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2022年9月16日 (金)

下請振興法の親事業者と下請事業者の定義

掲題の点についてまとめておきます。

(なお、公的な説明は、下請法テキストに参考資料として添付されている「参考 下請中小企業振興法の内容」をご覧下さい。)

下請振興法2条2項で、親事業者は、

「この法律において「親事業者」とは、

法人にあつては

資本金の額若しくは出資の総額が自己より小さい法人たる中小企業者

又は

常時使用する従業員の数が自己より小さい個人たる中小企業者

に対し

の各号のいずれかに掲げる行為を委託することを業として行うもの、

個人にあつては

常時使用する従業員の数が自己より小さい中小企業者

に対し

の各号のいずれかに掲げる行為を委託することを業として行うものをいう。

一 その者〔親事業者〕が業として行う販売

若しくは

業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)

の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料〔≒下請法の製造委託類型1と2〕

若しくは

業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料〔≒製造委託類型3〕

の製造

又は

その者〔親事業者〕が業として使用し若しくは消費する物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料

の製造〔≒製造委託類型4〕

 その者〔親事業者〕が業として行う販売

又は

業として請け負う製造

の目的物たる物品又はその半製品、部品、附属品若しくは原材料

の製造のための

設備

又は

これに類する器具

の製造(前号に掲げるものを除く。)〔製造設備・器具の製造委託

又は

修理〔製造設備・器具の修理委託

 その者〔親事業者〕が

業として請け負う物品の修理の行為の全部若しくは一部〔≒修理委託類型1〕

又は

その者が

その使用する物品の修理を業として行う場合における

その修理の行為の一部(前号に掲げるものを除く。)〔≒修理委託類型2〕

 その者が業として行う提供

若しくは

業として請け負う作成

の目的たる情報成果物の作成の行為の全部若しくは一部〔≒情報成果物作成委託類型1、2〕

又は

その者が

業として使用する情報成果物の作成

の行為の全部若しくは一部〔≒情報成果物作成委託類型3〕

五 その者が業として行う提供の目的たる役務を構成する行為の全部又は一部〔≒役務提供委託〕」

と定義されています。

各号は下請法の製造委託等の定義と似ていますが、違うところもあります。

まず、下請法では1回の取引でも対象になるのに対して、振興法2条2項柱書では、「委託することを業として行う」というのが親事業者の定義なので、1回切りの取引の場合は親事業者には該当せず、したがって振興法も適用されません。

次に、下請法の製造委託では、下請から納入される物品が親事業者の完成品の一部を構成しないのは金型だけですが、2号で、金型だけでなく、完成品等製造のための

「設備又はこれに類する器具

にまで広げられています。

下請法が「金型」だけに限定しているのはあまり合理性がない(木型などが含まれない)ので、振興法のほうが妥当でしょう。

次に、下請法の製造委託の類型4(自己使用物の製造委託)は、

「事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品,部品,附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託すること」(下請法2条1項)

ですが、振興法でこれに相当するのは、上述のとおり、

「その者〔親事業者〕が業として使用し若しくは消費する物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料の製造」

です。

つまり、下請法上の製造委託類型4(自己使用物の製造委託)は、親事業者が当該物品の製造を業として行っていなければなりませんが、振興法上の自己使用物の製造委託は、自ら業として使用または消費していれば足り、自ら業として製造している必要はありません。

情報成果物作成委託についても同様で、下請法上の情報成果物作成委託の類型3(自己使用の情報成果物)は、

「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」(下請法2条3項)

と定義されていますが、上述のとおり、振興法でこれに相当するのは、

「その者〔親事業者〕が業として使用する情報成果物の作成の行為の全部若しくは一部」

です。

業として「作成」なのか、業として「使用」なのかは、ぜんぜん意味が違います。

「使用」で足りるとなれば、適用範囲は圧倒的に広くなるからです。

まあ、所詮下請振興法は罰則のない振興法ですから、適用範囲を広めにしたということなのでしょう。

また、振興法の役務提供委託(振興法2条2項5号)は、

「五 その者が業として行う提供の目的たる役務を構成する行為の全部又は一部」

と定義されているのに対して、下請法の役務提供委託(下請法2条4項)は、

「事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること

(建設業

(建設業法

(昭和24年法律第100号)

第2条第2項に規定する建設業をいう。以下この項において同じ。)

を営む者が業として請け負う建設工事

(同条第1項に規定する建設工事をいう。)

