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2023年2月16日 (木)

景表法における共同販売(商品共同供給)の意味

景表法で、共同販売(商品共同供給)をしているのかどうかが問題となることがよくあります。

景品規制では、景表法4条で、

「内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。」

と規定されており、景品類の定義についての景表法2条3項で、

「3 この法律で「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、・・・事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む。以下同じ。)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。」

と規定されているので、やはり自己の供給する商品役務について提供されるものだけが規制対象になります。

(もちろん、ある商品を共同販売していれば、その共同販売者は、その商品を「自己の供給する」商品として販売している、ということになります。)

表示規制では、景表法5条柱書で、

「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。」

と規定されており、自己の供給する商品役務について行う表示のみが規制対象なので、共同販売をしているかが問題になります。

(ちなみに、表示についても定義の2条4項で、

「4 この法律で「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。」

と定義されており、自己が供給する商品についてであることは表示の定義にビルトインされているので、5条柱書を書き下すと、

「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する《顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するもの》をしてはならない。」

となり、「自己の供給する」がリダンダントであることがわかります。)

このように景表法の対象になるのは「自己の供給する」商品役務についての表示や景品なので、共同販売にあたり自己の供給する商品役務ということになり景表法の規制対象になってしまうのか、それとも、純粋に他者の供給する商品役務についてのものなので規制対象にならないのか、が問題になります。

この点について、「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」第3の3⑴で、そこでは、

「⑴ 景品表示法の規制の対象となる者

景品表示法において規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(以下「商品等供給主体」という。)であり、

広告媒体を発行する事業者(新聞社、出版社、広告代理店、放送局、ショッピングモール等)は、原則として、規制の対象とならない。

もっとも、自己の供給する商品・サービスについて一般消費者に対する表示を行っていない事業者であっても、

例えば、当該事業者が、商品・サービスを一般消費者に供給している他の事業者と共同して商品・サービスを一般消費者に供給していると認められる場合は、景品表示法の規制の対象となる。」

とされており、共同販売(共同商品供給)の場合に規制対象になることが明らかにされています。

ほかには、管理措置指針に関するQ&Aの7番で、

「Q7 本指針第2の1では、

「当該事業者が、商品又は役務を一般消費者に供給している他の事業者と共同して商品又は役務を一般消費者に供給していると認められる場合」

には、広告媒体事業者等であっても景品表示法の適用を受けることとなるとされていますが、どのような場合に

「他の事業者と共同して商品又は役務を一般消費者に供給している」

と認められるのですか。

例えば、モール運営事業者は、具体的にどのような場合に必要な措置を講じることが求められますか。」

という質問に対して、

「A 例えば、モール運営事業者と出店事業者が共同キャンペーンを行うなど、商品等の販売を共同して行い、共同で広告を行っている場合などが考えられます。」

と回答されています。

(なお、上記Q&Aで引用されている管理措置指針第2の1には、

「なお、自己の供給する商品又は役務について一般消費者に対する表示を行っていない事業者(広告媒体事業者等)であっても、

例えば、当該事業者が、商品又は役務を一般消費者に供給している他の事業者と共同して商品又は役務を一般消費者に供給していると認められる場合は、

景品表示法の適用を受けることから、このような場合には、景品表示法第26 条第1項の規定に基づき必要な措置を講じることが求められることに留意しなければならない。」

と記載されています。)

どのような場合に「他の事業者と共同して・・・供給」にあたるのかを尋ねているのに、一般的な基準としては「商品等の販売を共同して・・・供給」している場合だと答えているだけで、論理的には、何も答えになっていません。

(「共同で広告」というのは共同供給認定の1つの要素とみるべきでしょう。たとえば広告せずにA社とB社の従業員が共同で店先で販売するような場合、広告がないので共同供給ではない、ということになりかねません。)

