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2022年7月

2022年7月21日 (木)

アフィリエイト広告が広告主の広告とはみなされない場合(「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」注7)

2022年6月29日に改正された「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の注7では、

「アフィリエイターが自らのアフィリエイトサイトに単にアフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者のウェブサイトのURLを添付するだけなど、当該事業者の商品・サービスの内容や取引条件についての詳細な表示を行わないようなアフィリエイトプログラムを利用した広告については、通常、不当表示等が発生することはないと考えられる。

また、アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるものについては、通常、広告主が表示内容の決定に関与したとされることはないと考えられる。」

と定められています。

後半部分は、アフィリエイト広告が広告主の広告ではないと認められる場合(広告主が表示内容の決定に関与していないと認められる場合)について述べているわけですが、「当該表示にかかる情報のやりとり」というのは、具体的にはどのように理解すればいいのでしょうか。

ここで、「当該表示」というのは、その直前の「アフィリエイターの表示」を指します。

要するにアフィリエイト広告のことなのですが、アフィリエイト「広告」といってしまうと広告主の広告であるという意味が込められてしまうので、アフィリエイターの「表示」といっているのでしょう。

では、「当該表示に係る情報」とは、具体的には何でしょうか。

素直に読めば、「当該表示に係る情報」とは、「アフィリエイターの表示に係る情報」です。

広告対象商品に関する情報(性能やスペック、アピールポイントなど)は、文言上、当然には「アフィリエイターの表示に係る情報」に該当しなさそうに見えますが、そこはあまり細かいことは言わず、広告対象商品に関する情報も、「当該表示に係る情報」であると読むのでしょう。

というのは、(結論先取り感のある理屈ですが)広告対象商品に関する情報を広告主がアフィリエイターに提供している場合には、広告主がアフィリエイターの表示を自己の広告とみなしているといえますし、「このような内容の商品として広告してね」というのでも十分、「広告主が表示内容の決定に関与した」といえるからです。

もし、広告対象商品自体に関する情報は「当該表示に係る情報」に含まれず、「当該表示に係る情報」は広告対象商品自体に関する情報を超えた情報(例えば具体的な広告文言とか、どの競合商品と比較しろとか、この点をアピールしろとかいった指示)に限るとすると、アフィリエイト広告が広告主の広告になる範囲が狭くなりすぎます。

それに、普通の広告の場合に広告主が商品内容だけを広告代理店に伝えて広告代理店が広告内容を考えるようなケース(が実際にあるかどうかは分かりませんが)がもしあれば、問題なく広告主の広告でしょうから、広告主からアフィリエイターに伝えられるのも商品自体に関する情報だけで十分でしょう。

次に、「当該表示に係る情報のやり取り」というように、「やり取り」記されているので、「当該表示に係る情報」が広告主からアフィリエイターに伝達されることはもちろん、「当該表示に係る情報」がアフィリエイターから広告主に伝達される場合も含まれるでしょう。

(なお、「広告主とアフィリエイターとの間で」とされていますが、やり取りは広告主とアフィリエイターとの間で直接なされる必要はなく、現実的には、間に入るアフィリエイトサービスプロバイダーを通じてなされるのでしょう。)

そして、「広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていない」ことが必要なので、広告主からアフィリエイターへの情報の伝達がなくても、アフィリエイターから広告主への情報の伝達があれば、広告主の広告だ、ということになりそうです。

ということは、広告主はアフィリエイターからアフィリエイト広告の内容の報告を受けてはいけない(受けていると広告主の広告になってしまう)、ということになります。

では、広告主が広告内容を一切アフィリエイターに丸投げし、事後チェックもしないのがベストなのか、というと、必ずしもそうとはいえません。

というのは、指針のパブコメで、

「『また、アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にある者については、通常、広告主が表示内容の決定に関与したとされることはないと考えられる』

と記載されているが、

これでは、アフィリエイターに表示内容を丸投げすれば広告主に責任は生じないと読めるのではないか。

しかし、これは「他の事業者に表示内容の決定を委ねた事業者も『表示内容の決定に関与した事業者』に当たる」とする(注6)に挙げている東京高裁ベイクルーズ事件判決に反している。

