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2022年12月

2022年12月28日 (水)

公取委による優越緊急調査の社名公表について

12月27日、公取委が、優越的地位の濫用の緊急調査の結果判明した13の事業者名を公表しました。

この公表の法的根拠の有無については以前「価格転嫁拒否をした企業の企業名公表について(公取委2022年10月5日事務総長会見)」(2022年11月15日)に書いたのでそちらをご覧頂ければと思いますが、この公表にはいろいろと問題があると思います。

まず、企業名を公表しているページでは、脚注で、

「※ 独占禁止法Q&Aに該当する行為を行っていたか否かを調査したものであり、この公表が独占禁止法又は下請法に違反すること又はそのおそれを認定したものではない。」

と記載されています。

大事なのは、違反のおそれすら認定したものではない、と明言していることです。

違反のおそれがある場合には「注意」がなされることがありますが、今回の公表は、注意にすら値しない、と公取自身が認めているるわけです。

それにもかかわらず、報道発表の本文の方では、まず標題が、

「4 注意喚起文書の送付及び独占禁止法Q&Aの①に該当する行為がみられた事業者に関する事業者名の公表

となっています。

ここで、「独占禁止法Q&Aの①」というのは、

「① 労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと」

です。

そして、この①については、同報道発表では、

「公正取引委員会は、令和4年1月26日、「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」(平成15年公正取引委員会事務総長通達第18号。以下「下請法運用基準」という。)を改正するとともに、

同年2月16日、公正取引委員会のウェブサイトに掲載している「よくある質問コーナー(独占禁止法)」のQ&A(以下「独占禁止法Q&A」という。)に、労務費、原材料費、エネルギーコスト等のコストの上昇分を取引価格に反映せず、従来どおりに取引価格を据え置くことは、独占禁止法上の優越的地位の濫用の要件の1つに該当するおそれがあり

下記のとおり、独占禁止法Q&Aの①及び②の2つの行為がこれに該当することを明確化した。」

と説明されています。

ここで、「独占禁止法上の優越的地位の濫用の要件の1つ」と、持って回った言い方をしていますが、要は濫用行為のことです(もう1つの要件は優越的地位)。

つまり、①の行為は濫用行為に該当するおそれがある、というのが公取委の立場です。

ということは、前記の「4 注意喚起文書の送付及び独占禁止法Q&Aの①に該当する行為がみられた事業者に関する事業者名の公表」という標題は、濫用行為に該当するおそれがある行為がみられた事業者の事業者名を公表しているのだ、ということになります。

実際、報道発表の4⑶では、

「⑶ また、個別調査の結果、受注者からの値上げ要請の有無にかかわらず、取引価格が据え置かれており、事業活動への影響が大きい取引先として受注者から多く名前が挙がった発注者であって、かつ、多数の取引先について独占禁止法Q&Aの①に該当する行為が確認された事業者については、価格転嫁の円滑な推進を強く後押しする観点から、取引当事者に価格転嫁のための積極的な協議を促すとともに、受注者にとっての協議を求める機会の拡大につながる有益な情報であること等を踏まえ、独占禁止法第43条の規定に基づき、その事業者名を公表することとした(注3)。

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/dec/221227_kinkyuchosakekka_2.html

(注3)こうした行為を多数の取引の相手方に対して行っている事案又は過去に繰り返し行っている事案については、独占禁止法に基づき事業者名を公表する方針を対外的に示しているところである(参考3:「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」(令和4年10月28日閣議決定)及び参考4:「適正な価格転嫁の実現に向けた取組」(令和4年10月4日第10回新しい資本主義実現会議における古谷公正取引委員会委員長提出資料))。

なお、この対応に当たっては、公正取引委員会は、対象となる事業者に対し、意見を述べる機会を付与した。」

とされています。

つまり、①の行為(=濫用行為に該当するおそれがある行為)を認定した、というのが4⑶で言っていることです。

ところが、4⑷では、

「⑷ 上記のとおり、今回の事業者名の公表は、転嫁円滑化を強力に推進する観点からの情報提供を図るため実施したものであり、独占禁止法又は下請法に違反すること又はそのおそれを認定したものではない。」

