インテル事件欧州委決定(2009年)の必要シェアの公式について
インテル事件欧州委決定¶1157では、同等に効率的な競争者が獲得する必要のあるシェア(必要シェア, required share)の算定式として、
S=rα/{1-r(1-α)-AAC/ASP} ・・・①
という公式が示されています。
ここで、
S:必要シェア
r:リベート率(売上100万円で20万のリベートならr=0.2)
α:条件を満たさない場合に失われるリベートの割合(全部失われるならα=1)
AAC:average avoidable cost.ここでは同等に効率的な競争者の販売価格
ASP:average sales price.独占企業の(リベートを引く前の)平均価格
です。
この式の導き方を簡単にメモしておきます。
まず簡単にするために、前述の式で、α=1とすると、
S=r/{1-AAC/ASP} ・・・②
となります。
これを導いてみましょう。
まず、需要者の需要量をV(個)と仮置きします。
このV(個)全部を独占企業から購入した場合の代金は、
ASP×V×(1-r) ・・・③
となります。
需要者は、全部を独占企業から購入してもこの金額で足りるので、競争者から一部を購入するとしても、トータルの支出額は③以下に抑えたいはずです。
そして、一部(Sとします。0≦S≦1)競争者から買う場合の代金総額は、
独占企業への支払額+競争者への支払額=ASP×V×(1-S)+AAC×V×S ・・・④
となります。
ここで、③≧④でなければならないので、
ASP×V×(1-r)≧ASP×V×(1-S)+AAC×V×S ・・・⑤
となります。
両辺をVで割ると、
ASP×(1-r)≧ASP(1-S)+AAC×S=ASP-ASP×S+AAC×S ・・・⑥
となり、変形すると、
S(ASPーAAC)≧ASPーASP(1-r)=ASP×r ・・・⑦
となり、さらに変形すると、
S≧(ASP×r)/(ASP-AAC)=r/(1-AAC/ASP)・・・⑧
となり、②(S=r/{1-AAC/ASP})が証明できました。
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