したがって、この文は削除すべきではないか。

たとえ広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていなくても、広告主がアフィリエイターに表示内容の決定を委ねている以上、アフィリエイターの表示は広告主の表示となると考える。」

という、至極まっとうなコメントがなされており、これに対して消費者庁が、

「御指摘のように、広告主が「アフィリエイターやアフィリエイトプロバイダに表示内容を丸投げ」した場合は、

本留意事項「(注7)」に記載した

「アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるもの」

には当たりません。」

と回答しているからです。

つまり、丸投げは広告だ、ということです。

消費者庁の理屈を想像すると、「丸投げ」は、表示内容の決定を「委ねている」に該当するのだ、ということなのでしょう。

「丸」投げかどうかはどうでもよくて、「投げ」ていることが、「委ねている」ということなのでしょう。

それに、注7を細かく見ると、

「アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど

アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるものについては、

通常、広告主が表示内容の決定に関与したとされることはない」

とされており、情報のやり取りが一切行われていないことはあくまで例示であり、要は、「広告とは認められない実態」があるかどうかが決め手だ、ということがわかります。

しかしそうだとすると、「情報のやり取りが一切行われていない」場合でも、「丸投げ」していれば、結局広告主の広告だということになり、あえて「情報のやり取り」云々に言及する注7の後半は不要なのではないか(あるいは、文字どおり解釈することはできないのではないか)という疑義が生まれ、理屈としては寄せられたコメントのほうが正しいと思います。

つまり、正しくは、

「広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていない」

という部分は、

「広告主がアフィリエイターに広告内容の決定を委ねておらず、かつ、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていない」

と補って読むべきなのでしょう。

でもそうすると、情報のやり取り云々に関する部分は何も意味がないようにも思えますが、これは、情報のやり取りがまったくない場合には委ねていないという反論の余地を認めたのだ(委ねていないかどうかはケースバイケースで判断)、と考えるべきでしょう。

これに対して、情報のやり取りを行っている場合には、「委ねていない」とはいえないでしょう。

そのようなルールで広告主が救われるアフィリエイトプログラムがどれだけ世の中にあるのかはわかりませんが、消費者庁があえてこういうルールを導入した背景には、きっと、広告主が救われるべきアフィリエイトプログラムが世の中に存在する、という認識にもとづいてのことなのでしょう。

ちなみに、改正指針では、「広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていない」といっているだけで、やり取りの時期については限定していません。

この点、広告掲示前に情報のやり取りがあれば(ふつうのアフィリエイトではあるでしょう)、広告主の広告になる方向にはたらくのは明らかです。

では、広告掲示後に情報のやり取りがあるだけのときは、広告主の広告であることは否定されるのでしょうか。

私は否定されないと思います。

まず、改正指針に、やり取りが「一切」行われていない、と書かれており、やり取りの時期に限定はありません。

それに、情報のやり取りは広告内容決定の委託の存在を基礎付ける間接事実というべきで、そうだとすると、広告掲載後のやりとりでも、(広告主による事後チェックなどもありえますから)内容の決定を委ねたことの間接事実となってよさそうだからです。

事後的な事情が広告該当性に影響しうることはパブコメにも出ていて、

「インターネット留意事項の(注7)の第2文の以下の記載、すなわち、

「また、アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるものについては、通常、広告主が表示内容の決定に関与したとされることはないと考えられる。」

の後に以下の記述を追加するべき。

「なお、このような場合であっても、アフィリエイターが消費者を誤認させる内容の表示をしていることを広告主が認知しているにもかかわらず、あえて放置しているような場合は、広告主が、アフィリエイターに対しそのような表示を行うことを委ねていると評価され、表示内容の決定に関与しているとされることがあることに注意する必要がある。」

アフィリエイターが表示を開始した段階で、広告主とアフィリエイターとの間で表示に係る情報のやりとりが行われていなかった場合であっても、広告主が当該問題のある表示を認知し、その後も何ら是正のための対応をとらず、当該表示を自らの商品販売に利用していた場合は、広告主の表示に対する責任を問うべき場合があると考えられるため。」

