« 懸賞の「点数券」に関する緑本の解説の疑問 | トップページ | 懸賞の総額について(消費者庁景品Q&A59番) »

2022年1月 4日 (火)

懸賞運用基準5(2)(同一取引に複数懸賞が競合する場合)の読み方

懸賞運用基準5(2)では、

「5 告示第二項の「懸賞に係る取引の価額」について

〔(1) 省略〕

(2) 同一の取引に附随して二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合については、次による。

ア 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。

イ 他の事業者と共同して行う場合は、別々の企画によるときであっても、それぞれ、共同した事業者がこれらの額を合算した額の景品類を提供したことになる。

ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」

と規定されています。

ぼーっと読むとそれらしく読めてしまうので(実際そのように読まれているので)、あまり問題になりそうにない規定に見えますが、よく考えてみるといろいろと問題があります。

まず、5(2)は、5の標題のとおり、「告示第二項の「懸賞に係る取引の価額」について」の規定なので、懸賞告示2項も見ておくと、そちらでは、

「2 懸賞により提供する景品類の最高額は、懸賞に係る取引の価額の二十倍の金額(当該金額が十万円を超える場合にあっては、十万円)を超えてはならない。」

と規定されています。

なので、運用基準5(2)の規定は、この、告示2項の「懸賞に係る取引の価額」の解釈です。

これを踏まえて、運用基準5(2)の意味を考えると、まず、アは、あたりまえなのでとくに問題はないでしょう。

と、スルーしたいところですが、ここにも、(イ、ウにも共通する)問題がないわけではありません。

というのは、

「ア 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。」

とされていますが、その前提として、5(2)の柱書では、

「(2) 同一の取引に附随して二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合については、次による。」

とされているので、同一の取引に附随して(当たり外れを問わず)複数の懸賞企画を行う場合すべてについて述べているのではなく、実際に景品類の提供が行われる場合(つまり、当たった場合)について述べています。

なので、5(2)アも、2つの企画で景品の最高額(1等)の合計が10万円を超えたら当然にアウトなのではなく、現に合計10万円を超えたらいけないだけなので、2つの企画に両方当選すること(重複当選)を防ぐのであれば、「合算した額の景品類を提供したことに」なりません。

(話を単純にするために、取引価額が小さい場合は考慮せず、最高景品額は10万円の前提で説明します。)

ともあれ、運用基準5(2)アは、理解しやすく、懸賞告示2項の解釈として妥当でしょう。

5(2)イも、複数事業者で共同してやっているので、両者一体に見て、それぞれが合計額を提供しているとみる、つまり、両者とも違反者になる、という意味です。

5(2)イの

それぞれ、共同した事業者がこれらの額を合算した額の景品類を提供したことになる。」

というのは、たとえば、A社が7万、B社が4万の景品を懸賞で提供したら(つまり、実際に当たったら)、A社もB社も11万提供したものとみて、両者とも違反になる、ということはもちろんのこと、A社が100万、B社が100円でも、A社もB社も100万100円提供したことになり、両者とも違反になる、ということです。

(日本語としては、

「共同した事業者が、それぞれこれらの額を合算した額の景品類を提供したことになる。」

としたほうがきれいな気がしますが、それは措きます。)

両者で共同しているのだから当然の結果であり、告示2項の解釈としても妥当に思われます。

ただ、よく考えてみると、「二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合」で「別々の企画によるとき」というのが、何を指すのかは、やや疑義が生じ得ます。

あまり考えずに素直に読めば、

「二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合」

というのは、

「二以上の企画による景品類提供が行われる場合」

と読めそうに思います。

しかし、複数の事業者が共同する場合について述べているイとウについては、企画を共同して行っているからには、ふつうは1つの企画なのであって、「二以上の企画」と読むのは、イウと噛み合っていないように思えます。

そこで、

二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合」

というのは、

「懸賞による二以上の景品類提供が行われる場合」

とも読めるのではないか(少なくともそういう場合も含まれると読むべきではないか)という気がします。

というのは、本当の意味で共同企画としてやっているなら、企画は1つともいえるわけで、共同していながら常に2つの企画があるわではないでしょうし、共同しているけれど、だけど2つの独立した企画がある場合に限ってイが適用される、というのも、おかしな感じがするのです。

