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2023年8月

2023年8月16日 (水)

スタンプラリーの取引の価額に関する消費者庁景品Q&A71-2について

6月30日に大幅改定された消費者庁の景品Q&Aでは、その71-1番(「スタンプラリーの取引の価額2」)で、

「⼟産物店3店舗、有料観光施設2施設、無料の観光スポット3か所を巡るスタンプラリーによる懸賞企画を考えています。

スタンプを押す条件は、⼟産物店は商品を購⼊すること、観光施設は⼊場チケットを購⼊すること、観光スポットは来場することです。

応募のために必要なスタンプは、4個⼜は8個ですが、スタンプ8個で応募する場合は、スタンプ4個での応募はできません。

なお、⼟産物店で販売する商品のうち最も安い商品の価格はいずれも200円、有料観光施設の⼊場料⾦は500円⼜は700円です。また、無料の観光スポットで販売⾏為はありません。

この場合の取引の価額はどのように算定すればよいでしょうか。」

という設問に対して、

「商品⼜は役務の購⼊者を対象とするが購⼊額の多少を問わないで景品類を提供する場合の取引の価額は、原則として100円ですが、その景品類を提供する対象商品⼜は役務の取引の価額のうち最低のものが明らかに100円を下回っているときはその価格を取引の価額とし、また、通常⾏われる取引の価額のうち最低のものが100円を超えると認められるときは、その最低のものを取引の価額とすることができ
ます。

本件では、スタンプ4個⼜は8個を集めるために必要となる取引のうち最低の⾦額を取引の価額とすることになりますが、そのためには、スタンプを押す条件ごとに個別に取引の価額を検討する必要があります。

⼟産物店でスタンプを押す条件は、購⼊額の購⼊額の多少を問わずに商品を購⼊することですので、取引の価額は原則として100円となります。ただし、その店舗で通常⾏われている取引のうち最低のものが明らかに100円を上回っているときは、取引の価額はその最低の価格となりますので、本件は、200円となります。

有料観光施設でスタンプを押す条件は、⼊場チケットを購⼊することですので、取引の価額は⼊場チケットの料⾦である500円⼜は700円になります。

販売⾏為のない無料の観光スポットでスタンプを押すことは、取引に付随しませんので算定する取引の価額がありません。

上記を前提に、4個スタンプを集めるために必要な取引のうち最低のものは、無料の観光スポットを3か所巡り、⼟産物店で200円の商品を1個購⼊した場合ですので、取引の価額は200円になります。

8個スタンプを集めるために必要な取引のうち最低のものは、無料の観光スポットを3か所巡り、⼟産物店3店舗200円の商品を1個ずつ購⼊し(200円×3店舗)、有料観光施設に⼊場するため料⾦500円と700円を⽀払った場合ですので、取引の価額はこれらの価格を合計した1,800円になります。

(参照)「『⼀般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限』の運⽤基準について」(昭和52年事務局⻑通達第6号)1(2)

「『⼀般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限』の運⽤基準について」(昭和52年事務局⻑通達第6号)1(2)」

と回答されています。

ポイントは、景品をもらうためにしなければいけない最低の取引の価額は何なのかをみていく、ということです。

これは良いのですが、注意すべきは次の71-2番です。

71-2番では、

「Q71-1について、応募のために必要なスタンプを3個にした場合、無料の観光スポットを巡ればスタンプを集めることができるため、取引に付随する提供に当たらず、景品規制の対象とはならないでしょうか。」

という設問に対して、

「「取引に付随して」とは、取引を条件としない場合であっても経済上の利益の提供が取引の相⼿⽅を主たる対象として⾏われるときは、取引に付随する提供に当たります。

これは、取引に付随しない提供⽅法を併⽤していても同様〔注・全体として取引附随性ありになる〕です。

本件企画は、無料の観光スポットを3か所巡れば取引を⾏うことなく応募することが可能ですが、

他のスタンプを押す条件は取引が条件となっていますので、

取引に付随しない提供⽅法を併⽤しているとみて

〔注・無料の観光スポット3か所を巡って集めた〕スタンプ3個であっても取引に付随する提供に該当します。

取引に付随しない提供⽅法と付随する提供⽅法を併⽤することを前提とした場合

スタンプ3個を集めるために必要となる取引のうち最低のものは、無料の観光スポットを2か所巡り、⼟産物店で200円の商品を1個購⼊した場合ですので、取引の価額は200円になります。

(参照)「景品類の指定の告⽰の運⽤基準について」(昭和52年事務局⻑通達第7号)4(2)

「『⼀般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限』の運⽤基準について」(昭和52年事務局⻑通達第6号)1(2)」

と回答されています。

ちなみに、ここで参照されている定義告示運用基準4⑵は、

「(2) 取引を条件としない場合であっても、経済上の利益の提供が、次のように取引の相手方を主たる対象として行われるときは、「取引に附随」する提供に当たる(取引に附随しない提供方法を併用していても同様である。)。

ア 商品の容器包装に経済上の利益を提供する企画の内容を告知している場合

(例 商品の容器包装にクイズを出題する等応募の内容を記載している場合)

イ 商品又は役務を購入することにより、経済上の利益の提供を受けることが可能又は容易になる場合

(例 商品を購入しなければ解答やそのヒントが分からない場合、

商品のラベルの模様を模写させる等のクイズを新聞広告に出題し、回答者に対して提供する場合)

ウ 小売業者又はサービス業者が、自己の店舗への入店者に対し経済上の利益を提供する場合

(他の事業者が行う経済上の利益の提供の企画であっても、自己が当該他の事業者に対して協賛、後援等の特定の協力関係にあって共同して経済上の利益を提供していると認められる場合又は他の事業者をして経済上の利益を提供させていると認められる場合もこれに当たる。)

エ 次のような自己と特定の関連がある小売業者又はサービス業者の店舗への入店者に対し提供する場合

① 自己が資本の過半を拠出している小売業者又はサービス業者

② 自己とフランチャイズ契約を締結しているフランチャイジー

③ その小売業者又はサービス業者の店舗への入店者の大部分が、自己の供給する商品又は役務の取引の相手方であると認められる場合(例 元売業者と系列ガソリンスタンド)」

という規定であり、総付告示運用基準1⑵は、

「(2) 購入者を対象とするが購入額の多少を問わないで景品類を提供する場合の「取引の価額」は、原則として、百円とする。

ただし、当該景品類提供の対象商品又は役務の取引の価額のうちの最低のものが明らかに百円を下回つていると認められるときは、

当該最低のものを「取引の価額」とすることとし、

当該景品類提供の対象商品又は役務について通常行われる取引の価額のうちの最低のものが百円を超えると認められるときは、

当該最低のものを「取引の価額」とすることができる。」

という規定です。

この71-2の回答は、結論としてはQ&Aのとおりでよい(ほかにありえない)のですが、少なくとも、定義告示運用基準4⑵の文言解釈を根拠にこの結論を導いているのは、解釈論としては間違いだと思います。

