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2022年7月20日 (水)

スシローのおとり広告について

2022年6月9日、あきんどスシローがおとり広告で措置命令を受けました

この事件は、オーソドックスなおとり広告告示1号だけではなく、4号違反も成立していて、1号と4号の関係について興味深い論点を提供しているように思われるので検討してみます。

おとり広告告示1号と4号では、

「一 取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての表示」

「四 取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務についての表示」

が不当表示とされています。

「取引の申出に係る商品又は役務」を、わかりやすく、「おとり商品」といい、余分な部分を端折って違反要件を切り出すと、

一 おとり商品について・・・取引に応じることができない場合

四 おとり商品について・・・取引する意思がない場合

ということになります。

つまり、

1号が、取引できない(取引能力がない)場合

4号が、取引意思がない場合

ということになります。

(意思,能力)の、有り無しで分けると、

(意思、能力)=

(○,○),

(○,×),

(×,○),

(×,×),

の4パターンになります。

取引能力も意思もある場合((○,○))には、他の号を無視すれば違反にはならないので問題なし、です。

取引意思はあるけれど能力がない場合((○,×))は、1号にあたります。

取引意思はないけれど取引能力はある場合((×,○))は、4号になります。

では、取引意思も取引能力もない場合((×,×))は、どちらにあたるのでしょう?

これは、取引に応じることができない場合(1号)としてしまっていいと思います。

告示の規定上、1号(取引に応じることができない場合)が先に来ていますし、これがおとり広告の典型例ですし、取引に応じることができない場合は取引の意思も通常ないでしょうから(×,×)の場合を1号から除くのも不自然だからです。

逆に言うと、取引意思も能力もない場合に1号と4号の重畳適用とかをする必要はない(1号だけでいい)、ということです。

さて、スシロー事件では、3つのキャンペーンにおける3つの料理が問題になっています。

1つめのキャンペーンの期間は2021年9月8日~20日で、足りなくなった料理は「新物!濃厚うに包み」(以下「うに包み①」)です。

うに包み①については、スシローは、足りなくなることがわかり、9月13日に、同月14~17日の提供停止を決定しています。

措置命令の別表1-1を見ると、丸1日まったく提供していない日は、最も早くて9月14日、最も遅くて17日(9月14日~17日)です。

2つめのキャンペーンの期間は9月8日~10月3日で、足りなくなった料理は「とやま鮨し人考案新物うに 鮨し人流3種盛り」(以下「うに3種盛り②」)です。

うに3種盛り②についても、スシローは、9月13日に、18~20日の提供停止を決定しています。

別表1-2をみると、丸1日まったく提供していない日は、最も早くて9月18、最も遅くて9月20日(9月18日~20日)です。

最後に、3つめのキャンペーンの期間は2021年11月26日~12月12日で、足りなくなった料理は「冬の味覚!豪華かにづくし」(以下「かにづくし③」)です。

かにづくし③については、本部による停止決定はなく、別表1-3をみると、一番早い店で11月26日(つまりキャンペーン初日! 380番の歌島店等)から、一番遅い店(というよりほとんど全ての店)で、キャンペーン最終日である12月12日まで、提供をしていません。

そして、措置命令では、うに包み①とうに3種盛り②については、告示4号(合理的理由がないのに実際には取引する意思がない場合)に該当するとされ、かにづくし③については、1号(取引を行うための準備がなされていない場合)に該当するとされています。

ここで、かにづくし③が1号(取引を行うための準備がなされていない場合)にあたるとされ、違反期間はそれぞれの店舗で実際に提供をできなかった日であることについては、とくに問題はないでしょう。

これに対して、うに包み①とうに3種盛り②については、本部が提供中止を指示した9月18日~20日の3日間なのか、それとも、各店舗ごとに実際に取引をしていなかった日なのかは、やや問題です。

この点については、本部で中止を指示しているとはいえ、実際には店舗で提供している以上(つまり、本部の指示が徹底されていなかった)、実際には取引する意思がないとまではいえます、実際に提供している店舗については4号には該当しないというべきでしょう。

なお、うに包み①とうに3種盛り②については、1号が認定されていないということは、本部が中断を指示した期間よりもあとは、ちゃんと提供されていたのだとうかがえます。

というのは、もし中止指示により中止をしていた期間のあとにも提供されていなかったとしたら、1号(取引を行うための準備がなされていない場合)に該当したはずだからです。

もし、消費者庁が、中止指示のあとにも提供できていない日があったのに1号を適用せず、本部が中止を決定した事実に引きずられて4号を適用してしまって、指示による中止期間後の不提供を不問に付していたとしたら問題でしょう(きっとそのようなことはないと思いますが)。

とすると、スシロー、うには4日間または3日間の中断だけで、よく再開にこぎ着けたなぁ、とむしろ感心します。

本件で問題なのは、うに包み①について、9月13日に、14~17日の提供停止を決定しているにもかかわらず、広告は、ウェブサイトで9月14日から同月20日まで、テレビCMは9月8日から20日まで、そのまま行われていることです。

うに包み①の中断は4日間だけなので、テレビCMを中断するまでの判断には至らなかったのかもしれません(前の日のCMをみて翌日来店する人もいるでしょうから、提供中断期間だけCMを止めればいいというものでもないでしょう)。

これに対して、うに3種盛り②は、9月13日に、18~20日の提供停止を決定しているのに合わせてなのか、ウェブサイトでの表示期間は9月8日~17日と認定されており、提供停止期間中の宣伝はされていません。