とはいえ、ほんとうに2社で共同して1つの企画をしているときであれば、その1つの企画で20万円の景品を1個あげたら2社とも違反になるのは当然でしょう。

でも、その場合は、イには該当しません。

というのは、イは、「別々の企画」でなければならないからです。

なので、共同して1つの企画を行う場合はイは適用されず、いわば告示2項の当然の解釈として、両者とも違反になる、ということになるのだと思います。

どうしてこういうことをつらつらと述べるのかというと、「共同して行う」企画でありながら、「別々の企画」である、というのが、厳密に考えてみると、意味がよくわからないからです。

まあこのあたりは物の本にいろいろと説明があって、緑本6版p226では、

「例えば、メーカーが懸賞販売を実施しているときに、

そのメーカーと卸売業者が談してさらに別個の懸賞販売の企画を実施したような場合は、

メーカーと卸売業者のそれぞれが両方の景品類の合算額の景品類を提供したことになるので、

メーカーと卸売業者のそれぞれにとって、この合算額が最高額の制限内でなければならない。」

という例があげられています。

つまり、「相談して」いれば、「共同して」にあたる、ということです。

でも、

「相談」まではしてなくても、たんにメーカーの第1企画を卸が知っているだけで第2企画をおこなった場合には「共同して」にあたるのか(あたらなさそう)とか、

卸が第2企画を一緒にやろうとメーカーに持ちかけたけど乗ってこなかったので卸だけで行った場合は「相談」はしているとも言えるけれど「共同」にはあたらないのではないか(これも、あたらなさそう)とか、

卸がメーカーに「相談」したけど、メーカーは名前を貸す(協賛する)だけで、企画の内容や景品の負担は一切しない場合は「共同」にあたるのか(これは、あたりそう)とか、

微妙な場合がいくらでもありそうな気がします。

ちなみに、複数事業者による複数企画の競合についての消費者庁景品Q&Aの34番では、

「メーカーが、商品A(1,000円)の購入者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施し、同時期に、小売店が、メーカーが行う懸賞とは別に、商品Aを必ず含んで、1,500円分以上の商品を購入した者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施する場合、提供できる景品の最高額及び総額はどのように算定すればよいでしょうか。なお、この2つの企画は、それぞれ独自に実施するものであり、共同企画ではありません。」

という設問になっていて、「独自に実施する」なら「共同企画」ではない、という整理になっているようです。

なので、お互いに相手の企画を知っているけれど独自に実施しているという場合には、「共同企画」ではない、ということでいいみたいです。

というより、微妙な問題が出てきたら、両者で、これが運用基準5(2)でいうところの「共同企画」にあたるのかあたらないのかをはっきりさせておくべきでしょう。

そうすれば、消費者庁があとから、「それはそうじゃない」と評価してくることは、よほど実態とかけ離れた合意でない限り、まず考えられないのではないか、という気がします。

またどうしてこういうことをこまごまと考えるのかというと、5(2)ウ(共同しない場合)がどういう場合を指すのか、はっきりしない(とうより、文字どおり「共同しない」場合すべてと考えると何かと不都合がある)ように思われるからです。

というのは、5(2)ウでは、「同一の取引に附随して二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合については」

「ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」

とされているのですが、これを文字どおり読むと、単独企画の場合であってもあとからやるほうは、第1企画の存在を知っていても知らなくても、常に第1企画の景品類を自己(あとからやるほう)が提供したものとみなされることになりそうだからでです。

でも、第1企画の存在を知らずに第2企画をやった場合にまで第2企画の実施者が全責任を負うというのは、どう考えてもおかしな気がします。

たとえば、何百万品種もあつかうアマゾンのようなECモールが、自己が販売する(マーケットプレイスではなく)商品のすべてについて、メーカーが何か懸賞企画をやっていないかチェックしないといけないことになりますが、それは不可能でしょう。

(※後述のように、消費者庁は、こういう場合はそもそも「同一の取引」ではない、と考えるようですが。)