ポイントは、定義告示運用基準4⑵の

「(2) 取引を条件としない場合であっても、経済上の利益の提供が、次のように取引の相手方を主たる対象として行われるときは、「取引に附随」する提供に当たる(取引に附随しない提供方法を併用していても同様である。)。」

の意味です。

素直に読む限り、この、取引に附随する提供方法と、取引に附随しない提供方法の「併用」というのは、「取引に附随」しても景品類が提供されるし、「取引に附随しない」でも景品類が提供されるという、選択的な提供を意味していると読むのが自然であるように思われます。

例えば、定義告示運用基準4⑵で挙げられている、

「ア 商品の容器包装に経済上の利益を提供する企画の内容を告知している場合」

であれば、容器包装での告知と新聞広告での告知を併用している場合です。

この場合、容器包装だけを見て応募する人も、新聞広告だけを見て応募する人(もちろん商品を購入しなくても応募できることが前提)もいるでしょうが、どちらも区別せず取引附随性ありとみなす、ということです。

次の、

「イ 商品又は役務を購入することにより、経済上の利益の提供を受けることが可能又は容易になる場合

(例 商品を購入しなければ解答やそのヒントが分からない場合、

商品のラベルの模様を模写させる等のクイズを新聞広告に出題し、回答者に対して提供する場合)」

というのは、(ちょっと無理矢理ですが)商品に記載されているヒントを元に特定の問題に解答するだけでも、夏休みの思い出を絵日記に書いて応募するだけでも、同じ景品がもらえる、という場合でしょうか。

次の、

「ウ 小売業者又はサービス業者が、自己の店舗への入店者に対し経済上の利益を提供する場合

(他の事業者が行う経済上の利益の提供の企画であっても、自己が当該他の事業者に対して協賛、後援等の特定の協力関係にあって共同して経済上の利益を提供していると認められる場合又は他の事業者をして経済上の利益を提供させていると認められる場合もこれに当たる。)」

というのは、入店しただけでも景品をもらえるし、入店せずにウェブサイトから申し込むだけでも、同じ景品がもらえる、というような場合が考えられます。

次の、

「エ 次のような自己と特定の関連がある小売業者又はサービス業者の店舗への入店者に対し提供する場合

① 自己が資本の過半を拠出している小売業者又はサービス業者

② 自己とフランチャイズ契約を締結しているフランチャイジー

③ その小売業者又はサービス業者の店舗への入店者の大部分が、自己の供給する商品又は役務の取引の相手方であると認められる場合(例 元売業者と系列ガソリンスタンド)」

というのは、上記ウの入店者と同じパターンが考えられます。

このように、定義告示運用基準4⑵の、取引附随性がある方法と、無い方法の、「併用」というのは、取引附随性がある方法と、無い方法の、いずれか(or)を満たせば景品類がもらえる、という意味ではないかと思うのです。

これに対して、71-2番が述べている、

「本件企画は、無料の観光スポットを3か所巡れば取引を⾏うことなく応募することが可能ですが、

他のスタンプを押す条件は取引が条件となっていますので、

取引に付随しない提供⽅法を併⽤しているとみて、スタンプ3個であっても取引に付随する提供に該当します。」

という部分はよいのですが、次の、

「取引に付随しない提供⽅法と付随する提供⽅法を併⽤することを前提とした場合

スタンプ3個を集めるために必要となる取引のうち最低のものは、無料の観光スポットを2か所巡り、⼟産物店で200円の商品を1個購⼊した場合ですので、取引の価額は200円になります。」

というのが、意味がよくわからないところです。

というのは、この回答は、

「スタンプ3個を集めるために必要となる取引のうち最低のもの」

であるところの、

「無料の観光スポットを2か所巡り、⼟産物店で200円の商品を1個購⼊した場合」

というのが、

「「取引に付随しない提供⽅法と付随する提供⽅法を併⽤

する場合であり、ひいては定義告示運用基準4⑵の(取引附随性のある提供方法と)「取引に附随しない提供方法を併用」する場合である、という理解に立っているように思われるからです。

でも、

「「無料の観光スポットを2か所巡り、⼟産物店で200円の商品を1個購⼊」

というのを、「無料の観光スポットを2か所巡る」ことと、「土産物店で商品を購入する」ことを併せて用いることが、定義告示運用基準4⑵の「併用」だというのはおかしいし、ここで4⑵を引っ張り出す必要も無いと思います。

これは端的に、取引附随性のある方法で最も取引の価額が少ない方法は何か、と問うた結果の答えであり、取引附随性がある方法と無い方法を「併用」したかどうかを問題にすべき場面ではないと思います。

別の観点からいうと、私は元々定義告示運用基準4⑵柱書の括弧書の考え方はおかしい(適用範囲が広すぎる)と思っていますが(ご興味のある方は、以前書いた「インターネットと店舗の両方で受け付ける懸賞」という記事もご覧下さい。)、仮に4⑵柱書の括弧書が廃止されたとしても、本件での取引の価額が、

「「無料の観光スポットを2か所巡り、⼟産物店で200円の商品を1個購⼊」

した場合の取引の価額であるべき、という点については、問題なく受け容れるでしょう。

このように、

「「無料の観光スポットを2か所巡り、⼟産物店で200円の商品を1個購⼊」

した場合というのは、取引附随性のある方法(土産物店での商品購入)と無い方法(無料観光スポット巡り)を「併用」したと見るべきではなく、全体として取引附随性がある方法での提供だとみるべきだと考えます。

4⑵の文言解釈をすれば、

「「無料の観光スポットを2か所巡り、⼟産物店で200円の商品を1個購⼊」

というのは、4⑵の、

「取引に附随しない提供方法を併用

には該当しない、ということです。

特定の問題に回答するだけならこのQ&Aのようにそれらしい理由を付けて回答してしまってもよいのかもしれませんが、このような緩い解釈をしていると、いつかボロが出るのでやめたほうがいいと思います。

最後に余談ですが、この設問はスタンプラリーという、ちょっと牧歌的な設例ですが、同じ性質の似たようなものとして、世の中では、取引附随性のある方法でも無い方法でも同じ種類のポイントがもらえて(もちろん、取引附随性がある方法の方がずっとたくさんポイントをもらえる)、一定数のポイントを貯めると景品と交換できる、という仕組みがよくあり、そのような景品交換ポイントシステムにもこの設問はそのままあてはまりますので、けっこう適用範囲の広いQ&Aといえます。

2023年8月15日 (火)

ステマ告示の経過措置?

