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2023年6月20日 (火)

朝日新聞2023年6月9日「公取委から突然の電話 「海猿」作者がインボイス制度に今思うこと」という記事を読んで

掲題の記事を読みました。

https://digital.asahi.com/articles/ASR684S2TR67OXIE017.html

朝日新聞の取材を受けた漫画家の佐藤秀峰さんが運営する佐藤漫画製作所は、漫画家と電子書籍配信業者との取次を行っているのですが、インボイス制度が始まっても消費税課税事業者に切り替えない漫画家に支払うロイヤルティを消費税分の10%分引き下げる(消費税額を上乗せしない)ことを通知したら、公取委から優越的地位の濫用だと注意を受けたというのです。

今の公取はだいたいこんな感じなので驚きはないですが、まったくひどいと思います。

記事にも指摘されていますが、

同業他社はたくさんいる。漫画家はいつでも自社との契約をやめ、他社に移ることができる

そもそも作品を独占するような契約は結んでいない。「他の業者を使えばいいじゃないか」というのが、正直なところだ。」

というのは、まったくそのとおりであり、このケースは濫用以前の問題として、そもそも優越的地位が成立しないというべきでしょう。

公取委自身の優越的地位濫用ガイドライン第2の2では、

「この〔優越的地位の〕判断に当たっては,乙の甲に対する取引依存度,甲の市場における地位,乙にとっての取引先変更の可能性,その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実を総合的に考慮する」

とされ、同2⑶には、

「(3) 乙にとっての取引先変更の可能性

乙にとっての取引先変更の可能性としては,他の事業者との取引開始や取引拡大の可能性,甲との取引に関連して行った投資等が考慮される。

他の事業者との取引を開始若しくは拡大することが困難である場合又は甲との取引に関連して多額の投資を行っている場合には,乙は甲と取引を行う必要性が高くなるため,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すことになりやすい。」

と、取引先変更可能性がなければ優越的地位が認められやすいという方向で書かれていますが、取引先変更が容易なら優越的地位が認められないことは当然です。

本件はまさにそういったケースでしょう。

なお、記事に、

「自社が漫画家に対して「優越的地位」なのか。

税理士からは「取引価格を決定できる立場なので、(公取委の判断も)理解できないことはない」と説明された。」

ともありますが、この税理士さんの意見は間違いですね。

価格を一方が決定して、他方は伸るか反るかしか選択肢がない取引なんて世の中にいくらでもありますが(百貨店と消費者の取引とか)、それで一方が優越的地位になるわけではありません。

優越ガイドラインにも、価格決定権があるというような要素は書いてありませんし、訴訟で公取から主張されたこともありません。

さらに、記事にある公取委とのやりとりの、

「「会場を押さえて説明会などを開いたか」の問いに、佐藤さんが「開いていない」と答えると、公取委からは「それでは双方納得できるよう議論を尽くしたとは言えない」と告げられた。

「数百人が入る会場を押さえて説明会を開くのは現実的ではない」と食い下がったが、「議論を尽くせ」との公取委の主張は変わらなかった。」

というのは噴飯物です。

こんな指導をしているのですね。

貸し会議室屋さんは、儲かってよいですね💦

現在の公取委の優越的地位の濫用の運用は、歴史的に見ても異常です。

このように、声を上げられる市井の方々が一人でも増えることを望みます。

佐藤さんのブログも参考になります。公取との詳細なやり取りが記載されています。

「インボイス制度に関する僕の結論」https://note.com/shuho_sato/n/n6e969d2b6daa

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