参考になるのは、具体例として「共同キャンペーン」を挙げていることです。

「共同キャンペーン」というのが、何を意味しているのかはっきりしませんが、このあたりから、どのような場合に共同供給になるのかを探っていくしかないでしょう。

共同キャンペーンと聞いて思い出すのが、景品類の提供主体の話です。

この問題については、西川他編著『景品表示法〔第6版〕』(緑本)220頁に、景品提供主体の問題として、

「景品提供の主体を考えるに当たっては、

〔①〕いかなる商品の取引に附随し、

〔②〕いかなる商品の顧客誘引手段となっているか

ということに加え、

〔③〕その企画の立案

(〔ⅰ〕主商品の選定、

〔ⅱ〕景品類の種類、額、

〔ⅲ〕実施期間、

〔ⅳ〕実施地域、

〔ⅴ〕売上予定の算定、

〔ⅵ〕その企画の宣伝方法など)

を行ったのは誰か、

〔④〕経費の負担者は誰か

といった事情を総合的にみて判断する必要がある。」

と解説されています。

これは景品類の提供主体(=おまけを付けているのは誰か)の話なので、共同販売(商品共同供給)かどうかを判断する基準とは論理的には別です。

条文でいえば、景品類の提供主体が誰かという問題は、景品類の定義規定である景表法2条3項の、

「この法律で「景品類」とは、

顧客を誘引するための手段として、・・・

事業者が自己の供給する商品又は役務の取引・・・に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。」

という規定の、(物品を)「提供する」の意味の解釈ということになります。

これに対して、共同販売かどうか(商品役務の供給主体は誰か)という問題は、景品規制であれば、景表法2条3項の、

「この法律で「景品類」とは、

顧客を誘引するための手段として、・・・

事業者が自己の供給する商品又は役務の取引・・・に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。」

にいうところの「供給する」の意味の解釈です。

このように、景品類の提供主体の論点と、商品役務の供給主体の論点は、条文上の位置づけも異なります。

ところが、前述のように、管理指針Q&A7では、

「A 例えば、モール運営事業者と出店事業者が共同キャンペーンを行うなど、商品等の販売を共同して行い、共同で広告を行っている場合などが考えられます。」

と、モール運営事業者が、明らかに商品供給者である出店事業者と「共同キャンペーン」を行うときにはモール運営事業者が(共同)商品供給者となる、と回答されているので、たとえばこの「共同キャンペーン」が、共同景品企画だったりすると、にわかに、商品供給者と共同景品提供者(≒共同キャンペーン実施者)が重なってくる、ということになります。

もちろん、「共同キャンペーン」は、景品類の提供だけではなく、全品半額セールなどもありますので、とりあえず手がかりのある景品提供者の要件を共同景品提供者に応用しようというのは、自然な発想でしょう。

ここで、上記Q&A7によれば、共同商品供給者とみられるのは、共同キャンペーン実施者(≒共同景品類提供者)の場合なので、上記の(単独)景品類提供者の考慮要素を、共同景品類提供者に書き直してみます。

わかりやすくするために、モール運営者と出店者を想定すると、

「景品提供共同の主体を考えるに当たっては、

〔①〕〔出店者の〕いかなる商品の取引に附随し、

〔②〕〔出店者の〕いかなる商品の顧客誘引手段となっているか

ということに加え、

〔③〕その企画の立案

(〔ⅰ〕〔出店者の〕主商品の選定、

〔ⅱ〕景品類の種類、額、

〔ⅲ〕実施期間、

〔ⅳ〕実施地域、

〔ⅴ〕売上予定の算定、

〔ⅵ〕その企画の宣伝方法など)

