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2022年12月18日 (日)

果実飲料等の表示に関する公正競争規約2条の規定ぶりの疑問

果実飲料等の表示に関する公正競争規約2条では、

「この規約で「果実飲料等」とは、

果実飲料等の表示に関する公正競争規約施行規則(以下「施行規則」という。)に定める「果実飲料」(以下「果実飲料」という。)

並びに

商品名中に果実の名称を使用する飲料及び色等によって果実の搾汁を使用すると印象づける飲料であって果汁の使用割合が10%未満のもの(果汁を含まないものを含む。以下「その他の飲料」という。)をいう。

ただし、次の各号に掲げるものを除く。

(1) 不当景品類及び不当表示防止法第31条第1項の規定に基づき設定された他の公正競争規約の適用を受けるもの

(2) 「酒税法」(昭和28年法律第6号)に規定する酒類

(3) 粉末飲料

(4) 紅茶飲料(商品名又は名称から紅茶飲料と判断されるもの)

(5) 野菜を破砕して搾汁又は裏ごしをし、皮、種子等を除去したもの(これを濃縮したもの又は濃縮したものを希釈して搾汁の状態に戻したものを含む。以下「野菜汁」という。)が混合されたもので、野菜汁の使用量が果汁の使用量を上回るもの」

と規定されています。

ここでは、

「果実飲料等」

「果実飲料」

「その他の飲料」

の3つの用語が定義されているのがわかります。

この規定をぼーっと読むと、

「果実飲料等」=「果実飲料」+「その他の飲料」

なんだろうな、と思えるし、実際、立案担当者の意図もそうだったのだと思われます。(結論としても、この解釈が正しいです。)

ところが、条文の文言は、そうなっていません。(端的に言って立案ミスです。)

つまり、「果実飲料等」の定義は、

「・・・「果実飲料」・・・並びに・・・「その他の飲料」・・・をいう。

ただし、次の各号に掲げるものを除く

(1) 不当景品類及び不当表示防止法第31条第1項の規定に基づき設定された他の公正競争規約の適用を受けるもの

(2) 「酒税法」(昭和28年法律第6号)に規定する酒類

(3) 粉末飲料

(4) 紅茶飲料(商品名又は名称から紅茶飲料と判断されるもの)

(5) 野菜を破砕して搾汁又は裏ごしをし、皮、種子等を除去したもの(これを濃縮したもの又は濃縮したものを希釈して搾汁の状態に戻したものを含む。以下「野菜汁」という。)が混合されたもので、野菜汁の使用量が果汁の使用量を上回るもの」

と規定されていて、2条ただし書で、上記⑴~⑸が除外されています。

そのため、たとえば、⑷の紅茶飲料は、「果実飲料等」には含まれません。

ところが、「果実飲料」については、

「果実飲料等の表示に関する公正競争規約施行規則・・・に定める「果実飲料」」

と定義されており、文言上、規約2条ただし書⑴~⑸を除外していません。

ちなみに、果実飲料等の表示に関する公正競争規約施行規則1条1項では、「果実飲料」は、

「果実飲料等の表示に関する公正競争規約(以下「規約」という。)第2条第1項に規定する「施行規則に定める「果実飲料」」とは、

「食品表示法」(平成25年法律第70号)に基づく「食品表示基準」(平成27年内閣府令第10号。以下「表示基準」という。)別表第3の上欄に掲げる果実飲料に係る用語の定義に準ずる次のものをいう。

(1) 果実ジュース

1種類の果実の果実の搾汁若しくは還元果汁

又は

これらに砂糖類、蜂蜜等を加えたもの

(ただし、砂糖類、蜂蜜等の原材料及び添加物に占める重量の割合が5%以下であること。)

をいう。

ただし、オレンジジュースにあっては

みかん類の果実の搾汁、濃縮果汁若しくは還元果汁を加えたもの

(みかん類の原材料及び添加物に占める重量の割合が10%未満であって、かつ、製品の糖用屈折計示度

(加えられた砂糖類、蜂蜜等の糖用屈折計示度を除く。以下この施行規則において同じ。)

に寄与する割合が10%未満のものに限る。)

を含む。

(2) 果実ミックスジュース

2種類以上の果実の搾汁若しくは還元果汁を混合したもの

又は

これらに砂糖類、蜂蜜等を加えたもの

(ただし、砂糖類、蜂蜜等の原材料及び添加物に占める重量の割合が5%以下であること。

また、みかん類の果実の搾汁又は還元果汁を加えたオレンジジュースであって、みかん類の原材料及び添加物に占める重量の割合が10%未満、かつ、製品の糖用屈折計示度に寄与する割合が10%未満のものを除く。)

をいう。

(3) 果粒入り果実ジュース

果実の搾汁若しくは還元果汁にかんきつ類の果実のさのう若しくはかんきつ類以外の果実の果肉を細切したもの等

(以下「果粒」という。)

を加えたもの

又は

これらに砂糖類、蜂蜜等を加えたもの

(ただし、砂糖類、蜂蜜等の原材料及び添加物に占める重量の割合が5%以下であること。)