というコメントに対して、

「御指摘の点は、個別事案ごとの景品表示法上の表示主体についての解釈についてのお尋ねであり、個別の取引実態に応じて判断されるものであることから、お答えすることは困難であると考えております。」

と回答されています。

これは、広告主が事後的に認知した場合でも「委ねている」と評価される場合があることを否定しない趣旨であると考えられます。

でもそうすると、決定を委ねたつもりのない広告主が、自社商品について不当表示のアフィリエイト表示がなされていることに気づいて、そのアフィリエイターに事実関係を問い合わせると、かえって広告主の広告になってしまう、ということになりかねません。

しかしそれは改正指針の文言を杓子定規にとらえた屁理屈と言うべきで、そのような推認はすべきではないのでしょう。

このように、注7の後段は、よく考えてみると論理的には不明な事が多く、きっと読む人が読めば「あ、自分のことだ!」と思うのだろう、という謎に満ちた内容になっているように思います。

消費者庁は、何かの機会に、いったい注7の後段はどのようなケースを想定しているのか、きちんと説明した方がよいと思います。

2022年7月20日 (水)

スシローのおとり広告について

2022年6月9日、あきんどスシローがおとり広告で措置命令を受けました

この事件は、オーソドックスなおとり広告告示1号だけではなく、4号違反も成立していて、1号と4号の関係について興味深い論点を提供しているように思われるので検討してみます。

おとり広告告示1号と4号では、

「一 取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての表示」

「四 取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務についての表示」

が不当表示とされています。

「取引の申出に係る商品又は役務」を、わかりやすく、「おとり商品」といい、余分な部分を端折って違反要件を切り出すと、

一 おとり商品について・・・取引に応じることができない場合

四 おとり商品について・・・取引する意思がない場合

ということになります。

つまり、

1号が、取引できない(取引能力がない)場合

4号が、取引意思がない場合

ということになります。

(意思,能力)の、有り無しで分けると、

(意思、能力)=

(○,○),

(○,×),

(×,○),

(×,×),

の4パターンになります。

取引能力も意思もある場合((○,○))には、他の号を無視すれば違反にはならないので問題なし、です。

取引意思はあるけれど能力がない場合((○,×))は、1号にあたります。

取引意思はないけれど取引能力はある場合((×,○))は、4号になります。

では、取引意思も取引能力もない場合((×,×))は、どちらにあたるのでしょう?

これは、取引に応じることができない場合(1号)としてしまっていいと思います。

告示の規定上、1号(取引に応じることができない場合)が先に来ていますし、これがおとり広告の典型例ですし、取引に応じることができない場合は取引の意思も通常ないでしょうから(×,×)の場合を1号から除くのも不自然だからです。

逆に言うと、取引意思も能力もない場合に1号と4号の重畳適用とかをする必要はない(1号だけでいい)、ということです。

さて、スシロー事件では、3つのキャンペーンにおける3つの料理が問題になっています。

1つめのキャンペーンの期間は2021年9月8日~20日で、足りなくなった料理は「新物!濃厚うに包み」(以下「うに包み①」)です。

うに包み①については、スシローは、足りなくなることがわかり、9月13日に、同月14~17日の提供停止を決定しています。

措置命令の別表1-1を見ると、丸1日まったく提供していない日は、最も早くて9月14日、最も遅くて17日(9月14日~17日)です。

2つめのキャンペーンの期間は9月8日~10月3日で、足りなくなった料理は「とやま鮨し人考案新物うに 鮨し人流3種盛り」(以下「うに3種盛り②」)です。

うに3種盛り②についても、スシローは、9月13日に、18~20日の提供停止を決定しています。

別表1-2をみると、丸1日まったく提供していない日は、最も早くて9月18、最も遅くて9月20日(9月18日~20日)です。

最後に、3つめのキャンペーンの期間は2021年11月26日~12月12日で、足りなくなった料理は「冬の味覚!豪華かにづくし」(以下「かにづくし③」)です。

かにづくし③については、本部による停止決定はなく、別表1-3をみると、一番早い店で11月26日(つまりキャンペーン初日! 380番の歌島店等)から、一番遅い店(というよりほとんど全ての店)で、キャンペーン最終日である12月12日まで、提供をしていません。

