外国産品には常に原産国を表示しないといけないか?
指定告示の中で原産国告示はかなり活発に運用されています。
最近で思いつくだけでも、ビックカメラの措置命令(2021年9月3日)や高島屋に対する措置命令(2019年6月13日)などが思い当たります。
ECサイトなどで見かけますが、すべての商品に原産国を記載している(原産国の項目が商品紹介フォームにデフォルトで入っている)ものがあります。
ビックカメラのも、そんな感じです。
原産国を確認・特定するのはけっこう大変なので、商品にもよるでしょうが、いちいち原産国なんて書かなければいいのに、と思います。
でも原産国告示の場合には、そのあたりにやや微妙な問題があります。
というのは、原産国告示2項(外国産品の原産国表示)で、
「2 外国で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であつて、その商品がその原産国で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの
一 その商品の原産国以外の国の国名、地名、国旗、紋章その他これらに類するものの表示
二 その商品の原産国以外の国の事業者又はデザイナーの氏名、名称又は商標の表示
三 文字による表示の全部又は主要部分が和文で示されている表示」
が、「商品の原産国に関する不当な表示」(同告示柱書)と指定されているからです。
もちろん問題は、3号です。
つまり、外国産品の文字の表示の全部または主要部分を和文で表示していると、その商品は国産品と誤解されるので、原産国を書かないといけない、とされているのです。
これは、国産品に関する告示1項3号の、
「三 文字による表示の全部又は主要部分が外国の文字で示されている表示」
をひっくり返したものですが、国産品の表示を外国の文字(たとえば英語やフランス語)で表記していたら英国産やフランス産と誤認されるおそれがあるというのはわかります。
しかし、ここは日本ですし、消費者の圧倒的多数は日本語ネイティブの日本人ですから、外国産品であっても表示を日本語でするのはあたりまえのことです。
なので、外国産品の表示を日本語でしたからといって、国産と誤解されるわけがありません。
こう考えると、告示2項3号は、もともと合理性の薄い規定だと言わざるを得ません。
ですが、告示にこうはっきり書かれてしまっている以上、露骨に無視するのも気が引けます。
すべての商品に原産国を記載しているECサイトなんかは、ひょっとしたら告示2項3号を意識した結果なのかもしれません。
でも、商品の数が多かったり、原産国をどう決めたら良いか分からないことは少なくないのに対して、消費者に商品をアピールするために原産国を書く必要があまりない商品もきっと数多くあります。
どうしたらいいでしょうか?
私は、原産国をいちいち管理できる自信がない会社は、告示2項3号の規定は無視してしまったほうが、景表法違反のリスクはむしろ低いと思います。
この点で参考になるのが、消費者庁の家庭用品品質表示法上の原産国表示に関するQ&Aで、そこでは、
「Q 家庭用品に原産国を表示する必要はありますか。家庭用品に原産国を表示する場合には、どのようにすればよいのですか?」
という質問に対して、なんと、
「A
家庭用品品質表示法上は、家庭用品について原産国を表示することは義務付けられておらず、原産国を表示する場合の基準も定められていません。
商品の原産国の表示については、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法[昭和37年法律第134号])上、「商品の原産国に関する不当な表示」(昭和48年公正取引委員会告示第34号)において一定の基準があります。」
と回答されています。
このQ&Aは、直接的には家庭用品品質表示法に関するQ&Aですが、いちおう景表法にも言及しており、その際、外国産品について日本語で表示をしている場合には原産国を書かないといけないとは、一言も言っていません。
もちろん形式論理的には、
「商品の原産国の表示については、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法[昭和37年法律第134号])上、「商品の原産国に関する不当な表示」(昭和48年公正取引委員会告示第34号)において一定の基準があります。」
というところに告示2項3号を読み込めるのですが、さすがにそんなえげつないことはいわれないと思います。
もし消費者庁がそんなこと言ったら、それこそこのQ&Aは不当表示でしょう(笑)。
つまり、消費者庁も本音のところでは、告示2項3号を執行しようなんて、これっぽっちも思っていない、ということです。
実際に、告示2項3項が適用されて排除命令や措置命令が出た事案も、私の知る限りありません。
なので、無理に全商品に原産国を書いて間違って不当表示になるくらいなら、むしろ書かない方が、ずっと違反のリスクは低いと思います。
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