ステマ告示では冒頭に、

「不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第五条第三号の規定に基づき、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示を次のように指定し、令和五年十月一日から施行する。」

と規定されています。

今年の10月1日から施行されると書いてあるだけで、特段経過措置等はありません。

なので施行日前の広告についてはステマ告示は適用されないし、10月1日以降(1日を含む)の広告についてはステマ告示が適用されることになります。

そう言ってしまうと簡単なのですが、気をつける必要があるのは、アフィリエイトなどのインターネット上の表示です。

さまざまな表示(広告)がいつなされたのか(表示の時点)の問題については、

「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」(以下「課徴金ガイドライン」といいます。)

が参考になります。

同ガイドラインの1(「課徴金対象期間」)の⑸(「想定例」)の⑤では、

「⑤ 事業者Eが、自ら直接一般消費者に対して販売する商品e の取引に際して、

商品e について有利誤認表示を内容とするウェブサイトを平成31 年11 月1日から平成32 年4月30 日までの間公開した場合、

事業者Eの課徴金対象行為をした期間は、平成31 年11 月1日から平成32 年4月30 日までとなる。〔以下省略〕」

と説明されています。

つまり、ウェブサイトの表示の場合は、最初にサイトを公開した日だけでなく、公開を続けていた期間中、不当表示行為をしている、とみなされる、ということです。

ということは、アフィリエイト広告の場合、広告主がアフィリエイターに広告の掲載を指示したのがステマ告示施行前であっても、施行日後もそのアフィリエイト広告が引き続きアフィリエイトサイトに表示されつづけていれば、ひきつづき表示がされ続けていることになる、ということです。

なので、ステマ告示前に掲載を開始したアフィリエイト広告についても、10月1日の告示施行日までに、「広告」など、広告主の表示であるとわかるひょうな表記をしてもらう必要があります。

これは、場合によっては広告主に結構厳しい結果になるかもしれません。

というのは、アフィリエイトサイトを管理しているのはアフィリエイターなので、広告主は直接アフィリエイト記事を消したり変更したりすることができないからです。

この点、課徴金ガイドライン1⑸の想定例①では、容器包装の表示について、

「① 商品a を製造する事業者Aが、

小売業者を通じて一般消費者に対して供給する商品a の取引に際して、

商品a について優良誤認表示を内容とする包装をし、

その包装がされた商品a を、

平成30 年4月1日から同年9月30 日までの間、

毎日小売業者に対し販売して引き渡し場合、

事業者Aの課徴金対象行為をした期間は、平成30 年4月1日から同年9月30 日までとなる

(小売業者の一般消費者に対する販売行為は、事業者Aの行為ではない。

なお、当該小売業者が事業者Aとともに当該優良誤認表示の内容の決定に関与していた場合は、

当該小売業者が一般消費者に対して商品a を販売して引き渡す行為について、

別途課徴金対象行為の該当性が問題となる。)〔以下省略〕」

とされています。

つまり、容器包装への表示の場合は、商品を引き渡す行為が不当表示をする行為であり、その後小売店で販売される行為は不当表示行為ではない(よって小売店の店頭にならんでいる商品を回収する必要は無い)、ということです。

想定例②でも、チラシについて、

「② 事業者Bが、

自ら直接一般消費者に対して販売する商品b の取引に際して、

商品b について有利誤認表示を内容とするチラシを、

自ら平成30 年10 月1日から平成31 年3月31 日までの間配布した場合、

事業者Bの課徴金対象行為をした期間は、

平成30 年10 月1日から平成31 年3月31 日までとなる。〔以下省略〕」

とされていて、チラシの不当表示行為はチラシを配布する行為だとされています。

したがって、いったん配ったチラシを回収したりする必要はありません。

このように、商品やチラシの場合は引き渡したり配布した時点で不当表示行為が終わるのに対して、ウェブサイトの場合は表示され続けている限り不当表示行為が続くというのは、バランスを欠くように見えるかもしれません。

しかも、アフィリエイトの場合、広告主はアフィリエイト記事に対する直接のコントロールを有しないので、いわば、商品を小売店に引き渡してしまった(その結果商品へのコントロールを失った)メーカーと同じ立場にいるのではないか(よって、コントロールを失った時点以降の表示については不当表示行為はないといえるのではないか)、という気がしないではありません。

でもやはり、アフィリエイトの場合も、広告主自身が行うウェブサイトの広告と同じように、掲載され続けている限り不当表示行為が継続すると考えるべきでしょう。

少なくとも、課徴金ガイドラインを素直に読む限り、そのようにしか解せません。

また、コントロールは確かに及びませんが、コントロールが及ばないことを広告主は理解しながらアフィリエイトを使っているわけですから、自業自得です。

したがって、たとえば何年も前に表示を開始したアフィリエイト記事も含めて、10月1日以降も表示され続けるのであれば、すべて「広告」などの注記をする必要があります。

そして、アフィリエイターが「広告」の注記を拒否した場合でも、ステマ告示違反を問われるのはあくまで広告主です。

これも、アフィリエイトの仕組み上、仕方ありません。

また、仮にアフィリエイターが「広告」との注記をすることを拒否した場合に、広告主がステマ告示違反になるのはしかたないとしても(しかたないではすまされないですが)、さらに、広告主は「広告」との注記をさせるよう最善を尽くさないと、管理措置義務違反(景表法26条)となるというべきでしょう。

たとえば、「広告」である旨の注記に応じないアフィリエイターに対してひきつづき出稿を依頼し続けるというようなことをすると、管理措置義務違反になると考えます。

そして、以上述べたことはアフィリエイターだけでなく、インフルエンサーに広告を依頼していた場合にもあてはまります。

アフィリエイターやインフルエンサーを使っていた広告主は大変ですが、未対応の広告主は10月になるまでに対応されたらよいかと思います。

 

【2024年3月16日追記】

ステマ告示とガイドラインのパブコメ196番では、

「本告示の制定により規制対象になるのは、告示施行後に事業者又は第三者が行う表示行為のみであるとの理解でよいか。特にアフィリエイト広告については、施行前になされた表示まですべて確認し、必要な対応をとることは事実上不可能であるため、配慮されたい。」

というコメントに対して、消費者庁から、

「一般的に、立法によるにせよ、告示によるにせよ、新たな法規制は、施行日後に生じた事実に適用されるものであり、施行日前に遡及することはありません。

アフィリエイト広告、事業者が施行日前に第三者に行わせた表示であっても、その後、表示の作成者である第三者と連絡がつかず、事業者が表示を管理できない状態にあるなど施行日後において事業者の表示と判断される実態を欠いている場合には、本告示の対象となることはありません。

しかし、事業者が施行日前に第三者に行わせた表示であっても、施行日後も、当該表示の作成者と連絡がつくなど事業者が表示を管理できる状態にあるなど施行日後において事業者の表示であると判断される実態にある場合は、施行日後の表示が本告示の対象となる可能性があります。」

