原産国表示と優良誤認の違い
たまに勘違いされることがあるようですので(公正取引861号50頁など)、原産国告示と優良誤認の違いについて説明しておきます。
原産国を偽っているように見えるのに原産国告示違反ではなく優良誤認とされている事件は、対象商品自体の原産国を偽ったのではなくて、対象商品の原材料を偽った事件です。
ブランド力の差で著しく優良と誤認させるほどのものが優良誤認でそれに至らないものが原産国告示、というわけではありません。
(原産国告示違反には課徴金がかからないので、そういう解釈もあって良いと思いますが、実務の運用はそうなっていません。)
原産国表示は、対象商品自体の原産国を偽った場合に限られます。
原産国告示のうち比較的使われることの多い2項(外国産商品の不当表示)では、
「2 外国で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であつて、その商品がその原産国で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの
一 その商品の原産国以外の国の国名、地名、国旗、紋章その他これらに類するものの表示
二 その商品の原産国以外の国の事業者又はデザイナーの氏名、名称又は商標の表示
三 文字による表示の全部又は主要部分が和文で示されている表示」
が原産国告示違反の表示と定められています。
つまり、あくまで「商品」自体の原産国を偽るのが原産国告示違反であって、商品の原材料の原産国を偽っても、原産国告示違反にはならず、優良誤認表示にしかなりません。
また、原産国告示違反に該当する表示をあえて優良誤認とすることも、理屈の上では可能ですが、そのような運用はされていません。
たとえば、家庭用塩の製造販売業者9社に対する警告(優良誤認)についての公取委報道発表文(平成16年7月21日)では、
「前記1の9社は,家庭用塩について,別紙1のとおり,原料原産地について,あたかも沖縄等で採取された海水を用いたものであるかのように表示していたが,実際には,外国産の天日塩を沖縄等で採取した海水に溶解するなどして再生加工したもの等であり,一般消費者に誤認される疑いがある。」
と認定されています。
つまり、商品である家庭用塩の原産地を偽ったのではなく、その原材料である海水の原産地を偽ったので、原産地告示違反にはならない、ということです。
平成21年11月10日のファミリーマートに対する措置命令(優良誤認)でも、
「ファミリーマートは、平成21年6月11日ころから同月16日ころまでの間、カリーチキン南蛮おにぎりの包装袋に貼付したシール(別添写し)において、「国産鶏肉使用」と記載することにより、あたかも、当該商品の原材料に我が国で肥育された鶏の肉を用いているかのように示す表示をしていたが、実際には、当該商品の原材料にブラジル連邦共和国で肥育されたものを用いていた。」
と認定されており、商品のおにぎり自体ではなくその原材料の産地を偽ったので、原産国表示違反にはなりませんでした。
おにぎりの原産国は、たぶん、おにぎりを作った国でしょう。
なので、おにぎりの工場が国内にあれば、そのおにぎりを国産といっても、間違いではないと思います。
でも、材料の鶏肉の原産国を偽れば、これは、優良誤認表示でしょう。
プラスワンに対する令和元年10月16日措置命令(優良誤認)でも、同社が販売する「本件商品」は、
「貴社が運営する「からあげ専門店こがね」と称する店舗のうち別表1「店舗」欄記載の店舗において供給する鶏の「もも」と称する部位(以下「鶏もも肉」という。)を使用した唐揚げ及び当該唐揚げを含む商品の各商品(以下これらを併せて「本件商品」という。)」
と定義され、違反対象商品は唐揚げおよび唐揚げを含む商品でしたが、違反の表示は、
「(4)ア プラスワンは、本件商品を一般消費者に販売するに当たり、例えば、塚本店の看板において、平成28年2月1日以降、「からあげ専門店 こがね」及び「国産若鶏使用 絶品あげたて」と表示するなど、別表1「店舗」欄記載の店舗の看板又は軒先テントにおいて、同表「表示期間」欄記載の期間に、同表「表示内容」欄記載のとおり表示することにより、あたかも、本件商品には、国産の鶏もも肉を使用しているかのように示す表示をしている又は表示をしていた。」
というものであり、唐揚げ自体の原産国(揚げた国ですかね)を偽ったのではなく、その商品に使用された原材料である鶏もも肉の原産地を偽ったわけです。
なので、この事件も優良誤認となりました。
ちなみに、消費者庁ホームページが、
「国産有名ブランド牛の肉であるかのように表示して販売していたが、実はブランド牛ではない国産牛肉だった。」
というのを優良誤認の例として挙げていますが、これは、実際も表示も原産地は日本(国産)なので、原産国表示違反にはなりようがなく、優良誤認になるのは当然です。(違反は、「ブランド」牛か、ノーブランド牛か、という点にあり、原産国の点にはありません。)
以上は優良誤認の例でしたが、今度は原産国告示の事件をみてみると、たとえばビック酒販に対する令和3年9月3日措置命令では、
「⑶ ビック酒販は、本件25商品〔お酒〕を一般消費者に販売するに当たり、自社ウェブサイトにおいて、別表「商品名」欄記載の商品について、同表「表示期間」欄記載の期間に、同表「表示内容」欄記載のとおり表示することにより、同欄記載の国名又は地名を表示していた。
⑷ 実際には、本件25商品は、別表「実際の原産国(地)」欄記載の原産国(地)で生産されたものであった。」
と認定されており、商品自体の原産地を偽ったので、原産国告示違反になりました。
令和元年6月13日の高島屋に対する措置命令(原産国表示)でも、
「⑶ 髙島屋は、本件147商品〔化粧品や雑貨〕を一般消費者に販売するに当たり、自社ウェブサイトにおいて、別表「商品名」欄記載の商品について、同表「表示期間」欄記載の期間に、「原産国・生産国」又は「原産国」と記載の上、同表「表示された国名」欄記載の国名を記載していた。
⑷ 実際には、本件147商品は、別表「実際の原産国(地)」欄記載の原産国(地)で生産されたものであった。」
と、「本件147商品」自体の原産地を偽ったので、原産国告示違反になりました。
という具合に、原産国告示は商品自体の原産国、優良誤認は商品の原材料の原産国の偽り、ということです。
それから、原産国告示は商品だけが対象なので、役務の場合には、必ず優良誤認になります。
たとえば、レストランは役務と考えられているので、国産牛ステーキというメニューで料理を出したのが外国産牛肉だったりすると、優良誤認にはなりますが、原産国告示違反にはなりません。
というわけで、みなさん勘違いしないように気をつけましょう。
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