「同一の取引」に複数企画が競合する場合の「同一の取引」の意味について
懸賞運用基準5項(「5 告示第二項の「懸賞に係る取引の価額」について)の(2)では、
「(2) 同一の取引に附随して二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合については、次による。
ア 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。
イ 他の事業者と共同して行う場合は、別々の企画によるときであっても、それぞれ、共同した事業者がこれらの額を合算した額の景品類を提供したことになる。
ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」
とされています。
ここで問題は、「同一の取引」とはどういう意味か、です。
「同一の取引」は、文字どおり同一の取引であって、1つの同じ商品を買ったときに2つの懸賞企画の対象になっていて潜在的には2つの懸賞企画の両方から景品がもらえる、という意味だというのが文言の素直な意味でしょうし、私も正しいと思うのですが、消費者庁の見解はそうではありません。
つまり、消費者庁の景品Q&Aの34番では、
「メーカーが、商品A(1,000円)の購入者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施し、
同時期に、小売店が、メーカーが行う懸賞とは別に、商品Aを必ず含んで、1,500円分以上の商品を購入した者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施する場合、
提供できる景品の最高額及び総額はどのように算定すればよいでしょうか。
なお、この2つの企画は、それぞれ独自に実施するものであり、共同企画ではありません。」
という質問に対して、
「A
同一の取引に付随して2つ以上の懸賞による景品類の提供が行われる場合の景品類の価額の考え方は、次のとおりです。
1 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになります。
2 他の事業者と共同して行う場合は、別々の企画によるときであっても、それぞれ、共同した事業者がこれらの額を合算した額の景品類を提供したことになります。
3 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によって景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになります。
本件については、メーカーが商品Aの購入者を対象に懸賞を行い、一方、小売店が商品Aを含む商品を1,500円以上購入した者を対象に懸賞を行うものであり、メーカーの懸賞で提供される景品類と小売店の懸賞で提供される景品類は、同一の取引に対して提供される景品類と考えられるところ、共同企画でないならば3に該当します。
この場合において、重複当選を制限していないのであれば、提供できる景品類の最高額は、メーカーの懸賞では、商品Aの価額の20倍(2万円)であり、一方、小売店の懸賞では、応募の条件である1,500円の20倍(3万円)からメーカーが提供する景品類の価額を差し引いた価額です(例...メーカーが、最高15,000円の景品類を提供する場合、小売店が提供できる景品類の最高額は、30,000円-15,000円=15,000円となります。)。
また、提供できる景品類の総額については、メーカーと小売店のそれぞれの懸賞に係る売上予定総額のうち、重複する商品Aの売上予定総額を、どちらかの売上予定総額から除外して算定する必要があります。
なお、小売店が、商品Aの購入を条件とせず商品を一定額以上購入した者を対象に懸賞を行う場合は、
購入商品の中にたまたま商品Aが含まれていたとしても同一の取引とは認められないので、
メーカーの懸賞と小売店の懸賞のそれぞれにおいて提供できる景品類の最高額及び総額は、合算することなく個別に算定して構いません。」
と回答されています。
つまり、最後のほうの「なお」以下のところで、
「小売店が、商品Aの購入を条件とせず商品を一定額以上購入した者を対象に懸賞を行う場合は、
購入商品の中にたまたま商品Aが含まれていたとしても同一の取引とは認められない」
と明言されているので、たまたま1つの同じ商品の購入者に複数企画による景品が提供されたとしても、「同一の取引」に附随した景品の提供ではない、ということになります。
この34番は、メーカーと小売店という、異なる事業者がそれぞれ企画を実施する場合についての質問ですが、前述のとおり、懸賞運用基準では、
「(2) 同一の取引に附随して二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合については、次による。
ア 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。
イ 他の事業者と共同して行う場合は、別々の企画によるときであっても、それぞれ、共同した事業者がこれらの額を合算した額の景品類を提供したことになる。
ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」
というふうに規定されており、「同一の取引」というのは、アイウに共通する要件として定められていますので、34番の考え方は、当然、アの場合(同一の事業者が複数企画を実施する場合)にも適用されることになります(争いはないでしょう)。
ということは、34番の「なお」以下で触れられているような、同一の事業者が、
①「商品A(1,000円)の購入者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーン」
と同時に、
②「商品Aの購入を条件とせず商品を一定額以上購入した者を対象に懸賞を行う場合」