と、全く逆のことが述べられています。

さらに、事業者名公表ページでは、

「※ 独占禁止法Q&Aに該当する行為を行っていたか否かを調査したものであり、この公表が独占禁止法又は下請法に違反すること又はそのおそれを認定したものではない。」

と注記されているのは前述のとおりです。

まとめると、

4の標題→おそれ認定

4⑶→おそれ認定

4⑷→おそれ認定否定

脚注→おそれ認定否定

ということになります。

いったい、「おそれ」は認定されたのでしょうか? されなかったのでしょうか?

まったく矛盾すると言うほかないと思います。

それに、標題(新聞で言えば、見出し)と、それに続く中心的な段落である4⑶でおそれありとしつつ、それらと比べると目立たない(実際、新聞でもまず報道されることがない)4⑷や脚注でおそれなし、とするというのは、いかにも姑息です。

公取委に正面切って聞けば間違いなく「おそれは認定していません」という回答になるのは目に見えており、そういう意味ではそれが公式見解なのでしょう。

ですが、それならそのことがきちんと誤解なく国民に伝わるようにしないといけないと思います。

実際、12月27日の朝日新聞の、

「公取委が価格転嫁巡り優越的地位乱用の調査、企業名13社を公表」

という記事では、

「公正取引委員会は27日、労務費・原材料費などのコスト上昇を踏まえて実施した独占禁止法の優越的地位の乱用に関する緊急調査の結果、事業活動への影響が大きいとして多く名前が挙がった企業13社の社名を公表した。価格転嫁のための協議を促すことなどが目的で、これらの企業が独禁法や下請法に違反すると認定したものではないとしている。」

というように、違反を認定したものではないと要約されていて、「おそれ」すら認定したものではない、という部分は抜け落ちています。

なんと、12月28日の毎日新聞の、

「価格転嫁拒否、13社公表 佐川、デンソーなど 公取委」

という記事では、

「公正取引委員会は27日、原材料費やエネルギー価格などのコストが上昇しているのに、下請け企業との取引価格に適切に転嫁しなかったとして、佐川急便やデンソーなど13の企業・団体を公表した。独禁法や下請け法の違反には当たらないが、独禁法が禁じる「優越的地位の乱用」につながる恐れがあると判断した。」

というように、違反につながるおそれがある(この、つながるおそれ、というのは注意の要件です)ことになってしまっています。

次に、12月27日の日経新聞の、

「佐川急便やデンソーなど13社公表 価格転嫁協議せず」

という記事では、

「公正取引委員会は27日、下請け企業などとの間で原燃料費や人件費といったコスト上昇分を取引価格に反映する協議をしなかったとして佐川急便や全国農業協同組合連合会(JA全農)、デンソーなど13社・団体の名前を公表した。こうした行為は独占禁止法の「優越的地位の乱用」に該当する恐れがある。」

と報じられており、やはり、違反のおそれが認められたので公表された、と読める内容になっています。

ちなみに、この記事では各社のコメントも引用されており、ドン・キホーテと三菱食品が、

「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス傘下のディスカウント店運営子会社ドン・キホーテ(東京・目黒)は「今回の公表の前提として当社に独占禁止法または下請法への違反またはその恐れがあったとの認定がなされたものではない」とした上で、「このような指摘を受けたことは誠に遺憾であり、今後、取引業者との一層のコミュニケーションをはかる」とコメントした。」

「食品卸大手の三菱食品は「法令違反には当たらないと理解しているが、取引先と緊密に連携しながら適正な取引環境の維持につとめる」とコメントした。」

ということであり、筋を通す2社の姿勢に私などは強い共感を覚えます。

最後にNHKのウェブサイトでは、12月27日付の、

「“値上げの必要性協議せず” 大手企業などの名前公表 公取」

という記事で、

「原材料や燃料の価格が高騰する中、公正取引委員会は、中小企業が大手企業などとの取引で製品やサービスの価格を適正に価格転嫁できているか緊急調査を行いました。その結果、価格転嫁に応じていなかったことなどが認められたとして、13の企業や団体名を公表しました。」

