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2022年1月14日 (金)

増量値引における同一商品の意義

いわゆる増量値引の意味について、定義告示運用基準(昭和52(1977)年 4月 1日事務局長通達第 7号、改正 昭和63(1988)年10月 1日事務局長通達第11号、平成 8(1996)年 2月16日事務局長通達第 1号、平成18(2006)年 4月27日事務総長通達第 4号、
平成26(2014)年12月 1日消費者庁長官決定)の6(3)ウでは、

「6 「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」について

(3) 次のような場合は、原則として、「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」に当たる。

〔ア、イ略〕

ウ 取引通念上妥当と認められる基準に従い、

ある商品又は役務の購入者に対し、

同じ対価で、それと同一の商品又は役務を付加して提供すること

実質的に同一の商品又は役務を付加して提供する場合

及び

複数回の取引を条件として付加して提供する場合

を含む

(例 「CD三枚買ったらもう一枚進呈」、

「背広一着買ったらスペアズボン無料」、

「コーヒー五回飲んだらコーヒー一杯無料券をサービス」、

「クリーニングスタンプ○○個でワイシャツ一枚分をサービス」、

「当社便○○マイル搭乗の方に××行航空券進呈」)。)。

ただし、

「コーヒー○回飲んだらジュース一杯無料券をサービス」、

「ハンバーガーを買ったらフライドポテト無料」

等の場合は実質的な同一商品又は役務の付加には当たらない。」

と規定されています。

そして、上記引用部分のウのうち、「(実質的に・・・」以下の部分は、1996(平成8)年改正で加えられたものです。

さて、この増量値引の「実質的に同一の商品又は役務」が何を意味するのかについては、上記引用中でも具体例が挙げられていますが、それでもはっきりしないことが少なくありません。

この点について、1996年改正前のものではありますが、公取委の担当者解説である、

片桐益栄、菅久修一「同一商品の無料添付と景品表示法ー指定告示の運用基準の変更についてー」公正取引457号(1988年11月)7頁

では、以下のようないくつかの具体例をあげて説明しています。

まず、1つめは、

「問1 150ミリリットルのシャンプーお買い上げの方に200ミリリットルのシャンプーを無料で提供することは可能か。

答 購入する商品よりも最の多いものを付加することは、「取引通念上妥当と認められる基準に従」ったものとは言えないので、景品類に該当するため、このような方法は行えない。」

とされています。

う~ん、そうなんですかねぇ。

なんとなくわからないではないのですが、個人的には、何が「取引通念上妥当」なのかを、いち役所が勝手に決めてしまうことに強い違和感を覚えます。

理屈の上でも、ふつうの値引なら6割引、7割引があたりまえの商品でも、増量値引になったとたんに実質5割までしか値引きできないというのは、おかしなことだと思います。

まあ、役所の言うことが絶対だ、と信じて疑わない方はどうぞ従ったらいいんじゃないでしょうか、というくらいしか言えません。

告示は法律の委任を受けた法的根拠のあるものですが、運用基準はあくまで役所内部の運用基準に過ぎません。

なので、運用基準に従うかどうかは国民が自己責任で判断すればいいことだと、私は思います。

さて、次の、問2では、

「問2 ティッシュ(箱)お買い上げの方にミニティッシュをプレゼシトずることは、同一商品の付加になるか。

答 ミニティッシュは、ティッシュ(箱)とは異なる独立した一個の商品であるから、ティッシュ(箱)とミニティッシュは、同一の商品ではなく、この場合は、同一商品の付加に当たらない。」

とされています。

これもどうなんですかね。

「ミニティッシュは、ティッシュ(箱)とは異なる独立した一個の商品であるから」といいますが、「同一」かどうかを問うているのに「異なる」から同一ではないのだ、というのは、たんなる結論先取りであって、何の説明になっていないと思います。

