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2023年7月28日 (金)

ジュリストに寄稿しました。

このたび、ジュリスト2023年8月号(No.1587)に、

「[連載/実践 知財法務]〔第22回〕 不当表示(景表法・不競法)――表示根拠の十分性について」

という論文を寄稿しました。

Photo_20230728095201

奇しくも、改正景表法の特集と同じ号ですので、ご興味のある方はついでに読んで頂けるとありがたいです😃

「実践 知財法務」という連載で不当表示の回の割当をいただいたのですが、不当表示で定番の、「ぼっちゃんあわびでないあわびを『ぼっちゃんあわび』と呼んではいけません。」みたいな切り口では「知財」の連載に載せるのに憚られたので、翠光トップライン東京高裁判決をモチーフにしたCASEを使って不実証広告規制(のオソロシサ)について書くことにしました。

伝熱額の技術的な話が多いので、判決を読むの自体骨が折れましたし、そのエッセンスを抽出してCASEを作るのはさらに骨が折れましたが、この判決の実体的側面に関する評釈はないようですので、実務でお伝えしたいポイントについてはある程度書けたことの価値はそれなりにあるのではないかと思います。

それでも、紙面の都合や連載の性質上で書きたくても書けなかったことは多々あります。

例えば、不実証広告規制はそもそも科学的真実を探求するのに極めて不向きなのではないか、と感じています。

というのは、不実証広告規制は、消費者庁が、表示どおりの性能がないこと(A)を直接証明せずに、提出資料に合理的根拠資料がないこと(B)を立証することで不当表示とみなす制度ですが、事業者の提出資料の合理的根拠資料該当性だけが訴訟では争点になるので、お互いに主張立証を尽くして真実を探求するという構造になりません。

これは、双方にとって窮屈な制度です。

まず、事業者側には、新たな証拠を出せないという、大変大きな縛りがあります。

反対に、消費者庁側も、自ら新たな実験をして表示どおりの効果がないことを直接立証することができません。

もしこれをやれば、違法な理由の差し替えとなるでしょう。

本来であれば(消費者庁が証拠をつかんでいるのであれば)、消費者庁もどんどん実験して証拠を出して、あとは裁判所に判断してもらえばいいのでしょうけれど、主張立証の対象が提出資料の合理的根拠資料該当性の1点に絞られるだけに、そういう主張立証をするわけにはいきません。

そうすると、消費者庁としては、事業者が提出した資料に徹底的にいちゃもんを付ける、というほかに術はありません。

裁判所にとっても窮屈で、裁判所が消費者庁を勝たせようとすると、事業者が出した何十何百といった証拠のいずれもが合理的根拠資料ではないといけなくなります。

というのは、事業者が提出した根拠資料の1つでも合理的根拠資料に該当すると判断すると、消費者庁を負けさせないといけないからです。

そのため、勢い、合理的根拠資料該当性の認定は厳しくなりがちです。

本当は、事業者が提出する資料を総合すると合理的根拠資料と認められるという認定もあり得るはずですが、少なくとも翠光トップライン東京高裁判決はそのような認定方法を採らず、原告提出証拠を1つ1つ検討しています。

他の裁判所でもおそらく同じでしょう。

不実証広告規制にはこのような大きな問題があるのですが、実務上は、少なくとも工業製品の性能については、そのような問題を意識して証拠固めをしておく必要があるでしょう。

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