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2023年8月 2日 (水)

全額キャッシュバックに関する消費者庁改正景品Q&Aについて(旧21番→新42番)

6月30日に改正前の消費者庁景品Q&A21番では、

「Q21 当店では,期間を限定して,商品A(1,000円)を10個買ってくれた人を対象に,もれなく3,000円のキャッシュバックを行いたいと考えています。

この場合,景品規制の対象となるのでしょうか。」

との設問に対して、

「 キャッシュバックなどの方法により,取引通念上妥当と認められる基準に従い,支払った代金の割戻しを行うことは,値引と認められる経済上の利益に該当し,景品規制の適用対象とはなりません。

 ただし,懸賞によりキャッシュバックを行う場合,割り戻した金銭の使途を制限する場合,又は同一の企画において景品類の提供を併せて行う場合は,景品規制の適用対象となります。

(参照)「景品類等の指定の告示の運用基準」(昭和52年事務局長通達第7号)6(3)イ,(4)」

と回答されていました。

これに対して改正後の42番では、

「Q42 当店では、期間を限定して、商品A(1,000円)を10個購⼊してくれた⽅を対象に、もれなく3,000円のキャッシュバックを⾏いたいと考えています。

この場合、景品規制の対象となるのでしょうか。」

という同じ質問に対して、まず、

「A キャッシュバックなどの⽅法により、取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相⼿⽅に対し、⽀払った代⾦について割戻しを⾏うこと(複数回の取引を条件として割り戻す場合を含む。)は、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益に該当し、景品類に含まれず、景品規制の対象とはなりません。

本件は、商品Aの購⼊者に対し、⽀払った代⾦の割戻しを⾏うものですので、取引通念上妥当と認められる基準に従っているのであれば、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益に該当し景品類に含まれず、景品規制は適⽤されません。」

と、概ね改正前と同様の回答をしたあとで、

「なお、例えば、割戻しの対象となる取引の⾦額よりも多い額を提供する場合には、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益には該当しないと考えられますので、景品類に含まれ、総付景品の規制の対象となります(Q61、Q110参照)。

(参考)「景品類等の指定の告⽰の運⽤基準について」(昭和52年事務局⻑通達第7号)6(3)イ」

との回答が加えられました。

つまり、1個1000円のものを10個購入した者に対して、「割戻しの対象となる取引の金額」(1000×10)である1万円よりも大きい金額をキャッシュバックすることは景品類に該当するけれども、そうでなければ値引である、ということです。

この実務上の意義は大きいと思います。

というのは、今まで、「正常な商慣習に照らして値引と認められる」のはどのくらいまでの値引にとどまらないといけないのかがはっきりしないため、保守的に、例えば値引は原則5割までにとどめよう、といった方針を採用する企業が少なくなかったからです。

私は、そのような運用はむしろ競争を阻害するので、そのように保守的に考える必要はないとアドバイスしてきましたが、では何割までならOKなのか確たる基準もなく、その都度、その業界での実態などを踏まえて、事案に応じて答えていました。

それが今回、代金満額払い戻すまでなら値引だ(それを超えたら景品類だ)ということが、消費者庁から明確に示されたわけですから、企業にとっては朗報です。

厳密に言えば、42番回答は、

「割戻しの対象となる取引の⾦額よりも多い額を提供する場合には、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益には該当しない」

といっているだけで、

「割戻しの対象となる取引の⾦額かそれよりも小さい額を提供する場合には、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益には該当する

とは言っていないので、全額払い戻し以下の払い戻しでも景品類に該当する可能性は論理的にはなくはないのですが、この手のQ&Aでそこまで意地悪な解釈は、さすがにされないでしょう。

また、「値引」という言葉の意味からしても、100%超の値引(事業者の持ち出し)を「値引」というのは無理がある、ともいえます。

というわけで、企業の皆さんは、景品にあたるかどうかを心配することなく、どんどん値引をされたらいいと思います(ただし、商品代金以内で)。

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