こういうのをみると、役所は理由を説明しなくていいから楽だなぁと思います。

依頼者からお金をもらったり裁判所で戦う弁護士は、こういうわけにはいきません。

そこで理由を考えてみると、ミニティッシュ(ポケットティッシュ)は携帯して出先や屋外で使用するものであって、主に室内で一定の置き場所に置いて使用する箱ティッシュとは用途が著しくことなるため、箱ティッシュにポケットティッシュを付けると、たんに箱ティッシュを増量したのとは違う顧客誘引性が生じるから、といったところでしょうか。

でも、この理由で増量値引にならないほどの独自性があるといえるのかも疑問がないわけではないですし、担当官解説はそこまで深いこと考えていっているわけでもなさそうなので(たぶん直感だけ)、そういう意味では疑問の余地のある回答だと思います。

それに、同じ紙質でも入れ物がちがうだけで別の商品になるのなら、増量値引とするよりも、むしろ試供品(総付告示運用基準3(2))にしてしまったらいいのかな、という気がします。

次の例は、

「問3 スーツお買上げの方にスーツもう一着プレゼント」という販売方法は、同一商品の付加に当たるか。」

という質問に対して、

「商品の色、デザイン、プランド等については、原則として、これらの要素が全く同じ商品が同一の商品であると考えている。

通常、スーツをもう一着プレゼントという場合は、購入したスーツとは異なる商品であるので、前記の考え方から、こうした販売方法は、同一商品の付加とはいえず、もう一着プレゼントするスーツは景品類となる。

したがって、ニ着又は三着のスーツをまとめて販売する場合は、これまで通り、「ニ着OO円」「三着OO円」と表示して販売することとなろう。」

と回答されています。

これも、現行ガイドラインの、

「CD三枚買ったらもう一枚進呈」

というのが増量値引でOKなのと比べると、別のデザインのスーツでもいいんじゃないか、という気もしますし、今の消費者庁ならそう解釈するかも知れません。

役所のメンツ的にも、1996年改正で、「実質的に同一」というふうに広げられたので広げて良いのだ、という説明がつきそうです。

ちなみに、現行ガイドラインの、

「背広一着買ったらスペアズボン無料」

というのは、背広一着にズボンも当然含まれていて、スペアズボンはそのズボンと当然同じデザインなので、同じデザインに限るという上記担当官解説とは矛盾しないことになります。

ただ、細かいことを言えば、商品として購入するズボンは裾上げがダブルで、増量値引として提供するズボンはシングルの場合は「実質的に同一」なのか、とか、それに類する疑問はいくらでも出てくるところですが、まあそのくらいは「実質的に同一」でいいのではないでしょうか。

次の質問は、

「問4 ガソリン・スタンドが20リットル以上給油の方に1リットル無料サービス券(次回来店時に使用可能)を提供する場合は、同一商品の付加に当たるか。」

という質問に対して、

「答 この場合、提供する商品は、購入した商品と同一であるけれども、次回来店しないとその商品を手に入れられない。

こうした方法は、通常値引きとみなされるような方法ではなく、「取引通念上妥当な基準」によるものとはいえないので、

1リットル無料サービス券は、景品類となる。」

と回答されています。

しかし、この点については、1996年の改正で、

「複数回の取引を条件として付加して提供する場合を含む」

と明記されたので、立法的、もとい、立運用基準的に、解決され、今では増量値引になります。

次の質問は、

「問5 ジュースのメーカーが同社のオレンジジュース10本お買い上げの方にもう1本プレゼントというキャンペーンを行うことは可能か。」

というのに対して、

「答 オレンジジュースの購入者にそれと全く同じオレンジジュースを提供することは、同一商品の付加に当たり、景品類とはならない。」

と回答されています。

これは、問題ないでしょう。

しいていえば、現在なら、「全く同じオレンジジュース」だけでなく、「実質的に同じオレンジジュース」(?)でもOKなのでしょう。

増量値引の「同一」の意義については、ガイドラインで例示されているもの以外にあまり参考になる文献がなく、その例示自体も100%納得感のあるものではないので、何かの参考になればと思い、古い文献ですがご紹介した次第です。

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