この問題については、外れの場合がない総付で考えてみると一層明らかです。

総付運用基準1(5)ウは、懸賞運用基準5(2)ウとまったく同じ内容で、

「(5) 同一の取引に附随して二以上の景品類提供が行われる場合については、次による。

〔ア、イ省略〕

ウ 他の事業者と共同しないで景品類を追加した場合は、追加した事業者が、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。」

と規定されているのですが、そうすると、最初の事業者が総付で2割までの景品を提供していると(そして、何百万点もの商品の中にそのような総付企画が存在する可能性は常にあるわけですが)、あとの事業者はその最初の企画の存在を知らなくても、総付を一切できないことになります。

理屈は懸賞でも同じです。

でも、この解釈はやっぱり不都合だと思います。

確かに、客観的には同一取引で2つの景品がもらえるなら誘引力も2つ分にはなるわけですが、事業者に「自己の取扱い製品について他者が景品を提供していないか全部調べる」というような不可能を強いるわけにはいきません。

そこで、懸賞運用基準5(2)ウの、

「ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」

というのの、「追加した」というのを、意図的に追加した、と限定して読むべきなんだろうと思います。

なお、ウでは、

「その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合」

とされており、文字どおり杓子定規に読めば、A社の第1企画と、あとから行った(たとえば第1企画の開始後1ヶ月後に開始した)B社の第2企画がある場合、もし第1企画の抽選の前に第2企画の抽選が行われて第2企画の「当選者」が先に確定してしまった場合には、当該「当選者」に第1企画の抽選で当選させると、第1企画のA社が

「〔第2企画の〕当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した」

ことになり、A社が違反者になってしまいそうですが、たぶんそういう手の込んだ読み方はせず、単純に、あとから企画をはじめたほうを、「追加した」者と読むのでしょう。

ちなみに緑本p226では、懸賞運用基準5(2)ウの例として、

「例えば、メーカーが商品の購入者に懸賞による景品類(最高額の制限内)を提供しているときに、

小売業者が独自にその懸賞の当選者に別途の懸賞による景品類を追加で提供する場合は、

小売業者にとって景品類の合算額が最高額の制限を超えないようにしなければならない。」

という例があげられており、企画は後だけれど抽選は先、みたいなややこしいことは想定していないようです。

まあそれでいいのでしょう。

要するに、どちらがあとから「追加」したのかは、景品類提供の前後や抽選(当選者確定)の前後ではなく、企画を始める時期の前後で決める、ということです。

そして、

イは、共同(相談含む)企画の場合、

ウは、単独(相談含まない)企画で、かつ、あとから追加する事業者が先の企画の存在を単独企画開始時点で知っている場合、

に適用されるべきと考えます。

以上が懸賞運用基準の素直な読み方だと思いますが、消費者庁の考え方は少々違うようです。

というのは、以前も書きましたが、消費者庁の景品Q&Aの34番では、

「なお、小売店が、商品Aの購入を条件とせず商品を一定額以上購入した者を対象に懸賞を行う場合は、購入商品の中にたまたま商品Aが含まれていたとしても同一の取引とは認められないので、メーカーの懸賞と小売店の懸賞のそれぞれにおいて提供できる景品類の最高額及び総額は、合算することなく個別に算定して構いません。」

とされているので、前述のような、多数の商品を扱う小売店(アマゾン)が、特定のメーカーの商品の購入を条件とせず懸賞を行う場合は、そもそも「同一の取引」ではないので、(仮に前の企画の存在を知っていても)あとから懸賞をする小売店は前の企画を合算する必要がない、ということになっているからです。

その時も書きましたが、理論的にはこれは間違いだと思うのですが、まさに、知りようがない他社のキャンペーンまで調べないといけないという不可能を強いられるという問題は回避されており(特定商品を必ず含むというキャンペーンをするなら、当該特定商品について既存のキャンペーンの有無は調べられそう)、実務で問題になりそうなかなりの部分については、2回間違えることで正しい方向に戻って、結果的にはつじつまが合っている、ということになりそうです。

« 懸賞の「点数券」に関する緑本の解説の疑問 | トップページ | 懸賞の総額について(消費者庁景品Q&A59番) »

景表法」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 懸賞の「点数券」に関する緑本の解説の疑問 | トップページ | 懸賞の総額について(消費者庁景品Q&A59番) »

フォト
無料ブログはココログ