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2023年7月17日 (月)

プラットフォーム提供者による景品企画に関する改訂版消費者庁景品類Q&A13番に対する疑問

今年の6月30日に消費者庁ウェブサイトの景品類に関するQ&Aが大幅に拡充されましたが、そのQ13の内容は、私は疑問だと思います。

Q13では、

「当社はあるサービスについて、事業者と消費者をマッチングするプラットフォームを提供しています。

消費者は無料の会員登録のみでこのプラットフォームを利⽤することができます。

このたび、このプラットフォームに掲載されている事業者とのマッチングが成功し成約に⾄った消費者に対し、もれなく当社から景品を提供したいと考えています。

当社のプラットフォームの利⽤に当たり、消費者は料⾦を⽀払っていませんし、取引につながる要素はありませんので、当社が提供する景品は取引に付随する提供には該当せず、景品規制の対象にはなりませんか。」

という質問に対して、

「⼩売業者⼜はサービス業者が、⾃⼰の店舗への⼊店者に対し景品を提供する場合、経済上の利益の提供が、取引の相⼿⽅を主たる対象として⾏われていることから、「取引に付随」する提供に当たりますが、

⼩売業者⼜はサービス業者の店舗への⼊店者に対し他の事業者景品提供を⾏う場合であっても、

のような場合は⼩売業者⼜はサービス業者「取引に付随」する提供に当たるとされています。

⼩売業者⼜はサービス業者

〇他の事業者に対して協賛、後援等の特定の協⼒関係にあって共同して経済上の利益提供していると認められる場合

〇他の事業者をして経済上の利益を提供させていると認められる場合

本件は、消費者が無料の会員登録のみでこのプラットフォームを利⽤することができるとのことですので、

景品を提供する相談者と消費者との間には取引関係がないことを前提とすれば

相談者景品の提供を⾏うに当たり取引を条件としておらず、また、取引の相⼿⽅を主たる対象ともしていませんので、

相談者提供する景品とみれば景品規制の対象とはなりませ

しかしながら、本件企画については、プラットフォームに掲載されている事業者(以下「掲載事業者」といいます。)との成約件数増加につながるものであることから、

上記の考え⽅を基にすれば、

相談者と掲載事業者が特定の協⼒関係にあり、共同して経済上の利益を提供していると認められる可能性が⾼いと考えられます。

したがって、本件を掲載事業者提供する景品とみれば

掲載事業者は、景品の提供を⾏うに当たり⾃⾝の供給するサービスの契約を条件としていますから、

本件は、掲載事業者の取引に付随する提供として、総付景品の規制の対象となります。

この場合の取引価額は掲載事業者が供給するサービスのうち最も安いものとなり、提供できる景品類の最⾼額はその10 分の2までとなります。(Q63、Q64、Q110参照)。」

と回答されています。

問題なのは、

「本件企画については、・・・掲載事業者・・・との成約件数増加につながる」

ことから直ちに、

「相談者と掲載事業者が特定の協⼒関係にあり、共同して経済上の利益提供していると認められる可能性が⾼い」

という結論を導いていることです。

まず、私の経験として、プラットフォーム事業者が、掲載事業者(出店者)の関与しないところで企画を立案し、景品の内容も決定し、景品の原資も負担し、掲載事業者(出店者)に対しては、企画に参加するかどうかを問い合わせるだけ(場合によっては、問い合わせすらせず実施する)、ということは、それなりにあります。

むしろ、微妙なケースでは、

「出店者に企画に関与させると出店者の景品類になるので、できるだけ関与させないようにして下さいね。」

というアドバイスを普通にします。

次に、そもそも、

「掲載事業者・・・との成約件数増加につながる」

からといって、

「相談者と掲載事業者が特定の協⼒関係にあ(る)」

と認定するのは、論理の飛躍があります。

少なくとも、「成約件数の増加につながる」という程度の緩い因果関係で認められてしまうような「特定の協力関係」の存在だけを根拠に、「共同して経済上の利益〔=景品類〕を提供している」として掲載事業者の景品類提供主体性を認めてしまうのは、極めて乱暴です。

単純化して言えば、Q&Aの立場は、

掲載事業者の成約件数の増加→掲載事業者の景品類提供主体性肯定

あるいは、

財Xの提供→事業者Aの売上増加→AがXを提供

という認定をしているわけですが、こういう認定が許されてしまうなら、例えば、

浜松祭りのパレードに松潤(=財X)を呼んだら、沿道の商店Aの売上が増えたので、松潤を呼んだのは商店Aだ

という、無茶苦茶な理屈になりかねません。

社会的な事実としては、松潤を呼んだのは浜松祭りの実施主体(浜松祭り実行委員会?)だというべきでしょう。

浜松祭り実行委員会(≒プラットフォーム運営事業者)と、商店A(≒掲載事業者)との間には、何らかの協賛関係(=「協賛、後援等の特定の協⼒関係」)があるかもしれませんが、いずれにせよ、それだけで、商店Aが松潤を呼んだことにならないのは明らかでしょう。