との回答がなされています。

まとめると、

原則、施行日前に行わせたアフィリエイトの表示でも、ステマ告示の対象となる

例外的に、施行日後にアフィリエイターと連絡が取れないなどの場合は、ステマ告示の対象とならない

ということのようです。

連絡はつくけど言うことを聞かないときはステマになって、連絡がつかないときはステマにならないというのでほんとうにいいのか、とか、アフィリエイト以外にもどこまで同じに考えて良いのか、とか、この理屈で行くと優良誤認や有利誤認の時にもいろいろと影響があるのではないか、とか、いろいろ細かい論点は思い浮かびますが、ひとまずアフィリエイトについては消費者庁がこう言っているのですから、この考え方に従っておけばよいと思います(それでも大変ですが)。

2023年8月14日 (月)

⽉額サービス契約時の取引の価額に関する消費者庁景品Q&A68番について

6月30日に改定された消費者庁景品Q&Aで、新たに追加された68番では、

「継続取引を前提とした⽉額サービスの契約を条件として新規契約者に対して景品を提供しようと考えています。

契約時に⽀払う必要があるのは初期費⽤及び初⽉の⽉額料⾦になり、契約期間の定めはありません。

この場合の取引の価額はどのように算定すればよいでしょうか。」

との設問に対して、

「商品⼜は役務の購⼊者を対象とするが購⼊額の多少を問わないで景品類を提供する場合の取引の価は、原則として100円ですが、その景品類を提供する対象商品⼜は役務の取引の価額のうち最低のものが明らかに100円を下回っているときはその価格を取引の価額とし、また、通常⾏われる取引の価額のうち最低のものが100円を超えると認められるときは、その最低のものを取引の価額とすることができ
ます。

⽉額払いのサービスの場合、通常⾏われる取引の価額のうち最低のものとは基本的に1か⽉分の利⽤料⾦ですが、

取引の実態や契約内容から⼀定期間継続して利⽤すると認められるときには、その期間の利⽤料⾦の合計額を取引の価額として考えることができる場合があります。

ただし、契約において特に契約期間の制約等がなく、取引の実態としてもごく短期間で解約する顧客が存在するような場合には、⼀定
期間の利⽤料の合計額を取引の価額とすることは適当ではありません

本件は、初期費⽤と初⽉の⽉額料⾦の合計が、通常⾏われる取引のうち最低のものですので、これを取引の価額とすることになりますが、取引の実態によっては、初期費⽤と⼀定期間の利⽤料⾦の合計額を取引の価額とすることができる場合があります

(参照)「『⼀般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限』の運⽤基準について」(昭和52年事務局⻑通達第6号)1(2)」

と回答されています。

でも、

「⽉額払いのサービスの場合、通常⾏われる取引の価額のうち最低のものとは基本的に1か⽉分の利⽤料⾦です」

というのは、さすがに厳しすぎるのではないでしょうか。

確かにQ&Aでも、

取引の実態契約内容から⼀定期間継続して利⽤すると認められるときには、その期間の利⽤料⾦の合計額を取引の価額として考えることができる場合があります。」

と言ってくれているので、月払いだからと言って何が何でも1か月分の利用料金を取引の価額にしなければならないと消費者庁も考えているわけではないと理解はできるのですが、それを打ち消すかのように、

「ただし、契約において特に契約期間の制約等がなく、取引の実態としてもごく短期間で解約する顧客が存在するような場合には、⼀定期間の利⽤料の合計額を取引の価額とすることは適当ではありません。」

と述べているのは、困ったものです。

とくに、

「取引の実態としてもごく短期間で解約する顧客が存在するような場合」

というのは、1人でも存在すれば「存在する」と読むのが論理的なので、なかなか厳しいものがあります(1か月でやめる人が1人でもいれば、初月分料金しか取引の価額にならない)。

なので、

取引の実態契約内容から⼀定期間継続して利⽤すると認められる」

というのは、ある程度常識的に緩やかに解して良いのではないかと思います。

その結果、1人でも1か月でやめたら1か月分料金しか取引の価額にならないという結論は避けられることが多いだろうと思われます。

つまり、

(原文)「ただし、契約において特に契約期間の制約等がなく、取引の実態としてもごく短期間で解約する顧客が存在するような場合には、⼀定期間の利⽤料の合計額を取引の価額とすることは適当ではありません。」

というのは、

(植村改)「ただし、契約において特に契約期間の制約等がなく、取引の実態としてもごく短期間で解約する顧客が相当割合存在するような場合には、⼀定期間の利⽤料の合計額を取引の価額とすることは適当ではありません。」

というくらいに読み替えて良いのではないかと思います。

さて、ここで「取引の実態」を考慮するとしているのは、実際に、どれくらいの人がどれくらいの期間契約を継続するかを見る、ということでしょう。

これはなかなかはっきりとした線を引きにくい問題で、感覚的なものになってしまいますが、まず手堅いところから言うと、下位2.5%までは例外として無視していいのではないかと思います。

例えば、1万人の契約者のうち、250人の人は1年未満で解約するとしても、その250人は無視して、1年間を通常の取引期間とみてよい、ということです。

その根拠は、統計学でよく用いられる95%信頼区間の片側に外れる確率が2.5%だからです。

ここからが本当に感覚的なものになってきますが、5%でも、たぶん大丈夫なんじゃないかと思います。

敢えて理屈を付ければ、95%信頼区間の両側に外れる確率が5%だから、でしょうか。(あまり理屈になっていませんが。)

さらに10%になると、かなり微妙というか、私なら10%であれば常にOKとは言わないと思います。

というのは、10人に1人もいる人の取引の価額を、

「当該景品類提供の対象商品又は役務について通常行われる取引の価額」(総付運用基準1⑵)

ではないので無視してよい、とは言いにくいように思われるからです。

注意すべきは、これは全部の顧客を母集団にしている、ということです。

以前見かけたのは、クレジットカードか何かの継続的契約で、1年間全く利用のない人は例外的な顧客なので集計の対象から外して、残った母集団のうちさらに下位○○%、というような考え方をしている例がありました。

これでは完全にだめだと思います。

2023年8月 5日 (土)

使途を限定した割引券に関する消費者庁景品Q&A47番について

消費者庁景品Q&A47番(「減額し⼜は割り戻した⾦銭の使途を制限する場合」)では、

「Q47 当店では期間を限定して、商品A(1,000円)を10個購⼊した⽅全員に、当店で商品Bを購⼊するときに使⽤できる3,000円割引券を提供したいと考えています。

この割引券は商品Bに限定しているため、「減額し⼜は割り戻した⾦銭の使途を制限する場合」に該当し、景品規制の対象となるのでしょうか。」

との設問に対して、

「A ⾃⼰の供給する商品⼜は役務の取引において、取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相⼿⽅に対し、⽀払うべき対価を減額すること(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)は、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益に該当し、景品類に含まれず、景品規制の対象とはなりません。

