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2023年8月14日 (月)

⽉額サービス契約時の取引の価額に関する消費者庁景品Q&A68番について

6月30日に改定された消費者庁景品Q&Aで、新たに追加された68番では、

「継続取引を前提とした⽉額サービスの契約を条件として新規契約者に対して景品を提供しようと考えています。

契約時に⽀払う必要があるのは初期費⽤及び初⽉の⽉額料⾦になり、契約期間の定めはありません。

この場合の取引の価額はどのように算定すればよいでしょうか。」

との設問に対して、

「商品⼜は役務の購⼊者を対象とするが購⼊額の多少を問わないで景品類を提供する場合の取引の価は、原則として100円ですが、その景品類を提供する対象商品⼜は役務の取引の価額のうち最低のものが明らかに100円を下回っているときはその価格を取引の価額とし、また、通常⾏われる取引の価額のうち最低のものが100円を超えると認められるときは、その最低のものを取引の価額とすることができ
ます。

⽉額払いのサービスの場合、通常⾏われる取引の価額のうち最低のものとは基本的に1か⽉分の利⽤料⾦ですが、

取引の実態や契約内容から⼀定期間継続して利⽤すると認められるときには、その期間の利⽤料⾦の合計額を取引の価額として考えることができる場合があります。

ただし、契約において特に契約期間の制約等がなく、取引の実態としてもごく短期間で解約する顧客が存在するような場合には、⼀定
期間の利⽤料の合計額を取引の価額とすることは適当ではありません

本件は、初期費⽤と初⽉の⽉額料⾦の合計が、通常⾏われる取引のうち最低のものですので、これを取引の価額とすることになりますが、取引の実態によっては、初期費⽤と⼀定期間の利⽤料⾦の合計額を取引の価額とすることができる場合があります

(参照)「『⼀般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限』の運⽤基準について」(昭和52年事務局⻑通達第6号)1(2)」

と回答されています。

でも、

「⽉額払いのサービスの場合、通常⾏われる取引の価額のうち最低のものとは基本的に1か⽉分の利⽤料⾦です」

というのは、さすがに厳しすぎるのではないでしょうか。

確かにQ&Aでも、

取引の実態契約内容から⼀定期間継続して利⽤すると認められるときには、その期間の利⽤料⾦の合計額を取引の価額として考えることができる場合があります。」

と言ってくれているので、月払いだからと言って何が何でも1か月分の利用料金を取引の価額にしなければならないと消費者庁も考えているわけではないと理解はできるのですが、それを打ち消すかのように、

「ただし、契約において特に契約期間の制約等がなく、取引の実態としてもごく短期間で解約する顧客が存在するような場合には、⼀定期間の利⽤料の合計額を取引の価額とすることは適当ではありません。」

と述べているのは、困ったものです。

とくに、

「取引の実態としてもごく短期間で解約する顧客が存在するような場合」

というのは、1人でも存在すれば「存在する」と読むのが論理的なので、なかなか厳しいものがあります(1か月でやめる人が1人でもいれば、初月分料金しか取引の価額にならない)。

なので、

取引の実態契約内容から⼀定期間継続して利⽤すると認められる」

というのは、ある程度常識的に緩やかに解して良いのではないかと思います。

その結果、1人でも1か月でやめたら1か月分料金しか取引の価額にならないという結論は避けられることが多いだろうと思われます。

つまり、

(原文)「ただし、契約において特に契約期間の制約等がなく、取引の実態としてもごく短期間で解約する顧客が存在するような場合には、⼀定期間の利⽤料の合計額を取引の価額とすることは適当ではありません。」

というのは、

(植村改)「ただし、契約において特に契約期間の制約等がなく、取引の実態としてもごく短期間で解約する顧客が相当割合存在するような場合には、⼀定期間の利⽤料の合計額を取引の価額とすることは適当ではありません。」

というくらいに読み替えて良いのではないかと思います。

さて、ここで「取引の実態」を考慮するとしているのは、実際に、どれくらいの人がどれくらいの期間契約を継続するかを見る、ということでしょう。

これはなかなかはっきりとした線を引きにくい問題で、感覚的なものになってしまいますが、まず手堅いところから言うと、下位2.5%までは例外として無視していいのではないかと思います。

例えば、1万人の契約者のうち、250人の人は1年未満で解約するとしても、その250人は無視して、1年間を通常の取引期間とみてよい、ということです。

その根拠は、統計学でよく用いられる95%信頼区間の片側に外れる確率が2.5%だからです。

ここからが本当に感覚的なものになってきますが、5%でも、たぶん大丈夫なんじゃないかと思います。

敢えて理屈を付ければ、95%信頼区間の両側に外れる確率が5%だから、でしょうか。(あまり理屈になっていませんが。)

さらに10%になると、かなり微妙というか、私なら10%であれば常にOKとは言わないと思います。

というのは、10人に1人もいる人の取引の価額を、

「当該景品類提供の対象商品又は役務について通常行われる取引の価額」(総付運用基準1⑵)

ではないので無視してよい、とは言いにくいように思われるからです。

注意すべきは、これは全部の顧客を母集団にしている、ということです。

以前見かけたのは、クレジットカードか何かの継続的契約で、1年間全く利用のない人は例外的な顧客なので集計の対象から外して、残った母集団のうちさらに下位○○%、というような考え方をしている例がありました。

これでは完全にだめだと思います。

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