は、
「購入商品の中にたまたま商品Aが含まれていたとしても同一の取引とは認められない」
ので、同一事業者がが行うこれら2つの懸賞の
「それぞれにおいて提供できる景品類の最高額及び総額は、合算することなく個別に算定して構いません。」
ということになります(これも、消費者庁には異存ないでしょう)。
ということは、小売店が①と②の企画を同時実施しても、景品類の価額は合算しなくてよい(重複当選を排除する必要はない)ということです。
でも、複数企画の対象に必ず(参加するための必要条件として)特定の商品Aが含まれていないと合算されないという考え方を押し進めていくと、小売店が、
①1000円以上お買い上げの方に抽選で景品プレゼント
という企画と、
②1万円以上お買い上げの方に抽選で景品プレゼント
という2つの企画を同時実施しても、両者に特定の商品は含まれない(含まれたとしても、たまたま)なので、両者の景品は合算しなくてよいことになります。
「同一事業者がやっているのに、そんなことでいいのか?」という疑問が当然湧きますが、消費者庁の34番の考え方からは、こうとしか考えられません。
これがもし、34番のようにメーカーと小売店の企画が競合する場合で、
①’ メーカーが、同メーカーの1000円以上の商品をお買い上げの方に抽選で景品プレゼント
という企画を行い、
②’ 小売店が、その小売店で1万円以上お買い上げの方に抽選で景品プレゼント
という企画を行うなら、34番が、
「なお、小売店が、商品Aの購入を条件とせず商品を一定額以上購入した者を対象に懸賞を行う場合は、
購入商品の中にたまたま商品Aが含まれていたとしても同一の取引とは認められないので、
メーカーの懸賞と小売店の懸賞のそれぞれにおいて提供できる景品類の最高額及び総額は、合算することなく個別に算定して構いません。」
といっていることから論理必然に、①’と②’の競合の場合も、
「なお、小売店が、商品Aなど何らの特定商品の購入を条件とせず商品を一定額以上購入した者を対象に懸賞を行う場合は、
購入商品の中にたまたま商品Aなど何らかの特定商品が含まれているとうことがあり得ず、同一の取引とは認められないので、
メーカーの懸賞と小売店の懸賞のそれぞれにおいて提供できる景品類の最高額及び総額は、合算することなく個別に算定して構いません。」
というしかないでしょう。
ということは、小売店が2つの
①1000円以上お買い上げの方に抽選で景品プレゼント
という企画と、
②1万円以上お買い上げの方に抽選で景品プレゼント
という2つの企画を同時実施した場合も同じに考えるほかない(合算しなくていい)と言わざるを得ないと思います。
1つ注意すべき点としては、①②の企画が1つの企画なのか2つの企画なのか、ということです。
でも、同一事業者が行う2つの企画だからといって、当然に1つの企画になるわけではないでしょう。
まず、企画を練る段階で複数企画が別々に企画されるということは、当然あり得ます。
その場合、企画の開始時期がずれるということも、当然あるでしょう。
企画の名前も、当然、違うものであることが多いでしょう。
というわけで、特定商品を必須の条件としないならば、複数企画を同時に多数行っても合算する必要がないし、重複当選を排除する必要もない、ということになります。
以上は懸賞を前提に説明してきましたが、総付の場合も、総付運用基準1(5)で、
「(5) 同一の取引に附随して二以上の景品類提供が行われる場合については、次による。
ア 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。
イ 他の事業者と共同して行う場合は、別々の企画によるときであっても、共同した事業者が、それぞれ、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。
ウ 他の事業者と共同しないで景品類を追加した場合は、追加した事業者が、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。」
というように、懸賞の場合とまったく同じ定め方をしているので、同一事業者が複数の総付企画をする場合でも、それぞれの企画に必ず購入しなければならない特定商品がない限り、それらの総付での景品は合算する必要がないことになります。
私は、Q&A34番の消費者庁の考え方が間違っていると考えていますが、消費者庁がそれでいいといっているので、とやかく言う必要もありませんから、挑戦してみる価値はあるのではないでしょうか。
たとえば、小売店が
a 1000円以上購入者に総付で景品プレゼント
b 2000円以上購入者に総付で景品プレゼント
c 3000円以上購入者に総付で景品プレゼント
・・・
j 1万円以上購入者に総付で景品プレゼント
という10個の別々の総付企画を同時期に行い、それぞれについて取引価額の2割までの景品をつけて、たまたま購入商品の一部に購入額の2倍(=0.2×10)の景品をつけることになっても問題ない、ということになります。
さらにいえば、金額をこまめに変える必要すらなく、
a 1000円以上購入者に総付で景品プレゼント
b 1000円以上購入者に総付で景品プレゼント
c 1000円以上購入者に総付で景品プレゼント
・・・
j 1000円以上購入者に総付で景品プレゼント
という10個の企画でも問題ない、ということになりそうです。
もちろん、10個の企画を一括企画して10個の名前をつけたりすると実質的には1つの企画とみなされる可能性があるので注意が必要ですが、企画段階で別々に企画しているなら、そういう心配もないのでしょう。
本当に言いたいのは、「こういうことになるからやっぱり34番の回答はおかしい」ということなのですが、実務的には(=消費者庁の見解を前提にすると)、こういうアドバイスにならざるを得ないと思います。
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