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2022年10月14日 (金)

知財の帰属は契約書に書くのでは足りないのか?(公取委下請法Q&A19番について)

公取委ウェブサイトの下請法Q&Aの19番に、

「(知的財産権の譲渡)

Q19 情報成果物作成委託において,知的財産権が親事業者又は下請事業者に発生する場合,いずれの場合においても,契約において知的財産権は親事業者に帰属することとしている。

この場合も3条書面にその旨記載する必要があるか。」

という設問に対して、

「A. 下請事業者に知的財産権が発生する場合,「給付の内容」に含めて当該知的財産権を親事業者に譲渡させるのであれば,給付の内容の一部として3条書面に記載する必要がある

また,その場合には,当該知的財産権の譲渡・許諾に係る対価を下請代金に加える必要がある。」

と回答されています。

私は、これは間違いだと思います。


複数の発注に共通する事項(共通事項)を3条書面とは別途通知する方法については、下請法3条1項の委任を受けた3条書面規則(「下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則」)4条で、

「第1条第1項各号に掲げる事項〔注・3条書面記載事項〕が一定期間における製造委託等について共通であるものとしてこれを明確に記載した書面によりあらかじめ下請事業者に通知されたときは,

当該事項については,その期間内における製造委託等に係る法第3条の書面への記載は,その通知したところによる旨を明らかにすることをもって足りる。」

と規定されています。

下請法運用基準第3の1(1)でも、

「(1) 3条書面に記載すべき事項は,「下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則」(以下「3条規則」という。)第1条第1項に定められており,親事業者は,これらの事項について明確に記載しなければならない。

親事業者は,製造委託等をした都度,3条規則第1条第1項に定められた事項(以下「必要記載事項」という。)を3条書面に記載し,交付する必要があるが,

必要記載事項のうち,一定期間共通である事項(例:支払方法,検査期間等)について,

あらかじめこれらの事項を明確に記載した書面により下請事業者に通知している場合には,

これらの事項を製造委託等をする都度交付する書面に記載することは要しない。

この場合,当該書面には,「下請代金の支払方法等については○年○月○日付けで通知した文書によるものである」等を記載することにより,当該書面と共通事項を記載した書面との関連性を明らかにする必要がある。」

と、同様の記載があります。

つまり、共通事項を別途通知する方法は、法律上も運用基準でも明確に認められているのです。

なのに、知的財産の帰属だけ別に扱う理由はありません。

令和3年11月版下請法講習テキストをみても、

「Q29: 継続的に運送を依頼している役務提供委託の取引において,契約書を3条書面とすることは問題ないか。それとも,契約書を取り交わしていても,別途,個々の運送を委託するたびに3条書面を交付する必要があるか。

A: 契約書の内容が,3条書面の具体的な必要記載事項(下請代金の額については算定方法を記載することも可)を全て網羅していれば,個別の役務提供のたびに3条書面を交付する必要はない。」(p30)

「Q32: 長期継続的な役務取引の場合には,年間契約を締結し,その後1年ごとの自動更新としている場合があるが,

この契約書が3条書面の必要記載事項を網羅している場合,1年ごとに契約書を改めて交付する必要はあるか

A: 契約書中の3条書面に記載すべき必要記載事項に変更がなければ,改めて交付する必要はない

なお,このような場合には,委託代金(下請代金の額)などについて,別途の書面で定めている場合もあると考えられ,別途の書面がある場合は当該書面を代金改定時などに随時交付するとともに,相互の関連付けが明らかになるようにする必要がある。」

というように、共通事項を通知する書面は契約書でもいいことが明らかにされていますし、同テキスト93頁の、

「下請代金支払遅延等防止法第 3 条に規定する書面に係る参考例」

の冒頭では、

「親事業者と下請事業者の間で取り交わされる契約書等の内容が,3条規則で定める事項を全て網羅している場合には,当該契約書等を3条書面とすることが可能であるので,別に書面を作成する必要はない。」

と、契約書に必要な記載がなされていればわざわざ別の書面を作って通知する必要はないことが明らかにされています。

というわけで、Q19は無視してかまいません。

ただ、当局のウェブサイトに書いてあるのに一弁護士が反対のことを言っているからと言って、正面切って逆らいにくい、という場合には、Q19の質問に、

3条書面に記載する必要がある。」

とあるのは、3条書面に直接記載する場合だけでなく、3条書面では契約書に言及する文言を記載(紐付け)しつつ、実際の文言は契約書に書かれている場合でも「3条書面に記載」しているのだ、という解釈をすれば辻褄は合うと思います(文言解釈的には相当無理がありますが)。

いずれにせよ、こういう明らかな間違いは、早く訂正してほしいものです。

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