ラピーヌの高島屋提訴について
婦人服ブランドのラピーヌが高島屋を優越的地位の濫用で東京地裁に提訴したと報じられています。
ラピーヌの6月2日付プレスリリースでは、
「当社は、2021年12月16日以降、出店店舗に関する契約条件変更通知を同社から受領するなどしていたことから、当社が同社に対し、優越的地位の濫用にあたると判断して取引条件の是正を求めたことに対し、同社はこれに応じるどころか、更なる優越的地位の濫用が疑われる対応を続けたため、本年5月31日をもって交渉を打ち切り、同社を公正取引委員会へ申告、東京地方裁判所へ提訴することを決定いたしました。従って今後の同社との取引は6月1日より一旦停止せざるを得ないこととなりました。」
とされています。
これを読むと、ラピーヌの側から取引停止をしたことになっていますが、そうすると、優越的地位の濫用が認められにくくなるので注意が必要です。
というのは、優越的地位濫用ガイドライン第2、1では、
「甲が取引先である乙に対して優越した地位にあるとは,
乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合である。」
とされているからです。
ですので、ラピーヌが高島屋からの著しく不利益な要請を断って自ら取引停止をしたとすると、不利益な要請を「受け入れざるを得ない」わけではなかったのではないか、と推認されてしまいます。
なので、こういう場合は、なんとか踏ん張って、高島屋から取引停止を申し入れさせるか、アリバイ作りのために不利な条件で取引に応じるのが、優越的地位の濫用の訴訟戦略上は妥当です。
まあ、よっぽど高島屋の申し入れがえげつなくて、どうしてもやめざるを得なかったのだ、ということもありえなくはないですが、高島屋から契約を解除されたり、高島屋の条件を泣く泣く受け入れた場合に比べれば、優越的地位の立証のハードルはずっと上がってしまったことは間違いないと思います。
また、高島屋の契約を停止した代わりに、がんばって別の取引先を見つけてきたりすると、取引先変更可能性があったということで、ますます優越的地位が認められにくくなり、一生懸命販路開拓をすると裁判に負けてしまうというジレンマに陥ることもあるかもしれません。
個々の事案にはそれぞれ表に出ない深い事情があるのでしょうけれど、一般論として、以上の点は心にとどめておいたほうがよいと思います。
« 不実証広告ガイドラインの専門家等の見解に関する記述(第3、2⑵ア)の矛盾について | トップページ | 朝日新聞2023年6月9日「公取委から突然の電話 「海猿」作者がインボイス制度に今思うこと」という記事を読んで »
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