というように、応じなかったという客観的事実が公表された、と紹介され、さらに、

「公正取引委員会は、この公表が独占禁止法や下請法に違反することや、そのおそれを認定したものではないとしていますが、取引先と価格転嫁の協議の場を設けるなどの是正を促すとしています。」

と、おそれを認定したわけでもないことを明確に念押ししています。

このあたりの正確さは、さすがNHKだと思いました。

余談その1、ですが、ある知り合いの企業内弁護士の方が、自社が関係する法務関連のニュースが報道されたときに、

NHK以外は、全部間違っていた。

とおっしゃっていました。

今回、NHKの正確さをあらためて実感しました。

余談その2、ですが、最近のNHKのウェブサイトの充実ぶりはすごいです。(昔からそうだったのかもしれませんが。)

元々私は池上彰さんと佐藤優さんが対談で「NHKのサイトを見ていれば知っておくべき重要ニュースを見逃すことはない」というようなことをおっしゃっていたのでお気に入り登録をしているのですが、個人的には、とくに、ウェブ特集とかスペシャルコンテンツが、若手記者の方々が重要な社会問題をいくつも提起しており、まさに「一隅を照らす」感があり、たいへん読み応えがあります(読んでいて涙が止まらないこともあります。)

さて本題に戻りますと、これくらい、報道各社も誤解して報じているわけです。

ほんとうは、誤解しているわけではなくて、わかりやすく伝えようとすると枝葉末節は端折られてしまうということなのだと思いますが、ともかく、その責任は、わけのわからない報道発表をする公取委にあると思います。

それに、あらためて前記の脚注を読み返すと、

「※ 独占禁止法Q&Aに該当する行為を行っていたか否かを調査したものであり、この公表が独占禁止法又は下請法に違反すること又はそのおそれを認定したものではない。」

といっていて、素直に読むと、Q&Aに該当する行為(=濫用行為)を行った事業者の事業者名を公表している、と読めてしまうのではないでしょうか?

これでは、いくら「おそれを認定したものではない」といっても、脚注の内部で矛盾しており、消費者庁流にいえば、強調表示と矛盾する打消し表示であって打消しの効果は認められない、といわれても仕方ないレベルだと思います。

1つ驚いたのは、12月27日の朝日新聞の、

「公取委、デンソーや佐川急便など13社を名指し 下請け取引を問題視」

という記事で報じられていたのですが、

「公取委によると、発注元側は「下請け側から価格交渉の申し出がなかった」などと主張しているという。

しかし、下請け側からは「取引を打ち切られることを恐れて申し出られなかった」との声があり、公取委の担当者は「価格転嫁のためには発注者から積極的に交渉の場を設けることが重要だ」と指摘した。」

ということなんだそうです。

つまり今回公表された事業者にも、下請け側から価格交渉の申し出がなかったために交渉しなかったために公表されたところがある可能性がある、ということです。

言われなくてもこちらから「値上げしませんか?」と交渉を持ちかけないと濫用になる、ということです。

実はこの点については報道発表3⑴アでも、

「ア 本件調査において、①の行為については、受注者から申入れがないこと・・・等を理由として、発注者からは積極的な協議の場を設けていないため、調査対象期間においては、取引価格が据え置かれているケースが多数みられた。」

とされており、受注者から申し入れがないことを理由に協議しないことは①に該当することが示唆されています。

しかし、これはいくらなんでも、優越的地位の濫用の解釈として間違っていると思います。

善意に解釈すれば、

上記朝日新聞の公取委コメントは、おそれですらないのだからこれでいいのだ(濫用行為の解釈を述べたものではない)と公取委は言っているだけ、

ということなのかもしれませんし、

報道発表3⑴アも、「受注者から申し入れがないこと」を理由に協議しないことは、「①の行為について」(in relation to)そういう事実が認められたというだけで、「受注者から申し入れがないこと」を理由に協議しないことが①に該当するとは言っていない、

