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2022年11月15日 (火)

価格転嫁拒否をした企業の企業名公表について(公取委2022年10月5日事務総長会見)

10月5日の事務総長会見で、エネルギーコスト等の転嫁受入れを拒否した企業名を公表するとの発言がなされています。

関連部分を引用しますと、

「「企業名公表」の取組について

 次に、昨日4日に開催された「新しい資本主義実現会議」における公正取引委員会委員長の提出資料に記載されております「企業名公表」の取組について御説明します。

 中小企業等が労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分を適切に転嫁できるようにし、賃金引上げの環境を整備するため、政府全体として「転嫁円滑化施策パッケージ」を推進しています。公正取引委員会では、適切な価格転嫁の実現に向け優越的地位の濫用に関する緊急調査を進めてきました。その流れを受けまして、適正な価格転嫁の実現を一層図る必要があるという政府一体的な認識の下、公正取引委員会において緊急調査等の結果を踏まえ、独占禁止法に基づき、転嫁拒否行為が確認できた事業者の企業名を公表することにより、違反行為の未然防止を図るとともに、適正な価格転嫁を強力に推進することとしました。

 転嫁拒否行為に対する懸念は、全業種においてみられますところ、独占禁止法又は下請法違反事件として法違反を個別に認定していく取組のみによっては、転嫁拒否行為が問題であるというメッセージを浸透させるには限界があります。このため、法違反又は法違反の疑いを認定しないまでも、その一歩手前の行為が確認できた場合に企業名公表を行うとともに、違反行為の未然防止、更にはコンプライアンス意識の醸成を図るとともに、転嫁拒否行為の抑止を図るというものであります。

 具体的には、今回の企業名公表は、緊急調査等の結果、一つ目の内容としまして、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと、又は、二つ目の内容としまして、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストが上昇したため、取引の相手方が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面、電子メール等で取引の相手方に回答することなく、従来どおりに取引価格を据え置くことに該当する転嫁拒否行為を行っている事業者に関して、その中でも多数の取引の相手方に対して行っている事案、あるいは過去に繰り返し行っている事案につきまして、独占禁止法第43条の規定に基づいて企業名を公表するというものです。

 緊急調査につきましては、今後、令和4年末を目途に、調査結果を取りまとめて公表する予定でありますので、今回の企業名公表についても、この際に合わせて公表を実施することを予定しています。」

「(問) 企業名の公表についてですけれども、これは今回、価格転嫁についての調査結果を踏まえてということかと思いますが、これまで公正取引委員会の執行でいうと排除措置命令、警告、注意とかいうのがあったかと思うんですが、それ以外に今回と同じような企業名を公表するという事例はあったのですか。

(事務総長) 企業名の公表というのは、これまでほとんどの事案では排除措置命令、警告、あるいは下請法の勧告といった法的な措置などを行った場合に、公正取引委員会はその行政の透明性を確保する観点から、この企業にこういう命令を行いました、警告を行いました、勧告を行いましたということを公表してきております。

 それに対しまして、今回の価格転嫁のための緊急調査につきましては、独占禁止法上の優越的地位の濫用の観点から調査を行っているものでありますけれども、個別企業の違反の有無を明らかにするという調査ではなくて、強いて言えば、実態調査に近いような内容でございまして、実際、部局としても審査局で行っているわけでなくて、取引部で行っております。

 ただ、そういった実態調査の結果を踏まえて、企業名を公表した例が過去に全くなかったかというと、そういうことではなくて、だいぶ昔なのですけれども、平成元年にコンピューターシステムに関する安値入札という調査を行いまして、その中で特定の企業が著しく低い対価で地方公共団体におけるシステムの入札に応じていたという事例が認められたということで、企業名を公表して厳重注意を行いましたということを公表しているケースがあることはあるのですけれども、通常は、実態調査で個社名を出すということは行っておりませんので、その意味では、更にこの価格転嫁対策の重要性に鑑みて、一歩踏み込んだ対応をしていくものと御理解いただければと思います。」

「(問) 先ほど緊急調査のことで、既に説明があったかもしれないのですけれど、この独占禁止法に基づく企業名の公表というのは、下請法に基づく勧告とか、あと警告とかいう枠組みの処分ではないけれど、厳重注意という処分に該当するのですか。

(事務総長) 下請法の勧告というのは、法律にこの場合には勧告すると書いてあって、それに則った法律上の措置でありますが、それに対しまして、今回の企業名の公表というのは、第一に、違反行為の認定を行っているものではありません。転嫁拒否行為という、コストが上昇しているにもかかわらず、その取引価格を据え置くといったような、一種の外形と言いましょうか、そういった行為が行われている転嫁拒否行為については丁寧に確認をいたしますけれども、それをもって直ちに独占禁止法や下請法に違反するというわけではありませんので、その意味では、違反の認定はしていないんですけれども、ただ、転嫁対策を一層進めて、中小事業者の賃金上昇の環境整備につなげるという観点から、政府全体として転嫁対策を進めておりますので、そういった観点で違反行為の未然防止、あるいはコンプライアンス意識の醸成でありますとか、これらを含めた転嫁拒否行為の未然防止、あるいは抑止を図るというような観点で、踏み込んだ内容として企業名を公表するものでありますので、その意味では、処分性があるものではなく、事実の公表といった性格を持つものと理解しております。」

ということなんだそうです。

会見で引用されている「新しい資本主義実現会議」への公取委提出資料にも、同様の公表に関する記載があります。

公表の根拠とされている独禁法43条では、

「公正取引委員会は、この法律の適正な運用を図るため、事業者の秘密を除いて、必要な事項を一般に公表することができる。」

と規定されています。

違反の疑いですらない外形であっても、「事業者の秘密」というには無理がありますし、このような外形の公表が独禁法の「適正な運用を図るため」でないというのも無理がありますから(適正な運用には大いに役立つ気がします)、43条を根拠に公表できるという法律解釈は争いようがないと思います。

厚谷他編著『条解独禁法』504頁(佐島史彦執筆部分)では、

「各種法令においては、事業者が行政庁の指示に従わない場合などにその氏名等を公表する旨の規定を置いていることが少なくないが、本条は、これらとは異なり、独禁法の適正な運用を図る観点から、広く公取委に必要事項を公表することを認めたものである。その意味において、本条は、公取委の一般公表権を定めたものとされる。」

と、氏名の公表が典型例と想定されていることを示唆する記述があり、興味深いものがあります。

今回の公表措置は、上記でも引用したように、違反の疑いすら認定しないということで、前例のないものだといえます。

公表と言えば実態調査報告書の公表くらいで、違反事件でも注意は原則公表されないとされていることからすると、ずいぶんバランスの悪い運用だと思いますが、法律にできると書いてあるのだから、仕方ありません。

しかも、コスト転嫁に関する独禁法Q&Aの20番にあるような、

「1 労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について,価格の交渉の場において明示的に協議することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと

2 労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストが上昇したため,取引の相手方が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず,価格転嫁をしない理由を書面,電子メール等で取引の相手方に回答することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと」

で、相手方が多数か、または、繰り返した場合に公表されるというのだからたいへんです。

上記1は、明示的な協議の懈怠で違反になるということで、協議の申出が相手方からあったかどうかは、Q&Aの文言上は、問われていません。

上記2は、転嫁拒否の書面等による理由回答懈怠で違反になるということで、これも、相手方が理由を質問してきたかは、問われていません(相手方から値上げの要求があったことは必要です)。

というわけで、心当たりのある企業のみなさんは(もう手遅れかも知れませんが)注意しましょう。

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