« 打消し表示はすべての強調表示に付けましょう。 | トップページ | インテル事件欧州委決定(2009年)の必要シェアの公式について(その2) »

2022年10月 4日 (火)

インテル事件欧州委決定(2009年)の必要シェアの公式について

インテル事件欧州委決定¶1157では、同等に効率的な競争者が獲得する必要のあるシェア(必要シェア, required share)の算定式として、

S=rα/{1-r(1-α)-AAC/ASP} ・・・①

という公式が示されています。

ここで、

S:必要シェア

r:リベート率(売上100万円で20万のリベートならr=0.2)

α:条件を満たさない場合に失われるリベートの割合(全部失われるならα=1)

AAC:average avoidable cost.ここでは同等に効率的な競争者の販売価格

ASP:average sales price.独占企業の(リベートを引く前の)平均価格

です。

この式の導き方を簡単にメモしておきます。

まず簡単にするために、前述の式で、α=1とすると、

S=r/{1-AAC/ASP} ・・・②

となります。

これを導いてみましょう。

まず、需要者の需要量をV(個)と仮置きします。

このV(個)全部を独占企業から購入した場合の代金は、

ASP×V×(1-r) ・・・③

となります。

需要者は、全部を独占企業から購入してもこの金額で足りるので、競争者から一部を購入するとしても、トータルの支出額は③以下に抑えたいはずです。

そして、一部(Sとします。0≦S≦1)競争者から買う場合の代金総額は、

独占企業への支払額+競争者への支払額=ASP×V×(1-S)+AAC×V×S ・・・④

となります。

ここで、③≧④でなければならないので、

ASP×V×(1-r)≧ASP×V×(1-S)+AAC×V×S ・・・⑤

となります。

両辺をVで割ると、

ASP×(1-r)≧ASP(1-S)+AAC×S=ASP-ASP×S+AAC×S ・・・⑥

となり、変形すると、

S(ASPーAAC)≧ASPーASP(1-r)=ASP×r ・・・⑦

となり、さらに変形すると、

S≧(ASP×r)/(ASP-AAC)=r/(1-AAC/ASP)・・・⑧

となり、②(S=r/{1-AAC/ASP})が証明できました。

« 打消し表示はすべての強調表示に付けましょう。 | トップページ | インテル事件欧州委決定(2009年)の必要シェアの公式について(その2) »

独禁法と経済学」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 打消し表示はすべての強調表示に付けましょう。 | トップページ | インテル事件欧州委決定(2009年)の必要シェアの公式について(その2) »

フォト
無料ブログはココログ