でも、消極的にウェブサイトでの広告をやめたというだけではやっぱりだめで、積極的に中断を告知しないといけないんでしょうね。

では具体的にどう告知すればいいかというと大問題で、テレビCMまでやってると、それをみてお店まで来てしまう人はいるでしょうから、各店舗で「売り切れ」みたいな掲示を出すだけではだめでしょうね。

どの店舗で売り切れなのかを毎日CMで告知するのも非現実的かつ効果が薄そうで、たぶん、どうしようもないのでしょう。

かにづくし③については、そもそも提供中止決定はされていませんが、事実上の提供中止(≒売り切れ)後も、ウェブサイトで、2021年11月24日から同年12月12日までの間、テレビCMで11月26~12月12日までの間、広告をしています。

ちなみに、スシローの広告では「売切御免」とも表示されていましたが、措置命令では一切考慮されていません。

この点に関しては、告示2号の、

「二 取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示」

について、運用基準に、

「2-(3) 複数の店舗で販売する旨を申し出る場合について

単一の事業者が同一の広告、ビラ等においてその事業者の複数の店舗で販売する旨を申し出る場合においては、原則として、各店舗毎の販売数量が明記されている必要がある。

広告スペース等の事情により、各店舗毎の販売数量を明記することが困難な場合には、当該広告、ビラ等に記載された全店舗での総販売数量に併せて、店舗により販売数量が異なる旨及び全店舗のうち最も販売数量が少ない店舗における販売数量の表示が必要である。

なお、・・・広告した商品又は役務の取引を行わない店舗がある場合には、その店舗名が記載されている必要があり、記載されていない場合には、当該店舗において広告商品等について取引を行うための準備がなされていない場合(告示第1号)に当たる。」

と規定されており、本件でも、「複数の店舗で販売する旨を申し出る場合」である以上、1号(供給不能)または4号(供給意思なし)の事件であるとはいえ、「各店舗毎の販売数量が明記されている必要」があったのではないか、という疑問がないではありませんが、本件のようなキャンペーンで店舗ごとの販売数量を明記するというのは非現実的ですし、措置命令もそこまでは求めていません。

ということは、消費者庁は運用基準第2の2ー(3)の上記規定は1号の場合には適用しないという解釈なのでしょう。

節の通し番号も「2-(3)」となっていて、2号を想定したものであることがうかがわれます(私は文言で解釈すべきで、項の番号とかで立案者の意図を忖度するのには反対ですが)。

さらに、告示3号では、

「三 取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示」

が告示違反とされ、運用基準では、

「3 告示第3号の限定の内容が「明瞭に記載されていない場合」について

供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量の限定については、実際の販売日、販売時間等の販売期間、販売の相手方又は顧客一人当たりの販売数量が当該広告、ビラ等に明瞭に記載されていなければならず、これらについて限定されている旨のみが記載されているだけでは、限定の内容が明瞭に記載されているとはいえない。」

とされています。

本件ではこれら(「供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量」)が限定されていたわけではない(少なくともスシローには限定する意図はなかった)ので3号は適用されないという理屈なのだと思います。

つまり、「取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されている」というのは、客観的に限定されていることではなく(もし客観的に限定されている場合を含むと、スシローの事件も限定されていることになってしまいます)、事業者の意図ないし計画として限定している場合、という意味なのでしょう。

ともあれ、もし3号の事件であれば、「実際の販売日、販売時間等の販売期間、販売の相手方又は顧客一人当たりの販売数量」が明瞭に記載されていなければならず、これらについて限定されている旨のみが記載されているだけでは足りない、ということです。

これとのバランス上、1号の事件でも、「売切御免」というだけではだめなのでしょう。

ですが、ほんとうに悪意のあるおとり広告の場合にはこれでもいいのでしょうけれど、蓋を開けてみたら予想外に好評だった、というような、「善意の売り切れ」の場合には、なかなか厳しいものがあります。

というのは、善意の売り切れの場合には、「顧客一人当たりの供給量」なんてそもそも想定しようもない(あるいは限定するつもりもない)ですから、書きようがないからです。

1号の場合も、基本的には同じでしょう。

こういう、善意の売り切れの場合に備えてか、運用基準第2の「1-(1)」では、「 告示第1号の「取引を行うための準備がなされていない場合」について」として、

「〔「取引を行うための準備がなされていない場合」〕において、

〔①〕それが当該事業者の責に帰すべき事由以外によるものと認められ、かつ、

〔②〕広告商品等の取引を申し込んだ顧客に対して、広告、ビラ等において申し出た取引条件で取引する旨を告知するとともに

〔③〕希望する顧客に対しては遅滞なく取引に応じているとき

には、不当表示には当たらないものとして取り扱う。」

という安全弁が設けられています。

合理的な計画を立てていたのに売り切れてしまったという場合には①の「責に帰すべき事由」がないとしても(これでありとされたら、震災とかだけに適用されることになり、この安全弁は適用の余地がほとんどなくなります)、回転寿司を食べに来ている人に遅滞なく(数日後?)取引に応じても、それで違反にならないかというと、ちょっと疑問ですね。

つまり、回転寿司みたいに、その場ですぐ消費して満足を得る類いの商品役務の場合には、「遅滞なく取引に応じる」ことにして告示違反を免れようとするのは、ちょっと難しい気がします。

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