というわけで、

掲載事業者の成約件数の増加→掲載事業者の景品類提供主体性肯定

あるいは、

財Xの提供→事業者Aの売上増加→AがXを提供

という認定は、一般論としては成り立たないし、景品規制のあり方としても妥当ではないと考えます。

次に、もしこのQ&Aのような考え方をすると、掲載事業者が景品類の提供に積極的に同意していなくても掲載事業者が景品類の提供主体になってしまい、妥当ではありません。

そのあたりが、Q&Aの考え方ではまったく考慮されていません。

次に、Q&Aの回答では、

上記の考え⽅を基にすれば」

と言いますが、そこでの、「上記の考え方」というのは、

「⼩売業者⼜はサービス業者〔≒掲載事業者〕

〇他の事業者〔≒プラットフォーム運営事業者〕に対して協賛、後援等の特定の協⼒関係にあって共同して経済上の利益提供していると認められる場合

〇他の事業者〔≒プラットフォーム運営事業者〕をして経済上の利益を提供させていると認められる場合」

には、

「⼩売業者⼜はサービス業者〔≒掲載事業者〕「取引に付随」する提供に当たる」

という考え方であるところ、この「考え方」とQ&Aの説明が噛み合っていません。

まず、Q&Aでは、「特定の協力関係」と述べていることから、1つめの、

「〇他の事業者〔≒プラットフォーム運営事業者〕に対して協賛、後援等の特定の協⼒関係にあって共同して経済上の利益提供していると認められる場合」

であることが根拠になっていることが明らかであるところ、Q&Aのような事例では、普通、掲載事業者がプラットフォーム運営事業者に対して「協賛、後援等」をするということは考えられません。

むしろ、プラットフォーム運営事業者が掲載事業者に対して「協賛、後援等」をすることなら、あるかもしれません。

しかし、その場合、どこまで行っても景品類の提供主体はプラットフォーム運営事業者ということになってしまいます。

それにもかかわらず、掲載事業者の売上が増えるというだけで、掲載事業者がプラットフォーム運営事業者に対して「協賛、後援等の特定の協力関係」にあるというのがQ&Aの立場ということになりますが、そのような結論は、

「〇他の事業者〔≒プラットフォーム運営事業者〕に対して協賛、後援等の特定の協⼒関係にあって共同して経済上の利益提供していると認められる場合」

という規範からは決して出てこないでしょう。

これを、Q&Aは、

「本件企画については、・・・掲載事業者・・・との成約件数増加につながる」

ことから、

「相談者と掲載事業者が特定の協⼒関係にあり、共同して経済上の利益を提供していると認められる可能性が⾼い」

と認定しているわけですが、そのようなことを、「上記の考え方」は、まったく述べていません。

つまり、「上記の考え方」が述べているのは、「⼩売業者⼜はサービス業者」が、

「〇他の事業者〔≒プラットフォーム運営事業者〕に対して協賛、後援等の特定の協⼒関係にあって共同して経済上の利益提供していると認められる場合」

には、小売業者は景品類の提供主体となるとは言っていますが、小売業者(≒掲載事業者)の「成約件数の増加につながる」場合にはそのような「特定の協力関係」が認められるなどとは、一言も言っていません。

日本語の問題としても、

「事業者P〔≒プラットフォーム運営事業者〕の行為が事業者Q〔≒掲載事業者〕の売上を増やす関係」

というのは、客観的事実としてそのような因果関係があるというだけのことであり、そのような関係を「協力関係」という日本語に読み込むのは到底無理です。

いわば、「成約件数の増加につながる」という関係を、「協賛、後援等」の「等」に読み込むことはできません。

では、何らの「協力関係」もないのに、事業者P〔≒プラットフォーム運営事業者〕が、事業者Q〔≒掲載事業者〕のために景品を付けてあげる理由やインセンティブがあるのかといえば、十分にあります。

というのは、プラットフォーム運営事業者は、自己のプラットフォームでの成約件数が増えれば、需要者(事業者サイドと消費者サイドの両方)にとっての自己のプラットフォームの魅力が増すからです。

つまり、プラットフォーム運営事業者は、完全に利己的であっても、このような景品提供をする理由とインセンティブがあるのです。

もっとよく考えると、このようなことは通常のメーカーと小売店との間にも成り立ちます。

つまり、メーカーが、自社の製品に景品類を付けて販売すれば、その製品の小売店を通じた売上は伸びるでしょう。

でも、このような場合に、小売店の売上げが伸びるというだけで、メーカーと小売店との間に「特定の協力関係」があって、小売店が当該景品類の提供主体になるなどとは、誰も考えないでしょう。