ただし、対価の減額⼜は割戻しであっても、減額し⼜は割り戻した⾦銭の使途を制限する場合、例えば、減額し⼜は割り戻した⾦銭を旅⾏費⽤に充当させる場合などは景品類に該当することとなります。

この「⾦銭の使途を制限する場合」とは、本来、減額し⼜は割り戻した「⾦銭」は⾃由に使⽤できるにもかかわらず、特定の商品を購⼊するためにしか使うことができないという条件を付して減額する⼜は割り戻す場合は、値引とは認められないという意味であり、「⾦銭」以外は含まれません。

本件は、条件を満たす購⼊者に対し、「⾦銭」ではなく、商品Bの購⼊時に使⽤できる⾃社の「割引券」を提供しているだけですので、

「減額し⼜は割り戻した⾦銭の使途を制限する場合」

には該当せず、取引通念上妥当と認められる基準に従っていれば、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益として景品類に含まれず、景品規制は適⽤されません

(参照)「景品類等の指定の告⽰の運⽤基準について」(昭和52年事務局⻑通達第7号)6(3)ア、(4)ア」

と回答されています。

(ちなみに、引用されている定義告示運用基準6⑶アというのは、

「(3) 次のような場合は、原則として、「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」に当たる。

ア 取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額すること

(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)

(例 「×個以上買う方には、○○円引き」、「背広を買う方には、その場でコート○○%引き」、「×××円お買上げごとに、次回の買物で○○円の割引」、「×回御利用していただいたら、次回○○円割引」)。」

という規定であり、6⑷アというのは、

「(4) 次のような場合は、「値引と認められる経済上の利益」に当たらない

ア 対価の減額又は割戻しであっても、懸賞による場合、減額し若しくは割り戻した金銭の使途を制限する場合

(例 旅行費用に充当させる場合)

又は同一の企画において景品類の提供とを併せて行う場合

(例 取引の相手方に金銭又は招待旅行のいずれかを選択させる場合)」

という規定です。)

つまり、商品Aの取引に附随して総付で商品Bのみの割引に用いられる割引券を提供することは、値引に該当するので景品規制は適用されない、ということです。

結論としては、消費者庁が値引だ(景品規制は適用されない)というのですから特段異を唱えるつもりはないのですが、理由付けがおかしいと思います。

まず、Q&A回答のうち、

「この「⾦銭の使途を制限する場合」とは、・・・「⾦銭」以外は含まれません。」

という部分は、そのとおりでしょう。

「金銭」には、「金銭以外」は含まれません。以上。

ですが、設問のような使途を特定商品Bに限定した割引券について、

「本件は、条件を満たす購⼊者に対し、「⾦銭」ではなく、商品Bの購⼊時に使⽤できる⾃社の「割引券」を提供しているだけですので、

「減額し⼜は割り戻した⾦銭の使途を制限する場合」

には該当せず・・・」

という理由で値引だと整理しているのは、定義告示運用基準6⑷アの解釈を誤っていると思います。

つまり、定義告示6⑷アは、

「(4) 次のような場合は、「値引と認められる経済上の利益」に当たらない

ア 対価の減額又は割戻しであっても、懸賞による場合、減額し若しくは割り戻した金銭の使途を制限する場合

(例 旅行費用に充当させる場合)

又は同一の企画において景品類の提供とを併せて行う場合

(例 取引の相手方に金銭又は招待旅行のいずれかを選択させる場合)」

と定めており、提供される経済上の利益が「対価の減額又は割戻し」の態様であることが前提です。

これに対して、割引券は、ここでの「対価の減額又は割戻し」の態様に該当しません。

別の切り口から言うと、「金銭」には「金銭以外」は含まれないという理由で47番のような回答を理由付けることができるためには、

①減額し若しくは割り戻した金銭の使途を制限する

という表現と、

②減額し若しくは割り戻した金銭以外の使途を制限する

という表現が、どちらも等しく論理的に成り立たなければなりません。

いわば、①と②が同じ論理構造にある必要があります。

ですが、②は、論理的におかしいです。

そのおかしさは、47番回答が行っている論理操作(「割引券」は「金銭以外」なので、商品Bの割引券は値引であるという論理操作)どおり、「金銭以外」を「商品Bの割引券」に置き換えてみればいいのです。

そうすると、

②’ 減額し若しくは割り戻した割引券の使途を制限する

という日本語になりますが、これは日本語として成り立ちません。

「割引券」は、減額したり割りもどしたりするものではないからです。

比喩的に言えば、47番の回答は、定義告示6⑷アの定義域(「金銭」)の外の値(「割引券」)を代入して結論を導くという論理的誤りを犯しています。

それに、「対価の減額又は割戻し」というのは、普通の読み方をすれば、本体商品(商品A)の対価の減額又は払い戻しという意味でしょう。

ここでいきなり、別商品(商品B)の対価の減額又は払い戻しの話が出てくるというのは、どうかんがえてもおかしいと思います。

設問に合わせて6⑷アを書き加えると、

「(4) 次のような場合は、「値引と認められる経済上の利益」に当たらない

ア 商品Aの対価の減額又は割戻しであっても・・・減額し若しくは割り戻した金銭の使途を制限する場合」

となるはずなのです。

ですので、商品Bの割引券に定義告示6⑷アを適用するのは、明らかに間違いです。

では、商品Aの購入者に商品Bの3000円割引券を提供するのが「値引」に該当するとして、その理由はどう説明したらいいのでしょう。

私は素直に、定義告示1項ただし書の「値引」に該当すると言ってしまえばよく、それ以上の説明は要らないと思います。

あえて根拠を探せば、定義告示運用基準6⑶アで、

「(3) 次のような場合は、原則として、「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」に当たる。

ア 取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額すること

(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)

(例 「×個以上買う方には、○○円引き」、

「背広を買う方には、その場でコート○○%引き」、

「×××円お買上げごとに、次回の買物で○○円の割引」、

「×回御利用していただいたら、次回○○円割引」)。」

という例が挙げられていますが、商品Aの購入者に商品Bの購入に使える3000円割引券(金額証)を提供することは、商品Aと商品Bの取引(売主はもちろん同じ事業者)という「複数の取引を条件として」、商品Bの「対価を減額する」ことであるので、「複数回の取引を条件として対価を減額する場合」に該当する、と説明することができます。

また、6⑶アの

「背広を買う方には、その場でコート○○%引き」

というのは、特定のコート(「コート」というカテゴリーで「特定」されているという意味ではなくて、特定の品名で特定されているコートという意味)であってもよい、と説明してもよいですし、