そして、措置命令では、うに包み①とうに3種盛り②については、告示4号(合理的理由がないのに実際には取引する意思がない場合)に該当するとされ、かにづくし③については、1号(取引を行うための準備がなされていない場合)に該当するとされています。

ここで、かにづくし③が1号(取引を行うための準備がなされていない場合)にあたるとされ、違反期間はそれぞれの店舗で実際に提供をできなかった日であることについては、とくに問題はないでしょう。

これに対して、うに包み①とうに3種盛り②については、本部が提供中止を指示した9月18日~20日の3日間なのか、それとも、各店舗ごとに実際に取引をしていなかった日なのかは、やや問題です。

この点については、本部で中止を指示しているとはいえ、実際には店舗で提供している以上(つまり、本部の指示が徹底されていなかった)、実際には取引する意思がないとまではいえます、実際に提供している店舗については4号には該当しないというべきでしょう。

なお、うに包み①とうに3種盛り②については、1号が認定されていないということは、本部が中断を指示した期間よりもあとは、ちゃんと提供されていたのだとうかがえます。

というのは、もし中止指示により中止をしていた期間のあとにも提供されていなかったとしたら、1号(取引を行うための準備がなされていない場合)に該当したはずだからです。

もし、消費者庁が、中止指示のあとにも提供できていない日があったのに1号を適用せず、本部が中止を決定した事実に引きずられて4号を適用してしまって、指示による中止期間後の不提供を不問に付していたとしたら問題でしょう(きっとそのようなことはないと思いますが)。

とすると、スシロー、うには4日間または3日間の中断だけで、よく再開にこぎ着けたなぁ、とむしろ感心します。

本件で問題なのは、うに包み①について、9月13日に、14~17日の提供停止を決定しているにもかかわらず、広告は、ウェブサイトで9月14日から同月20日まで、テレビCMは9月8日から20日まで、そのまま行われていることです。

うに包み①の中断は4日間だけなので、テレビCMを中断するまでの判断には至らなかったのかもしれません(前の日のCMをみて翌日来店する人もいるでしょうから、提供中断期間だけCMを止めればいいというものでもないでしょう)。

これに対して、うに3種盛り②は、9月13日に、18~20日の提供停止を決定しているのに合わせてなのか、ウェブサイトでの表示期間は9月8日~17日と認定されており、提供停止期間中の宣伝はされていません。

でも、消極的にウェブサイトでの広告をやめたというだけではやっぱりだめで、積極的に中断を告知しないといけないんでしょうね。

では具体的にどう告知すればいいかというと大問題で、テレビCMまでやってると、それをみてお店まで来てしまう人はいるでしょうから、各店舗で「売り切れ」みたいな掲示を出すだけではだめでしょうね。

どの店舗で売り切れなのかを毎日CMで告知するのも非現実的かつ効果が薄そうで、たぶん、どうしようもないのでしょう。

かにづくし③については、そもそも提供中止決定はされていませんが、事実上の提供中止(≒売り切れ)後も、ウェブサイトで、2021年11月24日から同年12月12日までの間、テレビCMで11月26~12月12日までの間、広告をしています。

ちなみに、スシローの広告では「売切御免」とも表示されていましたが、措置命令では一切考慮されていません。

この点に関しては、告示2号の、

「二 取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示」

について、運用基準に、

「2-(3) 複数の店舗で販売する旨を申し出る場合について

単一の事業者が同一の広告、ビラ等においてその事業者の複数の店舗で販売する旨を申し出る場合においては、原則として、各店舗毎の販売数量が明記されている必要がある。

広告スペース等の事情により、各店舗毎の販売数量を明記することが困難な場合には、当該広告、ビラ等に記載された全店舗での総販売数量に併せて、店舗により販売数量が異なる旨及び全店舗のうち最も販売数量が少ない店舗における販売数量の表示が必要である。

なお、・・・広告した商品又は役務の取引を行わない店舗がある場合には、その店舗名が記載されている必要があり、記載されていない場合には、当該店舗において広告商品等について取引を行うための準備がなされていない場合(告示第1号)に当たる。」