現に、緑本第6版p219では、

「メーカーが出荷段階において商品の包装箱に景品類を封入しておく場合」

は、

「小売業者がメーカーの企画に全く参画せず、単に仕入れた包装箱の状態でそのまま販売している場合には、小売業者は、景品提供の主体であるとはいえない」

として、小売業者の景品提供主体性が認められない典型例として例示しています。

この緑本の例では、景品類が物理的に小売業者の手を通って消費者にわたるのにもかかわらず小売業者が景品類の提供主体とはならないとしているのですから、Q&Aのように、景品類がプラットフォーム運営事業者から消費者に直接渡ることが想定されている場合には、なおさら掲載事業者の関与は少ない、ということも十分考えられます。

実際、Q&Aの設問のケースでも、掲載事業者が、プラットフォーム運営事業者の「企画に全く参画せず」ということは、十分にありうることだと思われます。

(「参画」というのも、評価が混じる表現なのでさまざまに解せますが、少なくとも、掲載事業者が、企画の内容の決定に全く関与せず、費用も負担せず、ただ参加不参加の返事だけをする、あるいはそのような返事もなしにプラットフォーム事業者が景品類を提供する、ということは、世の中にいくらでもあると思われ、そのような場合でも「参画」したというのは、「参画」の意味として広すぎると思われます。)

少なくとも、Q13の設例は、緑本p219で小売業者の景品類提供主体性を認める典型例とされている、

「②メーカーが小売業者にスピードくじを渡しておき、当該商品の購入者に対し小売業者の店舗で抽選して、当選者に小売業者の供給するその他の商品を景品類として提供する場合」

というのには、掲載事業者の関与は程遠いと思われます。

まとめると、Q13は、小売店でのある商品の売上げが伸びれば当該商品のメーカーの売上も伸びるという、通常の取引関係がある当事者であれば当然に認められるに過ぎない関係をもって、「特定の協力関係」とみなすという誤謬を犯している、ということです。

どうしてQ&Aが(私の目から見るとかなり明白な)誤りを犯してしまったのかを想像すると、たぶん、消費者庁の担当者の頭の中に、プラットフォーム事業者が掲載事業者のために提供する景品類というもののイメージがあり、そのイメージに強く引きずられてしまったために、Q&Aに書いた文書を自分で客観的に分析できなかったのではないか、と想像されます。

でも、それではルール・メーカーとして失格でしょう。

以上がQ13に対する評価ですが、そのほか同Q&Aを読む際の注意点をいくつか挙げておきます。

まず、Q13は、掲載事業者とプラットフォーム運営事業者との間に「特定の協力関係」が認められる場合であっても、景品類の提供主体はあくまで商品役務を提供する掲載事業者だけであり、プラットフォーム運営事業者は景品規制の対象にはならない、という立場を貫いています。

これは、

「⼩売業者⼜はサービス業者の店舗への⼊店者に対し他の事業者景品提供を⾏う場合であっても、

次のような場合は⼩売業者⼜はサービス業者「取引に付随」する提供に当たるとされています。

⼩売業者⼜はサービス業者

〇他の事業者に対して協賛、後援等の特定の協⼒関係にあって共同して経済上の利益を提供していると認められる場合

〇他の事業者をして経済上の利益を提供させていると認められる場合」

というように、「取引に附随」するところの商品役務はあくまで、「⼩売業者⼜はサービス業者」商品役務だとされていることや、

「〇他の事業者に対して協賛、後援等の特定の協⼒関係にあって共同して経済上の利益を提供していると認められる場合

〇他の事業者をして経済上の利益を提供させていると認められる場合」

の主語が「⼩売業者⼜はサービス業者、」であることからもわかりますし、さらに結論部分で、

「したがって、本件を掲載事業者が提供する景品とみれば、掲載事業者は、景品の提供を⾏うに当たり⾃⾝の供給するサービスの契約を条件としていますから、本件は、掲載事業者の取引に付随する提供として、総付景品の規制の対象となります。」

と、本件が総付規制の対象になるのはあくまで上記のような特定の協力関係に基づき「本件を掲載事業者が提供する景品とみ」ることができる場合であることを明言していることからも、わかります。

逆に言うと、Q13は、仮に商品役務を提供しない事業者Aと、商品役務を提供する事業者Bの間に「特定の協力関係」が認められて、事業者Aと事業者Bが共同で景品類を提供する関係にある場合であっても、当然に当該商品役務を事業者AとBが共同で供給しているとみなされることはなく、景品規制に違反するのは商品役務を提供している事業者Bだけである(事業者Aはお咎め無し)、という理解を当然の前提にしています。

これは、これまでの消費者庁の見解と異ならず、妥当なものと考えられます。

景品類を共同で提供しており、商品役務も共同で供給している、という例も世の中にはなくはないのかもしれませんが、決して多くはないと思います。

(この点については、以前、「景表法における共同販売(商品共同供給)の意味」という記事を書きましたので、合わせてご覧下さい。)

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コメント

むしろ、新たなQ10の方が、一般に与える影響は大きいような気がします。
先生の昨年9月のご指摘に関連し、過去の取引についての利益提供が景品類といえるかという根本的な問題にかかわっていると思われます。

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