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2023年7月30日 (日)

料金無料の価格設定に関する消費者庁景品Q&A34番についての疑問

消費者庁の景品Q&A34番(「利⽤料を無料とする価格設定」)では、

「当社で有料の施設運営しています。この施設内の特定のスペース利⽤するには、別途利⽤料の⽀払いが必要となります。

今後、特定の曜⽇の施設来場者に対して、この特定スペース無料で開放したいと考えております。

これは、景品規制の対象となるのでしょうか。」

という設問に対して、まず、

「経済上の利益と認められるか否かは、

「提供を受ける者の側からみて、通常、経済的対価を⽀払って取得すると認められるもの」

といえるか否かで判断されます。

本件のように、特定の曜⽇に通常有料の利⽤料を無料とすることは、

そもそも特定の曜⽇の施設来場者に特定のスペースの利⽤料を負担させる予定がないということですから、

経済上の利益に含まれず、景品規制の対象とはなりません。」

と回答されています。

う~ん、こんなこと言ってしまっていいのでしょうか?

特定の曜日に無料であっても、他の曜日には有料なわけですから、「通常(=他の曜日には)、経済的対価を支払って取得する」といえるのではないでしょうか。

さらにいえば、この、「通常、経済的対価を支払って取得する」というのは、もっと一般的、抽象的に、そもそも一般消費者がお金を払って取得する性質のものかどうかで決まるというべきでしょう。

事業者が特定の曜日(例えば月曜日)に無料にしたからといって、「月曜日の当該特定のスペース」といったような狭いサービスを想定してそれが有料か無料かを判断するというような類いのものではないと思います。

ちなみにこのQ&Aが引用している定義告示運用基準5⑴では、

「5 「物品、金銭その他の経済上の利益」について

(1) 事業者が、そのための特段の出費を要しないで提供できる物品等であっても、又は市販されていない物品等であっても、提供を受ける者の側からみて、通常、経済的対価を支払って取得すると認められるものは、「経済上の利益」に含まれる。

ただし、経済的対価を支払って取得すると認められないもの(例 表彰状、表彰盾、表彰バッジ、トロフィー等のように相手方の名誉を表するもの)は、「経済上の利益」に含まれない。」

とされています。

「提供を受ける者の側からみて」といっているので、事業者が月曜日に無料にしたからといって直ちに「経済上の利益」にあたらなくなるわけではないと思います。

もし、事業者が月曜日に無料にしたことにより、一般消費者が、「通常、経済的対価を支払って取得する」と認められなくなるのであれば、「経済上の利益」に該当しないことになるのかもしれませんが、そんなことは普通ないでしょう。

Q&Aの回答は、

「そもそも特定の曜⽇の施設来場者に特定のスペースの利⽤料を負担させる予定がないということですから」

というのを理由にしており、事業者の「予定」がポイントであるかのような説明をしていますが、事業者にそんな予定があるかとか、予定が近い将来変わらないかどうかなんて、消費者には分からないことです。

ですので、事業者の「予定」を基準にするのはおかしいと思います。

この回答ではさすがにまずいと思ったのか、Q&Aの回答ではさらに続けて、

「なお、例えば、特定の曜⽇ではなく、⼀時的なキャンペーンとして特定スペースの無料開放を実施する場合などには、

経済上の利益に該当する可能性があります。

その場合、本件は有料施設の来場者を対象にもれなく提供することから、総付景品の規制の対象となります(Q61、Q110参照)。」

と、景品類に該当する場合があると逃げの一手を打っていますが、実務的にはこちらの方が大問題です。

そもそもこの設問が想定している、「施設」とか、「特定のスペース」として、具体的にどのようなものを想定するのかによって結論が変わってきそうな問題ですが、例えば、テーマパークの中の特定のスペース(東京ドイツ村の中の「ジージの森」とか)や、美術館の中の、常設展示ではないほうの、特別展示スペースのようなイメージでしょうか。

でも、もしそういうイメージなら、それを総付景品だというのは、ちょっと常識に合わないと思います。

そういう、有料の「施設」の中に、さらに追加料金を払って入る「特定のスペース」がある場合、そもそも「施設」と「特定のスペース」は、両者に高い親和性があり、全体として1つの商品といえる場合が多いのではないでしょうか。

もし1つの商品と言えるなら、「特定のスペース」を無料にするというのは、たんなる値引きです。

そして、それが常識的な感覚なのではないでしょうか。

例えば、上述の東京ドイツ村の場合、本日現在の入場料は大人800円、子供400円で(わりとしょっちゅう変わります😵)、ジージの森の入場料が1人600円ですから、ジージの森を一時的に無料にすることはできないことになってしまいます。

(ちなみに、このジージの森は、いろいろとワイルドな遊びができておすすめです。)

感覚的には、東京ドイツ村のはほかにも有料のアトラクションがたくさんありますし、ジージの森だけが無料になっても、全体で遊ぶ支出が少し減ったくらいの感覚のはずで、ジージの森が景品類だなんて、考えないと思います。

あるいは、東京ドイツ村には無料のアトラクションもたくさんありますから、ジージの森が一時的に無料になっても、普段有料のアトラクションが今日は無料になった、くらいの感覚だと思います。

いったい、このQ&Aの作成者は、どんな場面を想定していたんでしょうね。聞いてみたいものです。

というわけで、このQ&Aの前半の部分は「あまあま」で、要は「特定のスペース」の料金を特定の曜日を無料にするのは景品類にあたらない、ということで、そういう価格設定をしたい事業者には朗報ですが、後半は、まじめにとらえるとものすごい波及効果がありそうな気がします。

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