と規定されており、本件でも、「複数の店舗で販売する旨を申し出る場合」である以上、1号(供給不能)または4号(供給意思なし)の事件であるとはいえ、「各店舗毎の販売数量が明記されている必要」があったのではないか、という疑問がないではありませんが、本件のようなキャンペーンで店舗ごとの販売数量を明記するというのは非現実的ですし、措置命令もそこまでは求めていません。

ということは、消費者庁は運用基準第2の2ー(3)の上記規定は1号の場合には適用しないという解釈なのでしょう。

節の通し番号も「2-(3)」となっていて、2号を想定したものであることがうかがわれます(私は文言で解釈すべきで、項の番号とかで立案者の意図を忖度するのには反対ですが)。

さらに、告示3号では、

「三 取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示」

が告示違反とされ、運用基準では、

「3 告示第3号の限定の内容が「明瞭に記載されていない場合」について

供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量の限定については、実際の販売日、販売時間等の販売期間、販売の相手方又は顧客一人当たりの販売数量が当該広告、ビラ等に明瞭に記載されていなければならず、これらについて限定されている旨のみが記載されているだけでは、限定の内容が明瞭に記載されているとはいえない。」

とされています。

本件ではこれら(「供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量」)が限定されていたわけではない(少なくともスシローには限定する意図はなかった)ので3号は適用されないという理屈なのだと思います。

つまり、「取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されている」というのは、客観的に限定されていることではなく(もし客観的に限定されている場合を含むと、スシローの事件も限定されていることになってしまいます)、事業者の意図ないし計画として限定している場合、という意味なのでしょう。

ともあれ、もし3号の事件であれば、「実際の販売日、販売時間等の販売期間、販売の相手方又は顧客一人当たりの販売数量」が明瞭に記載されていなければならず、これらについて限定されている旨のみが記載されているだけでは足りない、ということです。

これとのバランス上、1号の事件でも、「売切御免」というだけではだめなのでしょう。

ですが、ほんとうに悪意のあるおとり広告の場合にはこれでもいいのでしょうけれど、蓋を開けてみたら予想外に好評だった、というような、「善意の売り切れ」の場合には、なかなか厳しいものがあります。

というのは、善意の売り切れの場合には、「顧客一人当たりの供給量」なんてそもそも想定しようもない(あるいは限定するつもりもない)ですから、書きようがないからです。

1号の場合も、基本的には同じでしょう。

こういう、善意の売り切れの場合に備えてか、運用基準第2の「1-(1)」では、「 告示第1号の「取引を行うための準備がなされていない場合」について」として、

「〔「取引を行うための準備がなされていない場合」〕において、

〔①〕それが当該事業者の責に帰すべき事由以外によるものと認められ、かつ、

〔②〕広告商品等の取引を申し込んだ顧客に対して、広告、ビラ等において申し出た取引条件で取引する旨を告知するとともに

〔③〕希望する顧客に対しては遅滞なく取引に応じているとき

には、不当表示には当たらないものとして取り扱う。」

という安全弁が設けられています。

合理的な計画を立てていたのに売り切れてしまったという場合には①の「責に帰すべき事由」がないとしても(これでありとされたら、震災とかだけに適用されることになり、この安全弁は適用の余地がほとんどなくなります)、回転寿司を食べに来ている人に遅滞なく(数日後?)取引に応じても、それで違反にならないかというと、ちょっと疑問ですね。

つまり、回転寿司みたいに、その場ですぐ消費して満足を得る類いの商品役務の場合には、「遅滞なく取引に応じる」ことにして告示違反を免れようとするのは、ちょっと難しい気がします。

2022年7月 3日 (日)