「×××円お買上げごとに、次回の買物で○○円の割引」

では、「次の買物」で買える商品を(商品Bに)特定してもよいのだ、と説明してもよいでしょう。

というわけで、商品Aの購入者に商品Bの3000円割引券(金額証)を提供することを値引だとすることを妨げるものは、何もなさそうです。

ただし、商品Aの購入者に商品Bの引換券を提供することは、値引には該当せず、景品類に該当するというべきでしょう。

それは、商品Aの取引に附随して商品Bを提供しているのにほかならないからです。

例えば、商品Bが3,000円で、3,000円の割引券(金額証)で商品Bそのものが買えてしまう場合は、3,000円の割引券の提供は景品類の提供に該当するというべきでしょう。

この点については、Q&A47番でも、

「Q47 当店では期間を限定して、商品A(1,000円)を10個購⼊した⽅全員に、当店で商品Bを購⼊するときに使⽤できる3,000円割引券を提供したいと考えています。」

となっているので、その割引券だけで商品Bを購入できてしまうものは想定されていないと読めます。

つまり、商品Bの価格は1個3000円を超えるもの(例えば1万円)が想定されていると考えられます。

1つ注意を要するのは、定義告示運用基準5⑵で、

「(2) 商品又は役務を通常の価格よりも安く購入できる利益も、「経済上の利益」に含まれる。」

とされていることとの関係です。

この点については、Q&A47番が、事業者が自ら販売する商品Aの購入者に対して、同じく自ら販売する商品Bの3,000円割引券を提供することが(商品Bの)値引に該当するとしていることから、定義告示運用基準5⑵の

「商品又は役務を通常の価格よりも安く購入できる利益」

には、

商品Bを通常の価格よりも安く購入できる利益」

も含まれ、ひいては、「商品Bを通常の価格よりも安く購入できる利益」は、

「経済上の利益」

に含まれるけれども、

「正常な商慣習に照らして値引・・・と認められる経済上の利益」

なので、景品類には該当しない、と説明することになります。

もう1つ気をつけるべきなのは、特定商品との引換にのみ用いることができる金額証を総付規制の対象としている(総付規制の対象外から除外している)総付運用基準4⑵との関係です。

すなわち、総付運用基準4⑵では、

「4 告示第二項第三号の「自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票」について

(1) 「証票」の提供方法、割引の程度又は方法、関連業種における割引の実態等を勘案し、公正な競争秩序の観点から判断する。

(2) 「証票」には、金額を示して取引の対価の支払いに充当される金額証

特定の商品又は役務と引き換えることにしか用いることのできないものを除く。)

並びに

自己の供給する商品又は役務の取引及び他の事業者の供給する商品又は役務の取引において共通して用いられるものであって、同額の割引を約する証票

含む。」

と規定されており、「特定の商品又は役務と引き換えることにしか用いることのできない」金額証は、総付告示2項3号で、

「2 次に掲げる経済上の利益については、景品類に該当する場合であつても、前項の規定〔注・総付の金額規制〕を適用しない。

一 商品の販売若しくは使用のため又は役務の提供のため必要な物品又はサービスであって、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの

二 見本その他宣伝用の物品又はサービスであつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの

 自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票であつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの」

として、総付規制が適用されないとされている「証票」に含まれない、とされています。

つまり、割引券は総付の金額規制の対象外だけれども、「特定の商品」(商品B)と「引き換える」ことにしか用いることのできない「金額証」は、総付規制の対象だ、ということです。

このことと整合的に考えても、Q&A47番で値引に該当するとされている

「当店で商品Bを購⼊するときに使⽤できる3,000円割引券

というのは、「特定の商品」(商品B)と「引き換える」ことにしか用いることのできない「金額証」であってはならず、したがって、割引券3,000円は商品Bの代金の(全部ではなく)一部に充当されるものに限られる(逆に言えば、商品Bは3,000円超でなければならない)、ということがわかります。

このことからさらに、総付運用基準4⑵で、総付金額規制の対象外とされている

「金額を示して取引の対価の支払いに充当される金額証

の範囲から除外されている(よって総付規制の対象になる)

「特定の商品又は役務と引き換えることにしか用いることのできないもの」

というのは、文字どおり、特定の商品(商品B)そのものと「引き換える」ことにしか用いることができない金額証を意味しており、

代金の一部に充当できるに過ぎないものは、

「特定の商品又は役務と引き換えることにしか用いることのできないもの」

には含まれない、つまり、代金の一部に充当できるに過ぎないものは総付規制の対象外だ、ということがわかります。

今回、Q&A47番で、商品Bの3,000円割引券(金額証)が、値引だと明確にされたので、特定商品の代金の一部に充当できる金額証は、総付規制の適用の有無以前の問題として、そもそも「値引」である、と整理されていることがはっきりしたといえます。

2023年8月 4日 (金)

【お知らせ】下請法のセミナーをします。

9月15日(金)13時~15時に、Business & Law主催の以下のセミナーで講師をすることになりました。

2時間でつかむ下請法の最新実務

ライブ配信のみです。

上のリンク先にも書いてありますが、プログラムは以下のとおりです。

1 近時の下請法摘発事例の特徴

2 下請法適用の有無の判断

 ⑴下請法解釈の基本的視座

 ⑵製造委託に当たるか否かの判断

 ⑶情報成果物に当たるか否かの判断

 ⑷近時の下請法の解釈変更

3 価格転嫁パッケージと下請法

 ⑴下請法における近時の買いたたき規制の強化

 ⑵「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」について

 ⑶「労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇に関する下請法Q&A」の解説

 ⑷価格転嫁に関する実務的な対応

 ⑸パートナーシップ構築宣言のデメリットと下請振興基準

4 インボイス制度と下請法
 ⑴インボイス制度の概要

 ⑵「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」の解説

 ⑶インボイス制度に対する実務的な対応・リスク回避策

ご興味のある方は上記リンクからお申し込み頂けるとうれしいです。

2023年8月 3日 (木)

増量値引に関する消費者庁景品Q&A43番に対するささやかな疑問

6月30日に改定される前の消費者庁景品Q&A22番では、増量値引について、

「同じ商品を5個買ってくれた人に,更にもう1個同じ商品をプレゼントする場合,景品規制の対象となりますか。」

という設問に対して、

「取引通念上妥当と認められる基準に従い,ある商品・サービスの購入者に対し,同じ対価で,それと同一の商品・サービスを付加して提供することは,値引と認められる経済上の利益に該当し,景品規制の対象とはなりません。