ということなのかもしれませんが、いずれもごまかしも良いところだと思います。

しかも、違反行為と関係ない(≒おそれすらない)のに公表するというのは、独禁法43条の解釈としても問題があります。

つまり、独禁法43条では、

「公正取引委員会は、この法律の適正な運用を図るため、事業者の秘密を除いて、必要な事項を一般に公表することができる。」

と規定されており、公表の目的はあくまで独禁法(ここでは、優越的地位の濫用)の適正な運用を図ることである必要があるのです。

ところが、前述の報道発表4⑶では、

「⑶ また、個別調査の結果、受注者からの値上げ要請の有無にかかわらず、取引価格が据え置かれており、事業活動への影響が大きい取引先として受注者から多く名前が挙がった発注者であって、かつ、多数の取引先について独占禁止法Q&Aの①に該当する行為が確認された事業者については、

価格転嫁の円滑な推進を強く後押しする観点から、取引当事者に価格転嫁のための積極的な協議を促すとともに、受注者にとっての協議を求める機会の拡大につながる有益な情報であること等を踏まえ、独占禁止法第43条の規定に基づき、その事業者名を公表することとした(注3)。」

とされており、価格転嫁の推進を後押しするのが目的だ、と述べています。

これらをまとめると、今回の公表は違反のおそれすらないが、価格転嫁の推進を後押しする目的なので、43条を根拠に公表できるのだ、ということになります。

しかし、それは43条の独禁法の適正な運用を図る目的とは、相当ずれていると思います。

だって、違反のおそれすらないからです。

違反のおそれすらない行為を価格転嫁を推進するからという目的で公表するのは、価格転嫁の推進自体が自己目的化しており、独禁法の適正な運用とはどんどん離れていきます。

このような問題のある事業者名の公表は看過できませんので、今回は以上のとおり問題提起してみました。

2022年12月18日 (日)

果実飲料等の表示に関する公正競争規約2条の規定ぶりの疑問

果実飲料等の表示に関する公正競争規約2条では、

「この規約で「果実飲料等」とは、

果実飲料等の表示に関する公正競争規約施行規則(以下「施行規則」という。)に定める「果実飲料」(以下「果実飲料」という。)

並びに

商品名中に果実の名称を使用する飲料及び色等によって果実の搾汁を使用すると印象づける飲料であって果汁の使用割合が10%未満のもの(果汁を含まないものを含む。以下「その他の飲料」という。)をいう。

ただし、次の各号に掲げるものを除く。

(1) 不当景品類及び不当表示防止法第31条第1項の規定に基づき設定された他の公正競争規約の適用を受けるもの

(2) 「酒税法」(昭和28年法律第6号)に規定する酒類

(3) 粉末飲料

(4) 紅茶飲料(商品名又は名称から紅茶飲料と判断されるもの)

(5) 野菜を破砕して搾汁又は裏ごしをし、皮、種子等を除去したもの(これを濃縮したもの又は濃縮したものを希釈して搾汁の状態に戻したものを含む。以下「野菜汁」という。)が混合されたもので、野菜汁の使用量が果汁の使用量を上回るもの」

と規定されています。

ここでは、

「果実飲料等」

「果実飲料」

「その他の飲料」

の3つの用語が定義されているのがわかります。

この規定をぼーっと読むと、

「果実飲料等」=「果実飲料」+「その他の飲料」

なんだろうな、と思えるし、実際、立案担当者の意図もそうだったのだと思われます。(結論としても、この解釈が正しいです。)

ところが、条文の文言は、そうなっていません。(端的に言って立案ミスです。)

つまり、「果実飲料等」の定義は、

「・・・「果実飲料」・・・並びに・・・「その他の飲料」・・・をいう。

ただし、次の各号に掲げるものを除く

(1) 不当景品類及び不当表示防止法第31条第1項の規定に基づき設定された他の公正競争規約の適用を受けるもの

(2) 「酒税法」(昭和28年法律第6号)に規定する酒類

(3) 粉末飲料

(4) 紅茶飲料(商品名又は名称から紅茶飲料と判断されるもの)

