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2023年8月 3日 (木)

増量値引に関する消費者庁景品Q&A43番に対するささやかな疑問

6月30日に改定される前の消費者庁景品Q&A22番では、増量値引について、

「同じ商品を5個買ってくれた人に,更にもう1個同じ商品をプレゼントする場合,景品規制の対象となりますか。」

という設問に対して、

「取引通念上妥当と認められる基準に従い,ある商品・サービスの購入者に対し,同じ対価で,それと同一の商品・サービスを付加して提供することは,値引と認められる経済上の利益に該当し,景品規制の対象とはなりません。

例えば,「コーヒー5回飲んだらコーヒー1杯無料券をサービス」などもこれに該当します。

本件については,上記コーヒーの例と同様と考えられますので,景品規制は適用されません。

(参照)「景品類等の指定の告示の運用基準」(昭和52年事務局長通達第7号)6(3)ウ」

と回答されていました。

(ちなみに、引用されている定義告示運用基準6⑶ウというのは、

「(3) 次のような場合は、原則として、「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」に当たる。

〔ア、イ省略〕

ウ 取引通念上妥当と認められる基準に従い、ある商品又は役務の購入者に対し、同じ対価で、それと同一の商品又は役務を付加して提供すること

(実質的に同一の商品又は役務を付加して提供する場合及び複数回の取引を条件として付加して提供する場合を含む

(例 「CD三枚買ったらもう一枚進呈」、「背広一着買ったらスペアズボン無料」、「コーヒー五回飲んだらコーヒー一杯無料券をサービス」、「クリーニングスタンプ○○個でワイシャツ一枚分をサービス」、「当社便○○マイル搭乗の方に××行航空券進呈」)。)。

ただし、「コーヒー○回飲んだらジュース一杯無料券をサービス」、「ハンバーガーを買ったらフライドポテト無料」等の場合は実質的な同一商品又は役務の付加には当たらない。」

という規定です。)

これが、改正後の43番では、

「Q43 同じ商品を5個購⼊した者に、もれなく更にもう1個同じ商品をプレゼントする場合、景品規制の対象となりますか。」

というほぼ同じ設問に対して、前半部分では、

「取引通念上妥当と認められる基準に従い、ある商品⼜は役務の購⼊者に対し、同じ対価で、それと同⼀の商品⼜は役務を付加して提供することは、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益に該当し、景品類に含まれず、景品規制の対象とはなりません。

複数回の取引を条件として付加して提供する場合、例えば、「コーヒー5回飲んだらコーヒー1杯無料券をサービス」などもこれに該当します。

本件は、同じ対価で、それと同⼀の商品を付加して提供することになりますので、取引通念上妥当と認められる基準に従っているのであれば、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益に該当し景品類に含まれず、景品規制は適⽤されません。」

と、ほぼ同じような回答がされています。

それはいいのですが、問題は後半部分です。

後半部分では、

「なお、購⼊した商品・サービスと同⼀の商品・サービスであっても、購⼊した数量等よりも多く付加する場合には、通常、取引通念上妥当とは認められないと考えられますので、景品類に含まれ、総付景品の規制の対象となります(Q61、Q110参照)。

(参照)「景品類等の指定の告⽰の運⽤基準について」(昭和52年事務局⻑通達第7号)6(3)ウ」

と回答されています。

これは、文言を素直に読むと、例えば、同じ商品を5個「購入した」場合に、「購入した数量」(=5個)よりも多く付加すると(例えば、6個とか、7個とか付加すると)、景品類になる、というように読めます。

もっと簡単にすると、例えば、ある商品を1個1000円で購入した場合に、おまけで(ただで)2個付加すると、その2個は景品類になる、ということになりそうです。

しかし、これは明らかにおかしいです。

「1個買ったら2個おまけ」なんて、世の中にいくらでもありそうで、これは増量値引でしょう。

Q&A42番で、全額キャッシュバックが値引だとされていることとも整合しません。

したがって、このQ43番は、5個買った人に、買った5個の対価も受け取らずさらに追加で1個ただで付ける(顧客は6個ただで手に入れる)、というのは景品類だ、といっていると理解すべきだと思われます。

(そうすると、そもそも有償であるべき「取引」がないのではないかという疑問が湧いてくるのですが、5個の購入でいったん代金債権は発生し、これを売主が放棄した上でさらに1個おまけでつける、というようにでも整理するのでしょう。)

したがって、5個有料で買った人に、6個無料で付ける(購入者は5個分の対価で合計11個手に入れる)、というのは、このQ&Aの下でも問題ないと考えられます。

結論はこれしか無いと思うのですが、このQ43番の文言でそのように読めというのは無理で、ほとんど誤記のレベルの問題ではないかと思われます。

あるいは、Q43番は、本当に、「1個買ったら2個おまけ」というのは増量値引ではなく景品類だ、という意味かも知れませんが、もしそういう意味なら、強く異議を唱えたいと思います。

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