をいう。

(4) 果実・野菜ミックスジュース

果実の搾汁若しくは還元果汁に野菜汁を加えたもの

又は

これらに砂糖類、蜂蜜等を加えたもの

(ただし、砂糖類、蜂蜜等の原材料及び添加物に占める重量の割合が5%以下であること。)

であって、

果実の搾汁又は還元果汁の原材料及び添加物に占める重量の割合が50%を上回るものをいう。

(5) 果汁入り飲料

次に掲げるものをいう。

還元果汁を希釈したもの若しくは還元果汁及び果実の搾汁を希釈したもの

又は

これらに砂糖類、蜂蜜等を加えたものであって、

糖用屈折計示度が表示基準別表第3の中欄に掲げる還元果汁に係る同表の下欄に掲げる表3

(以下「表示基準における表3」という。)

の基準

(レモン、ライム、うめ及びかぼすにあっては

表示基準別表第3の中欄に掲げる還元果汁に係る同表の下欄に掲げる表4

(以下「表示基準における表4」という。)

の酸度

(加えられた酸の酸度を除く。以下この施行規則において同じ。)

の基準。

2種類以上の果実を使用したものにあっては

糖用屈折計示度

又は

酸度

について

果実の搾汁及び還元果汁の配合割合により

表示基準における表3又は表4の基準を按分したものを合計して算出した基準)

の10%以上100%未満のもので、

かつ、

果実の搾汁及び還元果汁の

原材料及び添加物

に占める重量の割合が

果実の搾汁、還元果汁、砂糖類、蜂蜜及び水以外のものの

原材料及び添加物

に占める重量の割合

を上回るもの

果実の搾汁を希釈したもの

又は

これに砂糖類、蜂蜜等を加えたものであって、

果実の搾汁の

原材料及び添加物

に占める重量の割合が10%以上のもので、

かつ、

果実の搾汁の

原材料及び添加物

に占める重量の割合が

果実の搾汁、砂糖類、蜂蜜及び水以外のものの

原材料及び添加物

に占める重量の割合

を上回るもの

希釈して飲用に供するものであって、希釈時の飲用に供する状態がア又はイに掲げるものとなるもの」

と定義されており、やはり、規約2条1項ただし書⑴~⑸を文言上除外していません。

ざっくりまとめると、

「果飲料」=⑴果実ジュース+⑵果実ミックスジュース+⑶果粒入り果実ジュース+⑷果実・野菜ミックスジュース+⑸果入り飲料

ということになります。

話を元に戻すと、このように、「果実飲料」の定義からは、規約2条1項ただし書⑴~⑸は除外されていません。

規約2条1項の「その他の飲料」も、

「商品名中に果実の名称を使用する飲料

及び

色等によって果実の搾汁を使用すると印象づける飲料

であって

果汁の使用割合が10%未満のもの

(果汁を含まないものを含む・・・)」

と定義されており、同じく、規約2条1項ただし書⑴~⑸が、除外されていません。

まとめると、

「果実飲料等」からは、規約2条1項ただし書⑴~⑸が除外されており、

「果実飲料」および「その他の飲料」からは規約2条1項ただし書⑴~⑸が除外されていない

ため、

「果実飲料等」≠「果実飲料」+「その他の飲料」

ということになります。

あるいは、もう少し厳密に書けば、

「果実飲料等」

=「果実飲料」

 +「その他の飲料」

 ー「(1) 不当景品類及び不当表示防止法第31条第1項の規定に基づき設定された他の公正競争規約の適用を受けるもの」

 ー「(2) 「酒税法」(昭和28年法律第6号)に規定する酒類」

 ー「(3) 粉末飲料」

 ー「(4) 紅茶飲料(商品名又は名称から紅茶飲料と判断されるもの)」

 ー「(5) 野菜を破砕して搾汁又は裏ごしをし、皮、種子等を除去したもの(これを濃縮したもの又は濃縮したものを希釈して搾汁の状態に戻したものを含む。以下「野菜汁」という。)が混合されたもので、野菜汁の使用量が果汁の使用量を上回るもの」

ということになります。

規約の文言を論理的に解釈するとこういうことになるのですが、おそらく、規約が言いたいことはそうではなく、「果実飲料」からも「その他の飲料」からも、規約2条1項ただし書⑴~⑸は除外される、ということなんだろうと思われます。

これはきわめて常識的な解釈、というより、これ以外の解釈はありえないでしょう。

規約2条1項の文言がそうなっていないのは、たんなるドラフティングのミスと考えられます。

こう解釈しないと、たとえば、規約2条1項ただし書⑴の、

「(1) 不当景品類及び不当表示防止法第31条第1項の規定に基づき設定された他の公正競争規約の適用を受けるもの」

というのは、他の公正競争規約があればそちらを優先しましょうという趣旨だと考えられますが、それにもかかわらず、「果実飲料」や「その他の飲料」には、他の公正競争規約があっても当該他の公正競争規約は優先されない、というわけのわからないことになってしまいます。

このように、条文のドラフティングというのは、どこまでも愚直に文言を論理的に追っていくことが重要であり、なんとなく2つのサブカテゴリーが1つのカテゴリーに統合されるような絵を頭に浮かべながら条文を書くと、間違いの元になります。

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