(5) 野菜を破砕して搾汁又は裏ごしをし、皮、種子等を除去したもの(これを濃縮したもの又は濃縮したものを希釈して搾汁の状態に戻したものを含む。以下「野菜汁」という。)が混合されたもので、野菜汁の使用量が果汁の使用量を上回るもの」

と規定されていて、2条ただし書で、上記⑴~⑸が除外されています。

そのため、たとえば、⑷の紅茶飲料は、「果実飲料等」には含まれません。

ところが、「果実飲料」については、

「果実飲料等の表示に関する公正競争規約施行規則・・・に定める「果実飲料」」

と定義されており、文言上、規約2条ただし書⑴~⑸を除外していません。

ちなみに、果実飲料等の表示に関する公正競争規約施行規則1条1項では、「果実飲料」は、

「果実飲料等の表示に関する公正競争規約(以下「規約」という。)第2条第1項に規定する「施行規則に定める「果実飲料」」とは、

「食品表示法」(平成25年法律第70号)に基づく「食品表示基準」(平成27年内閣府令第10号。以下「表示基準」という。)別表第3の上欄に掲げる果実飲料に係る用語の定義に準ずる次のものをいう。

(1) 果実ジュース

1種類の果実の果実の搾汁若しくは還元果汁

又は

これらに砂糖類、蜂蜜等を加えたもの

(ただし、砂糖類、蜂蜜等の原材料及び添加物に占める重量の割合が5%以下であること。)

をいう。

ただし、オレンジジュースにあっては

みかん類の果実の搾汁、濃縮果汁若しくは還元果汁を加えたもの

(みかん類の原材料及び添加物に占める重量の割合が10%未満であって、かつ、製品の糖用屈折計示度

(加えられた砂糖類、蜂蜜等の糖用屈折計示度を除く。以下この施行規則において同じ。)

に寄与する割合が10%未満のものに限る。)

を含む。

(2) 果実ミックスジュース

2種類以上の果実の搾汁若しくは還元果汁を混合したもの

又は

これらに砂糖類、蜂蜜等を加えたもの

(ただし、砂糖類、蜂蜜等の原材料及び添加物に占める重量の割合が5%以下であること。

また、みかん類の果実の搾汁又は還元果汁を加えたオレンジジュースであって、みかん類の原材料及び添加物に占める重量の割合が10%未満、かつ、製品の糖用屈折計示度に寄与する割合が10%未満のものを除く。)

をいう。

(3) 果粒入り果実ジュース

果実の搾汁若しくは還元果汁にかんきつ類の果実のさのう若しくはかんきつ類以外の果実の果肉を細切したもの等

(以下「果粒」という。)

を加えたもの

又は

これらに砂糖類、蜂蜜等を加えたもの

(ただし、砂糖類、蜂蜜等の原材料及び添加物に占める重量の割合が5%以下であること。)

をいう。

(4) 果実・野菜ミックスジュース

果実の搾汁若しくは還元果汁に野菜汁を加えたもの

又は

これらに砂糖類、蜂蜜等を加えたもの

(ただし、砂糖類、蜂蜜等の原材料及び添加物に占める重量の割合が5%以下であること。)

であって、

果実の搾汁又は還元果汁の原材料及び添加物に占める重量の割合が50%を上回るものをいう。

(5) 果汁入り飲料

次に掲げるものをいう。

還元果汁を希釈したもの若しくは還元果汁及び果実の搾汁を希釈したもの

又は

これらに砂糖類、蜂蜜等を加えたものであって、

糖用屈折計示度が表示基準別表第3の中欄に掲げる還元果汁に係る同表の下欄に掲げる表3

(以下「表示基準における表3」という。)

の基準

(レモン、ライム、うめ及びかぼすにあっては

表示基準別表第3の中欄に掲げる還元果汁に係る同表の下欄に掲げる表4

(以下「表示基準における表4」という。)

の酸度

(加えられた酸の酸度を除く。以下この施行規則において同じ。)

