現金により支払う場合の額や

〔③〕手形等の現金化にかかる割引料等のコストの額

についても合わせて報告するよう求めて、

その報告に基づいて親事業者から下請事業者に対し現金により支払う場合の額等を示すことが考えられます。」

と回答されています。

つまり、下請事業者に決めさせるのが1つの方法だ、というわけです。

例えば、下請事業者が、

①現金で支払う場合の見積額は、100万円

②手形で支払う場合の見積額は、105万円

③割引料は、5万円

と報告してきたら、②=①+③ですから、わかりやすいでしょう。

Q7で言及されている中企庁の「手形で下請代金を支払う場合の注文書の書式例」でも、

「代金(円)」(=手形の券面額〔②〕)

の欄に、

「うち割引料相当分(円)」〔③〕

と記載することを想定しており、上記の例では、

「代金(円) 105万円」

「うち割引料相当分(円) 5万円」

と記載することになると思われます。

ですが、もし、下請事業者が、

①現金で支払う場合の見積額は、100万円

②手形で支払う場合の見積額は、103万円

③割引料は、5万円

と報告してきたら、どうすればいいのでしょうか。

手形の金額は、見積書どおり、103万円とすればよいのでしょうか。

それとも、現金の見積額に割引料5万円を足した、105万円としなければならないのでしょうか。

この点については、振興基準の考え方は、あくまで、

「手形等の現金化に係る割引料等のコストについて、下請事業者の負担とすることのないよう

にしなければならない、ということなので、割引料5万円は親事業者が負担なければならず、手形金額は105万円とするのが正しいと考えられます。

「下請事業者が手形の場合103万円でいいといっているのに105万円支払うなんておかしいじゃないか」という意見もあるかもしれませんが、振興基準は法律でもガイドラインでもなく、下請事業者保護のための基準ですから、それでよいのです。

パートナーシップ構築宣言をしている企業は、自ら進んで宣言しているのですから自業自得であり、やはり、それでよいのです。

ただし、下請事業者に現金払いの場合の金額や割引料を報告させるというQ4の考え方はあくまで一例に過ぎず、ほかの方法がないわけではありません。

実際、Q5では、

「Q5:下請事業者の割引料等のコストについては把握していませんが、その場合はどのように対応したらよいか教えてください。」

という質問に対して、

「一例として、実際に下請事業者が近時に割引をした場合の割引料等(率)の実績等を聞くなどした上で、

一般に合理的と考えられる割引料等を協議し、

手形等により支払う場合は、当該割引料等を勘案し下請代金の額を協議することが考えられます。」

と回答されています。

つまり、当事者で協議して「一般に合理的と考えられる割引料」を合意すればいい、ということです。

なお念のためですが、親事業者は、

「〔①〕支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額」

を示さなければならないとされていますが、これを示したからといって、本当に現金で支払わなければならないわけではありません。

発注書に支払方法は手形と書いてあれば、あくまで手形で支払えばよいのです。

この点、Q7では、「〔①〕支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額」を発注書に記載することが勧められていますが、もし記載したとしても、現金で支払わなければならないわけではありません。

Q7の回答でも、

「手形等により支払う下請代金の額に併記する・・・場合は、下請事業者に、支払期日に支払われる下請代金の支払手段が手形等であることが明確に伝わるように記載する必要があります。」

とされており、仮に現金払いの場合の金額を発注書に書いても、支払方法が手形であると発注書に明記されていれば(支払方法は3条書面の必要的記載事項です。下請法3条)、手形で支払えばよいことがわかります。

では、手形で支払うにもかかわらず示される「〔①〕支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額」というのは一体何なのか、といえば、下請事業者に割引料を負担させていないかどうかを判断するため、あるいは、下請事業者が手形払いによる不利益を判断できるための、参考に過ぎない、ということです。

1つ、この「〔①〕支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額」に法的な意味があるとすれば、下請事業者が現金払いを希望してそれに応じる場合には、この①の金額で支払っても減額にはならない、という点です。

このことは、Q9で、

「Q9:手形により下請代金を支払うに当たり、現金により支払う場合の下請代金の額も発注書面に記載していた場合は、下請事業者の希望による現金払への変更において、発注書面に記載していた現金により支払う場合の下請代金の額を支払うことは下請法上問題となるのでしょうか。」

という質問に対して、

「手形により下請代金を支払うに当たり、あらかじめ親事業者が下請事業者と十分協議して合意の上で定めた(1)現金により支払う場合の下請代金の額、(2)手形により支払う場合の下請代金の額、(3)当該手形の現金化にかかる割引料相当分を発注書面に記載していた場合は、下請事業者の希望により現金で支払う際に、当該発注書面に記載した現金により支払う場合の下請代金の額を支払うことは下請法の「減額」に該当しません。」

と回答されていることからわかります。

これに対して、もし3条書面に「〔①〕支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額」を記載しなかった場合にはどうなるのかというと、Q9の回答後半では、

「なお、発注書面において、手形により支払う場合の下請代金の額しか記載していないなど、

現金により支払う場合の下請代金の額及び当該手形の現金化にかかる割引料相当分もあらかじめ合意の上定めていたとは認められない場合には、

下請事業者の希望により一時的に現金で支払う際に、自社の短期調達金利相当額を超える額を差し引くことは下請法の「減額」に該当します。」

と回答されています。

つまり、

3条書面に現金払いの場合の下請代金額が記載されていなくても、あらかじめ現金払いの場合の下請代金額と割引料相当額が合意されていれば、かかる合意に従った現金払いの金額を支払えば減額にはならず、

かかる合意がなければ、発注者の短期調達金利相当額の範囲内で差し引くのは減額にならない、

ということです。

逆に言うと、3条書面に現金払いの場合の下請代金額を書くメリットは、下請事業者の希望で現金払いに切り替える場合に、発注者の短期調達金利相当額を超えて差し引いてもよいという点にある、といえます。

こういう大事なことをFAQですましてしまうのはいかがなものかと思いますが、令和3年3月31日の通達(「下請代金の支払手段について」下請法テキスト資料8)は通達に過ぎないので法的拘束力はなく、振興基準はたんなる基準であって法的拘束力はなく、パートナーシップ構築宣言をして自ら振興基準に縛られることを選択した発注者は自業自得なのですから、やはり問題ない、ということなのだろうと思います。

« スタートアップガイドラインに対するいくつかの疑問 | トップページ | キャンペーンを繰り返した場合の課徴金について(ファクトリージャパン) »

下請法」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« スタートアップガイドラインに対するいくつかの疑問 | トップページ | キャンペーンを繰り返した場合の課徴金について(ファクトリージャパン) »

フォト
無料ブログはココログ