例えば,「コーヒー5回飲んだらコーヒー1杯無料券をサービス」などもこれに該当します。

本件については,上記コーヒーの例と同様と考えられますので,景品規制は適用されません。

(参照)「景品類等の指定の告示の運用基準」(昭和52年事務局長通達第7号)6(3)ウ」

と回答されていました。

(ちなみに、引用されている定義告示運用基準6⑶ウというのは、

「(3) 次のような場合は、原則として、「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」に当たる。

〔ア、イ省略〕

ウ 取引通念上妥当と認められる基準に従い、ある商品又は役務の購入者に対し、同じ対価で、それと同一の商品又は役務を付加して提供すること

(実質的に同一の商品又は役務を付加して提供する場合及び複数回の取引を条件として付加して提供する場合を含む

(例 「CD三枚買ったらもう一枚進呈」、「背広一着買ったらスペアズボン無料」、「コーヒー五回飲んだらコーヒー一杯無料券をサービス」、「クリーニングスタンプ○○個でワイシャツ一枚分をサービス」、「当社便○○マイル搭乗の方に××行航空券進呈」)。)。

ただし、「コーヒー○回飲んだらジュース一杯無料券をサービス」、「ハンバーガーを買ったらフライドポテト無料」等の場合は実質的な同一商品又は役務の付加には当たらない。」

という規定です。)

これが、改正後の43番では、

「Q43 同じ商品を5個購⼊した者に、もれなく更にもう1個同じ商品をプレゼントする場合、景品規制の対象となりますか。」

というほぼ同じ設問に対して、前半部分では、

「取引通念上妥当と認められる基準に従い、ある商品⼜は役務の購⼊者に対し、同じ対価で、それと同⼀の商品⼜は役務を付加して提供することは、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益に該当し、景品類に含まれず、景品規制の対象とはなりません。

複数回の取引を条件として付加して提供する場合、例えば、「コーヒー5回飲んだらコーヒー1杯無料券をサービス」などもこれに該当します。

本件は、同じ対価で、それと同⼀の商品を付加して提供することになりますので、取引通念上妥当と認められる基準に従っているのであれば、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益に該当し景品類に含まれず、景品規制は適⽤されません。」

と、ほぼ同じような回答がされています。

それはいいのですが、問題は後半部分です。

後半部分では、

「なお、購⼊した商品・サービスと同⼀の商品・サービスであっても、購⼊した数量等よりも多く付加する場合には、通常、取引通念上妥当とは認められないと考えられますので、景品類に含まれ、総付景品の規制の対象となります(Q61、Q110参照)。

(参照)「景品類等の指定の告⽰の運⽤基準について」(昭和52年事務局⻑通達第7号)6(3)ウ」

と回答されています。

これは、文言を素直に読むと、例えば、同じ商品を5個「購入した」場合に、「購入した数量」(=5個)よりも多く付加すると(例えば、6個とか、7個とか付加すると)、景品類になる、というように読めます。

もっと簡単にすると、例えば、ある商品を1個1000円で購入した場合に、おまけで(ただで)2個付加すると、その2個は景品類になる、ということになりそうです。

しかし、これは明らかにおかしいです。

「1個買ったら2個おまけ」なんて、世の中にいくらでもありそうで、これは増量値引でしょう。

Q&A42番で、全額キャッシュバックが値引だとされていることとも整合しません。

したがって、このQ43番は、5個買った人に、買った5個の対価も受け取らずさらに追加で1個ただで付ける(顧客は6個ただで手に入れる)、というのは景品類だ、といっていると理解すべきだと思われます。

(そうすると、そもそも有償であるべき「取引」がないのではないかという疑問が湧いてくるのですが、5個の購入でいったん代金債権は発生し、これを売主が放棄した上でさらに1個おまけでつける、というようにでも整理するのでしょう。)

したがって、5個有料で買った人に、6個無料で付ける(購入者は5個分の対価で合計11個手に入れる)、というのは、このQ&Aの下でも問題ないと考えられます。

結論はこれしか無いと思うのですが、このQ43番の文言でそのように読めというのは無理で、ほとんど誤記のレベルの問題ではないかと思われます。

あるいは、Q43番は、本当に、「1個買ったら2個おまけ」というのは増量値引ではなく景品類だ、という意味かも知れませんが、もしそういう意味なら、強く異議を唱えたいと思います。

2023年8月 2日 (水)

全額キャッシュバックに関する消費者庁改正景品Q&Aについて(旧21番→新42番)

6月30日に改正前の消費者庁景品Q&A21番では、

「Q21 当店では,期間を限定して,商品A(1,000円)を10個買ってくれた人を対象に,もれなく3,000円のキャッシュバックを行いたいと考えています。

この場合,景品規制の対象となるのでしょうか。」

との設問に対して、

「 キャッシュバックなどの方法により,取引通念上妥当と認められる基準に従い,支払った代金の割戻しを行うことは,値引と認められる経済上の利益に該当し,景品規制の適用対象とはなりません。

 ただし,懸賞によりキャッシュバックを行う場合,割り戻した金銭の使途を制限する場合,又は同一の企画において景品類の提供を併せて行う場合は,景品規制の適用対象となります。

(参照)「景品類等の指定の告示の運用基準」(昭和52年事務局長通達第7号)6(3)イ,(4)」

と回答されていました。

これに対して改正後の42番では、

「Q42 当店では、期間を限定して、商品A(1,000円)を10個購⼊してくれた⽅を対象に、もれなく3,000円のキャッシュバックを⾏いたいと考えています。

この場合、景品規制の対象となるのでしょうか。」

という同じ質問に対して、まず、

「A キャッシュバックなどの⽅法により、取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相⼿⽅に対し、⽀払った代⾦について割戻しを⾏うこと(複数回の取引を条件として割り戻す場合を含む。)は、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益に該当し、景品類に含まれず、景品規制の対象とはなりません。

本件は、商品Aの購⼊者に対し、⽀払った代⾦の割戻しを⾏うものですので、取引通念上妥当と認められる基準に従っているのであれば、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益に該当し景品類に含まれず、景品規制は適⽤されません。」

と、概ね改正前と同様の回答をしたあとで、

「なお、例えば、割戻しの対象となる取引の⾦額よりも多い額を提供する場合には、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益には該当しないと考えられますので、景品類に含まれ、総付景品の規制の対象となります(Q61、Q110参照)。

(参考)「景品類等の指定の告⽰の運⽤基準について」(昭和52年事務局⻑通達第7号)6(3)イ」

との回答が加えられました。

つまり、1個1000円のものを10個購入した者に対して、「割戻しの対象となる取引の金額」(1000×10)である1万円よりも大きい金額をキャッシュバックすることは景品類に該当するけれども、そうでなければ値引である、ということです。

この実務上の意義は大きいと思います。

というのは、今まで、「正常な商慣習に照らして値引と認められる」のはどのくらいまでの値引にとどまらないといけないのかがはっきりしないため、保守的に、例えば値引は原則5割までにとどめよう、といった方針を採用する企業が少なくなかったからです。

私は、そのような運用はむしろ競争を阻害するので、そのように保守的に考える必要はないとアドバイスしてきましたが、では何割までならOKなのか確たる基準もなく、その都度、その業界での実態などを踏まえて、事案に応じて答えていました。