「(令和4年6月30日) 株式会社サイネックス及び株式会社スマートバリューから申請があった確約計画の認定等について」について

掲題の確約認定が6月30日に公表されました

この事件については以前もこのブログで書きましたが、私はこの確約認定には大きな問題があると考えています。

違反被疑行為の概要は、

「2社は、平成31年2月頃以降、

自らのホームページをリニューアルする業務(以下「本件業務」という。)の発注を検討している市町村及び特別区(以下「市町村等」という。)に対して

それぞれが行う受注に向けた営業活動において、

当該市町村等が本件業務の仕様において定める、ホームページの管理を行うために導入するコンテンツ管理システム(以下「CMS」という。)(注3)について、

2社によって作成された、

オープンソースソフトウェア(注4)ではないCMSとすることが当該ホームページの情報セキュリティ対策上必須である旨を記載した仕様書等の案を、

自らだけではCMSに係る仕様を設定することが困難な市町村等に配付するなどして、

オープンソースソフトウェアのCMSを取り扱う事業者が本件業務の受注競争に参加することを困難にさせる要件を盛り込むよう働き掛けている。」

ということですが、問題の箇所は、「違反被疑行為による影響等」の

「オープンソースソフトウェアについては、ソースコードが公開されている点で、脆弱性が発見されやすく第三者からの攻撃の標的になりやすいとの指摘がある。

しかしながら、オープンソースソフトウェアではないソフトウェアについても、脆弱性が存在している場合はある。

このため、情報システムにおける情報セキュリティ上の問題への対応においては、使用するソフトウェアがオープンソースソフトウェアであるか否かにかかわらず、適切に管理されたソフトウェアを使用して情報システムを構築すること及び構築後、使用するソフトウェアを最新版にアップデートしておくこと等の脆弱性を解消する運用・保守が欠かせないものである。

したがって、市町村等において導入されるCMSを、情報セキュリティ対策からオープンソースソフトウェアではないCMSとしなければならない理由はないものと考えられる。」

という部分です。

まず、

「オープンソースソフトウェアについては、ソースコードが公開されている点で、脆弱性が発見されやすく第三者からの攻撃の標的になりやすいとの指摘がある。」

ということは公取委自身が認めています。

「指摘がある」というだけで、実際に「第三者からの攻撃の標的になりやすい」とまでは認めていない、とも読む人もいるかも知れませんが、もし、

「オープンソースソフトウェアについては、ソースコードが公開されている点で、脆弱性が発見されやすく第三者からの攻撃の標的になりやすい」

ということ自体を公取委が否定するなら、当然、そのように否定すべきなので、「指摘がある」とだけ言い放って何ら否定しないということは、オープンソースソフトウェアが攻撃の標的になりやすいことは、公取委自身が認めていると読むのが自然です。

つまり、確約を受け入れる以上、公取委も、オープンソースソフトウェアの脆弱性については当然入念に調べたはずですから、それでも、オープンソースソフトウェアの脆弱性を否定することはできなかった、というべきでしょう。

しかし、理屈の上で一番問題なのは、次の、

「しかしながら、オープンソースソフトウェアではないソフトウェアについても、脆弱性が存在している場合はある。」

という点です。

これを理由に独禁法違反とされてしまうのでは、オープンソースソフトウェアではないソフトウェアについては、脆弱性が一切ない完全無欠のソフトウェアでなければならないということになってしまいます。

公取委は、違反でないために違反者が満たすべきハードルをめちゃくちゃ高く設定して「違反だ」と認定することがよくありますが、これはその最たるものです。

そうではなくて、違反となるかどうかの境目は、オープンソースソフトウェアとそうでないソフトウェアで、脆弱性に有意な差があるかどうか、でしょう。

もし脆弱性に有意な差があるなら、オープンでないソフトウェアを提供する事業者が、オープンでないソフトウェアを仕様に盛り込む(必須とする)よう働きかけたとしても、競争上何も問題はないはずです。

その次の、

「このため、情報システムにおける情報セキュリティ上の問題への対応においては、

使用するソフトウェアがオープンソースソフトウェアであるか否かにかかわらず、

適切に管理されたソフトウェアを使用して情報システムを構築すること

及び構築後、使用するソフトウェアを最新版にアップデートしておくこと等

の脆弱性を解消する運用・保守が欠かせないものである。」

というのも、脆弱性の程度の差を一切無視して、とにかくオープンでもクローズでも脆弱性は(程度の差はともかく)あるのだから、「脆弱性を解消する運用・保守が欠かせない」と言っているだけであり、ここからクローズを仕様に盛り込むことを取引妨害とするのはあまりに乱暴です。

公取委の理屈だと、たとえば、オープンなら1年に1回くらい攻撃を受けそうな脆弱性があり、クローズなら10年に1回くらい攻撃を受けそうな脆弱性がある場合であっても、どちらも脆弱性があることには変わりは無く、「脆弱性を解消する運用・保守が欠かせない」のだから、自治体がクローズであることを入札仕様に盛り込んではいけない、ということになってしまいます。

こんなばかなことがあるでしょうか?

