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2022年7月21日 (木)

アフィリエイト広告が広告主の広告とはみなされない場合(「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」注7)

2022年6月29日に改正された「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の注7では、

「アフィリエイターが自らのアフィリエイトサイトに単にアフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者のウェブサイトのURLを添付するだけなど、当該事業者の商品・サービスの内容や取引条件についての詳細な表示を行わないようなアフィリエイトプログラムを利用した広告については、通常、不当表示等が発生することはないと考えられる。

また、アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるものについては、通常、広告主が表示内容の決定に関与したとされることはないと考えられる。」

と定められています。

後半部分は、アフィリエイト広告が広告主の広告ではないと認められる場合(広告主が表示内容の決定に関与していないと認められる場合)について述べているわけですが、「当該表示にかかる情報のやりとり」というのは、具体的にはどのように理解すればいいのでしょうか。

ここで、「当該表示」というのは、その直前の「アフィリエイターの表示」を指します。

要するにアフィリエイト広告のことなのですが、アフィリエイト「広告」といってしまうと広告主の広告であるという意味が込められてしまうので、アフィリエイターの「表示」といっているのでしょう。

では、「当該表示に係る情報」とは、具体的には何でしょうか。

素直に読めば、「当該表示に係る情報」とは、「アフィリエイターの表示に係る情報」です。

広告対象商品に関する情報(性能やスペック、アピールポイントなど)は、文言上、当然には「アフィリエイターの表示に係る情報」に該当しなさそうに見えますが、そこはあまり細かいことは言わず、広告対象商品に関する情報も、「当該表示に係る情報」であると読むのでしょう。

というのは、(結論先取り感のある理屈ですが)広告対象商品に関する情報を広告主がアフィリエイターに提供している場合には、広告主がアフィリエイターの表示を自己の広告とみなしているといえますし、「このような内容の商品として広告してね」というのでも十分、「広告主が表示内容の決定に関与した」といえるからです。

もし、広告対象商品自体に関する情報は「当該表示に係る情報」に含まれず、「当該表示に係る情報」は広告対象商品自体に関する情報を超えた情報(例えば具体的な広告文言とか、どの競合商品と比較しろとか、この点をアピールしろとかいった指示)に限るとすると、アフィリエイト広告が広告主の広告になる範囲が狭くなりすぎます。

それに、普通の広告の場合に広告主が商品内容だけを広告代理店に伝えて広告代理店が広告内容を考えるようなケース(が実際にあるかどうかは分かりませんが)がもしあれば、問題なく広告主の広告でしょうから、広告主からアフィリエイターに伝えられるのも商品自体に関する情報だけで十分でしょう。

次に、「当該表示に係る情報のやり取り」というように、「やり取り」記されているので、「当該表示に係る情報」が広告主からアフィリエイターに伝達されることはもちろん、「当該表示に係る情報」がアフィリエイターから広告主に伝達される場合も含まれるでしょう。

(なお、「広告主とアフィリエイターとの間で」とされていますが、やり取りは広告主とアフィリエイターとの間で直接なされる必要はなく、現実的には、間に入るアフィリエイトサービスプロバイダーを通じてなされるのでしょう。)

そして、「広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていない」ことが必要なので、広告主からアフィリエイターへの情報の伝達がなくても、アフィリエイターから広告主への情報の伝達があれば、広告主の広告だ、ということになりそうです。

ということは、広告主はアフィリエイターからアフィリエイト広告の内容の報告を受けてはいけない(受けていると広告主の広告になってしまう)、ということになります。

では、広告主が広告内容を一切アフィリエイターに丸投げし、事後チェックもしないのがベストなのか、というと、必ずしもそうとはいえません。

というのは、指針のパブコメで、

「『また、アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にある者については、通常、広告主が表示内容の決定に関与したとされることはないと考えられる』

と記載されているが、

これでは、アフィリエイターに表示内容を丸投げすれば広告主に責任は生じないと読めるのではないか。

しかし、これは「他の事業者に表示内容の決定を委ねた事業者も『表示内容の決定に関与した事業者』に当たる」とする(注6)に挙げている東京高裁ベイクルーズ事件判決に反している。

したがって、この文は削除すべきではないか。

たとえ広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていなくても、広告主がアフィリエイターに表示内容の決定を委ねている以上、アフィリエイターの表示は広告主の表示となると考える。」

