インテル事件欧州委決定(2009年)の必要シェアの公式について(その2)
昨日の続きですが、掲題決定にはもう1つ、HP向けのrequired share(競争者が最低限獲得しなければならない需要者の購入量に占めるシェア)の公式として、
S=R/{(ASP-AAC)・V} ・・・①
というのも載っています(¶1196)。
記号の意味は、
S: required share
R:リベートの金額
ASP:average sales price, (独占者の)平均価格(リベート支払い前の)
AAC:average avoidable cost, (競争者の)平均回避可能費用
V:リベートを獲得するために需要者が購入しなければならない数量(個)
です。
これも証明してみましょう。
需要者がV個全部を独占者から買うときの支払額は、
ASP×VーR ・・・②
です。
需要者は、独占者から全部購入すればこの②の価格ですむわけですから、一部を競争者から購入するとしても、総額は、②の価格に抑えたいはずです。
ということは、
ASP・V(1-S)+AAC・VS≦ASP・VーR ・・・③
となります。
左辺の第1項が独占企業への支払額、第2項が競争者への支払額、右辺は全部独占企業から購入したときの支払額です。
③を変形すると、
AAC・VSーASP・V・S≦ーR ・・・④
となり、左右に-1/Vをかけて右辺をSでくくると、
S・(ASPーAAC)≧R/V ・・・⑤
となり、両辺をASPーAACで割ると、
S≧R/{(ASPーAAC)・V} ・・・⑥
となり、①(S=R/{(ASP-AAC)・V})が証明できました。
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