それが今回、代金満額払い戻すまでなら値引だ(それを超えたら景品類だ)ということが、消費者庁から明確に示されたわけですから、企業にとっては朗報です。

厳密に言えば、42番回答は、

「割戻しの対象となる取引の⾦額よりも多い額を提供する場合には、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益には該当しない」

といっているだけで、

「割戻しの対象となる取引の⾦額かそれよりも小さい額を提供する場合には、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益には該当する

とは言っていないので、全額払い戻し以下の払い戻しでも景品類に該当する可能性は論理的にはなくはないのですが、この手のQ&Aでそこまで意地悪な解釈は、さすがにされないでしょう。

また、「値引」という言葉の意味からしても、100%超の値引(事業者の持ち出し)を「値引」というのは無理がある、ともいえます。

というわけで、企業の皆さんは、景品にあたるかどうかを心配することなく、どんどん値引をされたらいいと思います(ただし、商品代金以内で)。

2023年8月 1日 (火)

グループの別法人で使える割引券に関する消費者庁景品Q&A41番の疑問

消費者庁景品Q&Aの41番(「⾃店値引の範囲」)では、

「Q 当社は、スポーツクラブを運営しているほか、エステティックサロンも運営しています。このたび、スポーツクラブの新規⼊会者に対し、エステティックサロンで使⽤できる値引券を提供したいと考えています。

この値引券は他店の値引として、景品類に含まれ、景品規制の対象になりますか。」

という設問に対して、まず前半部分で、

「⾃⼰の供給する商品⼜は役務の取引において、取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相⼿⽅に対し、⽀払うべき対価を減額すること(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)は、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益に該当し、景品類に含まれず、景品規制の対象とはなりません。

これは、商品・サービスの購⼊時に対価を減額する場合だけでなく、次回以降に商品・サービスを購⼊する際に対価を減額する場合も含み、また、同⼀の商品だけでなく、別の種類の商品について対価を減額する場合も含みます。

本件は、スポーツクラブとエステティックサロンは別のサービスですが、どちらもこの事業者が供給するものですので、取引通念上妥当と認められる基準に従っているのであれば、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益に該当し景品類に含まれず、景品規制の対象とはなりませ。」

と回答されています。

これはいいのですが、Q&Aは続けて、

「なお、仮に、エステティックサロンは別法⼈が運営するものであるという場合には、この事業者のスポーツクラブの取引に付随して、他店であるエステティックサロンの値引券を提供していることになりますので、景品類に含まれ、総付景品の規制の対象となります(Q68、Q110参照)。

(参照)「景品類等の指定の告⽰の運⽤基準について」(昭和52年事務局⻑通達第7号)6(3)ア」

と、同一法人か別法人かで区別するとの回答をしていますが、これは大いに問題だと思います。

(ちなみに、引用されている定義告示運用基準6⑶アは、

「(3) 次のような場合は、原則として、「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」に当たる。

ア 取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額すること(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)(例 「×個以上買う方には、○○円引き」、「背広を買う方には、その場でコート○○%引き」、「×××円お買上げごとに、次回の買物で○○円の割引」、「×回御利用していただいたら、次回○○円割引」)。」

という複数回取引を条件とする値引きの話なので、この後半部分には関係がありません。)

いやしくも競争法の端くれであった景表法において、同じグループ(競争単位)なのに、同一法人か別法人かで結論が異なるということは、解釈論としてちょっとありえないのではないでしょうか?

景表法は消費者庁の下で純粋消費者保護法になったとしても、消費者の目からみて同一法人か別法人かなんてわかりようもありませんから、なおさらこのような解釈には実質的な根拠がないと思います。

そうすると、このQ&Aの回答が依拠しているのは、専ら、「値引」というのは自分と取引した人に対して当該取引の対価を減額することである(他人との取引の対価の減額は、言葉の意味からして「値引」ではありえない)ということと、同じグループでも別法人なら別人格だという、極めて形式的な根拠だけなのではないかと疑われます。

このように、景品類に該当するかどうかを判定するに当たって、同一法人かグループ内別法人かで結論が異なるということになると、実務上のインパクトはかなり大きいと思われます。

以前、あるクライアントから、「競合他社がやっている、クレジットカード利用でのポイントキャンペーンをうちでもやりたいが、可能か」という質問を受けて、いろいろ話を聞いても、どうしても不可能だったのですが、その競合他社がどこなのかを聞いたところ、その競合他社はグループにカード会社を持っていることがわかり、それできっと、同じグループなので自己値引と整理しているのだろう、と分析したことがありました。

でも、今回のQ&A41番のように、グループ内でも別法人なら「値引」に該当しないとなると、その「競合他社」のやっていたポイントキャンペーンは、自他共通割引券の要件を満たさない限り総付規制の対象になってしまいます。

なので、もし自己値引きとして整理しているのだろうという私の見立てが正しかったとすると、このQ&A41番を見て、その「競合他社」は大騒ぎになっているのではないかと想像されます。

これはほんの一例ですが、同一グループなのに別法人だと別人扱いされて値引に該当しなくなるとすると、その影響は計り知れないのではないかと思われます。

しかも、告示や運用基準の解釈を明らかに間違っている回答なら、私も「あれは間違いですから、無視して構いません。」とクライアントにアドバイスしやすいのですが、景品規制においてグループ内別法人を他人と扱うかどうかというのは、告示にも運用基準にも手がかりがなく、しかも景表法(定義告示)の条文の解釈としては、別法人である以上同一グループでも他人であるというのはまったく根拠がないわけでもない(むしろ文言だけを見れば根拠がある)ので、個人的にはおかしいと思っていても、安易に「無視して構いません。」ともいいにくいところがあります。

しかも、このような根本的な論点に対して、真正面から、二義を許さないほどにはっきりと「別法人なら、別人です。」と言われてしまっては、今回問題になっている案件は事実関係が違うとかこじつけて何とか救ってもらうというのも難しく、消費者庁に質問すれば、必ず「だめです。」と言われそうな気がします。

自社グループで心当たりのある方は、ぜひ、このQ&Aをよく読んで、対応を検討されるべきだと思います。

あと、このQ&Aでグループ会社の論点が全て片付いたのかというと、やや微妙な気もします。

例えば、このQ&Aでは、スポーツクラブとエステティックサロンという別の業態ですが、スポーツクラブ同士ならならどうか、というのも気になるところです(たぶん、同じ結論でしょう)。

逆に、グループですらない全くの別法人でありながら同じブランドの下で一体的に事業をしている、コンビニのフランチャイズのような場合はどうなのでしょうか。

景表法でも下請法でもフランチャイズの本部と加盟店は一体と扱うという解釈が定着しているので、この点は動かないのだろうと想像しますが、100%親子でも別人だというのがこのQ&A41番の意味するところでしょうから、少なくともフランチャイズの場合と整合性がとれていないのではないかという問題は指摘できそうです。

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