という、至極まっとうなコメントがなされており、これに対して消費者庁が、

「御指摘のように、広告主が「アフィリエイターやアフィリエイトプロバイダに表示内容を丸投げ」した場合は、

本留意事項「(注7)」に記載した

「アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるもの」

には当たりません。」

と回答しているからです。

つまり、丸投げは広告だ、ということです。

消費者庁の理屈を想像すると、「丸投げ」は、表示内容の決定を「委ねている」に該当するのだ、ということなのでしょう。

「丸」投げかどうかはどうでもよくて、「投げ」ていることが、「委ねている」ということなのでしょう。

それに、注7を細かく見ると、

「アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど

アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるものについては、

通常、広告主が表示内容の決定に関与したとされることはない」

とされており、情報のやり取りが一切行われていないことはあくまで例示であり、要は、「広告とは認められない実態」があるかどうかが決め手だ、ということがわかります。

しかしそうだとすると、「情報のやり取りが一切行われていない」場合でも、「丸投げ」していれば、結局広告主の広告だということになり、あえて「情報のやり取り」云々に言及する注7の後半は不要なのではないか(あるいは、文字どおり解釈することはできないのではないか)という疑義が生まれ、理屈としては寄せられたコメントのほうが正しいと思います。

つまり、正しくは、

「広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていない」

という部分は、

「広告主がアフィリエイターに広告内容の決定を委ねておらず、かつ、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていない」

と補って読むべきなのでしょう。

でもそうすると、情報のやり取り云々に関する部分は何も意味がないようにも思えますが、これは、情報のやり取りがまったくない場合には委ねていないという反論の余地を認めたのだ(委ねていないかどうかはケースバイケースで判断)、と考えるべきでしょう。

これに対して、情報のやり取りを行っている場合には、「委ねていない」とはいえないでしょう。

そのようなルールで広告主が救われるアフィリエイトプログラムがどれだけ世の中にあるのかはわかりませんが、消費者庁があえてこういうルールを導入した背景には、きっと、広告主が救われるべきアフィリエイトプログラムが世の中に存在する、という認識にもとづいてのことなのでしょう。

ちなみに、改正指針では、「広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていない」といっているだけで、やり取りの時期については限定していません。

この点、広告掲示前に情報のやり取りがあれば(ふつうのアフィリエイトではあるでしょう)、広告主の広告になる方向にはたらくのは明らかです。

では、広告掲示後に情報のやり取りがあるだけのときは、広告主の広告であることは否定されるのでしょうか。

私は否定されないと思います。

まず、改正指針に、やり取りが「一切」行われていない、と書かれており、やり取りの時期に限定はありません。

それに、情報のやり取りは広告内容決定の委託の存在を基礎付ける間接事実というべきで、そうだとすると、広告掲載後のやりとりでも、(広告主による事後チェックなどもありえますから)内容の決定を委ねたことの間接事実となってよさそうだからです。

事後的な事情が広告該当性に影響しうることはパブコメにも出ていて、

「インターネット留意事項の(注7)の第2文の以下の記載、すなわち、

「また、アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるものについては、通常、広告主が表示内容の決定に関与したとされることはないと考えられる。」

の後に以下の記述を追加するべき。

「なお、このような場合であっても、アフィリエイターが消費者を誤認させる内容の表示をしていることを広告主が認知しているにもかかわらず、あえて放置しているような場合は、広告主が、アフィリエイターに対しそのような表示を行うことを委ねていると評価され、表示内容の決定に関与しているとされることがあることに注意する必要がある。」

アフィリエイターが表示を開始した段階で、広告主とアフィリエイターとの間で表示に係る情報のやりとりが行われていなかった場合であっても、広告主が当該問題のある表示を認知し、その後も何ら是正のための対応をとらず、当該表示を自らの商品販売に利用していた場合は、広告主の表示に対する責任を問うべき場合があると考えられるため。」

というコメントに対して、

「御指摘の点は、個別事案ごとの景品表示法上の表示主体についての解釈についてのお尋ねであり、個別の取引実態に応じて判断されるものであることから、お答えすることは困難であると考えております。」

と回答されています。

これは、広告主が事後的に認知した場合でも「委ねている」と評価される場合があることを否定しない趣旨であると考えられます。

でもそうすると、決定を委ねたつもりのない広告主が、自社商品について不当表示のアフィリエイト表示がなされていることに気づいて、そのアフィリエイターに事実関係を問い合わせると、かえって広告主の広告になってしまう、ということになりかねません。

しかしそれは改正指針の文言を杓子定規にとらえた屁理屈と言うべきで、そのような推認はすべきではないのでしょう。

このように、注7の後段は、よく考えてみると論理的には不明な事が多く、きっと読む人が読めば「あ、自分のことだ!」と思うのだろう、という謎に満ちた内容になっているように思います。

消費者庁は、何かの機会に、いったい注7の後段はどのようなケースを想定しているのか、きちんと説明した方がよいと思います。

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