の全部又は一部を他の建設業を営む者に請け負わせることを除く。)」

と定義されています。

下請法から建設業が除かれているのはいいとして、下請法では、

「提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部」

の委託、つまり、役務の再委託を意味するのに対して、振興法では、

「提供の目的たる役務を構成する行為の全部又は一部」

の委託、つまり、下請に委託するのは親事業者がその顧客に提供する役務自体(の全部または一部)である場合だけでなく、親会社がその顧客に提供する役務を「構成する行為」の全部または一部の委託も含む、と読めます。

イメージとしては、下請法の役務提供委託は、親と下請の役務が同質で丸投げか一部下請であるのに対して、振興法は、下請が提供するのは親の提供する役務のパーツ(「構成する」)でもいい、という感じでしょうか。

この点に関連すると思われる解説が、前述の「参考 下請中小企業振興法の内容」にあり、そこでは、

「さらに,下請法では,他者に提供する情報成果物の作成に必要な役務である場合に,当該役務の提供を他者に委託することは対象とならないのに対し,

下請振興法では,例えば映画を作成するために俳優に出演を依頼する等の役務は,役務を構成する役務として,役務提供委託の一として対象となる。」

と説明されていますが、間違いだと思います。

というのは、映画は情報成果物であって役務ではありませんから(あるいは、映画の制作は情報成果物の作成であって役務ではありませんから)、映画を作成するために俳優に出演を依頼することは、情報成果物を構成する役務であって、「役務を構成する役務」ではないからです。

もし、映画制作会社が映画の上映までやるのであれば、映画の上映は役務の提供ですから、俳優の映画への出演は「役務を構成する役務」といえますが、親事業者が映画制作会社の場合、ふつうは配給会社に映画フィルムという情報成果物をわたすだけでしょうから、「情報成果物を構成する役務」(?)とはいえても、「役務を構成する役務」とはいえないと思います。

次に、下請法上の親事業者の資本金要件は、相当異なります。

振興法上は親事業者自体には資本金の縛りはなく、もっぱら、相手方が自分より小さい「中小企業者」であるかどうかで決まります。

つまり、親事業者が法人の場合は、

「資本金の額若しくは出資の総額が自己より小さい法人たる中小企業者

又は

常時使用する従業員の数が自己より小さい個人たる中小企業者」

に委託すれば親事業者ですし、親事業者が個人の場合には、

「常時使用する従業員の数が自己より小さい個人たる中小企業者」

に委託すれば親事業者、ということになります。

そこで「中小企業者」は、振興法2条1項で、

「この法律において「中小企業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。

一 資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社

並びに

常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であつて、

製造業、建設業、運輸業その他の業種

(次号に掲げる業種及び第三号の政令で定める業種を除く。)

に属する事業を主たる事業として営むもの

二 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社

並びに

常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、

サービス業

号の政令で定める業種を除く。)

に属する事業を主たる事業として営むもの

三 資本金の額又は出資の総額が

その業種ごとに政令で定める金額以下の会社

並びに

常時使用する従業員の数が

その業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人

であつて、

その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの

四 企業組合

五 協業組合」

と定義されています。

1号が製造業一般(3億・300人基準)、2号がサービス業(5000万・100人基準)、3号が政令指定、です。

3号の「政令」は、下請振興法施行令で、同1条では、

ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く。)

が3億円または900人以下、

ソフトウェア業又は情報処理サービス業

が3億円または300人以下、が中小企業者とされています。

振興法2条1項4号の「企業組合」というのは、中小企業等協同組合法3条に定められる中小企業等協同組合の一種の企業組合(同法3条4号)のことで、同法9条の10(企業組合)では、

第九条の十 企業組合は、商業、工業、鉱業、運送業、サービス業その他の事業を行うものとする。」

と規定されており、『精選版日本国語大辞典』では、

「中小企業等協同組合法に基づく組合の一つ。中小規模の商業、工業、鉱業、運送業、サービス業などの事業者・勤労者が、公正な経済活動の機会の確保と経済的な地位の向上を目的として組織する協同組合。」

と解説されています。

振興法2条1項5号の「協業組合」とは、中小企業団体の組織に関する法律3条(中小企業団体等の種類)に定める中小企業団体の1つである「協業組合」(同法3条1項7号)で、「その組合員の生産、販売その他の事業活動についての協業を図ることにより、企業規模の適正化による生産性の向上等を効率的に推進し、その共同の利益を増進すること」(同法5条の2)を目的とします。

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