〔モール運営者が出店者と共同で〕行ったか、

〔④〕経費の負担者は誰か

といった事情を総合的にみて判断する必要がある。」

といった感じになると思われます。

そこで例えば、モール運営者が、

「〔①〕〔出店者の〕いかなる商品の取引に附随し、

〔②〕〔出店者の〕いかなる商品の顧客誘引手段となっているか」

を出店者の関与なく決め、

「〔③〕その企画の立案

(〔ⅰ〕〔出店者の〕主商品の選定、

〔ⅱ〕景品類の種類、額、

〔ⅲ〕実施期間、

〔ⅳ〕実施地域、

〔ⅴ〕売上予定の算定、

〔ⅵ〕その企画の宣伝方法など)」

も全部モール運営者が単独で決め、

「〔④〕経費の負担者」

ももっぱらモール運営者である、とすると、これは共同企画ではなくモール運営者の単独企画(企画の受益者が出店者であるに過ぎない)ということになります。

そうすると、

商品(単独)供給者は出店者で、

景品類(単独)提供者はモール運営者

となり、モール運営者は商品供給者ではないため、景品規制は及ばない、ということになると考えられます。

もちろん、出店者は景品類提供者ではないので、景品規制に服するわけがありません。

これに対して、モール運営者が出店者と共同キャンペーンを行っている(≒モール運営者と出店者が共同景品類提供者である)場合というのは、

「〔③〕その企画の立案

(〔ⅰ〕〔出店者の〕主商品の選定、

〔ⅱ〕景品類の種類、額、

〔ⅲ〕実施期間、

〔ⅳ〕実施地域、

〔ⅴ〕売上予定の算定、

〔ⅵ〕その企画の宣伝方法など)」

モール運営者が出店者と共同で行っており、さらに、

〔④〕経費の負担者は誰か」

についても経費を共同で負担している、といった事情があれば、「共同キャンペーン」ということになるのでしょう。

(もちろん、全部共同でなくてもかまいません。)

そうすると、前記Q&A7では、共同キャンペーンなら商品の販売(供給)を共同で行っていることになるので、モール運営者も(共同)商品供給者だ、ということになります。

ちなみに、緑本の解説は景品類には該当することを前提にその提供主体を論じていますが、理屈としては、景品類にまったくあたりそうにない純粋な値引であっても同様に考えてよいと思われます。

ただ、そもそも論として、共同キャンペーンをすると(≒共同景品類提供者になると)共同商品供給者に自動的になる、というのは、かなり疑問があります。

というのは、健食ガイドラインの

「例えば、当該事業者が、商品・サービスを一般消費者に供給している他の事業者と共同して商品・サービスを一般消費者に供給していると認められる場合は、景品表示法の規制の対象となる。」

という規定を持ち出すまでもなく、「共同して商品・・・を供給」するということと、共同してキャンペーンをすることとは、一致しないこともいくらでもありうるように思われるからです。

モール運営者と出店者が共同で商品を供給しつつ、キャンペーンはモール運営者単独で行う、ということもあるでしょう。

たとえば、モールの一角で、特別の共同販売所を設けて、モール運営者の従業員と出店者の従業員が力を合わせて販売活動を行いつつ、景品類の企画や費用負担はモール単独で行う場合です。

もしモール運営者が共同商品供給者になるのが共同キャンペーンの場合だけだとすると、このような明らかに販売を共同でやっていながらキャンペーンはモール単独、あるいは、まったくキャンペーンなし、といった場合に、モールが共同商品供給者でなくなってしまいます。

あるいは、商品の供給は出店者が単独で行いつつ、キャンペーンは両者共同で行う、ということもあるでしょう。

たとえば、モール運営者がモール全体に共通のキャンペーンを行いつつ、費用負担に同意した出店者だけをキャンペーの対象にする、という場合です。

このような場合、上記Q&A7の考えだと、共同キャンペーンなのでモール運営者も自動的に共同商品供給者になってしまいますが、実態としては、これだけでモール運営者を共同商品供給者だというのは、相当無理があるように思われます。

やはり、モール運営者が(商品の売買契約の当事者ではないにもかかわらず)共同商品供給者であるといえるかどうかは、

モール運営者が(売買契約の当事者ではなくても)販売活動や販売促進活動(営業活動)を行っているか、

モール運営者が販売の利益に与るか、

共同販売であるかのような宣伝広告をしているか(たとえば、「○○モール開店20周年記念セール」)、

といったようなことを総合的に考慮して商品を「供給」しているといえるかを決めるのだ妥当だと思います。

その上で、共同キャンペーンをしている場合には、モール運営者も販促活動をしていることになるし、場合によっては共同販売であるかのような宣伝広告をしていることにもなり、共同キャンペーンはあくまでいろいろな要素の1つと位置付けるべきでしょう。

このように、Q&A7の考え方には疑問もあるのですが、実務的にはこれに従っておくのが無難でしょう。

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