丸紅畜産事件の緑本第6版からの削除について
西川編著『景品表示法〔第6版〕』(緑本)から、第5版まで載っていた丸紅畜産事件の記載が削除されています。
第5版には49頁に載っていたのですが、第6版の相当する頁(62頁あたり)には、同事件への言及がありません。
丸紅畜産事件についてはだいぶ以前も批判したことがあったのですが、これが削除されたことは喜ばしいことです。
削除された理由を想像すると、やはり消費者庁の現在の運用と合わなくなってきたからではないかと思います。
とくに、課徴金が導入されたときに、仕入先(=丸紅畜産事件の丸紅畜産)に産地などを偽装されて不当表示をしてしまった事業者(=丸紅畜産から仕入れた小売業者)が相当な注意を払ったのかに議論の関心が集まり、その際に騙された事業者が不当表示の主体になることは当然の前提とされ、その反面、騙した仕入先は不当表示の主体にならないこともまた何となく前提にされてしまい(あるいは、疑問を持たれずにスルーされてしまい)、丸紅畜産事件と整合しなくなったことが大きかったのではないかと想像します。
これによって消費者庁が解釈変更をしたと考えて良いと個人的には思います。
ただし、第5販まで丸紅畜産事件の直前(p49)にあった、
「事業者に対する表示であっても、それが一般消費者の目に触れ、直接的に一般消費者の誤認を生じさせるような場合には、景品表示法の規制対象となる。」
という記述は、第6版でもp61~p62に残っていることには注意が必要です。
この記述に従えば、プレスリリースが不当表示と認定された山田養蜂場事件も、規制対象になって当然といえます。
ちなみに、第5版までの緑本がこの記述の例として丸紅畜産事件を挙げていたのは明らかに間違いでした。
というのは、上記引用部分の「それ」は、その直前の「事業者に対する表示」を指すところ、丸紅畜産事件における「事業者に対するの表示」(小売業者に鶏肉を納入する際に使った段ボール箱等)は「一般消費者の目に触れ」ることはなかったからです。
というわけで、第6版ではこのあたりがすっきりと整理されました。
第6版は、改訂ごとに資料が追加されて無駄に分厚くなっていたのを一気に削除したうえに、新しい記述がどんどん加わって、かなり画期的な改訂だと思います。
さすが西川さんだと思います。
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