の基準。

2種類以上の果実を使用したものにあっては

糖用屈折計示度

又は

酸度

について

果実の搾汁及び還元果汁の配合割合により

表示基準における表3又は表4の基準を按分したものを合計して算出した基準)

の10%以上100%未満のもので、

かつ、

果実の搾汁及び還元果汁の

原材料及び添加物

に占める重量の割合が

果実の搾汁、還元果汁、砂糖類、蜂蜜及び水以外のものの

原材料及び添加物

に占める重量の割合

を上回るもの

果実の搾汁を希釈したもの

又は

これに砂糖類、蜂蜜等を加えたものであって、

果実の搾汁の

原材料及び添加物

に占める重量の割合が10%以上のもので、

かつ、

果実の搾汁の

原材料及び添加物

に占める重量の割合が

果実の搾汁、砂糖類、蜂蜜及び水以外のものの

原材料及び添加物

に占める重量の割合

を上回るもの

希釈して飲用に供するものであって、希釈時の飲用に供する状態がア又はイに掲げるものとなるもの」

と定義されており、やはり、規約2条1項ただし書⑴~⑸を文言上除外していません。

ざっくりまとめると、

「果飲料」=⑴果実ジュース+⑵果実ミックスジュース+⑶果粒入り果実ジュース+⑷果実・野菜ミックスジュース+⑸果入り飲料

ということになります。

話を元に戻すと、このように、「果実飲料」の定義からは、規約2条1項ただし書⑴~⑸は除外されていません。

規約2条1項の「その他の飲料」も、

「商品名中に果実の名称を使用する飲料

及び

色等によって果実の搾汁を使用すると印象づける飲料

であって

果汁の使用割合が10%未満のもの

(果汁を含まないものを含む・・・)」

と定義されており、同じく、規約2条1項ただし書⑴~⑸が、除外されていません。

まとめると、

「果実飲料等」からは、規約2条1項ただし書⑴~⑸が除外されており、

「果実飲料」および「その他の飲料」からは規約2条1項ただし書⑴~⑸が除外されていない

ため、

「果実飲料等」≠「果実飲料」+「その他の飲料」

ということになります。

あるいは、もう少し厳密に書けば、

「果実飲料等」

=「果実飲料」

 +「その他の飲料」

 ー「(1) 不当景品類及び不当表示防止法第31条第1項の規定に基づき設定された他の公正競争規約の適用を受けるもの」

 ー「(2) 「酒税法」(昭和28年法律第6号)に規定する酒類」

 ー「(3) 粉末飲料」

 ー「(4) 紅茶飲料(商品名又は名称から紅茶飲料と判断されるもの)」

 ー「(5) 野菜を破砕して搾汁又は裏ごしをし、皮、種子等を除去したもの(これを濃縮したもの又は濃縮したものを希釈して搾汁の状態に戻したものを含む。以下「野菜汁」という。)が混合されたもので、野菜汁の使用量が果汁の使用量を上回るもの」

ということになります。

規約の文言を論理的に解釈するとこういうことになるのですが、おそらく、規約が言いたいことはそうではなく、「果実飲料」からも「その他の飲料」からも、規約2条1項ただし書⑴~⑸は除外される、ということなんだろうと思われます。

これはきわめて常識的な解釈、というより、これ以外の解釈はありえないでしょう。

規約2条1項の文言がそうなっていないのは、たんなるドラフティングのミスと考えられます。

こう解釈しないと、たとえば、規約2条1項ただし書⑴の、

「(1) 不当景品類及び不当表示防止法第31条第1項の規定に基づき設定された他の公正競争規約の適用を受けるもの」

というのは、他の公正競争規約があればそちらを優先しましょうという趣旨だと考えられますが、それにもかかわらず、「果実飲料」や「その他の飲料」には、他の公正競争規約があっても当該他の公正競争規約は優先されない、というわけのわからないことになってしまいます。

このように、条文のドラフティングというのは、どこまでも愚直に文言を論理的に追っていくことが重要であり、なんとなく2つのサブカテゴリーが1つのカテゴリーに統合されるような絵を頭に浮かべながら条文を書くと、間違いの元になります。

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