毎年サイバー攻撃を受けるのは嫌だなあと思って、クローズを仕様書に盛り込む自治体がいても、何らおかしくないと思いますし、それを否定するのは競争の否定でしょう。

次の、

「したがって、市町村等において導入されるCMSを、情報セキュリティ対策からオープンソースソフトウェアではないCMSとしなければならない理由はないものと考えられる。」

というのも大きな問題です。

というのは、本件で独禁法違反になるかどうか(競争がゆがめられたかどうか)の境目は、

「情報セキュリティ対策からオープンソースソフトウェアではないCMSとしなければならない

かどうかではなく、

情報セキュリティ対策からオープンソースソフトウェアではないCMSとしたほうがいい

かどうかだからだと考えられるからです。

違反被疑事実の概要では、

「自らだけではCMSに係る仕様を設定することが困難な市町村等に配付するなど」

したことが問題であるかのように書かれていますが、これも的外れです。

というのは、自治体が自らCMSの仕様書を書くことができない(ふつう、できないでしょう)としても、オープンソースを使う事業者が自治体に売り込みをかけて、仕様書案を書いてあげて、入札に参加できるようにすることは、なんら妨げられないからです。

ここでも、

「自らだけではCMSに係る仕様を設定することが困難な市町村」

に対しては自社の仕様を売り込むこと自体禁止するような、違反者にめちゃくちゃ高いハードルを課す公取の態度がでています。

もし問題になるとすれば、違反者が積極的に自治体をだましたか(パラマウントベッド事件のように)、自治体がオープンソフトの事業者から営業を受けても理解できないほど無能であったか、という場合でしょう。

でも、本件では積極的にだましたとは公表文からはうかがわれず、自治体がオープンの事業者から営業を受けても理解できないほど無能だったことも、公表文からはうかがわれません。

要は、高いセキュリティ(10年に1回のサイバー攻撃)だけれど高いほうを選ぶか、低いセキュリティ(1年に1回のサイバー攻撃)だけれど安い方を選ぶかは、需要者である自治体が決めればいい話で、そのためには、オープン陣営もクローズ陣営も自由に自治体に営業をかけられるようにすべきであって、一方的にクローズ陣営だけが自己の長所をアピールできないというのは、不公平だと思います。

さらに自治体の入札で問題なのは、いったん仕様が決まるとあとは価格だけで決まってしまい、品質による競争がはたらかないことです。

このように、この事件は、競争の本質(十分に情報を得た需要者による自主的な判断に基づく競争)を度外視して、とにかく自治体によるシステム管理費を下げさせるという政策目的のために独禁法が流用されたものであるといえます。

また、この事件は立入検査から7ヶ月ほどというきわめて短期間で確約が成立しています。

6月30日の日経新聞によれば、

「スマートバリューの担当者は「当初から法律に違反しているとの認識はなかったものの、今回このような指摘を受けて改善計画を提出した。今後も独禁法の概念に基づいて誠実に事業運営を行っていく」とコメントした。」

とのことですので、スマートバリューは、公取委から「指摘」を受ければそれは独禁法違反なのだ、という認識を持っていたことがうかがわれうます。

そうでなければ、これほど争いどころ満載の事件で、わずか7ヶ月で確約にはならないでしょう。

実際、日本の企業の大半は、公取から指摘を受けたら違反なのだ、と思うでしょう。

でも、こういう、無知な事業者につけ込むやり方というのは、競争法当局としてどうかと思います。

この事件は立入検査があったときからどういう結末になるのか注目していましたが、確約認定の内容自体から、公取委の理屈が独禁法の解釈を誤ったものであることが見て取れる、珍しい事案だったといえると思います(ふつうは、公表文からは、あらが見えないようにするものですが)。

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